ヨコハマ買い出し紀行

ヨコハマ買い出し紀行

現代より遥かに進んだテクノロジーが栄えた後、文明社会は急激に衰退しつつあった。ロボットの初瀬野アルファは海沿いでカフェアルファを営みながら、周辺の人々やほかのロボットたちとやさしくふれ合いながら時を過ごす。十数年の時間経過を通じて子供たちが成長する過程と、人類が滅亡に向かう情景がおだやかに描かれる。

正式名称
ヨコハマ買い出し紀行
ふりがな
よこはまかいだしきこう
作者
ジャンル
その他SF・ファンタジー
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概要・あらすじ

滅亡に向かう人類が「人の夜」を迎える少し前、後に「夕凪の時代」と呼ばれる束の間の平和な時代。初瀬野アルファかながわの国の西の岬で、初瀬野が残した喫茶店カフェアルファを1人で営んでいた。アルファは過去のテクノロジーが作り出した女性型のロボットだが、開発の経緯はもう忘れられている。

生活物資の供給が滞るようになっており、近隣の南町でコーヒー豆がなくなるたびスクーターで横浜まで買い出しに出かけるアルファ。ある日アルファと同じロボットの鷹津ココネが、初瀬野が送ったカメラを届けに来る。カメラはロボットに撮影時の記憶を蘇らせる特殊な仕様だった。

アルファはそれで日々の思い出をとどめていこうと決める。いっぽう海面の上昇などで人々の生活圏は年々狭まり、町が少しずつ消えていった。そうしたなかアルファと親しかった少年タカヒロは大人になり、故郷を後にする。アルファはカフェアルファにとどまりながら、人々が去っていくのを見守り続ける。

登場人物・キャラクター

初瀬野アルファ (はつせのあるふぁ)

かつて3体作られたアルファタイプロボットA7量産試作機M2(A7M2型機)の1体。外見、思考、行動は人間の若い女性とほぼ同じだが、年を取らない。周囲の人間もロボットだからと特別扱いせず、地元の暮らしに溶け込んでいる。「物心ついた」頃からオーナーこと初瀬野と西の岬のカフェ兼住宅で暮らしていた。 初瀬野が突然去った後、カフェアルファを営みながらその帰りを待ち続けている。

タカヒロ

カフェアルファの近くの一軒家でおじさんと2人で暮らししていた少年。初瀬野アルファに淡い恋心を抱く。やがて成長しておじさんの下を離れ、エンジンの都・浜松へと去っていく。しばらくして後を追ってきたマッキと結ばれ、娘サエッタをもうけた。

おじさん

カフェアルファの近くでガソリンスタンドを営む初老の男性。タカヒロと2人暮らしをする。若い時は子海石の後輩のプータローとして、しばしば行動をともにしていた。よくカフェアルファを訪れ、何かと初瀬野アルファの面倒を見る。タカヒロやマッキらが去った後、ガソリンスタンドを無人セルフ式にして野菜作りにいそしむように。

鷹津 ココネ (たかつ ここね)

A7M3型機の女性型アルファタイプロボット。ムサシノの国のアパートに住み、ムサシノ運送・世田谷支店で宅配の仕事をしていた。カメラを届けた縁で初瀬野アルファと親しくなり、好意を抱くように。いっぽうロボットが作られた経緯を知ろうと、資料を探し歩く。 やがて子海石との出会いなどから、自分たちは「人が味わういろんな感触が積み重なったもの」だと確信する。

マッキ

タカヒロの幼なじみだった少女。本名は真月。子供の頃からタカヒロに恋していた。タカヒロが去った後、カフェアルファの手伝いを経てムサシノ運送に就職。5年勤めた後、浜松のタカヒロのところへ転がり込む。

ミサゴ

小網代の入り江に出没する正体不明の存在。外見は全裸の女性だが、口に牙があって言葉を話さず、人間離れした身体能力を持つ。子供が好きで、大人の前には姿を現さない。タカヒロ、アヤセ、マッキらは、幼い頃にミサゴと出会ったことが後に忘れがたい思い出となる。タカヒロとマッキの娘サエッタも、里帰りの際に出会った。 マッキはミサゴもロボットではないかと考えるが、アヤセは否定する。

