ちひろさん

海辺の弁当屋で働く元風俗嬢と、彼女を取り巻く人々との人間ドラマが、一話完結の連作短編形式で描かれる。「エレガンスイブ」2013年7月号から連載の作品。安田弘之の代表作の1つで、『ちひろ』の続編となる。

あらすじ

第1巻

海辺の弁当屋「のこのこ弁当」で働き始めたちひろは、瞬く間に町の人気者になる。「元風俗嬢でした」というちひろのあいさつに、町の人達の反応はさまざまで、ちひろは彼らが思わず見せる素顔を楽しんでいた。ある日、ちひろはこの町に流れて来た浮浪者の何ともいえない雰囲気に癒され、彼を師匠と呼んで慕うようになる。桜の季節となり、弁当を手に師匠を探していたちひろは、冷たくなった師匠を発見する。(第1話「看板娘」。ほか、6エピソード収録)

第2巻

潮干狩りに行く途中、ちひろは電車に飛び込もうとしていた若いサラリーマンを制する。ほかの自殺方法と考えろというちひろに、違和感を感じたサラリーマンは、思わずちひろのあとを追うが、ちひろから強制的に潮干狩りをするよう命じられる。ちひろの本気の潮干狩りに圧倒されつつも、サラリーマンは海を楽しみ始め、やがて心身共に癒されていく。(第12話「潮干狩り」。ほか、6エピソード収録)

第3巻

源氏名入りの浴衣を着たちひろバジルは、縁日で異彩を放っていた。二人は童心に戻って縁日を楽しんでいたが、ふと新しい人生を歩ませてくれた「ちひろ」という名に思いを馳せる。すると、当時のちひろを誰よりも知る人物で、風俗店の店長が目の前に現れる。金魚すくいの店を出していた店長は、ちひろとの再会を喜び、バジルはそんな二人の姿を見て、男女の仲だったのかと訝しむ。(第15話「縁日」。ほか、6エピソード収録)

第4巻

店長に恋をしたバジルは、彼の「内海観賞魚店」を手伝うようになる。店長は裏の世界に飽き、風俗店から足を洗ったという事だったが、当時店で働いていた風俗嬢の写真をアルバムにして大事に持っていた。ちひろはその風俗嬢の中でも、一番摑みどころがなく変わっていたという。それを聞いたバジルは、ちひろに誰かに恋をした事はないのかと問いかけると、ちひろは散々迷走した挙句、恋愛では酔っ払えない体質だと気づいたと言い放つ。(第25話「非恋愛体質」。ほか、6エピソード収録)

第5巻

のこのこ弁当」の開店以来からの常連の福森は、典型的な良妻賢母だった。一方、娘の福森祥子は口下手で、人となにを話していいのかわからないという、おとなしい性格の女の子。ある日、祥子は母親から、話し上手なちひろに会ってみるよう勧められる。ちひろの接客する様子を見た祥子は、自分が人を怖がり過ぎていたのだと気づく。そんな祥子に、ちひろは祥子の母親がいい人だからだと前置きし、できすぎた母親は自分の最も苦手なタイプだと、臆面もなく言うのだった。(第29話「口下手さん」。ほか、6エピソード収録)

第6巻

以前、お好み焼き屋で出会い、妖艶なバジルの魅力に惹かれたユキナは、横暴な彼氏のナオキをふってしまう。そしてユキナはバジルのバイト先を突き止めるが、「内海観賞魚店」は臨時休業中で、たまたまバジル達に会いに来ていたちひろと出会う。ちひろから、それは恋だと言われたユキナは、ちひろの仲介であこがれのバジルと交流を持つようになる。(第37話「ユキナ」。ほか、6エピソード収録)

第7巻

ちひろは、今日から「ちひろ」ではなく「綾」になると宣言する。生まれ変わった綾の父親は店長、母親は尾藤多恵、娘は瀬尾久仁子宇部などと、自分勝手な家族構成を決めていく。綾になったちひろは居酒屋へ行き、以前のちひろとはひと味違った行動で、綾としての初日を終える。ちひろは、人は何度でも生まれ変われるという信念のもと、綾という人生を楽しむ事にしたのだ。(第45話「そして綾になる」。ほか、6エピソード収録)

