この世界は不完全すぎる

本作の舞台となっているのは、完全体感型のVRゲーム「キングス・シーカー・オンライン」の中の世界。ゲーム内容は、魔法やモンスターが存在するファンタジー世界を舞台にしたアドベンチャーである。主人公の羽賀マコト（ハガ）は、ゲームの不具合をチェックするデバッガーチームの一人として参加しているが、なぜか全員がログアウトできない状況に陥ってしまう。日が経つにつれ、ハガとリーダーの神林以外の三人は、デバッグモード（無敵になったり、壁を無視したりできるモード）を使って自由に振る舞いはじめ、その結果、地面に埋まったり、回復と死亡の無限ループに陥ったりして行動不能になってしまった。神林は、クリアによってログアウトできるかもしれないと考え、とりあえずゲームを進めることにする。そして、ハガはデバッグを続けながら、三人を救う方法を探ることにした。しかし、それから約1年が経過しても、状況は何も変わらなかった。

ハガは、ベイル王国の辺境の村がドラゴンにより全滅するイベントをチェックしていた。そんなある日、死ぬはずだったNPC（操作できないキャラクター）の少女、ニコラが復活する不思議な現象が発生。ハガは戸惑いながらも、彼女の希望に従い一緒に旅に出ることにする。ハガの目的は、デバッグを続けながら、ログアウトの方法や仲間の救出方法を探ることだった。しかし、ニコラの体を借りて、ゲームを統括するメタAIのテスラが出現し、ハガに新たな使命を与える。それは悪質なデバッガーたちから石版（デバッグストーン）を取り上げ、排除することだった。彼らがデバッグをせず、好き放題を行っている限り、ゲームも一向に完成しないのだ。こうしてハガは大きな使命を負って旅を続けることになった。

このゲームのデバッガーとして雇われているのは、ハガたちだけではない。そしてその全員が、このゲームからログアウトできないでいる。彼らの中には、デバッグモードを使って贅沢（ぜいたく）三昧の暮らしをし、NPCを惨殺して遊ぶといったひどい行為を行う者たちがいた。彼らは真面目に仕事をするハガの邪魔をし、命を奪おうとする。ハガは仲間が行動不能になったこともあり、デバッグモードを使わないのが信条である。そんなハガの戦い方は、バグや裏技を利用すること。例えば「通り抜けできてしまう壁に敵を誘導し、エリア外に落下させる」「狭い通路でわざと大量のモンスターを発生させ、処理落ちにより動きをスローにする」といった方法で窮地を切り抜けていく。くそ真面目にデバッグを続けているハガならではのユニークな戦法が、本作の見どころの一つである。