契約から始まるラブストーリー
鳴かず飛ばずの売れない漫画家・久我一郎は、亡くなった父親の代わりにまだ幼い妹弟を養っている苦労人。妹弟が一番大事という、そんな久我のもとに、美人の敏腕アシスタント・五色しおりが現れるところから物語が始まる。そして、徹夜作業の修羅場明けに寝ぼけた久我がしおりに触れたことで、彼女の持つ謎の棘に刺されてしまう。実はしおりは異種族「流れ星の民」の姫であり、彼女と棘でつながるということは婚姻関係の契約を意味していた。だが、事故による婚姻はしおり自身にとっても本意ではなかったため、これをきっかけに二人は、恋愛を始めることから関係をスタートさせることになる。
流れ星の民の姫
喚姫島で生まれ育った五色しおりは、流れ星の民の姫の三代目である。現在の島は、二代目の姫にして、しおりの母親である都が治めている。初代はしおりの祖母にあたる文で、地上に飛来した星をその身で受け止めた当時6歳の文が、微生物との共生と引き換えに「愛にあふれた平和な島で姫になりたい」と望んだことが始まりとされている。以降、喚姫島の島民は代々の姫を信仰の対象としており、五色家に対する信仰心と島民同士の絆はゆるぎなく強い。晩年の文は、自らが作り上げたものに後悔し、しおりも姫として人々を支配する存在であり続けることに否定的な考えを持つようになったが、都からは三代目として代替わりを求められている状況。なお、代々の姫には棘があり、棘でつながった相手とは婚姻契約が結ばれる。これは、物理的に二人の距離が離れたり、姫の精神状態が悪くなったり、許可なく姫に触れたりすると相手側に体調不良が現れ、行動が著しく制限されることになるという、基本的に姫側だけが保護される不平等な契約となっている。
恋愛初心者同士、結婚前提のお付き合い
いつも妹弟のことだけを考え、生活を支えるために漫画を描き続けてきた久我一郎は、もちろん恋愛も未経験。一方の五色しおりも閉鎖的な島育ちの世間知らずなお姫様のために恋愛経験は皆無で、大人になってから読み始めた漫画だけがバイブルという状況だった。そんな久我としおりは、棘による不平等な婚姻契約が結ばれた状態で共同生活を始め、試行錯誤しながらゆっくりと関係を深めていく。恋愛に不器用ながらも互いをいたわり、理解しようと努力しつつ真っすぐに思い合う二人と、そんな彼らを見守る人々との心温まるエピソードが描かれる。
登場人物・キャラクター
久我 一郎 (くが いちろう)
漫画家を生業とする男性。ペンネームは「ここねモモティ」。高校卒業後に漫画家デビューを果たすものの父親が他界し、久我一郎自身の連載による原稿収入と、遺(のこ)されたアパートの家賃収入で生活費を賄いつつ、妹のまちと弟のふみおの面倒を見ながら生活を送っている。資産であるアパートは、プライベートスペースのほかにキッチンなどの共用部分があるソーシャルアパートで、一郎自身もそのアパートで暮らしつつ、大家を務めている。漫画家としてはそれほど売れていないが、一応は連載を持っているため、アシスタントも雇っている。しかし、アシスタントが続々とデビューしたことで誰もいなくなり、困っていたところ急遽(きゅうきょ)やって来た五色しおりに助けられることとなった。誠実で心優しい性格をしている。もともと人を頼ることが苦手で、何事も自分一人で頑張ろうとして無理をしてしまうタイプ。妹弟の親代わりとして、二人の大学進学費用を貯金するため、つねに自分の望みを二の次にして仕事に明け暮れている。ある時、しおりの体から生えた棘(とげ)に触れたことで、流れ星の民の姫である彼女と、意図せず婚姻関係の契約を交わしたことになった。それ以来、肉体はしおりの支配下となり、しおりと物理的距離が離れると発熱など身体に不調をきたすため、症状を緩和させるには、しおりと接触することが必要となる。これをきっかけに彼女への恋心を自覚し、恋愛初心者ながら恋愛を始めてみることにする。
五色 しおり (ごしき しおり)
漫画家、久我一郎のアシスタントとして、久我家にやって来た美しい女性。年齢は19歳。アシスタントとはいっても独学で、少女まんがの描き方を記した昭和発行の古本を読んだり、作品を模写していただけ。プロの漫画家のアシスタントは初めてながら、仕事は丁寧で早い。もともと19歳になるまで漫画を読んだことがなかったが、祖母が集めた蔵書を見せてもらったことで漫画への興味を強く抱くようになった。蔵書の中には久我の作品もあり、それを読んで以来彼のファンとなった。宇宙から流れ着いた異種族「流れ星の民」の姫を自称しており、腰のあたりから鋭い棘が生えている。隕石(いんせき)と共にやって来た微生物のようなものと共生をはじめた初代が祖母に当たり、五色しおり自身は3代目。もともと親の選んだ相手と結婚するはずだったが、読んだ漫画から自由な恋愛や人生の素晴らしさを学び、生まれ育った喚姫島を出ることを決めた。棘でつながった相手と婚姻関係が結ばれることが、民族のしきたりによって決められているが、ある時、久我と棘でつながってしまう事故が発生。だが、突発的な事故で結婚することは自らも望んでおらず、これをきっかけに久我と恋愛することから始めることとなる。とはいえ、実際に婚姻関係が成立している状況にあり、久我と物理的距離が離れると久我が発熱するなど体に不調をきたしてしまうため、以降は久我が管理するアパートに入居し、生活を共にするようになった。その後、久我に対する恋心を自覚し、久我からの同意を得て改めて交際をスタートさせる。
書誌情報
おとなりに銀河 6巻 講談社〈アフタヌーンKC〉
第1巻
(2020-11-06発行、 978-4065214374)
第2巻
(2021-05-07発行、 978-4065232248)
第3巻
(2021-11-05発行、 978-4065259337)
第4巻
(2022-05-06発行、 978-4065278277)
第5巻
(2022-11-07発行、 978-4065296516)
第6巻
(2023-07-06発行、 978-4065321638)