やがて君になる

やがて君になる

仲谷鳰の代表作で初連載作品。現代日本の高校を舞台に、恋を知らない少女の小糸侑と恋する気持ちがわからない生徒会長の七海燈子の恋愛模様を描く青春百合漫画。「恋愛」をテーマに多感な少女たちの葛藤と恋慕が、緻密なタッチで丁寧に描写されており、文学的な雰囲気を醸し出している。KADOKAWA「月刊コミック電撃大王」2015年6月号から2019年11月号にかけて連載された作品。2018年10月から12月にかけてテレビアニメ版『やがて君になる』がAT-X、TOKYO MX、インターネット配信ほかで放送された。侑を高田憂希、燈子を寿美菜子が演じている。2019年5月には舞台版『やがて君になる』が東京・全労済ホール/スペース・ゼロで公演された。2022年11月には、その続編である舞台版『やがて君になるencore』が東京・品川プリンスホテル クラブeXで公演された。両舞台共に主演キャストは、侑を河内美里、燈子を小泉萌香が演じている。

正式名称
やがて君になる
ふりがな
やがてきみになる
作者
ジャンル
百合
 
学園
レーベル
電撃コミックスNEXT(KADOKAWA)
巻数
全8巻完結
関連商品
Amazon 楽天

誰に対しても「特別」な感情を抱けない二人の少女

人並みに恋にあこがれを抱いている小糸侑は、誰に対しても特別な感情を抱けないことに悩んでいた。一方の七海燈子は、周囲からあこがれられる存在ながら自己嫌悪から偽りの自分を演じていた。そんな中、侑は仲のよい男子から告白されるものの、どう自分の気持ちを相手に伝えればいいか迷っていた際に、先輩の燈子からアドバイスを受ける。そして燈子の助言に従って、侑は告白を断ることを決意。侑は一つの恋を終わらせて気持ちを新たにするが、突然燈子から「好きになるかもしれない」と告白され、キスをされてしまう。

偽りの自分を演じる少女の苦悩

遠見東高校の生徒会長を務め、才色兼備な優等生として誰もがあこがれる燈子だったが、実は日頃から偽りの自分を演じていることに疲れ果てていた。燈子は幼い頃に姉の澪を亡くしているが、周囲は姉の分までがんばれと燈子に大きな期待を寄せていた。燈子もその過度な期待に応えようと、澪の代わりに必死に努力を重ね、現在も優等生を演じていたのだった。しかし、燈子は理想と現実のギャップにストレスを抱え、学校で偽りの自分を演じ続けることに苦悩していた。また、燈子は自己嫌悪から他者の気持ちを素直に受け入れられずにいたが、誰に対しても特別な感情を抱かない侑であれば自分を好きになることはないと考え、侑に強い関心を持つようになる。

二人の少女の葛藤を描いた青春百合物語

本作は誰に対しても特別な感情を持てない侑と、優等生を演じながらも自己嫌悪の塊である燈子の二人にスポットを当てた百合恋愛物語。燈子は侑に好意を寄せるようになるが、同時に自分を好きになってほしくないとも思っていた。侑は燈子の積極的なアプローチに戸惑いつつも、彼女に特別な感情を抱くことはなかったが、交流を続けるうちに少しずつ感情の変化が現れる。二人が複雑な葛藤と情愛を抱きつつも、さまざまな困難を乗り越えて絆(きずな)を育んでいく様子が情緒豊かに描かれる。本作のキャラクターの性格付けが複雑で難解なのは、作者の仲谷鳰が「難しいものを工夫して理解してもらえる漫画を作ろう」と考えたもので、特に主人公の侑は「感情移入がしづらいタイプ」と担当編集者に問題視されたものの、仲谷鳰が押し切ったというエピソードがある。

登場人物・キャラクター

小糸 侑 (こいと ゆう)

遠見東高校に通う1年生の女子。小柄な体型で赤みがかった髪を二つ結びにしている。人並みに恋愛に対してあこがれを抱いているが、受け身で自己肯定力が低いため、誰に対しても特別な感情を抱くことができずにいる。そのため、中学時代に仲のよかった男子に告白されているが、どう返事すればいいか悩んでいる。そんな中、教師の勧めで生徒会の手伝いを通じて知り合った生徒会長の七海燈子に相談し、小糸侑自身の気持ちを正直に伝えて告白を断った。その後、燈子から「自分を好きにならないでほしい」の条件で告白され、交際を始める。燈子からいきなりキスをされるものの、自分の中の感情にまったく変化が起きず、流されるままに燈子と交流を重ねている。恋愛に関しては非常にドライで面倒見のいい性格から、違和感を感じながらも燈子と関係を続けている。燈子に振り回されることも多いが、少しずつその感情にも変化が起きている。

七海 燈子 (ななみ とうこ)

遠見東高校に通う2年生の女子。黒髪をストレートロングに伸ばしたな美少女で、生徒会長を務めている。容姿端麗、文武両道の才媛として周囲からあこがれられる存在。しかしそれは表向きの姿で、素はコンプレックスの塊。もともと内向的な性格だったが優秀な姉の澪が亡くなったことで、周囲の過度な期待から努力して今の自分を作り出している。本来の七海燈子自身は自己肯定力が低い小心者で、いつも周囲からのプレッシャーに苦しんでいる。また、偽りの自分自身を嫌悪しており、他者が向ける好意も「優等生を演じている嫌いな自分を好きになっただけ」と思い込み、受け入れることができずにいる。そのため、これまで多くの男子生徒から告白されているが、好きという気持ちがわからずに断り続けている。そんなある日、優等生を演じることに疲れ果てていた燈子は小糸侑と出会う。そして、特別な気持ちがわからないという侑なら、自分を好きになることはないと考え、好意を抱くようになる。この感情はある種の依存のようなもので、突然侑に甘えたりキスをしたりと、燈子自身も驚くほど積極的なアプローチを開始する。

書誌情報

やがて君になる 全8巻 KADOKAWA〈電撃コミックスNEXT〉

第1巻

(2015-10-27発行、 978-4048654326)

第2巻

(2016-04-27発行、 978-4048658751)

第3巻

(2016-11-26発行、 978-4048924313)

第4巻

(2017-06-26発行、 978-4048929196)

第5巻

(2018-01-26発行、 978-4048935418)

第6巻

(2018-09-27発行、 978-4049120479)

第7巻

(2019-04-26発行、 978-4049124934)

第8巻

(2019-11-27発行、 978-4049128697)

SHARE
EC
Amazon
logo