あらすじ
男にしては小柄でかわいらしい外見の獅子原颯太は、進学した高校の始業式の日、幼なじみの水戸百合香と登校していた。校内は部活動の勧誘が盛り上がっており、クラス分けを確認するために百合香と共に移動していた颯太は、野球部員に突き飛ばされてしまう。野球部員はそのまま百合香をマネージャーとして勧誘するが、颯太はそんな野球部員に対し、人を突き飛ばしておいて謝罪の一言もないのかと穏やかにたしなめる。だが、傍若無人な野球部員は颯太のことなどまるで相手にせず、「黙ってろよチビ」と吐き捨てる。その言葉を聞いた瞬間、颯太は目にも止まらない速さで野球部員に殴り掛かり、大柄な相手をパンチ一発でのしてしまう。(第1話「シュガー&ビター」)
ゲームセンターでクラスメイトのヤンキー・龍田駿と出くわした颯太は、まるで逃げるように彼の前から姿を消してしまう。駿は中学時代、颯太のことをライバル視していたが、実際はあこがれの思いを持っていた。翌日、駿は颯太を呼び止め、以前のようにヤンキーに戻ってほしいと告げるが、元ヤンであることを周囲に知られたくない颯太は、駿を外へと連れ出す。颯太、駿、そしていっしょに付いてきた百合香と花江もかも交えた話し合いの中、颯太は駿にヤンキーに戻るつもりはないと告げるが、ちょうどその時通りがかった人に、もかがぶつかり、相手の服を汚してしまう。10倍の値段で服を弁償しろと暴言を吐く相手からもかを助けるため、駿があいだに入って相手を挑発してケンカを吹っ掛けるが、実はケンカが強くない駿は一発でやられてしまう。そんな中、倒れた駿を守るため、颯太が立ち上がる。(第11話「知らない人にはついてっちゃだめ」)
新作のフラペチーノを食するためにコーヒーショップにやって来た颯太は、渋る百合香を説き伏せて入店する。その後偶然、もかに無理やり連れられた駿も同じ店にやって来る。いち早く颯太と百合香の存在に気づいたもかは、二人の邪魔にならないように気遣うが、話している内容は聞きたいと、駿と共に少し離れた席に着くのだった。一方の颯太と百合香は、「夏に行くならどちらか」という話題で、山か海かで議論を戦わせていた。白熱する議論の中、突如颯太がもかたちの方に向き直り、意見を求めてくる。颯太も百合香も、もかたちの存在に気づいていたのである。もともと、もかたちも誘おうと思っていたという颯太の言葉に、もかが喜びを感じる中、駿はそんなに揉めるのならば両方行けばいいのではないかと、ついうっかり口にしてしまう。すると颯太と百合香は彼の提案を採用し、言い出しっぺの駿にも参加を義務付けるのだった。(第22話「甘辛どっちも強めで」)
登場人物・キャラクター
獅子原 颯太 (ししはら そうた)
とある高校の1年3組に在籍する男子。料理部に所属している。ぱっつん前髪ショートヘアのかわいらしい顔立ちで、小柄な体格をしている。料理や裁縫が得意でファッションセンスもよく、非常に女子力が高い。だが、実際は非常に負けず嫌いで煽り耐性が低いため、ケンカを売られたり、傍若無人な振る舞いをしてきたりする相手には、瞬時にキレて暴力で制圧する癖がある。小学生時代はおとなしい性格だったが、クラスメイトから刺繡の趣味をバカにされていじめを受けたことをきっかけにその暴力性が覚醒。中学時代は最強のヤンキーとして恐れられ、ヤンキー抗争地域をたった一人で一掃したという伝説を持つ。その名は今でも不良界隈に「小さき百獣の王」の異名とともに知られている。また、体力測定において背筋力や握力の測定器を壊してしまったり、20メートルシャトルランでは涼しい顔で走り続け、203回を記録したところでようやく先生に止められたりと、すさまじい身体能力を誇る。なお、幼なじみの水戸百合香の一言で自分を取り戻し、中学時代をもってヤンキーを卒業した。今ではヤンキー時代のことは獅子原颯太自身にとって黒歴史になっている。そのため、ふだんは外見に見合うよう、非力で運動神経も鈍いように装い、元ヤンであることをなるべく隠そうとしている。ただし、百合香のことを非常に大事に思っており、少しでも彼女に迷惑をかける者に対しては鉄拳制裁を辞さない。ちなみに身体面における唯一の弱点は体の硬さで、長座体前屈の記録は1センチ。また、学業の成績も壊滅的。中学時代、ヤンキーにからまれていた花江もかを助けたことがあり、高校で再会した彼女からは「ししょー」と呼ばれている。イベント前などは楽しみなあまり気分が高揚し、ついお菓子を大量に作ってしまう癖がある。実は身長が低いことに、強いコンプレックスを抱いている。
水戸 百合香 (みと ゆりか)
