おむすびの転がる町

おむすびの転がる町

坂道を転がるおむすびを追いかけ、昔話さながらにお礼目当てでねずみの穴を探す少女を描いた表題作「おむすびの転がる町」のほか、少し不思議な日常体験をやさしいタッチで描いた短編集。「楽園」「楽園 WEB増刊」に2019年に掲載された作品。コミックスには、「生活考察」2018年Vol.06、「現代思想」2019年7月号に掲載された「架空の通学路について」という2篇のイラストエッセイ、さらに日記と解題も収録されている。

正式名称
おむすびの転がる町
ふりがな
おむすびのころがるまち
作者
ジャンル
日常
レーベル
白泉社
関連商品
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あらすじ

第1巻

ある日の心地よい昼下がり、公園のベンチに座って缶ドリンクを飲んでいた少女は、坂道を転がるおむすびと、それを追いかける少年を目撃。それを見て昔話の「おむすびころりん」かと思わず呟(つぶや)いた少女は、少年がつづらを手にして戻って来るのを目にし、本物のおむすびころりんだと驚く。この町にねずみの穴があると考えた少女は、坂道におむすびを転がして、ねずみの穴の場所を突き止めようとする。しかし、食べ物を粗末にすることに気が引けて、まずは空き缶や野球ボールを転がしてみる。だが、空き缶や野球ボールとおむすびでは、その形状の違いによって転がる道筋が変わるため、正確な検証ができなかった。そこで少女は紙粘土で三角形のおむすびの模型を作り、再度実験と調査を繰り返す。その結果、ついにねずみの穴を発見するのだった。模型のおむすびを齧(かじ)って、それがイタズラだと知り、怒って穴から出てきたねずみに、少女は用意しておいた本物のおむすびを手渡す。そのお礼として少女がねずみから受け取ったつづらは、お中元のジュースセットだった。ねずみの話によると、人間の食生活の多様化が進み、転がってくるおむすびの量は長年減少傾向にあるらしい。そこでねずみは、現代人が小銭を落としがちなことに気づき、転がってきた小銭を使ってジュースを購入し、落とし主にはお礼につづらを渡すことを考えていたのである。その提案を聞いた少女は、それはジュースの自動販売機とまったく同じだと意見を述べる。こうしてねずみの自販機は各地に置かれるようになり、全国的にシェアを拡大していくのだった。(エピソード「おむすびの転がる町」。ほか、10エピソード収録)

登場人物・キャラクター

少女 (しょうじょ)

おかっぱ頭の女性。好奇心が旺盛な性格で、気になったことは実際に自分で足を運んで調べる行動力も併せ持つ。リサイクルショップに要らない物を売りにいく小学生の女子、郵便配達の新人アルバイトなど、エピソードによってさまざまな役どころで登場する。いずれのエピソードでも容姿はほぼ同じだが、同一人物であるかどうかは不明。

ねずみ

坂の下に穴を掘り、おむすびが転がって来るのを待っているねずみ。転がって来たおむすびを食べ、訪ねて来た落とし主にはお礼としてつづらを渡している。長年、転がって来るおむすびが最近減少傾向にあることに頭を悩ませていたが、少女と出会ったことをきっかけに妙案を思いつく。

ツチノコ研究者 (つちのこけんきゅうしゃ)

日本ツチノコ学会に所属する研究者の女性。真ん丸の眼鏡をかけている。ツチノコを発見し、賞金1億円を手にするために学会で発表したいと訪ねて来た少女をサポートする。

カエル

筑波山で暮らすカエルたち。人間ほどの大きさで二足歩行し、フルフェイスの宇宙服を着ている。筑波山の山中にある工場で、名物「ガマの油」を生産している。カエル語を話すが、旅券の翻訳によって少女と会話することができた。

旅券 (りょけん)

少女が商店街の福引で1等の「筑波山一泊二日ガイドツアー」を当てた際、そのガイドとして少女に渡された大型の旅券。高性能ICチップによるハイテク人工知能を搭載し、音声ガイドができるために1メートルと大型になっている。会話も可能で、旅を通じて少女を心を通わせていく。

(いぬ)

郵便配達の新人アルバイトとして働く少女が出会った犬。地下街にある第一ハイツという犬小屋に住んでいる。郵便物を届ける場所が見つけられずに途方に暮れている少女に声を掛け、道案内をしてくれた。

リサイクルショップの店員 (りさいくるしょっぷのてんいん)

要らない物をなんでもお金と交換してくれるということで、最近小学生に人気のリサイクルショップの店員。パイプのような頭部で、「STAFF」と書かれたエプロンを着用している。少女が持って来た、のど飴1粒の空き袋とポケットティッシュの空き袋を査定し、合計20円で買い取る。ゴミのような物でも価値があることを少女に丁寧に教えた。

書誌情報

おむすびの転がる町 白泉社

(2020-03-31発行、 978-4592711650)

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