ちひろ

ちひろ

安田弘之の代表作の1つ。1人の売れっ子風俗嬢の日常と、その生き様を描いた1話完結の連作短編形式で描かれる人間ドラマ。講談社「モーニングマグナム増刊」No.8からNo.20、同社「イブニング」2001年1-B号に掲載された作品で、コミックス刊行にあたり、描き下ろしのエピソードも収録されている。続編に『ちひろさん』がある。

正式名称
ちひろ
ふりがな
ちひろ
作者
ジャンル
ヒューマンドラマ
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概要・あらすじ

ファッションヘルス「ぷちブル」のちひろは売れっ子の風俗嬢。真面目を絵に描いたような中年男性も、「この笑顔にはそれだけの値打ちがある」と束の間の休息を求め、彼女のもとに足しげく訪れるほど。そんなちひろは、深夜に行きつけの漫画喫茶で漫画に熱中し、男性客の注目の的になっていた。常連客たちは、ちひろがいつも朝までいること、そしてその外見から、飲み屋のお姉さんかと思っていた。

ところが、いざ話してみると、当のちひろは「風俗嬢です」と悪びれずに答え、周りをたじろがせるのだった。

登場人物・キャラクター

ちひろ

ファッションヘルス「ぷちブル」のNo.1風俗嬢。ふわっとした柔らかな印象だが、仕事に対しては自分なりの哲学を持ち、ヌルい手抜きはしない主義。幸せを感じるとすべて破壊したくなる癖があり、のちに「ぷちブル」を辞めて夜の街を渡り歩くことになる。本名は「綾」だが、本人は「ちひろ」と名乗って生きている。

「ぷちブル」の店長 (ぷちぶるのてんちょう)

ファッションヘルス「ぷちブル」の店長を務める中年男性。少々あまのじゃくなところがあり、店の利益ばかり追求する守銭奴。店の風俗嬢たちには良き理解者と見られている。一方で、「ぷちブル」の店長自身は、「どんなにいい子でも辞める時は突然裏切る」ということを身をもって知っており、店の風俗嬢とは一線を引くようにしている。

浜口 (はまぐち)

ファッションヘルス「ぷちブル」の店員で、長髪の若い男性。店頭の掃除ついでにナンパするなど、非常にチャラくノリも軽い。意外に責任感が強く、亀倉直人が店を辞めた時には過労死寸前まで働く。アニマル浜口にちなんで、ちひろに「アニマル」と呼ばれている。

レイカ

ファッションヘルス「ぷちブル」のNo.2風俗嬢で、セクシーな女性。客の質を見抜いて、本気と手抜きのメリハリをつけるのがプロだ、という持論を有する。他の女に負けたくないという意識が強く、濃厚なサービスを好む客に人気が高い。

亀倉 直人 (かめ)

ファッションヘルス「ぷちブル」の27歳の男性店員。W大学中退後、職を転々としてきた。パッとしない見た目のダメ男。人生を変えるため、昔からの夢であったケーキ職人になるべく店を辞めたい、とちひろに相談する。

はるか

19歳の風俗嬢。ピンクサロン「ポリフェノール」に転職したちひろと、同時期に入った。経験が浅いため、素人っぽくぎこちないところが客に受けていた。憧れのちひろに少しでも近づきたいと、髪を染めて「風俗嬢」っぽいメイクでイメチェンを図る。

エリナ

ピンクサロン「ポリフェノール」で働く若い風俗嬢。ボブカットでキツネ顔が特徴。ブリブリ(ぶりっこ)の達人で、プロ意識はあるものの仕事にやりがいは求めていない。ちひろに対抗意識を持って野次を飛ばすことが多いが、そのおかげで店に活気が出ている。

秀美 (ひでみ)

「第1話」に登場する。人相の悪い若い女性で、ちひろの同業者。ちひろから80万円借り、自分の男には、体を張って稼いだ金だといって、50万円だけ渡す抜け目のない性格。オヤジがシケモクを吸うような手つきでタバコを吸う、ちひろの仕草を不思議に思っている。

大谷 征一 (おおたに せいいち)

「第2話」に登場する。漫画喫茶でちひろと知り合った男性。ファッションヘルス「ぷちブル」の客となる。ちひろに花をプレゼントした純情なサラリーマン。ちひろに思い入れるあまり、その素顔を確かめようと、店の外で待ち伏せする。

チカ

「第3話」に登場する。ファッションヘルス「ぷちブル」に新たに入った風俗嬢。巨乳と若さを武器に、一気に売り上げNo.1の座に上り詰める。負けん気が強く、注意するとふてくされるタイプ。常識からしつけ直す必要があると、「ぷちブル」の店長を悩ませている。

