ちひろさん

ちひろさん

安田弘之の代表作の1つで、『ちひろ』の続編。海辺の弁当屋で働く元風俗嬢と、彼女を取り巻く人々との人間ドラマが、一話完結の連作短編形式で描かれる。秋田書店「エレガンスイブ」2013年7月号から連載。2018年9月号で第1部完結。2023年2月23日実写映画化。

正式名称
ちひろさん
ふりがな
ちひろさん
作者
ジャンル
ヒューマンドラマ
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あらすじ

第1巻

海辺の弁当屋「のこのこ弁当」で働き始めたちひろは、瞬く間に町の人気者になる。「元風俗嬢でした」というちひろのあいさつに、町の人達の反応はさまざまで、ちひろは彼らが思わず見せる素顔を楽しんでいた。ある日、ちひろはこの町に流れて来た浮浪者の何ともいえない雰囲気に癒され、彼を師匠と呼んで慕うようになる。桜の季節となり、弁当を手に師匠を探していたちひろは、冷たくなった師匠を発見する。(第1話「看板娘」。ほか、6エピソード収録)

第2巻

潮干狩りに行く途中、ちひろは電車に飛び込もうとしていた若いサラリーマンを制する。ほかの自殺方法と考えろというちひろに、違和感を感じたサラリーマンは、思わずちひろのあとを追うが、ちひろから強制的に潮干狩りをするよう命じられる。ちひろの本気の潮干狩りに圧倒されつつも、サラリーマンは海を楽しみ始め、やがて心身共に癒されていく。(第12話「潮干狩り」。ほか、6エピソード収録)

第3巻

源氏名入りの浴衣を着たちひろバジルは、縁日で異彩を放っていた。二人は童心に戻って縁日を楽しんでいたが、ふと新しい人生を歩ませてくれた「ちひろ」という名に思いを馳せる。すると、当時のちひろを誰よりも知る人物で、風俗店の店長が目の前に現れる。金魚すくいの店を出していた店長は、ちひろとの再会を喜び、バジルはそんな二人の姿を見て、男女の仲だったのかと訝しむ。(第15話「縁日」。ほか、6エピソード収録)

第4巻

店長に恋をしたバジルは、彼の「内海観賞魚店」を手伝うようになる。店長は裏の世界に飽き、風俗店から足を洗ったという事だったが、当時店で働いていた風俗嬢の写真をアルバムにして大事に持っていた。ちひろはその風俗嬢の中でも、一番摑みどころがなく変わっていたという。それを聞いたバジルは、ちひろに誰かに恋をした事はないのかと問いかけると、ちひろは散々迷走した挙句、恋愛では酔っ払えない体質だと気づいたと言い放つ。(第25話「非恋愛体質」。ほか、6エピソード収録)

第5巻

のこのこ弁当」の開店以来からの常連の福森は、典型的な良妻賢母だった。一方、娘の福森祥子は口下手で、人となにを話していいのかわからないという、おとなしい性格の女の子。ある日、祥子は母親から、話し上手なちひろに会ってみるよう勧められる。ちひろの接客する様子を見た祥子は、自分が人を怖がり過ぎていたのだと気づく。そんな祥子に、ちひろは祥子の母親がいい人だからだと前置きし、できすぎた母親は自分の最も苦手なタイプだと、臆面もなく言うのだった。(第29話「口下手さん」。ほか、6エピソード収録)

第6巻

以前、お好み焼き屋で出会い、妖艶なバジルの魅力に惹かれたユキナは、横暴な彼氏のナオキをふってしまう。そしてユキナはバジルのバイト先を突き止めるが、「内海観賞魚店」は臨時休業中で、たまたまバジル達に会いに来ていたちひろと出会う。ちひろから、それは恋だと言われたユキナは、ちひろの仲介であこがれのバジルと交流を持つようになる。(第37話「ユキナ」。ほか、6エピソード収録)

