おろち

1969年から1970年に渡って週刊少年漫画誌に連載された、楳図かずおのホラー代表作の1つ。

概要・あらすじ

「姉妹」「ステージ」「カギ」「ふるさと」「骨」「戦闘」「秀才」「眼」「血」の9話からなるオムニバス・ホラー。ミステリーの要素も強い。不老の少女おろちがこの世をさまよいながら、時に不幸な人に寄り添い、その人生を見つめるストーリー。

登場人物・キャラクター

おろち

人の記憶を操作したり、離れた相手に衝撃を与えるなど、不思議な能力を持つ不老の少女。不幸な人に寄り添い、その人生を見つめていく。百年に一度、長い眠りがあり、もし眠らなければ、普通の人と同じように年を取って死んでしまう。死んだ人間を生き返らせることはできないが、生命のないものを動かすこともできる。だが万一失敗したら、自分の命がなくなる危険を持つ。 「骨」の回では、死んだ人間そっくりの人形を作り、心臓の位置に穴を開け、自分の血を注ぎ込んで動かそうとするが失敗し、腐りかけの死体が蘇ってしまう。

竜神 エミ (りゅうじん えみ)

『おろち』の「姉妹」に登場する竜神家の姉妹の姉。竜神家の女は皆、誰が見てもため息をつくくらい美しいが18歳から人と思えぬくらい醜くなっていく。おろちが姉妹の記憶を塗り替え、お手伝いと思わせて住み込んだ時、エミはあと1カ月で18歳の誕生日だった。恋人の弘がいるが、誕生日が来たら会わないつもりでいる。 ルミが竜神家の娘ではないと知り、その日からルミを虐待するようになる。エミは醜くなるくらいなら自分で醜くなると言い、熱した鉄棒で自分の額と手を焼きひどい火傷を負った。

竜神 ルミ (りゅうじん るみ)

『おろち』の「姉妹」に登場する竜神家の姉妹の妹。竜神家の女は皆、誰が見てもため息をつくくらい美しいが18歳から人と思えぬくらい醜くなっていく。屋敷の一番上の部屋に隠されていた母親が、発作を起こして急死する際、家にいたルミに遺言する。それは、エミが竜神家の娘ではないという内容だったが、ルミは自分が竜神家の娘ではなかったという話を姉に聞かせる。 ルミは虐待する姉に従順に仕えるが、自分が18歳の誕生日の時、姉に醜くなる兆候として現れる額と手のホクロを見せ、真実を打ち明ける。

目黒 佑一 (めぐろ ゆういち)

『おろち』の「ステージ」に登場する少年。3歳の時、横断歩道を渡る途中、父親が車にひき逃げされ、まもなく、事故が原因で死亡した。佑一はテレビで見ていた幼児番組の「おはようのおにいたん」がひき逃げ犯だと訴える。おはようのおにいさんの田辺新吾にアリバイはなかったが、幼児の証言は不十分として裁判で無罪になる。その後、田辺は芸能界を引退し、佑一はテレビ嫌いになるが、顔を整形した田辺が花田秀次として歌手デビューすると、ラジオやレコードを買って歌手を目指す。 中学卒業と同時に上京した佑一は、花田に弟子入りする。

田辺 新吾 (たなべしんご)

『おろち』の「ステージ」に登場する芸能人。幼児番組に「おはようのおにいさん」として出演する。ひき逃げで目黒佑一の父を殺した犯人として裁判を受けるが、目撃者である3歳の佑一の証言では不十分ということで無罪になる。まもなく、田辺は芸能界を引退した。その後、花田秀治という歌手がデビューし、子どもから年寄りまで大人気となる。 花田は実は、顔を整形した田辺であった。

渡辺 ひろゆき (わたなべ ひろゆき)

『おろち』の「カギ」に登場する男児。団地に住む嘘ばかりつく子どもでうそつきと呼ばれ、周囲に嫌われていた。幼稚園に通い、両親共働きのカギッ子である。隣に住む恵美(えみ)という女児は生まれつき足が悪く、寝たきりだった。ある日、うそつきがベランダから隣の部屋を覗き見ると、恵美が口から血を流し、恵美の母親が両手で首を絞めていた。 うそつきは殺人を目撃したことを両親に話すが、信じてもらえない。そして翌朝、幼稚園に出かける時、隣のベランダにカギを落としたことに気づく。

杉山 正一 (すぎや ましょういち)

