うちのちいさな女中さん

うちのちいさな女中さん

長田佳奈の代表作の一つ。昭和9年(1934年)の東京を舞台に、夫に先立たれた女性翻訳家・蓮見令子と、彼女のもとで住み込みの女中として働くようになった14歳の少女・野中ハナの日常を描く、ほっこり昭和浪漫物語。仕事は完璧だが自分のことになると途端に不器用になるハナ、そんなハナがかわいくて仕方がない令子との昭和初期の市井の暮らしや文化が、優しい目線で描かれる。コアミックスの「月刊コミックゼノン」2021年1月号から掲載の作品。各エピソードの終わりには、昭和初期の文化について掘り下げたコラム「昭和豆コラム」が掲載されている。

正式名称
うちのちいさな女中さん
ふりがな
うちのちいさなじょちゅうさん
作者
ジャンル
キャリアウーマン
 
その他歴史・時代
レーベル
ゼノンコミックス(コアミックス)
巻数
既刊4巻
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昭和初期の日本の暮らしと文化

蓮見家はモダンな造りの文化住宅で、電気や瓦斯、水道も引かれており、板敷きの部屋に西洋風の家具を置いていたり、台所には氷を使って冷やす冷蔵庫や瓦斯コンロも置かれていたりする。それは、昔ながらの生活環境だった山梨出身の野中ハナにとっては考えられないほどの便利な暮らしだった。それでも、何でも手に入る現代の暮らしとは比べられないほど不便で不自由な生活がそこにはあるが、昭和初期の質素ながらも温かい暮らしぶりが描かれる。同時に、当時はまだまだハイカラだった洋食や喫茶店の冷やし珈琲、デパートの食堂で食べるクリームソーダなど、昭和初期の食生活の様子を垣間見ることができる。

野中ハナと人々のかかわり

昭和初期、女中さんという仕事は裕福な家庭でなく、ふつうの家庭でも雇う身近な存在だった。蓮見家にやって来た女中は弱冠14歳の野中ハナ。蓮見令子の友人で「喫茶ミチクサ」の店主を務めるみっちゃんや、近隣に住む主婦たち、同じ年の女学生・吉田萬里など、ハナが蓮見家で生活を始めてから出会った人々との関係性が詳細に描かれる。その体験はどれもが温かく、人々が織りなす物語に心打たれ、優しい気持ちになることができる。

登場人物・キャラクター

野中 ハナ (のなか はな)

蓮見令子の家で女中を務める少女。年齢は14歳。物心つく前に両親を亡くし、10歳になるまでは遠縁の家で世話になり、その後令子のおじが住む山梨県の有田邸で3年ほど女中として働いていた。まだ年若いが、先輩女中たちから完璧に仕事を仕込まれているため、家事や礼儀作法をそつなくこなす。文字の読み書きや簡単な計算もでき、読書や日記、家計簿もつけている。きっちりと編んだおさげ髪に大きな丸眼鏡、着物姿にたすきがけが基本の仕事スタイル。献身的で勤勉、絵に描いた生真面目な性格だが、幼い頃から自分を律していたこともあって、自分を主張したり、感情を表現したりすることが苦手で表情に乏しい。縁あって蓮見家で働くことになったが、令子からはただの女中としてではなく、一個人として大事にされることに戸惑いながらも、さまざまな経験をさせてもらうことで少しずつ成長していく。実はもともと令子が翻訳した「蓮見令子童話集」を愛読しており、令子のひそかなファンだった。蓮見家に女中を派遣する話が出た際には、自ら志願した。

蓮見 令子 (はすみ れいこ)

蓮見家の主人であり、翻訳家の女性。2年前に突然最愛の夫を亡くして以来、東京にある大きな一軒家で一人暮らしをしている。他界した夫に対する愛情は今も変わることなく、再婚を薦められても断り続けており、結婚指輪も外さずにいる。通常は着物姿でいることが多いが、外出時には洋装になることもあり、西洋文化を楽しんでいる。蓮見家に女中としてやって来た野中ハナに対して、14歳という想定外の若さに困惑するものの、温かく迎え入れた。優しい性格で天然気味な一面があり、フレンドリーな雰囲気を漂わせている。英語が堪能で、女学校で講師を務めたこともある。時間とともにハナを妹のようにかわいがるようになり、寂しかった日常生活が少しずつ華やいでいく。ハナは蓮見家の女中という立場だけにとどまらず、令子にとって大切な存在となる。ハナからは、「先生」と呼ばれている。

書誌情報

うちのちいさな女中さん 4巻 コアミックス〈ゼノンコミックス〉

第1巻

(2021-08-20発行、 978-4867202517)

第2巻

(2022-02-19発行、 978-4867203064)

第3巻

(2022-09-20発行、 978-4867204245)

第4巻

(2023-06-20発行、 978-4867205167)

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