第7巻

ちひろは、今日から「ちひろ」ではなく「綾」になると宣言する。生まれ変わった綾の父親は店長、母親は尾藤多恵、娘は瀬尾久仁子宇部などと、自分勝手な家族構成を決めていく。綾になったちひろは居酒屋へ行き、以前のちひろとはひと味違った行動で、綾としての初日を終える。ちひろは、人は何度でも生まれ変われるという信念のもと、綾という人生を楽しむ事にしたのだ。(第45話「そして綾になる」。ほか、6エピソード収録)

第8巻

ちひろはここ最近、姿を見せない野良猫のマダムが気掛かりで仕方なかった。とにかく無事にいてくれる事を祈るちひろだったが、そんなちひろを心配する瀬尾久仁子宇部は冷たくなったマダムを見つけてしまう。二人はちひろに黙っておくべきか逡巡するが、隠しておくべきではないと、ちひろに事実を伝えるのだった。(第52話「最愛の女(ヒト)」。ほか、6エピソード収録)

第9巻

ちひろは愛妻家で有名な教師の田巻を立ち飲み屋で見かけ、声を掛ける。妻に小さな噓をついて息抜きしているところを見られた田巻はしきりに反省するが、ちひろは人にも魚にもいざという時に身を隠せる「土管」が必要だと彼を元気づける。ちひろは、弱音も愚痴も吐かない田巻がいつかポッキリ折れてしまうのではないかと、心配していたのだ。(第57話「土管の話」。ほか、5エピソード収録)

実写映画

2023年実写映画化。2月23日より劇場およびNetflixで公開。監督は今泉力哉。主人公のちひろを有村架純が演じる。

登場人物・キャラクター

ちひろ

海辺の弁当屋「のこのこ弁当」で働く30代の女性で、元売れっ子風俗嬢。履歴書には本名の「古澤綾」を使っていたが、日常は自分を変えてくれた風俗嬢時代の源氏名「ちひろ」と名乗っている。クールな一匹狼タイプのように見えるが、懐いた人の前では無邪気になり、どこか捉えどころがないところもある。本気で怒ると徹底的にやり返す性格で、固定観念を押し付けられるのを嫌う。

尾藤 (びとう)

海辺の弁当屋「のこのこ弁当」の店長を務める中年男性。尾藤多恵の夫。顔はいかついが、優しく穏やかな性格で、ちひろのことを気に入っている。ふっと肩の力が抜けるような仕事とそういう弁当があってもいいと考え、「のこのこ弁当」を始めた。

永井 (ながい)

海辺の弁当屋「のこのこ弁当」の従業員の高齢女性。梅干しと漬物の名人。何かと上から目線でものを言う性質で、仲良くなればなるほど言葉がキツくなっていく。息子の嫁である永井初音がのびのび生活できるよう、家では気を遣っている。

篠原 (しのはら)

海辺の弁当屋「のこのこ弁当」の従業員の中年女性。ぽっちゃりした外見どおり穏やかでおっとりした性格だが、うわさ好きなところがあり、職場の飲み会の席が大好き。当初はちひろについて、「男のあしらいが板についている」と否定的な印象を持っていた。

師匠 (ししょう)

「第1話」に登場する。ちひろの住む海辺の町に流れて来た浮浪者の男性。ちひろが部屋に招いたことから親しくなる。寡黙だがこじんまりとした可愛らしい風貌と雰囲気が、ちひろのツボにはまっている。飲んだ後でも、夜の徘徊は欠かさない。

瀬尾 久仁子 (せお くにこ)

「第2話」に登場する。大潮南高校に通う女子高校生。眼鏡をかけている。自分の感情に無意識に蓋をし、学生生活を満喫していると思い込んでいる。ある日、足で鉄棒にぶら下がっているちひろを目撃して以来、彼女の存在が気になって仕方がなくなってしまう。ちひろとの交流の中で、まるで「家族ごっこ」をしているような自分の家族に嫌悪感を抱いていた事に気づかされる。友人やちひろには「オカジ」と呼ばれている。佐竹マコト、宇部とはちひろを通じて親交を深めていく。

