あの娘にキスと白百合を

あの娘にキスと白百合を

缶乃の代表作にして、初連載作品。略称は「あのキス」。中高大一貫の女子教育機関「清蘭学園」を舞台に繰り広げられる百合青春群像劇。連作短編形式が採用されており、エピソードごとにスポットの当たる少女カップルが移り変わっていく点が特徴となっている。初期エピソードの主人公である白峰あやか、黒沢ゆりねのペアは登場する機会も多く、彼女たちの関係性、そして人間的な成長が物語全体を通しての大きな軸となっている。KADOKAWA「月刊コミックアライブ」2014年1月号から2019年4月号まで連載の作品。2015年10月からEDGE RECORDSよりドラマCDシリーズ化し、白峰あやかを照井春佳、黒沢ゆりねを水橋かおりが演じている。なお、缶乃はヴィレッジヴァンガード主催のフェア『百合展2016』『百合展2017』『百合展2018』でメインビジュアルを担当した際に「あのキス」のキャラクターを描き下ろしている。『百合展2016』では白峰あやかと黒沢ゆりね、『百合展2017』では瀬尾瑞希と二階堂萌、『百合展2018』では大人に成長した日下部千春と秋月伊澄が描かれた。

正式名称
あの娘にキスと白百合を
ふりがな
あのこにきすとしらゆりを
作者
ジャンル
百合
 
学園
レーベル
MFコミックス アライブシリーズ(KADOKAWA)
関連商品
Amazon 楽天

「完璧」でありたい秀才と「普通」になりたい天才

生真面目な秀才の白峰あやかは、いつか母親が認めてくれると信じて、完璧であり続けていた。しかし、万能型の天才、黒沢ゆりねの出現によって、勉学においても、スポーツにおいても、二番手に陥落する。トップの座に返り咲きたい白峰は黒沢に宣戦布告するが、黒沢は自分を負かして「普通の女の子」にしてくれる相手を待ち望んでおり、逆に白峰に惚(ほ)れ込んでしまう。ライバル認定した相手に懐かれた白峰は困惑するが、いつしか黒沢のことばかり考えている自分に気付くことになる。

清蘭学園に通う少女たちの多様な関係性

秀才の白峰あやかと天才の黒沢ゆりねのペア以外にも、風紀委員の日下部千春と不良少女の秋月伊澄、お嬢様の大城雪奈と従者の三田十和子など、さまざまなタイプのペアが登場し、彼女たちを主役に据えたエピソードも用意されている。彼女たちの関係性が恋愛に発展するのか、友情を育んでいくのか、はたまた決裂してしまうのか、その変化も見どころとなっており、ポリアモリーのような先進的な関係性も描かれている。幕間(まくあい)には物語の裏側を描いた1ページ漫画「あのキス小劇場」が挿入されている。こちらは本編にモブとして登場していた、あるいは本編と同じ時間軸、別の場所にいた脇役の少女たちにスポットを当てた内容となっている。なお、多くのペアは名前に秘密が隠されており、例えば白峰と黒沢は「白と黒」「峰と沢」で対になっている。

さまざまな「キス」を探す楽しみ

第1話から最終回の第50話まで、どの話にも必ず一度は「キス」、もしくは「キス」に準ずる行為が描かれている。それは唇と唇で行う直接的なものであったり、モノを介した間接的なものであったりとさまざま。劇的なものばかりではなく、中には見過ごしてしまいそうなさりげないキスシーンも存在する。

登場人物・キャラクター

白峰 あやか (しらみね あやか)

清蘭学園高等部1年C組に在籍する少女。緩くウェーブした黒髪に白いカチューシャを付けている。外出時はコンタクトレンズ、寮内では眼鏡を使用している。負けず嫌いな努力家で、休日も勉強に明け暮れている。教育熱心な母親から完璧であることを強いられ、完璧でなければ誰からも愛されないと思い込むようになった。努力を認めてくれない母親が苦手で、学園の鈴蘭寮で生活している。何かと理由をつけて帰省を拒んでおり、携帯電話すら所持していない。学園では品行方正、成績優秀、スポーツ万能な優等生として知られている。クラスメイトに勉強を教えたり、部活の助っ人を引き受けたりと面倒見もよく、「清蘭学園の生徒の鑑(かがみ)」と評されている。中等部まで何をやっても一番だったが、天才の黒沢ゆりねの出現によってトップの座を奪われる。打倒黒沢を宣言するも、この宣戦布告が黒沢の琴線に触れ、ファーストキスを奪われてしまう。これをきっかけに黒沢をライバル視すると同時に、強く意識するようになる。黒沢への嫌悪を口にする一方で、彼女の誕生日に花束を贈るなど、俗にツンデレと表現されるような、言行不一致な行動に出ることも少なくない。進級して生徒会役員選挙がせまると、白峰あやかこそ生徒会長に相応(ふさわ)しいと推す声が高まり、立候補を視野に入れるようになる。

黒沢 ゆりね (くろさわ ゆりね)

清蘭学園高等部1年C組に在籍する少女。金髪のショートヘア。中学校まで別の学校に通っていたが、家から近いという理由で清蘭学園に編入した。4月中にすべての教科書を暗記するほどの天才で、授業中は居眠りばかりしている。休み時間も座席で突っ伏していることが多い。スポーツも運動部に勧誘されるほど得意で、その実力は誰もが認めているが、近寄り難い雰囲気を漂わせており、一匹狼と認識されている。中学時代には無神経な発言で凡才の劣等感を煽り、不評を買ったこともあった。趣味もなく、友人もいないため、休日は寝て過ごしている。1学期の中間考査で中等部までトップだった白峰あやかの牙城を崩して学年1位を獲得し、白峰から「目の上のたんこぶ」と認識されるようになった。当初は一方的にライバル視されていたが、白峰が天才の自分に肉薄する秀才だと気付き、自分を負かして「普通の女の子」にしてくれることを期待するようになる。その後、白峰の宣戦布告にときめき、衝動的に唇を奪った。以降はすっかり白峰に懐き、軽率に接吻をせまるキス魔に変貌した。白峰との出会いをきっかけに、少しずつ交友関係も広がっていった。進級後は紆余(うよ)曲折を経て、園芸部に所属することになった。「すみれ」という社交的ですべてが平均点の妹がいる。

書誌情報

あの娘にキスと白百合を 全10巻 KADOKAWA〈MFコミックス アライブシリーズ〉

第1巻

(2014-05-23発行、 978-4040665566)

第2巻

(2014-12-22発行、 978-4040672205)

第3巻

(2015-06-23発行、 978-4040675381)

第4巻

(2016-02-23発行、 978-4040682013)

第5巻

(2016-09-23発行、 978-4040685434)

第6巻

(2017-03-23発行、 978-4040691268)

第7巻

(2017-09-23発行、 978-4040694405)

第8巻

(2018-03-23発行、 978-4040698526)

第9巻

(2018-09-21発行、 978-4040651293)

第10巻

(2019-03-23発行、 978-4040655598)

あの娘にキスと白百合を 特装版 全10巻 KADOKAWA〈MFコミックス アライブシリーズ〉

第10巻

(2019-03-23発行、 978-4040656069)

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