オカルトホラーながらも複雑な謎解きが魅力
いじめの主犯格の生徒ばかりが次々と猟奇的な自殺を図るという、凄惨な連続自殺未遂事件が世間を騒がせていた。グロテスクな描写も多いが、基本的には連続自殺未遂事件および連続自殺事件の二つの事件に関する調査や謎解き、さらに複雑な人間関係を読み解くミステリーの要素が強い。当初、省吾は警察の協力者として調査を進めていくものの、物語の進行と共に警察からの情報提供が受けられなくなり、玉木理華や庄司千里の協力のもと、私立探偵のような捜査スタイルを取るようになる。
省吾の片思い相手の失踪事件から物語は始まった
省吾が警察の協力者となり、事件の調査をするようになったのには理由があった。高校時代のクラスメイトで心の支えだった女性、遙が、1年前に突然失踪して行方不明となっており、その調査と経過報告を警部補の笹塚恭一郎に頼む代わりに、省吾は連続自殺事件の調査を行うことになる。しかし調査が進むにつれ、二つの事件に共通点が浮かび上がる。
手がかりは「呪いのお守り」
連続自殺未遂事件でいじめを受けていた被害者たちは、持ち主の負の感情を餌に成長する化け物が棲(す)みついている「呪いのお守り」を所持していた。お守りの中に入っているのはただの白紙だが、霊能者の省吾が見ると「おとうさん、ふくしゅうしてくれてありがとう。あと○人」の文字が浮かび上がり、いじめの加害者が死ぬたびに人数が減っていく。さらに、このお守りは3種類存在し、それぞれのお守りでは文末の文章が違っているという謎がある。
登場人物・キャラクター
神原 省吾 (かんばら しょうご)
原和田中学校の英語教諭で、2年2組の副担任を務めている男性。年齢は24歳。白髪のショートカットで、関西弁でしゃべる。霊能力者で、霊を認識できるほか、並外れた除霊の力を持つ。ケンカ慣れして肝が据わっているため、ほぼ無法地帯と化していた2年2組を難なく沈静化させた。省吾のはとこで警部補の恭一郎に、高校生の頃から好意を寄せていたクラスメイトの遙の失踪事件の調査依頼する代わりに、連続自殺未遂事件の調査を頼まれている。遙を心から心配しており、1年間消息がつかめない中でも生存を信じていた。そんな中、遙が何者かに監禁され、他人の魂の器にされそうになっていることを感知してからは慎重に行動するようになる。2年2組の理華と行動を共にしているが、彼女には危険が生じない調査をサポートしてもらっている。
玉木 理華 (たまき りか)
原和田中学校2年2組に在籍する女子。黒髪をロングヘアにしている。一つ目の「呪いのお守り」の所持者。クラスの女子たちに、虫を食べさせられるなどの壮絶ないじめを受けていたが、担任教師は見て見ぬふりを貫いていたため、教師を信用できなくなっている。自殺未遂するまで思い詰めていたが、「呪いのお守り」の効果でいじめの主犯格が殺害されたことで、苦しみから解放される。省吾から「呪いのお守り」のルールを聞いてからは、間接的に殺人に関与した罪悪感から調査の協力を申し出た。いじめを受けて苦しんでいる人を感知できる女子生徒の霊、千里とコンビを組み、省吾の指示に従って調査を行なっている。
クレジット
- 原作
前作
生者の行進 (せいじゃのこうしん)
作者・みつちよ丸の初連載作。霊を見ることのできる男子高校生、吉川泪が、不気味な生き霊、唇のオバケに取り憑(つ)かれた幼なじみの高岡まどかを連続殺人事件から救うため、刑事の東雲亜希や除霊師の神原省吾らの... 関連ページ:生者の行進
書誌情報
生者の行進 Revenge 全6巻 集英社〈ジャンプコミックス〉
第1巻
(2020-04-03発行、 978-4088822594)
第6巻
(2022-03-04発行、 978-4088830438)