概要・あらすじ
元刑事・小林洋介に移植され覚醒したプログラム人格・雨宮一彦は、伊園磨知とともに多発する猟奇殺人の真相を追う。やがて犯人がいずれも謎の組織・学窓会が人工的に作ったバーコード殺人者であることが判明。学窓会は未知のテクノロジーを駆使し、人工のプログラム人格を持つ人間や完璧なクローン人間などを生み出していた。
目的は、1972年に死んだアメリカのカルトスター・ルーシー・モノストーンの魂を再現すること。そしてその鍵を握るのが雨宮一彦の存在だった。いっぽう小林の肉体には凶悪なプログラム人格・西園伸二も潜んでおり、しばしば雨宮一彦と入れ替わる。ハイジャック事件に際して小林の肉体は死亡、雨宮一彦の人格は殺人者として作られた少年・西園弖虎に転移。
登場人物・キャラクター
雨宮 一彦 (あまみや かずひこ)
20年前に孤児たちを使って行われたルーシー・モノストーンの再現実験で、偶発的に作り出されたプログラム人格。孤児の1人が雨宮一彦、西園伸二など複数の人格を移植され、後に小林洋介の名前と人格で刑事になる。小林の人格は、恋人が猟奇犯罪の犠牲となった際に消滅。代わりに雨宮一彦が目覚めた。 その肉体はのちに狙撃され死亡するが、雨宮一彦の人格は西園弖虎に転移。雨宮一彦はその後、弖虎のなかで休眠状態となる。
西園 伸二 (にしぞの しんじ)
20年前の実験で雨宮一彦とともに作られたプログラム人格。理知的で人間性豊かな雨宮一彦と対照的に、凶暴で無慈悲。だが2つの人格は、相互に補完し合う関係にある。雨宮一彦とともに小林洋介の肉体に移植され、しばしば目覚めては私立探偵のようなことをしていた。
西園 弖虎 (にしぞの てとら)
人工的に作られた殺人者のプログラムを持つ少年。学窓会の地下ラボで生まれた。小林洋介と同じく、プログラム人格・西園伸二を移植されている。自分の人格を他人に移植する、他人の記憶を操作して幻覚を見せる、念じた相手に自殺・殺人衝動を呼び起こすなどの特殊能力の使い手。 ハイジャック事件の際、瀕死の伊園・アリワン・美和から雨宮一彦の人格を預かった。次第に人間性に目覚め、一連の陰謀の黒幕である伊園若女と対決する。
伊園 若女 (いその わかな)
ルーシー・モノストーンの娘、ワカナ・モノストーン・イソノ。伊園若女のほかに伊園磨知などの人格を持つ。科学警察研究所などを経た後、日本政府の支援で伊園犯罪研究所を設立した。同時に若女の人格を封印し、磨知の人格で雨宮一彦とともに猟奇殺人の真相を追う。 だがその目的は、目覚めた雨宮一彦の監視だった。六本木ヒルズテロ事件の後、若女の人格に戻る。幼い頃に父親のルーシーを操ってカルトスターに仕立て上げ、集団自殺に導く。若女の人格も、彼女が新生児だった時に何者かが移植したもの。
笹山 徹 (ささやま とおる)
警察庁キャリアだが出世コースを外れ、警視庁第1課11係の係長を務める刑事。小林洋介の元上司。自身は特段の活躍もできないが、一連の事件の真相を見届けようと奮闘。元部下の天馬うらん、犬山犬彦、後に西園弖虎らとも行動をともにする。
鬼干潟 龍夫 (おにひが たたつお)
新保守党議員。法務大臣を経て総理大臣となる。永田町地下の巨大シェルターで招集されるシャドウキャビネットの首相として、日本を動かしていた。エリート主義と対米依存からの脱却などを追求し、学窓会ともつながりを持つ。がんで余命6カ月と診断されるが、六本木ヒルズテロ事件で死んだ鬼頭日明の体から臓器移植を受けた。
鬼頭 日明 (きとう あきら)
警視庁公安4課課長。伊園磨知の元恋人。鬼干潟龍夫の指示でバーコード殺人者による猟奇殺人の捜査、また雨宮一彦の監視を務める。だが陰謀の核心に近づくにつれ、独自の行動を取り始めた。自分が鬼干潟のスペアとして作られたスペアだと知り、鬼干潟の殺害を図るも六本木ヒルズテロ事件で死亡。 結局鬼頭の臓器は鬼干潟のがん治療で移植される。しかし鬼頭は自分が死んだ後も鬼干潟を殺せるよう全身に強い放射線を浴びていた。
ルーシー・モノストーン