常連のOL (じょうれんのおーえる)

「第2話」他に登場する。海辺の弁当屋「のこのこ弁当」の常連のOL2人組で、名前は土井(どい)と武上(たけがみ)。「リア充」とは彼氏を持つことや結婚することだと信じて疑わず、彼氏のいないちひろを合コンに誘う。女子力が高いつもりで何かとちひろの生活に口を出す割には、男の攻め方をまったくわかっておらず、自分たちは結婚できずにいる。

佐竹 マコト (さたけ まこと)

「第3話」他に登場する。シングルマザーの家庭に育つ男子小学生。春山公園の近くで不気味な事件が起こると聞き、独自で調査にいったちひろともみ合いになった。その後、ちひろに本気で怒られたことで、日頃の生活態度を改める。瀬尾久仁子には「ハゲ」と呼ばれている。

すず

「第5話」に登場する。ちひろが以前働いていた風俗店「ぷちブル」の後輩の女性。ちひろには世話になった恩義を感じており、恩返しのつもりで自分が考案したビジネスに誘う。自信がなくていつも焦っているが、ある酒量を超えると途端に面白くなるところだけはちひろに気に入られている。

瀬尾 (せお)

「第6話」他に登場する。瀬尾久仁子の父親。幸せを絵に描いたような家族を理想としており、それを崩さないよう家族に無言の圧力をかけている中年男性。家族行事を優先しようとしない者に対しては激しく暴力的になる。

バジル

「第7話」他に登場する。ちひろの6年来の友人でパブのシンガー。無口で物静かなニューハーフで、いつも野良猫のようにふらりとちひろを訪ねて来る。ロクな男が寄って来ず今まで男運がなかったが、店長とスローでピュアな恋愛を始めることになる。

クレーマー

「第8話」に登場する。海辺の弁当屋「のこのこ弁当」に異物が混入していたとクレームを入れてきた、メガネをかけた男性。ちひろがビシッと対応すると、今度はネット上で嫌がらせをしてくる陰湿な性格。これがちひろの怒りを買い、家を探し当てられ待ち伏せされることとなる。

おばさん

「第9話」に登場する。ちひろに自転車でぶつかってしまった貧相な中年女性。高圧的な夫が営む中華料理店を手伝っている。自己評価が低く何かにつけペコペコ頭を下げるので、「誰にでもとりあえず頭下げときゃいいと思ってるんでしょ」とちひろに激怒される。

大将 (たいしょう)

「第11話」に登場する。居酒屋「野呂」の大将。不愛想で偏屈な初老の男性だが料理は上手く、「野呂」は笑顔と活気あふれる店が苦手なちひろのお気に入りとなっている。現在は客足が遠のくばかりの経営状態にあり、やる気をなくしている。

若いサラリーマン (わかいさらりーまん)

「第12話」に登場する。電車に飛び込もうとした若いサラリーマン。ちひろに「電車を止めるな」と首元を引っ張られて止められ、成り行きで一緒に潮干狩りに行くことになる。内気で思い詰めるタイプだが、どこか説得力のあるちひろには心を開く。

尾藤 多恵 (びとう たえ)

「第13話」「第18話」他に登場する。海辺の弁当屋「のこのこ弁当」の店長である尾藤の妻。尾藤多恵が店番をしながら雨を楽しんでいたところ、当時まだ客だったちひろがその姿を見て魅了され、交流を持つようになる。ちひろは親しみを込めて「タエちゃん」と呼んでいる。

店長 (てんちょう)