第8巻

ちひろはここ最近、姿を見せない野良猫のマダムが気掛かりで仕方なかった。とにかく無事にいてくれる事を祈るちひろだったが、そんなちひろを心配する瀬尾久仁子宇部は冷たくなったマダムを見つけてしまう。二人はちひろに黙っておくべきか逡巡するが、隠しておくべきではないと、ちひろに事実を伝えるのだった。(第52話「最愛の女(ヒト)」。ほか、6エピソード収録)

第9巻

ちひろは愛妻家で有名な教師の田巻を立ち飲み屋で見かけ、声を掛ける。妻に小さな噓をついて息抜きしているところを見られた田巻はしきりに反省するが、ちひろは人にも魚にもいざという時に身を隠せる「土管」が必要だと彼を元気づける。ちひろは、弱音も愚痴も吐かない田巻がいつかポッキリ折れてしまうのではないかと、心配していたのだ。(第57話「土管の話」。ほか、5エピソード収録)

登場人物・キャラクター

主人公

海辺の弁当屋「のこのこ弁当」で働く30代の女性で、元売れっ子風俗嬢。履歴書には本名の「古澤綾」を使っていたが、日常は自分を変えてくれた風俗嬢時代の源氏名「ちひろ」と名乗っている。クールな一匹狼タイプの... 関連ページ:ちひろ

尾藤

海辺の弁当屋「のこのこ弁当」の店長を務める中年男性。尾藤多恵の夫。顔はいかついが、優しく穏やかな性格で、ちひろのことを気に入っている。ふっと肩の力が抜けるような仕事とそういう弁当があってもいいと考え、「のこのこ弁当」を始めた。

永井

海辺の弁当屋「のこのこ弁当」の従業員の高齢女性。梅干しと漬物の名人。何かと上から目線でものを言う性質で、仲良くなればなるほど言葉がキツくなっていく。息子の嫁である永井初音がのびのび生活できるよう、家では気を遣っている。

篠原

海辺の弁当屋「のこのこ弁当」の従業員の中年女性。ぽっちゃりした外見どおり穏やかでおっとりした性格だが、うわさ好きなところがあり、職場の飲み会の席が大好き。当初はちひろについて、「男のあしらいが板についている」と否定的な印象を持っていた。

師匠

「第1話」に登場する。ちひろの住む海辺の町に流れて来た浮浪者の男性。ちひろが部屋に招いたことから親しくなる。寡黙だがこじんまりとした可愛らしい風貌と雰囲気が、ちひろのツボにはまっている。飲んだ後でも、夜の徘徊は欠かさない。

「第2話」に登場する。大潮南高校に通う女子高校生。眼鏡をかけている。自分の感情に無意識に蓋をし、学生生活を満喫していると思い込んでいる。ある日、足で鉄棒にぶら下がっているちひろを目撃して以来、彼女の存... 関連ページ:瀬尾 久仁子

「第2話」他に登場する。海辺の弁当屋「のこのこ弁当」の常連のOL2人組で、名前は土井(どい)と武上(たけがみ)。「リア充」とは彼氏を持つことや結婚することだと信じて疑わず、彼氏のいないちひろを合コンに... 関連ページ:常連のOL

佐竹 マコト

「第3話」他に登場する。シングルマザーの家庭に育つ男子小学生。春山公園の近くで不気味な事件が起こると聞き、独自で調査にいったちひろともみ合いになった。その後、ちひろに本気で怒られたことで、日頃の生活態度を改める。瀬尾久仁子には「ハゲ」と呼ばれている。

すず

「第5話」に登場する。ちひろが以前働いていた風俗店「ぷちブル」の後輩の女性。ちひろには世話になった恩義を感じており、恩返しのつもりで自分が考案したビジネスに誘う。自信がなくていつも焦っているが、ある酒量を超えると途端に面白くなるところだけはちひろに気に入られている。

