あらすじ
第1巻
相原夏未は、同じことを繰り返すぬるま湯のような日々に別れを告げるために会社を退職し、「好き」な仕事に就くことを決意した。しかし、半年が経過しても望む仕事は見つからず、無為に時を過ごしていた。蓄えも底を尽きかけていたある日、夏未が働いているコンビニに、大学時代の先輩である岩隈慎吾が来店する。久しぶりの再会を喜ぶ夏未を夕食に連れて行った慎吾は、自分が3年前から帰郷して地元で報道カメラマンをしていることを明かしたうえで、夏未に報道カメラマンにならないかと誘うのだった。その席で緊急で入った仕事の連絡を受けた慎吾は、報道カメラマンの実際の仕事ぶりを見てもらうため、夏未を現地へと連れていく。住宅が燃え盛る火災の現場で、慎吾は凄まじい火勢をものともせずにカメラを回し、深夜までひたすら編集作業に従事する。そんな慎吾の姿を見た夏未は、後日改めて慎吾へと連絡を取り、自分をアシスタントとして雇ってくれるようにお願いするのだった。(第1話。ほか、4エピソード収録)
登場人物・キャラクター
相原 夏未 (あいはら なつみ)
定職に就かず、自分探しをしている若い女性。年齢は26歳。楽観的で前向きな性格をしている。大学卒業後、ごくふつうの会社員として働いていたが、「好き」な仕事に就きたいという漠然とした夢を描いて退職する。求職活動をするも、具体的なビジョンや経験がないため、ボランティア同然のブラック企業にしか入れず、結局コンビニのアルバイトで糊口をしのいでいた。ある日、帰郷してローカルTV局で報道カメラマンをしていた大学時代の先輩の岩隈慎吾に誘われ、好奇心優先で報道カメラマンのアシスタントとして働きだす。愚痴を言いつつも少々のことではへこたれないバイタリティの持ち主で、慎吾といっしょに重い三脚を担いで地元を巡ってカメラを回していた。当初はカメラマンとしての技量が低く、さらに相原夏未自身が思い描いていた事件性のある「派手な現場」と、なんでもない日常を撮り続ける現実の現場とのギャップに苦しんでいた。慎吾のアドバイスもあり、その浮ついた考えを改め、徐々に報道カメラマンとして成長していく。
岩隈 慎吾 (いわくま しんご)
ローカルTV局で報道カメラマンをしている男性。相原夏未の大学時代の先輩。背が高く、寡黙な性格でいつもボーっとしている。大学卒業後に地元を離れて就職したが、3年前に地元に戻り報道カメラマンになった。ゼミのフィールドワークでいつも楽しそうだった夏未が報道カメラマンに向いていると考えており、会社を辞めた夏未をアシスタントにするために、彼女のもとを訪れた。感情表現が乏しく、考えていることがわかりにくいが、他者への自然な気遣いができるため、女性にモテる。仕事に対する姿勢も真摯で、どんな地味な取材であっても決して手は抜かない。日常を撮るだけの地味な取材に不満を抱く夏未に対し、実際にカメラを回すようにうながし、自らの未熟さを気づかせるなど、人を見る目と育てる才にも恵まれている。
乗田 (のりた)
ローカルTV局で報道記者をしている、眼鏡をかけた好青年。年齢は26歳。各地を取材して回り、聞いたことをもとにしてニュース原稿を作成している。非常に礼儀正しい性格で、記者にとって大事なのは「話を聞くこと」だと考えている。報道カメラマンとして、つねに真摯な仕事をする岩隈慎吾を尊敬している。柔和な口調ながら、仕事に対する姿勢は真剣そのもので、浮ついた考えで現場に接する人間には厳しい。仕事でいっしょになった相原夏未とも当初は意気投合していたが、事件性のある派手な現場を求める夏未の言動に不信感を抱き、それからは彼女を軽蔑するようになる。
宮本 (みやもと)
ローカルTV局で報道カメラマンをしている男性。必要な素材を確実に撮ってくることで定評がある、在籍20年のベテラン。いっしょに仕事をした相原夏未ですら、誰かと話している姿を見たことがないほど寡黙な性格をしている。ビデオカメラ好きが高じて業界に入った職人肌で、報道の姿勢などには特に興味がない。最高のコンディションで、要求された映像を撮ることが自分の使命だと考えている。仕事中に集中を欠いた夏未のミスで、大事なカメラを壊されてしまうが、カメラを見ていなかった自分の不注意だとして夏未を許した。
書誌情報
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