『おろち』の「ふるさと」に登場する男性。中瀬村の代々農家の家に生まれる。学校を卒業後、引き止める母親を振り切り、正一は村を出る。中小都市のアパートで友達と同居するが、友達に金を持ち逃げされ、借金まで押し付けられて転落していく。悪い仲間に入り、喧嘩で大けがをしたところをおろちに助けられ、病院に運ばれる。脳に鉄片が入っており悪化していく病状の中で、正一はいなかに帰りたいと願う。 おろちは正一の代わりに中瀬村に向かうが、電車の中で病院にいるはずの正一に会う。

新次 (しんじ)

『おろち』の「ふるさと」に登場する小学生。中瀬村に住む良子の息子で周囲から恐れられている。杉山正一は子どもの頃、光る石を祀った中瀬神社のお堂に幼なじみの良子を閉じ込めた。帰郷した正一は良子と再会するが、新次に猫の舌を焼いて食べたいと言いつけられ、猫の舌を切り取ろうとしていた。新次の目は光り、睨まれると死んでしまうという。 新次の父親も行儀が悪いと少し叱っただけで殺された。立ち聞きしていた新次に良子も殺され、死体から舌が切り取られていた。やがて、新次は光る石で村人を操り、中瀬村を徹底的に破壊していく。

大森 千絵 (おおもり ちえ)

『おろち』の「骨」に登場する女性。初婚の相手三郎を事故で亡くし、再婚して男児ジュンをもうける。東北の子吉村で生まれ、貧しくて不幸な少女時代を送る。産後すぐ母親を亡くし、父親は愛情がなく、継母にいじめられ、祖父の介護を押し付けられた。毎日泣いて過ごし、近所の子どもたちに泣き千絵とバカにされる。美しい娘に育ち、父親に酒代のために売り飛ばされそうになったとき、結婚話が持ち込まれ、平凡だが優しい三郎と結婚する。 伊豆の稲取で幸せな生活を送るが、夫がひき逃げ事故に遭う。甲斐甲斐しい看病で三郎は少しずつ歩けるようになるが、散歩中、崖から転落死する。

三郎 (さぶろう)

『おろち』の「骨」に登場する千絵の夫。伊豆の稲取で幸せな夫婦生活を送るが、ひき逃げ事故に遭う。回復に3年かかると言われるが、妻の甲斐甲斐しい看病で予想より早くよくなり、少しずつ歩けるようになる。ところが、散歩中に足を滑らし、崖から転落死してしまう。看護師になっていたおろちは、いつまでも嘆き悲しむ千絵を見て同情し、三郎そっくりに作った人形に命を与える儀式を行う。 しかし、儀式は失敗し、代わりに墓場から腐りかけた三郎の死体が蘇る。千絵は横浜の大森と再婚し転居していたが、2年後、三郎は千絵の前に現れ、赤ん坊のジュンを誘拐する。

岡部 正 (おかべ ただし)

『おろち』の「戦闘」に登場する中学生男子。南中学校に通い、父親は同校の先生。両親と妹の幸子(さちこ)の4人家族。他人に対して非常に親切な行動を取る父親を敬愛している。ある日、片手片足の松葉づえをついた男に、父親に包みを渡すよう頼まれる。正が開けてみると、それは頭蓋骨だった。また、妹が手榴弾を拾い、爆発して兄妹がケガをする。 正は郵送されてきたレマンド橋のたたかいという映画の招待券を受け取り、映画館に出向くと隣に例の片手片足の男が座って話を始める。それは戦争中の父親のことで、それ以来、正は父親に不信を抱くようになる。

岡部先生 (おかべせんせい)

『おろち』の「戦闘」に登場する男性。南中学校の先生で、同校に息子の正が通う。他人に優しい人徳者としての行動が常で、正も尊敬している。ガダルカナル島における激しい戦闘の生き残り。極限状態の飢えで、兵士たちの中には人肉食を行う者もいた。仲間の肉を食えずに衰弱していく岡部だが、彼を弟のように思う佐野がトカゲの肉と言って人肉を食べさせる。 自分は人間ではなくなったと岡部は悩む。爆撃により、佐野は左足を失い、右腕ももげかけるが、撤退命令が出て船で島を出ることになる。岡部は佐野を連れていく力がないと言い、右腕だけを持っていく。

立花 優 (たちばな ゆう)

