見た目で誤解されがちな不器用女子のピュアな恋愛模様
一見クールで気が強そうに見えるが実は不器用な橘千紘と、軟派に見えて実はまじめな比名瀬祥を中心とした青春群像劇。千紘は比名瀬と中学時代に最悪の出会いを果たし、二度と会いたくないと思っていたが、高校進学を機に同じクラスとなる。千紘は比名瀬のことを大嫌いなはずなのに、何かと絡んでくる彼にいつしか心惹かれていく。また、自分の感情を表に出すことが苦手な千紘が、好きな人ができたことで周囲と交流を持つようになり、さまざまな経験をとおして成長していく。
つかみどころのないイケメン男子に振り回される日々
比名瀬は千紘とは別の中学校に通っており、剣道部に所属していた。千紘は比名瀬のチャラチャラした言動に不快感を覚え、さらに顔を合わせるとすぐに絡んでくることから、最悪の印象を抱いていた。その後、比名瀬の配慮のない発言により、千紘は片思いしていた剣道部の南條冬哉に失恋。とにかく比名瀬とかかわりたくない千紘は、剣道もまじめに取り組んでいないのだろうと軽蔑していた。しかし比名瀬が引退試合に負けて、一人涙する姿を目撃し、自分が抱いていたイメージとは違うかもしれないと、思い直していた。そんな比名瀬と千紘は偶然同じ高校に入学し、同じクラスになる。以前にも増して何かと絡んでくる比名瀬とケンカばかりしていた千紘だったが、彼のまじめな一面を垣間見て、いつしか恋心を抱くようになる。そして恋愛経験に乏しい千紘は、比名瀬の思わせぶりな言動に振り回されていく。
主人公の周囲で絡まる「あかいいと」
本作は千紘と比名瀬の恋愛を中心にストーリーが展開されるが、千紘の親友・桜木莉乃や比名瀬の親友・桐谷蓮にもそれぞれスポットがあたり、それぞれの恋愛模様が綴られる。莉乃は小学生の時に、脚の傷を気持ち悪いと言われたことをきっかけに、恋愛には消極的になっていた。そんな莉乃に蓮は興味を抱き、距離を縮めていく。また、千紘の弟で中学生の裕人は莉乃に思いを寄せているが、年下だからとまったく相手にされず、彼女が蓮と親しくしていることを苦々しく思っていた。一方、千紘の初恋の相手で現在は別の高校に通う南條は、ひそかに千紘を気にしており、彼女が比名瀬と心を通じ合わせることにもどかしさを感じていた。
登場人物・キャラクター
橘 千紘 (たちばな ちひろ)
剣道部のマネージャーをしている高校1年生の女子。目つきが悪く、喜怒哀楽の感情を表に出すことが苦手なため、周囲からはいつも怒っている怖い人だと思われ、距離を置かれている。実は穏やかな優しい性格で、人付き合いが苦手なだけ。中学時代に自分を怖がらずに接してくれた剣道部の南條冬哉に片思いをしていたが、当時別の中学に通っていた比名瀬祥の心ない発言により、告白する前に失恋。高校進学後、比名瀬と偶然同じクラスになって困惑する。そして、ガサツで無神経だと思っていた比名瀬の生真面目な一面を垣間見て、異性として意識するようになる。
比名瀬 祥 (ひなせ しょう)
高校1年生の男子で、橘千紘のクラスメート。長身で整った顔立ちの美男子で、何もしなくても目立つタイプ。千紘とは当時所属していた中学の剣道大会で顔を合わせたことがあり、奇しくも彼女が当時思いを寄せていた南條冬哉に失恋するきっかけをつくった人物。チャラチャラした軽薄な性格で、高校進学後に再会した千紘からは無神経なガキと評されている。しかし責任感が強くまじめな一面もあり、剣道に対しては人一倍真剣に向き合っている。中学時代に出場した剣道大会でのトラブルがトラウマとなり、高校進学後は剣道を辞めていた。だが、千紘が剣道部のマネージャーになったことで、再び剣道に向き合うようになる。千紘を意識しており、彼女の前では思わせぶりな態度を取ることが多い。
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10万分の1 (じゅうまんぶんのいち)
宮坂香帆の代表作で、過去作の『あかいいと』と世界観および登場キャラクターを共有している。10万分の1の確率で発症する難病、ALS(筋萎縮性側索硬化症)。これに発症した女子高校生の桜木莉乃と、その恋人の... 関連ページ:10万分の1