自分自身の別人格と対峙する青年の苦悩を描いたクライムサスペンス漫画。主人公の浦島エイジは、「人生楽しんだもん勝ち」をモットーとするごく普通の大学生。エイジがある朝目覚めると、ベッドの隣で同級生の幸村京花が眠っていた。予想外の事態に動転するエイジに対し、京花は驚くべき事を告げる。なんと、自分たちは恋人同士だというのだ。この日を境に、エイジの人生は一変していく。
エイジは表面的にはお気楽で平凡な大学生。しかし、エイジの実の父親は、「LL」という通り名で知られた凶悪な連続殺人鬼だった。「LL」は逮捕される直前に焼身自殺し、当時5歳だったエイジは、現在の養父母である浦島家に引き取られた。それから15年が過ぎ、エイジが大学生になった頃、「LL」の手口と酷似した殺人事件が発生する。そして時を同じくして、エイジは自分の記憶に空白期間があることに気づき始める。エイジは二重人格になっていた。しかも、もう一人のエイジは普段の彼とは異なる「危うさ」を秘めている。警察から事件への関与を疑われる中、エイジはもう一人の自分の行動を探るため、危険な裏社会に足を踏み入れていく。
多重人格となった少年が、子役としてスターを目指す姿を描くサイコサスペンス漫画。主人公の波田ノベルは、気弱で平凡な小学生。浪費癖が元で離婚した母と2人で暮らすことになったが、生活を支えるため、無理矢理芸能事務所に入所させられる。常軌を逸した母の行動、そして学校でのイジメが原因で、ノベルは心の内に飼っていた別人格が覚醒する。その人格によって、ノベルは厳しい子役の世界での生き残りを目指す。
作品によって多種多様な役柄を演じる役者は、ある意味、多重人格に似通った職業と言えるかも知れない。ノベルは子役としての第一歩を踏みだすと同時に、第二の人格を発現させた。彼は、理不尽な世間から自分を守ってくれる存在を求め、憧れの探偵小説の主人公フィリップ・マーロウのような人格を出現させる。「マーロウ」は、普段のノベルとは正反対の自信家で、何事も卒なくこなせる器用さを持つ。彼の出現によってノベルの人生は大きく変化していく。なお、ノベルが所属する事務所のトップ子役の中には、彼と同じく別人格を持つ少女の雫石ミコが在籍する。ミコとノベルの関係も、物語の大きな見所だ。
多重人格となった元刑事の周辺で発生する、不可解な事件を描いたサスペンススリラー漫画。主人公の小林洋介は、警視庁捜査一課に所属する新人刑事だった。しかし、連続猟奇殺人事件の犯人に、恋人が四肢を切断されるという凄惨な事件にあう。それがきっかけとなり、多重人格を発症、それまでの記憶を失う。新たな人格「雨宮一彦」となり、精神科医の伊園磨知が営む犯罪研究所に雇われる。やがて「雨宮一彦」の周辺では、猟奇的で不可思議な事件が頻発する。
解離性同一性障害、即ち多重人格は、主に心的なストレスによって発症するらしい。しかし、本作では、主人公である小林洋一(雨宮一彦)を含め、登場する多重人格者は人為的に作られたものなのだ。彼らを作ったのは「学窓(ガクソ)」と呼ばれる秘密組織。学窓は特定の人格をコピーし、他人に転移させる技術を完成させていた。「雨宮一彦」とは、この学窓が創造したプログラム人格だった。さらに雨宮の中には、複数の別人格も混在している。これら人格の誕生の経緯と隠された謎、そして学窓の企みを追いながら物語は進んでいく。グロテスクでショッキングな猟奇殺人描写などでも大いに話題となった、衝撃的なサイコサスペンスだ。
貴志祐介の小説「十三番目の人格 ISOLA」をコミカライズしたミステリーホラー漫画。主人公の加茂由香里は、高い共感能力によって人の強い感情を読み取れる「エンパス」。彼女はその能力を活かし、震災直後の阪神淡路地方で、ボランティアとして被災者の心のケアを行っていた。そこで彼女は、多重人格を抱える少女に出逢う。少女との交流を重ねた由香里は、少女の心の中に危険な人格が生まれていることに気がつく。
エンパスとは、優れた共感能力を持つ人間だ。超能力のテレパスと混同されがちだが、考えが自在に読み取れるわけではなく、エンパスが感知するのは基本的に感情の動きのみ。由香里は、ずば抜けて優れたエンパスだ。彼女はその能力を活かし、被災者の心療ボランティアを行っていた。そこで森谷千尋という15歳の少女と出逢うが、彼女は心の中に12以上もの人格を抱える多重人格者だった。やがて由香里は、千尋の中に極めて異質な人格が存在することに気がつく。その人格の名は「磯良(いそら)」といい、震災直後に千尋の心に現れた13番目の人格だ。由香里は磯良が冷酷で残忍な復讐者だと直感する。
PTSDで銃を持てなくなった警察官と、その相棒となった女性刑事の活躍を描くユニークなクライムアクション漫画。一ノ瀬逞(いちのせたくま)は、過去のトラウマから銃が持てなくなった警察官。逞は刑事として新たに配属先された捜査特捜班で、阿久津沙耶香(あくつさやか)という女性刑事とコンビを組むこととなる。沙耶香は「ペルソナ(仮面)」の異名の持ち主で、複数の人格を宿す多重人格者だ。沙耶香はその人格を巧みに操り、見事な手際で事件を解決に導いていく。
多重人格者の中には、人格が交代すると仕草や口調だけでなく、表情までもが変貌する場合もある。実際、実在の多重人格者として有名な「24人のビリー・ミリガン」のビリーも、知的で上品な「アーサー」という人格と、凶暴な怪力の持ち主である「レイゲン」では、別人のように見えた。本作の主人公である沙耶香は、さらに変装術を駆使することで完璧に別人となる。渾名が示すように、沙耶香は複数の「ペルソナ(仮面)」を使い分け、様々な潜入捜査を成功させてきた腕利きの刑事だ。その一方で彼女は、幼少期のトラウマに起因する精神的な弱点も抱えていた。沙耶香とコンビを組む逞は、その破天荒ぶりに手を焼きながらも、彼女を陰から支えていく。