あらすじ
わらしと金剛(第1話~第11話)
妖怪屈指の実力者である大天狗の金剛は、敵対する巨大妖怪組織「百鬼夜行」を壊滅させることに成功する。帰途についた金剛は、そこで座敷童のわらしに一方的に懐かれ、成り行きから同居することになってしまう。いたずら好きで自由奔放なわらしに翻弄されつつも、わらしの世話をすることも板についてきた金剛は、自分でも知らぬ間に「百鬼夜行」を壊滅に追い込んだ大妖怪として有名な存在となっていた。金剛はわらしと暮らす中で、金剛を倒してその実力を示し、「百鬼夜行」の新たなボスになり替わろうとする妖怪や、周りの者を幸福にするわらしの能力を利用しようとする妖怪たちを撃退する日々を送るようになる。そんなある日、金剛とわらしが暮らす屋敷に、突如としてもう一人の座敷童、ヒメと、その執事である鬼童丸が現れた。ヒメはわらしに自分たちのもとに来るように申し出るが、二人のただならぬ気配を察知した金剛がそれを拒否。しかし、同じ座敷童であるヒメに興味を抱いたわらしは、必死に引き止めようとする金剛をよそに、ヒメと共に姿をくらましてしまう。すぐにわらしを探そうとする金剛の前に鬼童丸が現れ、座敷童は誰かに守られていないと生きていけず、弱い存在であることを告げる。鬼童丸は、金剛とわらしが築き上げてきた絆(きずな)を信頼し、わらしを残してヒメと共に屋敷を去る。鬼童丸から認められた金剛は、それまでと同じように妖怪を倒しつつ、わらしの世話をする平穏な日常を続けるのだった。
わらしと保護者と契約者(第12話~第15話)
妖怪退治とわらしの世話をする二足の草鞋生活を続けていた金剛のもとに、2年前までわらしといっしょに暮らしていたという人間、朝良優心が突然姿を現す。優心はわらしの本来の契約者は自分であることを主張したうえで、金剛からわらしを引き取ろうとする。神通力でわらしと優心の幸せな過去の生活を知った金剛は、自分の役割が終わったことを悟り、素直にわらしを引き渡す。しかし、直後に訪れた貧乏神の杏朱から、優心の体に多くの人間の恨みがまとわりついていることを知らされた金剛は、妖術で謀(はか)られたことに気づき、すぐにわらしの救出に向かう。優心の住むマンションに突撃した金剛は、自分を騙(だま)していたのが、秘書の立場で優心をあやつっていた妖怪の九尾であることを看破。わらしの力を得て妖力を増幅し、人間界を支配しようとする九尾の野望を阻止するため、金剛はわらしと契約を交わす。わらしの力で強大な神通力を得た金剛は、その正体を現した九尾をすべての力を込めた拳によって葬り去るのだった。
登場人物・キャラクター
金剛 (こんごう)
破壊的な力を誇る大天狗。口元だけ出した赤い仮面で顔を覆っている。筋骨隆々で強面(こわもて)の男性で、水色の髪を持つ。並外れた神通力と筋力の持ち主。本当の名前は「金剛天狗」。無口かつ無骨な性格で、一匹狼の妖怪として山奥の屋敷に住み、妖怪専門人材派遣会社でアルバイトをしている。人間社会に紛れ、人間として振る舞う時は、口元を黒いマスクで隠した姿になる。見た目に似合わず、家事を器用にこなす。元は人間だったが、大切な人を失ったことがきっかけで妖怪となった。妖怪化してからすでに200年が経過しており、幾千幾万といる妖怪の中でも有数の実力者となっている。その目に睨(にら)まれた者は、指一本動かせなくなるほどの金縛りに遭う。巨大妖怪組織「百鬼夜行」のリーダーを務めるぬらりひょんからも一目置かれ、仲間になるように誘われていたほどだったが、これを拒否したうえで「百鬼夜行」を壊滅させた。その帰途で出会った座敷童のわらしに懐かれてしまい、いっしょに暮らすことになる。当初は一時的な保護のつもりでわらしと暮らしていたが、わらしのわがままにも振り回されっぱなしだった。しかし、なんでもない平和な日常を過ごすうちに、やがてわらしのことが金剛の中で何よりもかけがえのない存在となっていく。「百鬼夜行」のリーダーであったぬらりひょんを倒したことで、ほかの妖怪から狙われる存在となってしまったが、金剛本人は一向に気にすることなく、襲撃してくる妖怪を倒し続けていた。修得している神通力は豊富で、相手の記憶を探る「宿命通」、大岩をも砕く「天覇」などを使用する。また、屈強で神通力を使わなくても、鍛え抜いた体のみで妖怪を倒すこともできる。
