あらすじ
第1巻
日本には古くから森羅万象に神が宿るという信仰があり、それは料理も同じだった。全国各地にある郷土料理には小さな女神が宿っており、彼女たちは一部の人間から「神しゃま」と呼ばれていた。「ますの寿司」から「トルコライス」まで、あらゆる地方の郷土料理に宿る神しゃまたちは、自分が宿っている郷土料理の特徴を詳しく解説し、時には体を張りながらも楽しく暮らしていた。そんな神しゃまたちのあいだで、ふつうは見えない神しゃまの姿を見たり会話したりすることができ、さらにはコレクションしていっしょに暮らしている女子高校生、出雲ななの噂が流れていた。ななとその家族によって集められた神しゃまたちは、ななのもとでいつも宴会をしながら、楽しい暮らしを送っているという。ななの噂話で盛り上がり、興味を持った鱒子たちは、ななに見つけてもらうために東京へ向かうのだった。
第2巻
郷土料理に宿った神しゃまを見ることができる出雲ななには、各地で見つけた神しゃまを家に集めてコレクションする趣味を持っていた。そんなある日、ななは近くにいる神しゃまを察知する「神しゃまアンテナ」で、新たな神しゃまの存在に気づく。アンテナが指す方向を辿りながら、全国の郷土料理を出している店がたくさん集まる銀座を訪れたななは、ある店で宮城県の郷土料理「はらこ飯」の神しゃまと出会う。新たなコレクションを増やして喜ぶななは、さらなる神しゃまとの出会いを求めて、なかよくなった神しゃまから仲間の情報を得る。そして静岡の郷土料理に宿る神しゃまが、歌舞伎町にいると知ったななは次の休みにさっそく歌舞伎町へ出かける。慣れない歌舞伎町を歩く中、神しゃまの気配を察知したななは郷土料理店に入り、「静岡おでん」の神しゃまと出会う。静岡おでんの味を堪能したななだったが、静岡おでんの神しゃまがどうしても紹介したいという新たな神しゃまと会うため、ななは浜松に行くことになる。しかし交通費が足りず、ななの母に小遣いをもらって浜松へと向かうが、出雲大樹はななが小遣いをねだる様子を見ていた。そして、大樹はななを追って浜松へと向かうが、彼の本当の目的は静岡のある路線で「乗り鉄」を楽しむことだった。
第3巻
静岡から帰宅した出雲ななと出雲大樹は、道中で出会った神しゃまを三人ずつ連れていた。出雲家にはこれで六人もの神しゃまが同居し、ななの神しゃまコレクションはますますにぎやかになっていく。実はななと大樹が遠出しているあいだに、ななの母も新しい神しゃまと出会っていた。それはカタログギフトで届いたお鍋セットの「広島の水軍鍋」に宿っていた神しゃまで、彼女はちょっと強気な性格の、酒に弱い広島県の神しゃまだった。ななたちに水軍鍋の特徴を解説してなかよくなった水軍鍋の神しゃまも、出雲家の新たなコレクションに加わるのだった。そんな中、ななはコレクションした神しゃまたちを住まわせるための、ドールハウスが不足していることに悩んでいた。ますます増えていく神しゃまたちのために、ななは出雲修一に頼んで新たなドールハウスを注文してもらうことにする。出雲家の家長である修一の実家は代々神社の家系で、ななたちが神しゃまを見たり会話できたりするのは、その血筋を受け継いでいるためだった。そんな出雲家に神しゃまがどんどん集まるのを喜ぶと同時に、負けていられないと意気込んだ修一は、仕事帰りに新たな神しゃまを見つけようと街に繰り出す。そして修一はある店で神しゃまの気配を感じ取り、袋井市の郷土料理「たまごふわふわ」を注文する。
登場人物・キャラクター
出雲 なな (いずも なな)
東京に住むグルメ好きの女子高校生。茶髪のセミロングで、頭の左側に赤いシュシュを付けている。神しゃまの姿を見たり会話できたりする数少ない人間で、各地で郷土料理巡りをする中で、なかよくなった神しゃまを自宅に連れ帰り、自室のドールハウスに住まわせてコレクションしている。その噂が鱒子たちのあいだで話題になり、自ら東京にやって来た彼女たちともなかよくなった。神しゃまの気配を察知できる「神しゃまアンテナ」を頭に備え、察知すると頭髪の一部がアホ毛のようになって反応する。新たな神しゃまとの出会いを求めてあちこち遠出しているため、いつも金欠気味。さらなる神しゃまとの出会いを求めて歌舞伎町を訪れていたところで「静岡おでんの神しゃま」と出会い、彼女の紹介を受けて浜松へ向かうことになる。静岡で出会った三人の神しゃまを連れ帰ったあとは、ななの母と大樹と共に群馬旅行に行き、高崎で群馬名物の神しゃまたちと出会う。