初瀬野 (はつせの)

初瀬野アルファが自分のオーナーと呼ぶ人物。劇中には直接登場しない。西の岬に立つ住宅の一角を喫茶店に改造し、アルファと暮らす。物語序盤時点から数年前、アルファに店を預けて姿を消した。鷹津ココネが届けたカメラとともに、「しばらくは帰らないと思う。だから気にせずに外へ出てまわりを見て歩くことをすすめる」とのメッセージをアルファに伝える。

子海石 (こうみいし)

カフェアルファの近くに小さな病院を構える初老の女医。おじさんの元先輩。大学の医学部職員だったが、ロボット開発とつながりの深い飛行艇開発にも携わったことがある。子海石が操縦した試験機はミサゴと命名されていた。「アルファタイプの歴史のほんとの最初の所にちょっとだけいた」と語るが、ロボット開発の全貌は子海石も知らない。 初瀬野アルファの暮らしぶりを見て「本来のスペックからは想像できない」と驚いた。

丸子 マルコ (まるこ まるこ)

初瀬野アルファ、鷹津ココネらと同じ女性型アルファタイプロボットの1体。ムサシノの国の田園調布のアトリエ丸子で、絵を描いていた。アルファのようにオーナーの姓を名乗ることを嫌い、自分で丸子マルコと名乗るように。メッセージ配達に来たココネを気に入り、仲良くなる。 ナイとも知り合いだった。ココネ、ナイが好意を抱くアルファに嫉妬するが、後に仲良くなる。文具・画材卸店での配達、イラストのバイトなどを経た後、コーヒー豆を扱う横浜の商店に就職。

アルファー室長 (あるふぁーしつちょう)

ターポンに乗っている女性型アルファタイプロボット。地上の島で生まれ、自分の弟や妹がたくさん作られたと述懐する。地上の町の明かりが消えて街灯の木の青い灯に変わっていく様子を、ターポンから見守る人物。地上の明かりが全て青い灯となった時、降下ボートで地上に降りようかと考えている。

アヤセ

トビカマスと呼ばれるトビウオのような生物を使って魚を獲る。マッキとトビカマスの相性がいいのを見て弟子にならないかと勧誘した。

ナイ

男性型ロボット。プロペラ小型機「あつぎ2号」のパイロット。丸子マルコの知り合い。男性型ロボットは弱く、早いうちにみんな死んだと語る。後にタカヒロと知り合いに。

子海石アルファ (こうみいしあるふぁ)

A7M1型機。劇中には登場しない。かつて子海石と暮らした女性型ロボット。子海石によれば「鷹津ココネさん達の直系のお姉さん」にあたる。最初はまばたきくらいしかできなかった。服を着るのを嫌い、青い物を好む。子海石の元から連れて行かれ、その後の消息は不明に。

場所

カフェアルファ

『ヨコハマ買い出し紀行』に登場する喫茶店。昔の米軍住宅風の白ペンキの家を喫茶店に改造した。客はたまにしか来ない。台風で店舗部分が壊れるが、初瀬野アルファは1年の旅の後に少しずつ手作業で修復した。だが海面の上昇でほどなく水没する運命にある。

かながわの国 (かながわのくに)

『ヨコハマ買い出し紀行』に登場する国。初瀬野アルファ、おじさん、タカヒロ、マッキ、子海石らが暮らしていた。現代の神奈川県周辺。一部の町以外は野原に覆われ、人の多い浜松に比べて閑散としている。かつての相模平野が水没して湖になった湘南湖がある。

その他キーワード

ターポン

『ヨコハマ買い出し紀行』に登場する巨大な人工の飛行物体。地上で起こった何らかの異変で着陸できなくなり、果てしなく高々度軌道を回り続ける。地上の人々は、まだなかに人が閉じ込められていると話していた。掃除のおばさん、気象部二局長などターポン上の人間も登場するが、いずれみな年老いてアルファー室長が1人残される運命。 6年ごとに飛行する軌道が変わる。

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