欧州系アメリカ人。男性。60年代カウンターカルチャーの教祖的存在。アーティストにしてテロリスト、少女の歌声を持つミュージシャンなどと称される。アルバムは「フラワーチルドレン」1枚のみ。実態は鳴かず飛ばずのミュージシャンだったが、伊園若女によりカルトスターに仕立て上げられた。 1972年の集団自殺で死亡したのは替え玉で、その2年前に若女が見つけて来たホームレスのヘンリー・セバスチャン。本物は「次の実験のために」若女の頭のなかで眠っているとされる。
御恵 てう (みめぐみ てう)
学窓会の関係者。かつてミズ・アーヴィングとして「伊園磨知の父親」の秘書をしていた。ルーシー7、全一らを操る。学窓実験船で西園弖虎らを使い雨宮一彦の再現実験を行うが、失敗。後にミセス・ジョークマンと名乗り、駐日アメリカ合衆国大使に就任する。だがほどなく清水の爆死に巻き込まれた。 全身が極度に破壊されても再生する特殊能力があったが、伊園若女によって硫酸で溶かされる。
伊園・アリワン・美和 (いそのありわんみわ)
伊園磨知の異母妹として暮らす女子高生。正体は伊園若女のスペアとして作られたクローンだった。また学窓会はプログラム人格「西園伸二」をXXとXYに分けて保存しており、そのうちXXの持ち主が伊園・アリワン・美和である。かつて小林洋介だった雨宮一彦からその人格を手に入れるが、桐生に撃たれて瀕死の重傷を負う。 美和は雨宮一彦が自分とともに死ぬのを避けるため、西園弖虎に預けた。自身も一命は取り留めるが植物状態となる。弖虎は若女のスペアを処分するため病床の美和を殺すが、その人格は弖虎に転移して生き続けた。
清水 (しみず)
昭和の妖怪と称された謎の有力者。元・太平洋戦争の特攻隊員。遺伝子情報による国民管理、遺伝子書き換えによる日本民族の純粋化プロジェクトを戦前から進めていた集団の一員だが、それを阻止しようとしてきた。笹山徹に一連の陰謀に関する資料を渡した後、爆弾を搭載した車で御恵てうの車に突っ込んで爆死する。
犬山 犬彦 (いぬやま いぬひこ)
かつて警視庁第1課11係の刑事で笹山徹の部下だった。一連の連続殺人犯には背中に肩甲骨の奇形があったことを知る。犬山犬彦自身も同じ奇形があり、後にルーシー・モノストーンの息子だったことが判明。警察を退職した後も笹山と真相解明に奔走するが、伊園若女に撃たれて死ぬ。
渡久地 菊夫 (とぐち きくお)
ローカルテレビ局で働くフリー記者。元・戦場カメラマン。渡久地菊夫も学窓会に作られた人間であり、左目にバーコードを持っていた。銃を乱射して大量殺人を行い、東京都庁展望台で人質を取って立てこもる。同時に自分がそれまで調べ上げた学窓会の資料をインターネットなどで公開した。 全一に狙撃されて死亡。
全一 (ぜんいつ)
学窓会の工作員。一連の猟奇殺人をそそのかした後、造反した西園弖虎の確保に奔走する。切断された手がまた生えてくるなどの身体再生能力を持つが、弖虎によって再生不可能なまでに破壊されて死亡した。
集団・組織
ルーシー7 (るーしーせぶん)
『多重人格探偵サイコ』のグループ。バーコード殺人者の第2世代。14歳の少年少女で構成される。ロリータ℃がカバーするルーシー・モノストーンの曲を聞いてバーコード殺人者として目覚め、連続殺人を繰り広げた。第2世代のうち6人がルーシー7と呼ばれる。6人は欠番とされた最後の1人を探していた。元FBI心理分析官のミシェル・パートナーに大半が殺され、1人残ったしょうこも西園弖虎の人格転移で廃人となる。
学窓会 (がくそかい)
『多重人格探偵サイコ』に登場する組織。ガクソとも。日本の敗戦後、占領軍と結びついて日本の保守政治家を手なずけて来た。旧日本軍が作った東京地下の巨大シェルターに地下ラボを持つ。バーコードプロジェクトは、米軍の代わりに殺人を行う日本人を大量生産するためだった。日本政府からも、遺伝子レベルで国民を管理するための技術開発を請け負う。 ルーシー・モノストーンを元に指導者のプログラム人格を作る計画を進めている。