魔王と勇者の柏ライフ
人間界の征服を目指して千葉県柏市に降り立った魔王。しかし、現実は厳しく、彼はボロアパートで貧乏生活を送り、壮大な征服計画は空回りするばかり。一方、伝説の聖剣を抜いて勇者となった女子高生の市川今日子は、魔王を見かけるたびにサンドバッグのように扱うなど、勇者らしからぬ凶暴な性格の持ち主だった。物語は、そんな魔王と今日子の両方の視点から進行する。従者のマーリンと共に征服活動に励む魔王の日常と、今日子が「伝説の一行ガールズ」の仲間たちと共に送る日常が、ダブル主人公に近い形式で描かれる。
伝説の一行ガールズと魔王の仲間たち
登場する「一行ガールズ」は、凶暴ながらも実は可憐な女子高生勇者、今日子を中心に、男漁りに積極的な肉体派の我孫子由や、誰よりもキュートな「男の娘」の佐倉真など、魅力的なキャラクターたちがそろっている。一方、魔王陣営も個性的なキャラクターばかりで、家庭的で獣耳と尻尾を持つ従者のマーリン、なんとなくアサシンになった猫耳の女性、パーシヴァル、ツンデレ気質の魔王の従妹、ガウェインが名を連ねている。物語はラブコメ要素が満載で、魔王に淡い思いを寄せるマーリンの健気さや、今日子が隣人の「田中太郎」が魔王であることに気づかず、彼に惹かれていく様子が、コミカルな日常劇の中で自然に描かれている。
千葉県柏市をこよなく愛するローカルネタ
作者のいわさきまさかずは、千葉県柏市に対して深い愛情を抱いている。2010年代の柏市を舞台に、実在する書店や駅前の風景、デパートの設備などを細やかに描写し、ご当地マスコットや観光名所を題材にしたギャグエピソードまで、地域のリアルな雰囲気を生き生きと表現している。特に、Jリーグチーム「柏レイソル」への熱い思いは際立っており、試合結果や選手ネタはもちろん、登場人物たちがユニフォーム姿でスタジアムに応援に駆けつけたり、手作りの応援グッズを作成したりするエピソードも描かれる。これらのエピソードは、サポーターのあいだでも大きな話題となった。
登場人物・キャラクター
魔王 (まおう)
人間界の征服を目論む魔王。500年に1度の大不況に見舞われた魔界を救うため、従者のマーリンと共に千葉県柏市にある築30年の木造アパート「キャメロット荘」で生活している。魔王でありながら威厳はまったくなく、少々スケベな性格の持ち主。ふだんは、物々しい甲冑(かっちゅう)と兜(かぶと)を身につけているため、周囲からは残念な人物と見なされがちだが、身なりを整えると実はかなりのイケメン。千葉に来て早々に出会った3代目勇者の今日子に完膚なきまでに叩きのめされて以来、彼女のサンドバッグのような扱いを受ける日々を送っている。住まいは今日子の家の真向かいで、ある日、甲冑を脱いだ姿で鉢合わせとなり、とっさに「ウェブデザイナーの田中太郎」と名乗ったことで、正体を気づかれずに「お向かいさん」として認識されている。現在はすっかり今日子の凶暴さに怯えているが、初対面の際には彼女の可憐な容姿に目を奪われ、時おり彼女に見とれてしまうこともある。
市川 今日子 (いちかわ きょうこ)
聖剣エクスカリバーを抜いて、3代目勇者に選ばれた女子高校生。年齢は17歳。容姿端麗で成績優秀だが、その本性は口が悪く冷酷な性格の持ち主。ふだんは「エンジェルモード」と称して、品行方正な優等生を完璧に演じている。並外れた身体能力を誇り、街で魔王を見かけるたびに、日頃のストレス解消のためにサンドバッグのように扱うなど、凶暴な一面を持っている。しかし、そんな今日子には、犬のぬいぐるみにすら悲鳴を上げるほどの犬嫌いという弱点がある。実家は、魔王が住むボロアパート「キャメロット荘」の真向かいに建つ豪邸で、魔王とはしばしば顔を合わせているが、その正体にはまったく気づいていない。今日子は魔王の「ウェブデザイナーの田中太郎」というウソを信じ込んでおり、太郎に好意を抱いている。太郎と接する時だけは、「エンジェルモード」とは異なり、素の今日子からは想像もつかないほど柔らかな態度を見せる。
書誌情報
あしたの今日子さん 全7巻 KADOKAWA〈電撃コミックス〉
第1巻
(2012-01-27発行、978-4048862837)
第2巻
(2013-01-26発行、978-4048913508)
第3巻
(2014-01-27発行、978-4048662406)
第4巻
(2015-02-27発行、978-4048692120)
第5巻
(2016-02-27発行、978-4048657204)
第6巻
(2017-02-27発行、978-4048927208)
第7巻
(2018-02-27発行、978-4048936422)







