概要・あらすじ
9歳の高梨まなは、妖怪や幽霊など、人ならざるものが見える特殊な力を持った不思議な少女。その能力のせいで、特に母親から気味悪がられ、厄介払いのために、とりあえず夏休みの間だけ、岐阜の親戚筋にあたる高梨佐吉のもとに預けられた。佐吉はその事態に動揺するものの、自分の顔色を窺うまなの様子を見て、彼女が悪いわけではないと、一緒に暮らすことを決断。
そんな佐吉はカフェ・居酒屋「ようけ」を営んでいたが、客は一向に入らず開店休業状態にあった。ところがある時、咲というセーラー服姿の少女が客として店を訪れる。彼女の正体は、お腹をすかせた稲荷神社の狐が化けた姿だった。これを皮切りに、店には次々に不思議な客が訪れるようになる。
登場人物・キャラクター
高梨 まな (たかなし まな)
9歳の少女。家庭の事情で東京から親戚筋にあたる岐阜の高梨佐吉のもとへやって来た。口数が少なめでおとなしく、他人想いの優しい性格の持ち主。妖怪や幽霊など人ならざるものの姿を見ることができる特殊な能力を持っている。その力のために両親からは厄介者扱いされ、夏休みの間、佐吉のもとに預けられた。以降、高梨まなの存在に引かれて佐吉の店に不思議な客が訪れるようになるが、いずれも金を払わない客ばかりのため、経営が立ち行かなくなるのではないかと、子供ながらに心配している。
高梨 佐吉 (たかなし さきち)
高梨まなの親戚にあたる青年。岐阜県えび川町でカフェ・居酒屋「ようけ」を営んでいる。ぶっきらぼうだが気は優しく、また職業柄料理上手で、スイーツから酒のつまみまで何でも器用に作ることができる。透かして覗いて見ると、真実の姿を映し出すという不思議な櫛を肌身離さず持っている。もともと店が開店休業状態だったこともあり、まなの存在に引かれて、人ならざるものが頻繁に店を訪れるようになったことを歓迎している。 かつて幼い娘を亡くしている。
咲 (さき)
カフェ・居酒屋「ようけ」に食事をするために来た、セーラー服姿の少女。その正体は、近所の稲荷神社の狐。最近、お供えをくれる人が少なく、あまりの空腹に耐えかねて店を訪れた。食事をした後に払った金が葉っぱだったことで正体が明らかになり、叱られることを怖れていたが、高梨佐吉の厚意により、高梨まなの相手をすることを条件に、いつでも食事に来ることが認められた。 そのため、何かと店に顔を出すことが多い。
うめこ
古めかしい柄の浴衣を着たおかっぱ頭の少女。その正体は、高梨まなの祖母の家に棲みついている座敷童。かつて、自分の母親が作ってくれた「甘くて黄色くて冷たいもの」を欲して、カフェ・居酒屋「ようけ」の高梨佐吉のもとを訪れる。出されたプリンアラモードを喜んで食べたが、うめこ自身が求めていたものとは違うことがわかり、佐吉から促されて翌日出直すことになる。
雅太郎 (がたろう)
咲に連れられてカフェ・居酒屋「ようけ」を訪れた少年。その正体はカワエロ(河童)。来るべきお盆に備えて、精霊馬に使われたナスやキュウリのおいしい調理方法が知りたいと高梨佐吉を頼って来た。イカと合わせた調理方法を教えてもらったものの、イカの入手が難しかったため、それとは別に高梨まなからちくわと合わせた調理方法を教えてもらう。
狸 (たぬき)
谷汲山華厳寺に姿を現した小さな女の子。自らを狸であると語り、1人でいた高梨まなに話しかけて来た。同じくらいの歳の子がおらず、また自分に気付いてくれる人間もほとんどいなかったため寂しい思いをしていた。そこへやって来たまなが、珍しく自分のことが見える人間であることに気付き、「だるまさんがころんだ」をして一緒に遊ぶ。 まなが母親とともに作ったシュシュで髪を結んでいることをうらやましく思っている。
ハエ
カフェ・居酒屋「ようけ」を訪れた、鱗模様の着物を着た複数の女性たち。その正体は「ハエ」と呼ばれる魚で、地域によっては「ハヤ」「オイカワ」「ヤマベ」などと呼ばれることもある。店に入って来るなり騒がしく、店や、店主の高梨佐吉について文句ばかり言う。
オイタババ
カフェ・居酒屋「ようけ」を訪れた、あでやかな着物を着た長い髪の美人。実はハエと同じ魚だが、夏になると雄だけが変化する婚姻色と呼ばれる派手な色になった姿をしている。数少ない雄を求めて群がる雌のにぎやかさに疲れ、高梨まなのもとを訪れた。
竜神 (りゅうじん)
「夜叉が池」から突然姿を現した男性で、「夜叉が池」を守る竜神。高梨佐吉が雨を欲する言葉を口にしたことを聞き、勝手に雨を降らせ、その願いを叶えた。その代償として高梨まなをもらい受けると言い放ち、勝手にまなを連れ去った。そのうえ、まなを竜にし、自分の嫁にして永遠に「夜叉が池」に住まわせようとしている。
おかあちゃん
竜神の母親。夜叉が池に古くから伝わる伝説に登場する女性。雨乞いの代償として、竜にさらわれた悲劇の姫として語られていたが、真実は違っており、自ら願って竜のもとへ嫁いだ。息子の竜神が勘違いをし、勝手な振る舞いをしたことを叱りつけるために姿を現す。