『おろち』の「秀才」に登場する少年。1歳の誕生日にナイフを持った強盗が侵入し、優が泣き叫んだため首を刺される。強盗は警官に捕まるが、動機は金目当てで、家は貧しく病気の妻と腹を空かせた子どもが1人いた。まもなく、立花一家は東京に引っ越す。優の首の傷は子どもたちから気味悪がられ、母親は勉強やピアノを無理強いする。 父親はK大出の大学教授だが、優は首を刺された時出た熱でバカになったと母親は言い、K大合格させようとしていた。小学校では勉強と呼ばれ、友達もできない。小学5年生の時、図書室で自分が刺された事件を調べた優は、母親に挑むように勉強しだす。

田口 恵子 (たぐち けいこ)

『おろち』の「眼」に登場する盲目の少女。社宅の中に少女の家があり、盲学校で一緒だったさとるという小さい男の子がよく遊びに来る。さとるは手術で目が見えるようになった。さとるが帰った後、1人の男が家に逃げ込んできて、続いて入ってきた男に刺殺される。犯人は恵子が盲目であることに気づき、そのまま去った。 そして、恵子の父親が殺人犯として逮捕される。犯人は身分証明書を落としていったが、恵子がストーブを倒し、燃えてしまった。さとるは身分証明書の写真を元に犯人を追跡するが、犯人の誘導尋問で身分証明書のことを喋ってしまう。恵子の家に、犯人が取り戻しにやってくる。

門前 理沙 (もんぜん りさ)

『おろち』の「血」に登場する門前家の姉妹の妹。出来の良い姉と比較され続け、深いコンプレックスを抱く。高校の頃には自分から人を避けるようになり、特に姉の一草と顔を合わせないようにした。姉は夫を迎えて門前家を継ぎ、理沙は門前家とは縁の薄い遠くの九州へ嫁入りする。理沙の夫はホテル経営者の派手な男で、夫婦喧嘩が絶えなかった。 喧嘩の後、飲酒運転で対向車と衝突するが、おろちが体を庇う。相手の乗用車の男は死亡した。理沙は門前家の屋敷に戻る。心臓が悪い一草のために、理沙は門前家と血筋の繋がりがある少女佳子を引き取り、看病をさせる。

門前 一草 (もんぜんかずさ)

『おろち』の「血」に登場する門前家の姉妹の姉。幼い頃から優秀で人の注目を集め、妹の理沙にも優しかったが、比較される理沙は暗くいじけてしまう。一草は夫を迎えて門前家を継ぐが、まもなく夫は病死。心臓が悪い一草は、やがて寝たきりになる。同じ血液型で体質の似た人の心臓移植をすれば治ると医者に告げられるが、一草は興味を示さない。 理沙に門前家と血筋の繋がりがあると言われ、引き取られた少女佳子は、一草をおかあさまと呼んで慕っていた。自分は同じRHマイナスなので、死んだら一草に心臓を移植してほしいと医者に懇願する。

佳子 (よしこ)

『おろち』の「血」に登場する、新宿で親子ながしをする少女。身寄りがなくフーテンと一緒にウロウロしていたところを、ながしの夫婦に拾われ育てられる。門前家の理沙を自動車事故から庇ったおろちは、直後に百年に一度の深い眠りに襲われ、目が覚めた時は十数年が経ち、佳子の意識に入り込んでいた。佳子の前に老婦人の理沙が現れ、血筋で繋がっていると言って門前家に引き取る。 屋敷には理沙の姉一草が心臓が悪く寝たきりでいた。死を覚悟した一草の気高い姿に打たれ、佳子は一生懸命につくす。だが突然、理沙が佳子にひどい虐待を繰り返すようになる。

書誌情報

おろち 全3巻 秋田書店〈秋田コミックス セレクト〉 完結

第1巻

(1984年7月発行、 978-4253108133)

第2巻

(1984年8月発行、 978-4253108140)

第3巻

(1984年9月発行、 978-4253108157)

おろち 全3巻 小学館〈小学館叢書〉 完結

第1巻

(1991年10月発行、 978-4091972712)

第2巻

(1991年11月発行、 978-4091972729)

第3巻

(1991年12月発行、 978-4091972736)

おろち 全4巻 秋田書店〈秋田文庫〉 完結

第1巻

(1995年12月発行、 978-4253171724)

第2巻

(1995年12月発行、 978-4253171731)

第3巻

(1996年2月発行、 978-4253171748)

第4巻

(1996年2月発行、 978-4253171755)

おろち 全4巻 小学館〈ビッグコミックススペシャル〉 完結

第1巻

(2006年1月発行、 978-4091800381)

第2巻

(2006年1月発行、 978-4091800398)

第3巻

(2006年2月発行、 978-4091800404)

第4巻

(2006年2月発行、 978-4091800497)

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