瀬尾

「第6話」他に登場する。瀬尾久仁子の父親。幸せを絵に描いたような家族を理想としており、それを崩さないよう家族に無言の圧力をかけている中年男性。家族行事を優先しようとしない者に対しては激しく暴力的になる。

バジル

「第7話」他に登場する。ちひろの6年来の友人でパブのシンガー。無口で物静かなニューハーフで、いつも野良猫のようにふらりとちひろを訪ねて来る。ロクな男が寄って来ず今まで男運がなかったが、店長とスローでピュアな恋愛を始めることになる。

クレーマー

「第8話」に登場する。海辺の弁当屋「のこのこ弁当」に異物が混入していたとクレームを入れてきた、メガネをかけた男性。ちひろがビシッと対応すると、今度はネット上で嫌がらせをしてくる陰湿な性格。これがちひろの怒りを買い、家を探し当てられ待ち伏せされることとなる。

おばさん

「第9話」に登場する。ちひろに自転車でぶつかってしまった貧相な中年女性。高圧的な夫が営む中華料理店を手伝っている。自己評価が低く何かにつけペコペコ頭を下げるので、「誰にでもとりあえず頭下げときゃいいと思ってるんでしょ」とちひろに激怒される。

大将

「第11話」に登場する。居酒屋「野呂」の大将。不愛想で偏屈な初老の男性だが料理は上手く、「野呂」は笑顔と活気あふれる店が苦手なちひろのお気に入りとなっている。現在は客足が遠のくばかりの経営状態にあり、やる気をなくしている。

若いサラリーマン

「第12話」に登場する。電車に飛び込もうとした若いサラリーマン。ちひろに「電車を止めるな」と首元を引っ張られて止められ、成り行きで一緒に潮干狩りに行くことになる。内気で思い詰めるタイプだが、どこか説得力のあるちひろには心を開く。

尾藤 多恵

「第13話」「第18話」他に登場する。海辺の弁当屋「のこのこ弁当」の店長である尾藤の妻。尾藤多恵が店番をしながら雨を楽しんでいたところ、当時まだ客だったちひろがその姿を見て魅了され、交流を持つようになる。ちひろは親しみを込めて「タエちゃん」と呼んでいる。

「第15話」に登場する。ちひろが以前働いていたファッションヘルス「ぷちブル」で店長を務めていた中年の男性。ちひろのよき理解者で、現在は金魚・熱帯魚の店「内海観賞魚店」の店長を務めている。縁日で金魚すく... 関連ページ:店長

スナックのママ

「第16話」に登場する。スナック「紫乃」のママ。50代のバツ3女性で、常連客には「女の道のプロ」と言われている。女の幸せは「恋をすること」だと言い切り、「1人が気楽で好きだ」というちひろを強がっていると決めつける不躾なところがある。

マダム

「第16話」他に登場する。ちひろが立派なレディーと認め、敬意を払っている野良猫。眼光一発でカラスを追い払う強者。ツンデレでもあり、何も押しつけずに、ただいるだけで説得力のあるその姿は、ちひろに憧れられている。

谷口

「第17話」他に登場する。解体現場の作業員の若い男性。スキンヘッドでメガネをかけ、人を寄せ付けない雰囲気を漂わせている。佐竹マコトの遊び相手をしてやったことがきっかけとなりちひろと知り合う。ぶっきらぼうだが、実は照れ屋。

赤字堂の主人

「第19話」他に登場する。ちひろが時計の修理を頼む道具屋「赤字堂」の主人である中年男性。メガネをかけ、帽子からはみ出たもじゃ毛が特徴。のんびりと気楽に生活しているように見えるが、腕には入れ墨を入れている。

宇部

「第21話」に登場する。大潮南高校に通う女子高校生。小太りの体型で丸い眼鏡をかけており、ややひきこもり気味。野良猫のマダムに懐かれており、その姿を見たちひろの計らいで、瀬尾久仁子と心を割って話せる友人となる。アニメ好きで酒が強い。久仁子には「べっちん」と呼ばれている。