「第15話」に登場する。ちひろが以前働いていたファッションヘルス「ぷちブル」で店長を務めていた中年の男性。ちひろのよき理解者で、現在は金魚・熱帯魚の店「内海観賞魚店」の店長を務めている。縁日で金魚すくいの店を出していた時に、ちひろと偶然再会する。強面で口は悪いが人間味のある人物で、バジルとはいい関係を築いている。海辺の弁当屋「のこのこ弁当」の店長である尾藤と比較して、「悪い方の店長」と呼ばれる事もある。のちに、名字が「内海」だと明らかになる。前妻とのあいだには、広樹という息子と、娘がいる。

スナックのママ

「第16話」に登場する。スナック「紫乃」のママ。50代のバツ3女性で、常連客には「女の道のプロ」と言われている。女の幸せは「恋をすること」だと言い切り、「1人が気楽で好きだ」というちひろを強がっていると決めつける不躾なところがある。

マダム

「第16話」他に登場する。ちひろが立派なレディーと認め、敬意を払っている野良猫。眼光一発でカラスを追い払う強者。ツンデレでもあり、何も押しつけずに、ただいるだけで説得力のあるその姿は、ちひろに憧れられている。

谷口 (たにぐち)

「第17話」他に登場する。解体現場の作業員の若い男性。スキンヘッドでメガネをかけ、人を寄せ付けない雰囲気を漂わせている。佐竹マコトの遊び相手をしてやったことがきっかけとなりちひろと知り合う。ぶっきらぼうだが、実は照れ屋。

赤字堂の主人 (あかじどうのしゅじん)

「第19話」他に登場する。ちひろが時計の修理を頼む道具屋「赤字堂」の主人である中年男性。メガネをかけ、帽子からはみ出たもじゃ毛が特徴。のんびりと気楽に生活しているように見えるが、腕には入れ墨を入れている。

宇部 (うべ)

「第21話」に登場する。大潮南高校に通う女子高校生。小太りの体型で丸い眼鏡をかけており、ややひきこもり気味。野良猫のマダムに懐かれており、その姿を見たちひろの計らいで、瀬尾久仁子と心を割って話せる友人となる。アニメ好きで酒が強い。久仁子には「べっちん」と呼ばれている。

古河 (ふるかわ)

「第22話」に登場する。小学生の女の子。佐竹マコトの同級生。いつも挨拶がわりにランドセルをマコトに叩かれているが、マコトに淡い好意を寄せている。健気で優しい性格で、何でもギリギリまで我慢してしまうところがある。のちに、迷子になっていたパグ犬のリュウを山路の家に届ける際に、ちひろに付き添いを頼んだ事で、誰にも言えない秘密の隠し事を持つようになる。その時に本名が「古河まゆ」だと明らかになる。

佐竹マコトの母 (さたけまことのはは)

「第22話」に登場する。佐竹マコトの母親で、働くシングルマザーの女性。化粧が濃く、派手な恰好をしている。マコトがちひろに弁当をもらっていることを聞き、屈辱的な想いを晴らしに海辺の弁当屋「のこのこ弁当」に乗り込んでくる礼儀知らずな人物。

永井 初音 (ながい はつね)

「第24話」他に登場する。永井の息子の嫁。義母の永井がぎっくり腰になった際、ピンチヒッターとして海辺の弁当屋「のこのこ弁当」のパートを務めることになる。料理好きでパートの仕事もそつなくこなしている。

前田 鮎美 (まえだ あゆみ)

「第25話」に登場する。海辺の弁当屋「のこのこ弁当」の常連客のOL。食品サンプル収集が趣味で、高校時代は、嫌なことがあるとトイレにこもり、エビフライのサンプルを眺めて触っていた一風変わった女性。ちひろに食品サンプル店がある場所を教える。「のこのこ弁当」での通称は「前田のあっちゃん」。

福森 (ふくもり)

「第29話」に登場する。海辺の弁当屋「のこのこ弁当」の開店以来の常連客である中年女性。口うるさい旦那が仕事で不在の日は、必ず弁当を買いにやって来る。いつもにこにことして品が良く、他人の悪口を絶対言わない良妻賢母タイプ。

福森 祥子 (ふくもり しょうこ)