出雲 大樹 (いずも ひろき)
出雲ななの弟で、高校受験を控えた中学3年生。眼鏡を掛けた生まじめそうな美少年だが、実は根っからの鉄道オタクで、あらゆる鉄道車両および路線に乗ることが趣味の「乗り鉄」。ななと同様に神しゃまを見ることができ、鉄道とつながりがあるグルメにも関心を持つ。しかしそれ以上に鉄道に夢中で、神しゃまたちからはいつも呆れられている。ななが浜松へ神しゃま探しに行くためにななの母に小遣いをもらっている様子を見て、ななを追って浜松へと向かう。その後もななの神しゃま探しに便乗して旅を続けるが、本当の目的は大井川鐵道本線を走る「C11型」に乗ることだった。この旅の中で駅弁に宿る神しゃまたちと出会い、三人の神しゃまを家に連れ帰った。
ななの母 (ななのはは)
出雲ななと出雲大樹の母親で、眼鏡を掛けている。昔は出雲修一の実家の神社で巫女を務めていた影響で、家族と同様に神しゃまを見ることができる。ふだんはふつうの主婦だが、グルメ好きで神しゃま集めにも興味を持っている。その一方で、神しゃま探しや鉄道のために頻繁に小遣いをせがんでくる二人には、少々悩まされている。
出雲 修一 (いずも しゅういち)
出雲ななと出雲大樹の父親で、サラリーマンをしている。見た目はふつうの男性だが、実家は島根県で代々神社をやっている家系で、幼い頃から神しゃまを見ることができる。その血筋を受け継いだ家族と共に神しゃま探しに夢中になっており、集めた神しゃまをコレクションするためのドールハウスをネット通販で購入している。ななたちに負けまいと、仕事帰りに神しゃま探しをしていたところでふわふわ子と出会う。グルメや神しゃま探しを心から楽しんでいるが、出会った神しゃまとの会話に夢中になり過ぎて、周囲の人たちからは料理と会話しているようにしか見えず、変な誤解を受けることがある。
鱒子 (ますこ)
富山県の郷土料理「ますの寿司」に宿る神しゃま。鱒の頭部を帽子のようにかぶった、桃色ロングヘアの女性の姿をしている。古風な口調で話し、少々照れ屋な性格の持ち主。ふだんは大きな笹の葉で全身を覆っているが、葉の下には鱒の切り身で作ったピンクのビキニを着ている。出雲ななの噂を聞きつけ、ほかの神しゃまと共に東京へ向かい、彼女となかよくなった。
どぜう 鍋美 (どぜう なべみ)
東京浅草駒形発祥の郷土料理「どじょう鍋(どぜう鍋)」に宿っている神しゃま。頭にネギの輪切りを乗せた眼鏡っ娘の姿をしている。黄緑色のツインテールの髪型で、「どぜう」と書かれた白いTシャツとスクール水着を身につけ、複数のドジョウを連れている。出雲ななの噂を聞きつけ、ほかの神しゃまと共に東京へ向かい、彼女となかよくなった。
森野 いかめし奈 (もりの いかめしな)
北海道函館地方の郷土料理「いかめし」に宿っている神しゃま。イカの頭型の帽子をかぶり、ゲソ型のブーツをはいた女性の姿をしている。水色のショートカットで、クールな性格の持ち主。出雲ななの噂を聞きつけ、ほかの神しゃまと共に東京へ向かい、彼女となかよくなった。
しゃこ うに子 (しゃこ うにこ)
小樽積丹地方の郷土料理「うに丼」に宿っている神しゃま。茶碗を頭に乗せた女性の姿をしている。朱色のツインテールの髪型で、左右にウニ型のヘアアクセサリーを付けている。ウニのトゲトゲしたイメージからツンデレや勝気な性格と思われがちだが、いつも乱暴にかき混ぜられているため、実際の性格はドM。出雲ななの噂を聞きつけ、ほかの神しゃまと共に東京へ向かい、彼女となかよくなった。
せんべい ジルコ
青森県八戸の郷土料理「せんべい汁」に宿っている神しゃま。頭に黒いニワトリの被り物をかぶった、男勝りな女性の姿をしている。赤毛のセミロングで、かなり強い訛り口調で話す。胸元はせんべい汁に使われる「かきやせんべい」でできた服で隠している。出雲ななの噂を聞きつけ、ほかの神しゃまと共に東京へ向かい、彼女となかよくなった。
