弱さをさらけだせない主人公の成長物語
生まれた年に阪神・淡路大震災が起こり、震災の記憶はないものの、悲しみを肌で感じとっていた主人公・玉田くこ。笑顔はうつり、周りを明るくすることに気が付いたくこは、つらいことがあっても笑顔を絶やさず、元気に明るくふるまう。ただ、虚勢を張って自分の弱さや本音を見せることができなくなったくこは、周囲とのあいだに壁をつくっていたことに気づく。人を好きになったり、傷ついたり、傷つけたり。人との関わり合いの中で、自分の中の醜い部分も自覚しながらくこは成長していく。震災を題材にしているが、そこがメインテーマではなく、登場人物たちの恋愛や友情、ヒューマンドラマがメインで描かれている。また、恋愛漫画にありがちな展開を、くこの親友・河合衣舞が解説することで、コメディ要素が加わり、シリアスな部分との緩急をつけている。
くこの近所に住む3人のイケメン
伊藤授は神奈川から北野町に引っ越してきたばかりの高校2年生。嫌われることなど恐れず、正直で思ったことを口にする。出会った時から、くこをアニマル呼ばわりし、かわいげがないと言う。
成宮桜太は繊細で優しい美大生。やんちゃなくこを女の子扱いし、「大丈夫と言う人ほど気になる」と、くこの強がりを見抜く。
平野清盛はくこの隣に住む幼なじみの高校1年生。小さい頃からずっとくこ一筋で、女子からモテるのだが、くこ以外の女の子はかわいくは見えない。タイプの違うイケメンたちは、くこの近所に住んでいる。彼らと関わるうちに、くこの日常は大きく変わっていく。
自分の存在が好きな相手を苦しめる
桜太の考えていることがわからないと思いながら、くこはいつしか寂しそうに笑う儚げな桜太に恋していた。ところが、スランプだった桜太は、くこの「動物目線の写真」のアイデアを盗み、作品展に出品しようとする。その後ろめたさから、ラフスケッチを見ようとしたくこの腕をつかんで止める桜太。戸惑いながらも、笑顔を作ろうとするくこに、桜太は「笑わんといて」とつぶやく。桜太にとって自分の笑顔はトゲなのだと気づいたくこは、桜太を諦めようとする。そんな中、清盛から告白されたくこは、幼なじみとの関係もぎくしゃくしてしまう。
登場人物・キャラクター
玉田 くこ (たまだ くこ)
高校1年生で15歳の女の子。1995年生まれ。神戸市中央区北野町在住で、女子校に通う。生まれてすぐ、阪神・淡路大震災で母親を亡くし、父子家庭となる。強く、朱(あか)るく、たくましくという願いをこめて「くこ」と名付けられた。その願いに応えようと、いつも明るく笑顔を絶やさない。ポニーテールにしている理由は、顔が引き上がり笑顔が作れるから。「大丈夫」が口癖になっていて、弱さを見せないように努力している。木に登ったり、坂道をかけ上がったり、高い所から飛び降りたりと、とても元気な女の子。伊藤授からは「アニマル」呼ばわりされている。自分で切る前髪はギザギザで、ボーダーの服を好んで着ている。動物目線の写真をブログにあげている。
伊藤 授 (いとう さずく)
高校2年生の男の子。神奈川に住んでいたが、親の転勤のため、北野町に越してきた。寂しがりな彼女と遠恋中。イケメンだが、毒舌で思ったことを口にする。また察しがよく、状況をすぐに理解する。坂の多い北野町を嫌っており、早く神奈川に帰りたいと思っている。人気のない場所で、サックスの練習をしている。母親からは「くんくん」と呼ばれている。
成宮 桜太 (なりみや おうた)
玉田くこの近所のアトリエMuMuに通っている美大生。物静かで繊細なイケメンで、姫路市出身。スランプに陥っており、自分の絵をくこから「キレイ」と言われ、傷つく。また、感受性豊かで強く見えるくこを、すごいと憧れる一方、妬ましく感じてしまう。MuMuのオーナー・乱の奥さん、有名のことを思っている。
平野 清盛 (ひらの きよもり)
高校1年生の男の子。共学の高校に通う。玉田くこの幼なじみで、隣の家に住んでいる。外国人の血が混じっており、少し髪が茶色で灰色の目をしたイケメン。明るく裏表のない素直な性格で、友達が多い。女子人気が高く、告白されることも多い。幼い頃からくこが好きで、周囲もそのことを知っている。親しい仲のくこと河合衣舞から「キヨ」と呼ばれている。ミドルネームはジュリアン。
河合 衣舞 (かわい いぶ)
玉田くこの親友で幼なじみの女の子。おかっぱで身長が低い。コミュニケーションが苦手で、高校には通っていない。少女漫画が大好きで、家には大きな漫画の書庫がある。くこの今後の恋愛を「衣舞(いぶ)んせき」と称しながら、少女漫画の知識を用いて分析する。少女漫画を読みながら「王道~」と叫ぶことがある。平野清盛とも幼なじみで、ずっとくこのことを好きな清盛に対し「当て馬」だと本人に向かって言うが、実は清盛のことをひそかに思っている。