「第29話」に登場する。福森の娘である若い女性。人と話すのが苦手なタイプ。なまじ母親がいい人なばかりに、人を傷つけることを極度に恐れている。自分のことは二の次で、何より家族を優先する母親を尊敬している。

小さなお猿さん (ちいさなおさるさん)

「第32話」に登場する。ちひろが隠れ家にしようと忍び込んだ空き家状態の食堂にいた少女。大人に飼いならされないよう必死で、いつもしかめっ面をしている。親愛の情を込めてちひろに「小さなお猿さん」と心の中で呼ばれている。

桜木 浩次 (さくらぎ こうじ)

「第33話」に登場する。バー「Trench」の店長。適度なさり気なさで客を居心地良くする達人。前歯が一本ないが「顔を覚えてもらいやすいから」とわざとそのままにしている、ほどよいユルさの持ち主でもある。ちひろが風俗店を転々としていた頃に知り合った。

ユキナ

「第34話」に登場する。美形な女子高校生。ナオキの彼女。お好み焼き屋「大穴」でナオキを目で誘惑して来たバジルに食ってかかるが、「あんな安い男捨てちゃいなさい」と耳打ちされた瞬間、バジルに恋をしてしまう。根は素直な少女で、偶然出会ったちひろにバジルへの気持ちを相談した。ちひろの後押しもあり、「内海観賞魚店」に出入りし、バジルや店長と親交を深めていく。その際、「小泉雪菜」という本名が明らかになる。

ナオキ

「第34話」他に登場する。ユキナと付き合っている男子高校生。横暴で、いつもユキナに偉そうに指図する。浮気性で「オレと付き合いたい女はたくさんいる」と自惚れている。

青池 沙樹 (あおいけ さき)

「第35話」に登場する。ちひろが沖縄で出会った若い女性で、ひょんなことから一緒にドライブすることになる。小学校の熱血教師だったが何かトラブルを抱えており、疲れ切った顔をしている。

山姥姉妹 (やまんばしまい)

「第41話」に登場する。甘味処「山姥」を営む高齢の姉妹。地元に愛されている甘味処で、作っているのが妹のみずえ、運んでいるのが姉のよしの。双子のようにそっくりな容姿で性格もユーモラスだが、どちらも頑固なことから、大喧嘩の末半年間店を開けなかったことがある。

寺尾 (てらお)

「第53話」に登場する。ちひろの風俗嬢時代のお得意様であった中年の男性。四角い眼鏡をかけたサラリーマンで、風俗嬢たちに必ず花札遊びを持ち掛けていた。花札には日本の美意識が込められているという自らの考えにちひろが理解を示した事から、彼女に「コイコイ」の遊び方を教えた。博識の話好きで、ちひろや店長たちから「コイコイさん」「花札おじさん」と呼ばれている。

大宮 (おおみや)

「第57話」に登場する。「のこのこ弁当」の常連の老婆。おかっぱで丸い大きな眼鏡をかけている。旦那の愚痴をこぼす常連仲間にうなずきながら、大宮自身は40歳を過ぎたくらいから何一つ旦那に期待していないので、不満はないと平然と言ってのけ、ちひろに愚痴を言わない人の方が怖いと感じさせてしまう。

田巻 (たまき)

「第57話」に登場する。瀬尾久仁子が通う大潮南高校で教師を務める若い男性。穏やかな性格の愛妻家で、「のこのこ弁当」の常連でもある。仕事で遅くなると妻に連絡し、立ち飲み屋で一杯飲んでいるところをちひろから声を掛けられる。いつかポキッと心折れるタイプだと、ちひろから心配されている。男子生徒からは「タマキン」と呼ばれている。

山路 (やまじ)