わらし
座敷童の幼い女の子。緑髪のおかっぱ頭に、まつぼっくり状のものを乗せている。いたずら好きで自由奔放な性格をしている。いるだけで周囲の人間を幸福するという特殊能力の持ち主で、家に住み着けばその一族に、人につけばその個人に幸運をもたらす。また、心を通わせた者と契約することができ、契約者には多大な幸運のパワーをもたらすことができる。巨大妖怪組織「百鬼夜行」を壊滅させ、帰途についた大天狗の金剛に懐いて離れず、そのまま同居することになった。金剛との同居後は、わがままで無邪気な振る舞いを繰り返し、子供に不慣れな金剛を日々振り回していた。純粋で疑うことを知らないため、時に金剛を倒そうとする妖怪に味方してしまうこともあった。不器用だが優しい金剛と暮らすうちに、彼のことがかけがえのない存在になり、わらし自身の意思も明確になっていく。2年前までは人間の朝良優心といっしょに暮し、ずっと優心と契約状態にあった。大妖怪の九尾が金剛と対決した際に金剛と契約し、彼に無限大のパワーを与える。
ヒメ
座敷童の幼い女の子。ロングヘアのツインテールの髪型で、ゴスロリ調の黒ドレスを着込んでいる。気位が高いが、気遣いができるうえに心優しい性格の持ち主。お嬢様口調で話すのが特徴で、好きな食べ物はイチゴ。バレエを得意としている。周囲の人間を幸せにする特殊能力を持っている。西の地に座敷童が出現したという噂(うわさ)を聞きつけ、執事の鬼童丸と共に金剛とわらしの前に姿を現し、わらしを自分たちといっしょに行動するように誘っていた。初対面のわらしともすぐに打ち解け、なかよくなっていた。鬼童丸からは非常に大事にされており、ピンチの際は鬼童丸にヒメ自身のご利益を与え、パワーアップさせていた。
鬼童丸 (きどうまる)
額に黒い角を生やした屈強な鬼。左目を眼帯で覆い、タキシードを身にまとっている。紳士的な振る舞いと口調が特徴で、落ち着いたクールな性格をしている。東国に住む座敷童、ヒメの執事を務めており、彼女の身の回りの世話や護衛を任されている。周囲に幸せをもたらす座敷童のパワーが、ほかの妖怪や悪人に利用されることを危惧しており、もう一人の座敷童であるわらしを保護するために金剛のもとに姿を現した。しかし、わらしと暮らす金剛の人となりを自らの目で確かめたことで、わらしを金剛に託すことを決める。ふだんはクールだがヒメに対しては超過保護に接している。ヒメがかわいいポーズを取るたびに、その姿を記録しようとひたすら撮影に励んでいる。また、ヒメがピンチに陥るといつもの冷静な態度が鳴りを潜め、まるでチンピラのような口調で荒れ狂ってしまう。
杏朱 (あんず)
貧乏神の若い女性。眼鏡をかけたグラマラスな体型をしている。恥ずかしがり屋で、引っ込み思案な性格の持ち主。周りの人間のあらゆる負の感情を浄化し、福に変える特殊能力を持つ。ただし、負の感情が浄化しきれないと、杏朱自身が周りを不幸に巻き込んでしまう。ふだんは貧乏神神社で暮らしており、参拝者の負のエネルギーを福へ変えている。男性アイドルグループ「KINKI&BURI」が大好きで、特にメンバーの黒瀧舞人をデビュー時からずっと推している。「KINKI&BURI」のコンサートチケットが当たったが、自らの能力が発動してメンバーたちが不幸になることを恐れていた。不測の事態が起こらないようにするため、座敷童のわらしをコンサートに連れていくことを金剛にお願いし、了承を得ていた。その後は、金剛たちと親友や家族のような付き合いをすることになる。
九尾 (きゅうび)
狐の大妖怪。スーパーモデルのようなスタイル抜群の美しい女性。足元まで伸びたロングヘアで、計算高くて冷酷非情な性格をしている。自分の意に従わない者は容赦なく痛めつける破壊者。強大な妖力を駆使して、人間界を支配しようともくろんでいる。幸運をもたらすわらしの力を手に入れるため、わらしの契約者だった朝良優心の秘書、「日尾」となり、妖術で金剛を謀って金剛とわらしを引き離すことに成功する。利用価値がなくなった優心を捨て、九尾自身がわらしの契約者になり替わろうとするが、金剛によって阻止された。最終的に巨大な妖獣へと変化して金剛と激突するが、わらしの新たな契約者となり大幅にパワーアップした金剛によって撃滅される。
朝良 優心 (あさよし ゆうしん)