トランスフォーム はり子 (とらんすふぉーむ はりこ)
和歌山県熊野地方の郷土料理「めはり寿司」に宿っている神しゃま。高菜とシャリでできた露出の多い服を身につけた女性の姿をしている。金髪のロングヘアで、高菜のヘアバンドを付けている。「ですよー」が口癖で、恥ずかしくなると高菜の衣に全身をくるんで丸まる癖がある。出雲ななの噂を聞きつけ、ほかの神しゃまと共に東京へ向かい、彼女となかよくなった。
真黒 黒助子 (まくろ くろすけこ)
沖縄の郷土料理「イカスミソーミンチャンプルー」に宿っている神しゃま。イカ型の帽子と黒っぽい迷彩服をまとった女性の姿をしている。黒髪のボブカットの髪型で、迷彩服をまとっているために、サバイバルゲーム好きのミリタリー女子とカンちがいされることが多い。出雲ななの噂を聞きつけ、ほかの神しゃまと共に東京へ向かい、彼女となかよくなった。
冷瀬 夏葉 (ひやせ なつは)
宮崎県の郷土料理「冷や汁」に宿っている神しゃま。背中にアジの干物を背負った女性の姿をしている。濃い桃色のロングヘアで、頭に白米でできた帽子をかぶっている。冷や汁が夏の名物料理であることから、いつもセミのまねをしている。
区斜井 おん奈 (くしゃい おんな)
東京都八丈島の郷土料理「くさや」に宿っている神しゃま。金髪ポニーテールの髪型で、緑色のリボンを付けた女性の姿をしている。栄養豊富でおいしいくさやの神しゃまであるにもかかわらず、独特の強烈な臭いが災いし、人々から避けられがちなのを悩んでいる。
舌塩邪 ない代 (たんしおじゃ ないよ)
仙台の郷土料理「牛タン焼き」に宿っている神しゃま。黒い牛の被り物をかぶった女性の姿をしている。桃色のショートカットで、黒い毛皮のミニスカートとブーツをはいている。実は猫舌だが、すぐに忘れて熱いテールスープを一気飲みしてしまうことが多い。
ぷるぷる美 (ぷるぷるみ)
秋田県三種町の郷土料理「じゅんさい鍋」に宿っている神しゃま。頭にじゅんさい鍋を乗せた田舎娘の姿をしている。深緑のストレートヘアで、ゼリー状のぬめりに覆われた水草の新芽の服を身につけている。半透明のセクシーな服を着ているため誤解されやすいが、非常に純粋でまじめな性格をしている。
ふわふわ子 (ふわふわこ)
静岡県袋井市の郷土料理「たまごふわふわ」に宿っている神しゃま。ゆで卵のような服を身につけた小柄な少女の姿をしている。前髪を切りそろえた金髪のセミロングで、頭にいり卵のような帽子をかぶっている。仕事帰りに神しゃま探しをしていた出雲修一と出会い、なかよくなった。
やきまんじゅ
群馬県の郷土料理「焼きまんじゅう」に宿っている神しゃま。赤い前かけをした少女の姿をしている。淡い茶髪のボブカットの髪型で、頭には焼きまんじゅうのタレがかかっている。前橋にある「原嶋屋」を訪れていた出雲ななとななの母に出会い、同じ群馬名物の神しゃまである「ひもかわうどん」の神しゃまを紹介した。
おっきー
群馬県の郷土料理「おっきりこみ」に宿っている神しゃま。黒髪で眼鏡を掛けた田舎娘の姿をしている。ふだんは群馬名物が集まる「新田乃庄」に住んでいる。やきまんじゅの紹介を受け、出雲ななとななの母に出会ってなかよくなった。
集団・組織
主役が三人もイルンデーズ (しゅやくがさんにんもいるんでーず)
長崎県民のソウルフード「トルコライス」に宿っている神しゃま。ピラフの「白井比羅ふう」、トンカツの「勝れつ葉」、ナポリタンの「奈保利たんな」の三人組による女性グループ。一見なかよしグループに見えるが、トルコライスの主役の座を巡って日々争っているために仲が非常に悪く、いつもケンカしている。出雲ななの噂を聞きつけ、ほかの神しゃまと共に東京へ行き、彼女となかよくなった。
その他キーワード
神しゃま (かみしゃま)
日本のあらゆる郷土料理に宿っている女神。いずれも人形くらいの小さな女性や少女の姿をしており、「食の神しゃま」と呼ばれることもある。宿っている郷土料理に合わせた名前や見た目、性格を持ち、その郷土料理の特徴を詳しく解説する。時折料理を食べた人たちの前に姿を現すこともあるが、大半の人たちからはその姿は見えない。また料理上手で、日々の料理を手伝ってくれるためにななの母からは感謝されている。