獅子原颯太と同じ高校の1年3組に在籍する女子。料理部に所属している。颯太とはクラスメイトにして小学生時代からの幼なじみでもある。黒髪ロングヘアでクールな顔立ちの、非常に胸が大きいスタイル抜群の美女。颯太が元ヤンだった事実を隠しておきたがっていることを尊重し、そのことが周囲にバレないように気を配っているが、颯太が煽り耐性が低くケンカっ早いため、何かと気苦労が絶えない。ちなみに水戸百合香自身も、中学時代に助っ人として全運動部を全国大会に導き、さらに個人競技ではすべて優勝を果たした実績を持つなど、颯太と張るほどの並外れた身体能力を誇る。成績もよく才色兼備だが、ファッションセンスが悪く料理の腕も壊滅的と、女子力においては颯太の足元にも及ばない。また、自分のセクシーな容姿に無頓着で、部屋はまるでジムのようにトレーニング用具が並び、料理が失敗した際にはトレーニングが足りないからだと自らにより過酷な筋トレを課したりと、体育会系が行き過ぎてどこかズレたところがある。実は小学生の頃からいじめられがちだった颯太を守ってきており、今でも保護者気質が抜けていないと同時に、彼のことを憎からず思っている。緊張して笑顔がぎこちなくなってしまうため、写真を撮られるのが苦手。
花江 もか (はなえ もか)
獅子原颯太と同じ高校の1年3組に在籍する女子で、颯太とはクラスメイト。ピンク色のウルフボブヘアで、頭からアホ毛を一房飛び出させており、語尾に「です」を付けた特徴的なしゃべり方をする。人との距離の取り方が苦手で、友達もほとんどいない。また、実は左の胸元にタトゥーを入れているが、周囲にはひた隠しにしている。中学時代、ヤンキーにからまれていたところを颯太に助けられたことがあり、以来、彼を崇拝していた。自分にとって颯太はまぶしすぎる存在と感じており、サングラスをかけたり、目を細めたりしないと彼を直視することができない。自分と同じ高校に颯太がいることを知り、しばらくはストーカーのように彼を追いかけて遠くから見ていたが、その存在を颯太にカンづかれ、交流を持つようになった。以来、颯太や水戸百合香とよく行動を共にするようになる。かわいいもの好きで、人や物を問わず、かわいいと思ったものについ抱き着いてしまう癖がある。ヤンキー然としたクラスメイトの龍田駿が、実はぬいぐるみが好きだったり、優しい性格で自分のことを女性扱いしてくれたりしたそのギャップから、彼の「かわいらしさ」に萌え、身体的接触も含め、何かとまとわりつくようになる。ただし、あくまで恋心ではないことを明言し、駿を困惑させている。ついタイミング悪くいつも半目になってしまうため、写真を撮られるのが苦手。また、おしゃれなものも苦手で、アパレルショップやコーヒーショップを「聖域」と称し、ついつい避けてしまう傾向がある。
龍田 駿 (たつた しゅん)
獅子原颯太と同じ高校の1年3組に在籍する男子で、颯太とはクラスメイト。金髪ショートヘアの強面で、非常に目つきが鋭い。言動がヤンキー然としており、性格も硬派だが、実はケンカはそれほど強くない。龍田駿自身は中学時代、颯太のことをライバル視していたが、実際はあこがれの思いが強く、颯太や水戸百合香には、世話の焼ける弟分と見られていた。そのため、高校入学以来変わってしまった颯太に対し、以前のようなヤンキーに戻ってほしいと願っている。一方で駿自身も、ゲームセンターのクレーンゲームでぬいぐるみを取りまくったりとかわいらしいところがあり、そのギャップからクラスメイトの花江もかにまとわりつかれるようになった。以来、もかの強引さに振り回され、何かと颯太や百合香とも行動を共にするようになる。実は純情なところがあり、無防備に距離を詰めてくるもかに対し、次第に好意を寄せるようになっていく。ちなみにもかには、何度も「たつた」だと訂正しているにもかかわらず、なぜか「たったくん」と呼ばれている。実は集合体恐怖症。また、非常に歌がうまい。
壇 尚哉 (だん なおや)
獅子原颯太と同じ高校に通う男子。料理部の部長を務めており、颯太たちの先輩にあたる。長い前髪を真ん中分けにしたショートヘアで、つねに穏やかな表情を浮かべたイケメン。また非常に優しい性格で、その包容力から、学校では「旦那にしたいランキングナンバーワン男子」と評されている。ちなみに色恋沙汰に関する察しもよく、颯太が水戸百合香に思いを寄せていること、さらに百合香の方はそれに気づいていないことも把握しており、陰ながら颯太のことを応援している。だが一方で何かとタイミングが悪く、百合香と親しげにしているところを颯太に誤解されることも多い。実は、親の負担を減らそうと、ファミレスとコンビニとスーパーのアルバイトを掛け持ちする苦学生で、それを知った龍田駿には、「顔だけでなく性格もイケメン」と評されている。
書誌情報
女子力高めな獅子原くん 7巻 一迅社〈ZERO-SUMコミックス〉
第1巻
(2020-06-25発行、 978-4758035255)
第7巻
(2023-12-25発行、 978-4758039727)