「第47話」に登場する。一軒家で一人暮らしをしている高齢の男性。丸いサングラスをかけ、髪やヒゲが伸び放題で、一見して非常に不気味な人物。かわいがっているパグ犬のリュウが迷子になり、リュウを見つけた古河の付き添いとして山路の家を訪れたちひろと知り合う。町役場で定年まで勤め上げたまじめな人物だったが、妻が亡くなってから様子がおかしくなった。いい人をやめてからの人生を謳歌し、不良老人を楽しんでいる。ちひろとはシンパシーを感じ合い、親交を深める。

瑞穂

「第61話」に登場する。就活中の女子学生。髪を一つにまとめ、ずんぐりとした体形をしている。どうすれば人に嫌われないかと、人の顔色ばかりをうかがいながら生きている。就活中に水族館を訪れ、タコの水槽に張り付いているところをちひろに気に入られ、声を掛けられる。

ノブ

「第51話」に登場する。自家製の燻製を出す飲み屋「煙堂」を切り盛りする青年。角刈りで目が細く、顎がない。燻製に関してはなんでも知っており、道具まで自分で作っている。尾藤の行きつけの店で、彼の燻製の師匠でもある。恋愛には奥手で、尾藤が連れてきたちひろを見て頬を赤らめる。

広樹 (ひろき)

「第59話」に登場する。「内海観賞魚店」にふらっと現れた若い男性。濃い顔立ちで、肩まで伸ばした長い髪をしている。店番をしているバジルを口説こうとしたものの、いつしか打ち解け、自分の父親が会社から帰ってくると水槽を見ながら一人晩酌していた思い出を語り始める。のちに店長の息子だと判明。

古澤 秀美 (ふるさわ ひでみ)

「第18話」に登場する。ちひろこと古澤綾と圭介の母親。夫は古澤辰巳。ちひろとはわかり合えない親子関係だったため、古澤秀美の訃報を知った時も、ちひろには悲しみの感情が湧いてこなかった。ドングリを拾ってきた幼い自分に対して、食べられないし荷物になるから捨てなさいと言うような情緒のない人だと、ちひろに評されている。

池ちゃん (いけちゃん)

「第43話」に登場する。「のこのこ弁当」の常連で中年の男性。頭頂部がツルッパゲで鼻が上を向いている。ちひろが綾になる宣言をして以降、ちひろはちひろなのか綾なのか、ずっと疑問に思っているが、池ちゃん自身はちひろを「ちぃちゃん」と呼んでいる。汚くて狭いがおいしいやきとん屋へちひろを連れて行く事になったが、池ちゃんが絶賛するその味は至ってふつう。能天気でのほほんとした性格をしている。

テル

「第44話」「第45話」に登場する。居酒屋「亀之湯」で飲んでいた中年の男性。目が離れており、大きなわし鼻が特徴。職業は漁師で大柄の体形をしている。結婚しない女が増えた事で世の中をダメにしていると、ちひろに説教をするが、反対にちひろに恫喝(どうかつ)される。ちひろが「綾」に生まれ変わった初日に、「亀之湯」でいっしょに飲んで手懐けられた。

ゆり

「第62話」に登場する。「のこのこ弁当」に新しく入ったパートの若い女性。一か月前まで「のこのこ弁当」の常連だった。永井からは、少しトロいが素直でまじめな性格で、ちひろのようにひねくれていないと評されている。

場所

のこのこ弁当 (のこのこべんとう)

ちひろが働く海辺の町の小さな弁当屋。シーズンには店長の尾藤自らが獲って来た山菜を使うなど、普通の弁当屋と一味違う料理が魅力。店名の由来は「急がない亀のような、ふっと肩の力が抜けるような」そういう仕事とそういう弁当を出したいと尾藤が考えたことから。妻の尾藤多恵が倒れたことから、アルバイトを募集し、ちひろを採用した。

前作

ちひろ

安田弘之の代表作の1つ。1人の売れっ子風俗嬢の日常と、その生き様を描いた1話完結の連作短編形式で描かれる人間ドラマ。講談社「モーニングマグナム増刊」No.8からNo.20、同社「イブニング」2001年... 関連ページ:ちひろ

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