概要・あらすじ
この世とあの世のあわいに建つあぶな坂HOTEL。オーナー藤ノ木由良と個性あるスタッフが、生死の狭間を彷徨う人々を迎え入れていく。強盗の被害者である働と加害者のトモヲ、病に伏し死を待つ柳原、自殺したロッカー鈴鹿は、交流の中で、この世とあの世どちらを選ぶか決めていく。銀乃は幾度も訪れ、最後に先に死んだ母と再会する。
雅也と竜一の兄弟は、雪山で四年ぶりに再会した。
登場人物・キャラクター
藤ノ木 由良 (ふじのき ゆら)
『あぶな坂HOTEL』に登場するキャラクター。あぶな坂HOTELのオーナーの女性。あぶな坂HOTELを訪れる、生死の境にいる人々をもてなす。美しい女性で、福子の取り巻きのホストから口説かれたことがある。
甘粕 (あまかす)
『あぶな坂HOTEL』に登場するキャラクター。あぶな坂HOTELに勤める男性。あぶな坂HOTELを訪れる、生死の境にいる人々をもてなす。幼い子供が苦手で、銀乃の幼少期に対しても困惑を見せた。
丸山 美保 (まるやま みほ)
『あぶな坂HOTEL』に登場するキャラクター。あぶな坂HOTELに勤める女性。三年前、沖縄でスキューバダイビングをしていた際に、地下の洞窟に入っていって出られなくなり、溺死。未だに遺体は見つかっていない。鈴鹿と同じ静岡の聖賢学園の二学年下で、卒業式の日に告白しようとしたが出来なかった。その後、生前に日比谷公会堂のコンサートなどにも足を運んでいた。 鈴鹿は彼女の遺体を捜し出すことを約束して、現世へと帰って行った。
働 一二三 (はたらき ひふみ)
『あぶな坂HOTEL』に登場するキャラクター。あぶな坂HOTELを訪れた男性。働くばかりの人生で、会社を二度潰したことがある。三人の社員を抱えている。奥さんはタフで負けず嫌い。トモヲに現金を奪われた上に事故に遭い、半死半生となった。霧が晴れるのを待って、現世へと帰って行った。
柳原 春子 (やなぎはら はるこ)
『あぶな坂HOTEL』に登場するキャラクター。あぶな坂HOTELを訪れた女性。入院していたが、一時帰宅中で家にいた。娘たちの声を聞き、現世に帰ろうと考えるが、最終的には母たちに呼ばれてあの世へと旅立っていった。
トモヲ
『あぶな坂HOTEL』に登場するキャラクター。あぶな坂HOTELを訪れた青年。チャコと赤ん坊のマリナと共に、九十九里浜に古い家を借りようとしていたと言う。しかしそれは嘘であり、実際はマリナは自分の子ではなく、チャコにも振られ、金がなくなったのも、競馬で大敗したためだった。金が必要だったため、駅前の銀行の駐車場で、働の鞄を奪ってバイクで逃走したが、けがをして死亡。 鈴鹿の下で働いていたこともある。ミツルは芸名のつもりでつけたもの。自称東京出身だが、関西訛りがある。軽度の虚言癖がある。金森の孫でカツ世の息子かと思われたが、真相は不明。働、鈴鹿と共に、現世へと帰って行った。
鈴鹿 リン (すずか りん)
『あぶな坂HOTEL』に登場するキャラクター。あぶな坂HOTELを訪れた青年。ロックバンド・チャペックプリンスバンドに所属。スランプに陥り首をつって、伝説のロックンローラーになろうとした。トモヲを以前雇っていた。丸山とは静岡の聖賢学園の先輩後輩同士。丸山の死体を探すことをモチベーションに、現世へと帰って行った。
金森 (かなもり)
『あぶな坂HOTEL』に登場するキャラクター。あぶな坂HOTELに勤めている。庭にいる老人。娘は金森カツ世。
金森 カツ世 (かなもり かつよ)
『あぶな坂HOTEL』に登場するキャラクター。あぶな坂HOTELに勤めている女性。金森の娘で、一家を殺した彼を憎んでいる。恰幅のいい女性で、母性を感じさせる。父の介護疲れから自宅に火をかけ、トモヲという二歳の孫以外全員の家族を殺してしまった。
銀乃 (ぎんの)
『あぶな坂HOTEL』に登場するキャラクター。昭和初期の女性。五歳の時に、母と共に海で入水。その後も一人で死んでしまった母を捜して、度々あぶな坂HOTELを訪れていた。七歳や十二歳の時に高熱を出し、十七歳の時に見合いがいやで風邪薬を一箱飲んだ。空襲、出産、脳血栓など、さまざまな状況下で生死をさまよった。夫は幸司、まじめな人で仕事をがんばったが、浮気などもしていた。 脳血栓の際は、かなり渋ったが最終的には現世に帰った。半身に麻痺が残ったが、結果として家族が団結するようになった。八十四歳で穏やかに死去、母と再会することが出来た。
猿渡 福子 (さるわたり ふくこ)
『あぶな坂HOTEL』に登場するキャラクター。新宿二丁目にある「シンデレラの城」というホストクラブのホスト、桜丸、ジャック、松王丸と懇意にしている。四十歳の誕生日を前に、車で暴走。死ぬ直前の状況で、三人と共にあぶな坂HOTELを訪れた。現世に戻るため、それぞれに真実の愛を求めるが、皆、上手く行かなかった。母は占星術の占い師で、「七色のバラの星占い」という幸運グッズを売る会社を経営している。 最終的に、同じ時刻に事故を起こして死亡するはずだった母親と元旦那をつれて帰る為、現世へと戻っていった。
八方 雅也 (やつかた まさや)
『あぶな坂HOTEL』に登場するキャラクター。あぶな坂HOTELを訪れ、兄の竜一と再会した。七歳の時から、兄にスキーを教えて貰った。将来を嘱望されていたが、高校の大回転の種目でけがを負った。その後、当人は死んだのは兄と思っていたが、四年前に実際に死亡したのは雅也の方だった。自らの死を受け入れ、あの世へと旅立っていく。
八方 竜一 (やつかた りゅういち)
『あぶな坂HOTEL』に登場するキャラクター。先にあぶな坂HOTELを訪れ、後から来た雅也と再会した。四年前に雅也を亡くして以来、休みの度に山を訪れて彼を探し続けていた。三十二歳の時、事故に遭い、生死の境をさまよう。雅也に、自分の身体に乗り移って生き返るよう提案するが、最終的には無くしていたスキー板を雅也から貰い、現世へと戻っていった。
場所
あぶな坂HOTEL (あぶなざかほてる)
『あぶな坂HOTEL』に登場する場所。この世とあの世のあわいに建つホテル。帰るも行くも、訪れた客の運次第。藤ノ木がオーナーで、甘粕と丸山、金森と彼の娘カツ世がいる。玄関側が現世に繋がっているが、霧がでていると帰ることが出来ない。庭側があの世に繋がっており、庭の柵を越えると、帰ってこれなくなる。