不動産会社を経営している青年実業家。長身で、清潔感のある小ぎれいな身なりをしている。物腰は柔らかく紳士的だが、裏ではミスをした部下に暴力を振るって虐待する冷酷なサディスト。朝良優心にかかわった人々を不幸に陥れてきた過去を持ち、多くの人から恨まれている。わらしと契約している契約者で、そのおかげて多大な幸運のパワーを得ている。2年前までいっしょにわらしと生活していたが、突如としていなくなったわらしを、秘書の「日尾」といっしょに探し続けていた。わらしの幸運パワーで多くの財を成し、半永久的な若さも手に入れていたが、その正体を現した九尾により強引に契約を解除され、本来の年齢相応であるしわがれた老人になってしまう。わらしとは幼少の頃に出会い、かつては心が通じ合う親友同士だった。
ぬらりひょん
強大な妖怪の男性。禿(は)げ頭に和服を身につけている。巨大妖怪組織「百鬼夜行」を率いるリーダー格の妖怪で、はぐれ妖怪である金剛の力を認め、「百鬼夜行」の仲間として引き入れようとしていた。誘いを拒否した金剛に組織をあげて襲い掛かるが、完膚なきまでに叩(たた)きのめされてしまう。
トアラ
猫又の女の子。メッシュが入った髪から突き出た猫耳と、オッドアイの瞳の持ち主。欲望に忠実で、思いついたらすぐに行動に移るアクティブな性格をしている。「マジ」が口癖。座敷童の能力でお金を出してもらおうと考えており、仲間のキイチを強引に引き連れ、金剛の留守中にわらしを拉致しようと画策する。キイチと合体することで、大きな猫の姿をした完全体へと変身できる。わらしの捕獲に手間どっているあいだに帰宅した金剛により、一撃で倒されてしまう。
キイチ
猫又の男の子。メッシュが入った髪から突き出た猫耳と、オッドアイの瞳の持ち主。口数が少なく、やる気が感じられない怠惰な性格をしている。携帯ゲームを肌身離さず持ち歩き、ゲームをプレイしながら、口うるさいトアラの話に適当に相槌(あいづち)を打っている。己の欲望のためにわらしを拉致しようとするトアラに無理やり突き合わされていた。トアラと合体することで大きな猫の姿をした完全体へと変身できる。わらしの捕獲には消極的で、彼女といっしょにかくれんぼなどで遊んでいたが、その時にわらしによって偶然ゲーム機を壊されたため、トアラに協力するようになった。わらしの捕獲に手間どっているあいだに帰宅した金剛により、一撃で倒されてしまう。
アマビエ
予言の能力を持つ妖怪の男性。ヒヨコに似たくちばしと丸い体に、長い髪を生やした独特な容姿をしている。語尾に「~ッス」と付けるのが特徴。明るい性格のお調子者で、他人の喜ぶ顔が大好き。災いを予言し、人々を救える一人前の「アマビエ」になるため、人間社会で修行を重ねている。ふだんは「アマズエビオ」と名乗り、占い師として生計を立てている。店を訪れたわらしを占った際に金剛と出会い、その予言の力を金剛に認められていた。
黒瀧 舞人 (くろたき まひと)
男性アイドルグループ「KINKI&BURI」のメンバーの男性。さわやかな風貌をしたスリムなイケメン。優れた容姿とアイドル性で「KINKI&BURI」内でも高い人気を誇っている。その美しい瞳で見つめられると、男女を問わず魅了されてしまう。実は人間ではなく烏(からす)天狗という妖怪で、本業は妖怪警察公安警備捜査課特別班に所属している妖怪専門の警察官。妖怪に対する傷害・暴行罪、さらにわらしの拉致監禁罪の容疑をかけられた金剛を逮捕するために対決するが、金剛の圧倒的な力の前に完敗を喫する。
枕返し (まくらがえし)
寝ている人間の枕をひっくり返す妖怪。太った体に赤い顔をした巨漢の男性で、商魂たくましい性格をしている。人間社会で安眠枕を販売する会社を経営しており、自社開発した安眠枕を売りさばくため、町中の人間のすべての枕をひっくり返して体調不良にしようとしていた。その悪だくみを知ったわらしとヒメによって倒される。
牛鬼 (ぎゅうき)
鬼の一種で、凶悪な牛の顔をした鬼の男性。巨大妖怪組織「百鬼夜行」の一員で、組織の幹部を務めている。ぬらりひょんと共に、「百鬼夜行」と対立した金剛と戦うが、瞬時に倒されてしまう。組織壊滅後も単独で金剛に挑むが、ほとんど相手にされなかった。わらしと暮らしたことで金剛の心境が変化したことに気づく。