桑原 (くわばら)

「第4話」に登場する。ファッションヘルス「ぷちブル」の常連客の男性。台風の日にも店に来る剛の者だが、実は家に居心地の悪さを感じており、可愛げのない娘の桑原美久をどう扱っていいかわからずにいる。ちひろには「お父ん」と呼ばれているため、店では「ダディ桑原」の通称で呼ばれている。

桑原 美久

「第4話」に登場する。桑原の娘でおかっぱ頭の幼い少女。ちひろとは昼間の公園で出会う。ひねた目をしており、特に父親に対しては、不愛想で可愛げがない態度を取るが、それが本心からではないことを、ちひろは見抜いている。

イっちゃん

「第5話」に登場する。ちひろの友人で、カメラが趣味のOL。いつもイヤミな物言いしかできない意地っ張りな女性。女同士に友情なんてありっこないという考え方だが、いつの間にか、ちひろといることに居心地の良さを感じている自分に気づく。

ストーカー

「第6話」に登場する。半年間ちひろのストーカーをしていた中年男性。ファッションヘルス「ぷちブル」の新人の女の子を、ストーカー行為でノイローゼにさせた。そのため、ちひろにクリスマスイブの日に呼び出され、制裁を受ける。

元カレ (もとかれ)

「第9話」に登場する。かつてちひろの恋人だった若い男性。一見イケメン風だが退屈な男。ちひろにプロポーズを断られて根に持つという粘着質なところがある。ちひろが現在風俗嬢であることを知ると、大人の余裕を醸し出しつつも、下心を上手く隠せないでいる。

文彦

「第9話」に登場する。かつてちひろの恋人だった男性。退屈しのぎにちひろに呼び出されたが、何を勘違いしたのか「安心しろ、俺が食わせてやる」と上から目線で接する、自意識過剰な男。ただし、付き合い出すと自身ではまるで働かず、その実態は口先だけのヒモである。

元同僚 (もとどうりょう)

「第9話」に登場する。ちひろのOL時代の同僚の女性2人組。ちひろの友達を自称している。しかし、ちひろが結婚したと冗談を言うと目の色を変え、風俗嬢をしていると言うと勝ち誇ったような表情になるなど、わかりやすい女性たち。

「ポリフェノール」の店長 (ぽりふぇのーるのてんちょう)

「第10話」に登場する。ピンクサロン「ポリフェノール」の店長を務める中年男性。サングラスにパンチパーマという出で立ちで、ガラが悪く口も悪い。ちひろが要領よく仕事をこなすようになると、態度をガラリと変える調子のいい性格。

マイホームパパ

「第13話」に登場する。水族館に家族で遊びに来ていた子連れの若い父親。巨大水槽の前でずっと魚を見ているちひろに見惚れ、会釈されると舞い上がってデレデレしてしまう平々凡々な男性。その姿を妻に見つかり、蹴りを入れられる。

「マンディ」の客 (まんでぃのきゃく)

「第14話」に登場する。ファッションヘルス店「マンディ」の客。「マンディ」は、ピンクサロン「ポリフェノール」を辞めたちひろが、新しく入った店。苦み走った危うい雰囲気の中年男性。ちひろの古いアンティーク時計を直し、成り行きで付き合うことになる。

おばちゃん

派手な格好をした中年女性。子供時代のちひろが家出をした際、何も聞かず外で一緒にいてくれた心優しい人物。初めてちひろに安心感を与えてくれた大人。オヤジがシケモクを吸うようなタバコの吸い方をする。別れ際「ちひろ」と名乗り、これらが現在のちひろに大きな影響を与えている。

場所

ぷちブル

ちひろが働くファッションヘルス店。サービスは指名料込みで50分1万6000円。ナースやOLなどのコスチュームが用意されている。風俗としては給料や設備が良く、「ぷちブル」の店長は「ウチよりいい店はない」と豪語している。浜口と亀倉直人が従業員として働いている。

ポリフェノール

ファッションヘルス店「ぷちブル」を辞めたちひろが働くことになったピンクサロン。若いブリブリの素人が受ける店であり、当初はちひろの繊細なテクニックが通用しなかった。これにより「ポリフェノール」の店長も容赦なく圧力をかけていたが、ちひろが自称「手抜きワンパターン」に徹したことで、人気は上位安定した。

続編

ちひろさん

安田弘之の代表作の1つで、『ちひろ』の続編。海辺の弁当屋で働く元風俗嬢と、彼女を取り巻く人々との人間ドラマが、一話完結の連作短編形式で描かれる。秋田書店「エレガンスイブ」2013年7月号から連載。20... 関連ページ:ちひろさん

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