「第22話」に登場する。小学生の女の子。佐竹マコトの同級生。いつも挨拶がわりにランドセルをマコトに叩かれているが、マコトに淡い好意を寄せている。健気で優しい性格で、何でもギリギリまで我慢してしまうとこ... 関連ページ:古河

佐竹マコトの母

「第22話」に登場する。佐竹マコトの母親で、働くシングルマザーの女性。化粧が濃く、派手な恰好をしている。マコトがちひろに弁当をもらっていることを聞き、屈辱的な想いを晴らしに海辺の弁当屋「のこのこ弁当」に乗り込んでくる礼儀知らずな人物。

永井 初音

「第24話」他に登場する。永井の息子の嫁。義母の永井がぎっくり腰になった際、ピンチヒッターとして海辺の弁当屋「のこのこ弁当」のパートを務めることになる。料理好きでパートの仕事もそつなくこなしている。

前田 鮎美

「第25話」に登場する。海辺の弁当屋「のこのこ弁当」の常連客のOL。食品サンプル収集が趣味で、高校時代は、嫌なことがあるとトイレにこもり、エビフライのサンプルを眺めて触っていた一風変わった女性。ちひろに食品サンプル店がある場所を教える。「のこのこ弁当」での通称は「前田のあっちゃん」。

福森

「第29話」に登場する。海辺の弁当屋「のこのこ弁当」の開店以来の常連客である中年女性。口うるさい旦那が仕事で不在の日は、必ず弁当を買いにやって来る。いつもにこにことして品が良く、他人の悪口を絶対言わない良妻賢母タイプ。

福森 祥子

「第29話」に登場する。福森の娘である若い女性。人と話すのが苦手なタイプ。なまじ母親がいい人なばかりに、人を傷つけることを極度に恐れている。自分のことは二の次で、何より家族を優先する母親を尊敬している。

小さなお猿さん

「第32話」に登場する。ちひろが隠れ家にしようと忍び込んだ空き家状態の食堂にいた少女。大人に飼いならされないよう必死で、いつもしかめっ面をしている。親愛の情を込めてちひろに「小さなお猿さん」と心の中で呼ばれている。

桜木 浩次

「第33話」に登場する。バー「Trench」の店長。適度なさり気なさで客を居心地良くする達人。前歯が一本ないが「顔を覚えてもらいやすいから」とわざとそのままにしている、ほどよいユルさの持ち主でもある。ちひろが風俗店を転々としていた頃に知り合った。

「第34話」に登場する。美形な女子高校生。ナオキの彼女。お好み焼き屋「大穴」でナオキを目で誘惑して来たバジルに食ってかかるが、「あんな安い男捨てちゃいなさい」と耳打ちされた瞬間、バジルに恋をしてしまう... 関連ページ:ユキナ

ナオキ

「第34話」他に登場する。ユキナと付き合っている男子高校生。横暴で、いつもユキナに偉そうに指図する。浮気性で「オレと付き合いたい女はたくさんいる」と自惚れている。

青池 沙樹

「第35話」に登場する。ちひろが沖縄で出会った若い女性で、ひょんなことから一緒にドライブすることになる。小学校の熱血教師だったが何かトラブルを抱えており、疲れ切った顔をしている。

山姥姉妹

「第41話」に登場する。甘味処「山姥」を営む高齢の姉妹。地元に愛されている甘味処で、作っているのが妹のみずえ、運んでいるのが姉のよしの。双子のようにそっくりな容姿で性格もユーモラスだが、どちらも頑固なことから、大喧嘩の末半年間店を開けなかったことがある。

場所

のこのこ弁当

ちひろが働く海辺の町の小さな弁当屋。シーズンには店長の尾藤自らが獲って来た山菜を使うなど、普通の弁当屋と一味違う料理が魅力。店名の由来は「急がない亀のような、ふっと肩の力が抜けるような」そういう仕事と... 関連ページ:のこのこ弁当

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