概要・あらすじ
東京のテレビ局で働く加納チカコは、入社3年目でADからCD(チーフディレクター)へ異例の出世を果たしたやり手のキャリアウーマンだが、京都支局に飛ばされてしまう。東京でなければ自分の実力が発揮できないとあせるチカコだったが、そんな彼女に興味を持つ若き不動産王の桐生アキラは、スポンサーの立場から京都を舞台にしたリフォーム番組の担当を持ちかける。
桐生からの指示で番組のターゲットとなった老舗骨董店に協力してくれるよう出向いたチカコは、そこで天才目利きと言われる歳多修治に出会う。修治に自分の価値観を全否定されプライドをズタズタにされたチカコだったが、さらに修治から「テレビの人間を半年間自分の店で丁稚奉公させるなら、番組に協力してもいい」という条件を付きつけられる。
登場人物・キャラクター
加納 チカコ (かのう ちかこ)
テレビ局「東京KEYテレビ」に勤務する、CD(チーフディレクター)を務める20代後半の女性。「稼いだ金額=能力」という絶対的な価値観を持ち、勝気な性格のため社内に敵も多い。京都に飛ばされることになったが、1年で東京に戻るため、番組スポンサーである桐生アキラの提案のもと「歳多骨董店」へのリフォーム依頼に奔走。 そこで「美が絶対的な価値基準」という歳多修治とことごとくぶつかることになる。
歳多 修治 (さいた しゅうじ)
京都にある「歳多骨董店」の長男。幼い頃に両親を亡くし、弟の歳多弦とともに骨董店の女将である祖母に引き取られた。天才的な目利きだが、放浪癖がある。美への執着が凄まじく、「美が絶対的な価値基準」という信条を持つ。また「写し」(美術品の模倣)がうまいことから、インターネット上で「第二の魯山人」と噂になったことがある。
友部 ゆみ (ともべ ゆみ)
東京の番組制作会社を退社し、現在は実家がある京都で暮らしている20代女性。京都にやって来た加納チカコのもとで半ば強制的にADとして雇われ、番組への協力の条件として「歳多骨董店」に丁稚奉公することになる。そこで歳多修治に作陶のセンスを見込まれ、彼を師と仰ぐようになる。
桐生 アキラ (きりゅう あきら)
不動産会社「桐生エステート」の社長で、若き不動産王として知られる男性。自身が取材されたTV番組で加納チカコと知り合い、自らがスポンサーとなり京都を舞台にしたリフォーム番組の担当をチカコに持ちかける。のちに秋塚と大道正悟を操り、歳多修治に美術品の「写し」(美術品の模倣)を作らせようと画策するフィクサー的存在でもある。
歳多 弦 (さいた げん)
京都にある「歳多骨董店」の次男。幼い頃に両親を亡くし、兄の歳多修治とともに骨董店の女将である祖母に引き取られた。東京の大学を出て一流商社に就職が決まっていたが、祖父が亡くなったため店を手伝うことになった。素直だが頼りない性格。店に丁稚奉公に来た友部ゆみに魅かれていく。
女将 (おかみ)
京都にある「歳多骨董店」の女将で歳多修治と歳多弦の祖母。多額の負債があるにも関わらず、加納チカコが担当するTV局のリフォーム番組の取材を、「奥でコーヒーだしまひょか」と暗に拒否し、京都の「イケズ」を見せる生粋の京女。
羽柴 直人 (はしば なおと)
テレビ局「東京KEYテレビ」に勤務する20代後半の男性。友部ゆみの彼氏だが、中学時代には加納チカコと付き合っていたことがある。職場で再会しヨリを戻そうとしてやって来たチカコを振り切ってゆみを選んだが、長期出張にあたってゆみに別れを告げるなど、本心の読めないところがある。
村崎 兵衛 (むらさき ひょうえ)
歳多修治の祖父の友人で、伊豆在住の古九谷のコレクター。修治が「写し」(美術品の模倣)の天才ということを知っており、独自の調査により修治が詐欺事件の片棒を担がされているのではないかと察していた勘の鋭い老人。「美」の追求者であり、「とっさの行動に人としての美しさが現れる」という持論を有する。
相馬 ひとみ (そうま ひとみ)
テレビ局「東京KEYテレビ」に勤務する20代の女性で、加納チカコの後輩。「頑張れば成功する」という本の愛読者にして実践者でもある。ついには自費でスタイリストとヘアメイクを付けて見た目を磨き、自分の価値が上昇したと喜ぶ、勘違いした意識高い系の女性。
壺井 久蔵 (つぼい きゅうぞう)
古書画店「壺久」を経営する老齢の男性で、壺井佐和子の夫。複数の愛人がおり家には帰らない日々を送っているが、自分の妻を寝取った修治に恥をかかせるため、偽の招待状を送りつけるなど姑息な面がある。
壺井 佐和子 (つぼい さわこ)
古書画店「壺久」の55歳の女将で、壺井久蔵の妻。売れっ子芸妓だったが20歳で久蔵に見初められて結婚し、美人女将として女性誌に取り上げられたこともある。久蔵の女遊びが激しいがゆえに、歳多修治と不倫関係になり、修治を本気で愛してしまう。
秋塚 (あきづか)
プロダクション「メディア・スペリオール」の中年男性プロデューサー。儲け話に対する嗅覚が非常に鋭く、「カネの匂いのするところに秋塚あり」といわれている。桐生アキラや大道正悟と組み、歳多弦をそそのかして歳多修治に古九谷の「写し」(美術品の模倣)を作らせ金儲けしようと企んでいる。
大道 正悟
テレビの鑑定番組で鑑定士を務める中年男性。鑑定士としての腕は確かだが、欲に目がくらんで歳多弦をそそのかし、桐生アキラや秋塚とともに歳多修治に大量の写しを作らせようと画策するタヌキ親父。
木島 (きじま)
元「歳多骨董店」の従業員で、のれん分けされ北陸で商いしている老齢の男性。信楽をわざわざ京都まで売りにやって来たが、歳多修治の術中にはまり、その言動から信楽が偽物だと見抜かれてしまう。
場所
歳多骨董店 (さいたこっとうてん)
京都の老舗骨董店で、歳多修治と歳多弦の祖母が女将を務めている。修治たちの祖父が亡くなった後、店を手伝い始めた弦が大阪に支店を出したが失敗し、経営が火の車となっている。天才的な目利きである長男の修治の発言力が強く、実質的な経営者の弦は骨董品を扱う能力に欠けるところがある。そんななか、加納チカコにテレビ番組でのリフォームの依頼を持ち掛けられ、番組に協力する交換条件として、友部ゆみが店に丁稚奉公に入ることになる。