タイトルに「横浜」が含まれる作品36 Pt.

8月15日は横浜駅が現在の場所に移転した記念日。横浜を舞台とした漫画作品は数多くあるが、タイトルに「横浜」が入った作品はそう多くない。タイトルにまで「横浜」を謳った、「横浜愛」に満ちた作品をご紹介。

横浜駅が現在の場所に移転したのが1915年（大正4年）。首都圏有数のターミナルとして成長を続け、開業以来ずっと「どこかしら工事をしている」ことで有名だ。完成まで300年かかるのではと言われたスペインの教会になぞらえて、「日本のサグラダ・ファミリア」と揶揄されている。この作品は横浜駅がついに自己増殖を開始した200年後、本州の99％が横浜駅となった世界を舞台に描かれている。いつも工事現場の中を歩かされている横浜駅利用者にとっては「あり得るかも」と思ってしまう設定だ。デストピア的な世界観の中に「自動改札」や「18きっぷ」というような、思わずニヤリとしてしまうようなネタが散りばめられている。果たして横浜駅は日本全土を制圧できるのだろうか?!

本作の舞台は明治8年の横浜。明治5年に新橋－横浜間で日本初の鉄道が開業した直後の横浜が描かれているが、この時代の横浜駅は現在の桜木町駅に相当するもの。いまの横浜駅が開業したのはその約40年後の話だ。陸蒸気と呼ばれた汽車に乗り、地方から横浜に出てきた11歳の少女・卯野が目にしたのは、波止場に停泊した黒船や、海外からの蒸気船。教会、ホテル、馬車など…文明開化真っ盛りの横浜の街並み。チャイナタウンや元町、本牧などの地名も時折描かれ、昔の横浜の情緒がわかる、橫浜好き必読の作品。

主人公は女性型ロボット。時代設定は人類が滅びつつある近未来。とはいっても、人類の存亡をかけて戦うといったお話ではなく、主人公と周りの人々の、ほのぼのとした日常を描いている異色の作品だ。舞台は横浜とその近郊。ランドマークタワーなど、横浜を知っている人が見ると「ああ、ここの風景かな」と想像することは出来るが、地球温暖化などで海水面が上昇し、まったく別の光景となっている。平野部は水没して、高台が離れ小島のように点在している。大きな台地はかろうじて尾根道でつながっていて、昔の海辺の農村を思わせる風景が広がる。そんな世界でロボットは、人間と同じように自意識を持って考え、行動し、人間と対等に接しながら暮らしている。人間にとって望ましい未来とはどういうものか、考えさせられる作品だ。

本作の舞台はまさに橫浜。テレビ塔やテレビ神奈川の放送局、山下公園などの橫浜らしい情景が多数描かれる。主人公・ミキが務める喫茶店の名前も「ぶるうらいと」という、いかにも橫浜らしい名前。いつも原チャリに乗って街を走り回るミキ、バイクを愛するつっぱりの男友達、個性的なジーンズショップの店員のなど、出てくる人物はみなほのぼのとしていて、喧嘩や溺れるようなラブストーリーが展開されることはない。みなとみらいが創られる前、1980年代の橫浜のさわやかで朗らかなイメージだけが抽出された古き良き橫浜ストーリー。

「横浜線彫刻家連続殺人事件」の容疑者として逮捕された剣崎。殺された4人は、いずれも剣崎の美大時代のグループ展のメンバーだった。茂みで発見された鬼怒川、林で発見された氷山、土に埋められていた夏木、川底から見つかった比与…いずれも横浜線沿いで発見されたのだが、被害者は全員体を拘束された状態で、顔に石膏を塗り固められ窒息死したという。殺害された4人の髪の毛と、死体の顔から型取りされたライフマスク（像）が剣崎のアトリエから発見されたことが証拠となり剣崎は逮捕されたのだった。――だが、どうやら沿線には怪しげな屋敷が。そこにはライフマスクが複数かけられていて…。