概要・あらすじ
怖い話を描く漫画家、楳図かずおの元に、ファンレターにまじって1通の手紙が送られてきた。差出人は沼田陽子という少女で、姉の沼田久留美が蛇になり、自分を殺そうとしているので助けてほしいという内容だった。大きな鱗が2枚同封されており、それは姉のものだという。楳図かずおの仕事を手伝う妹の楳図魔子が興味を持ち、差出人の住所である山梨県へ向かう。
登場人物・キャラクター
楳図 魔子 (うめず まこ)
『うろこの顔』に登場する漫画家楳図かずおの妹。兄を助けるために、奇怪な話を集めるのが仕事であり趣味。楳図かずお宛に送られてきた沼田陽子の手紙を読んで、手紙の住所の山梨県に向かう。手紙には、陽子の姉沼田久留美の背中からはがれたという鱗が同封されており、姉は自分を殺すつもりだと書かれていた。
楳図かずお (うめずかずお)
『うろこの顔』に登場する、怖い漫画を描いている東京在住の漫画家。楳図魔子の兄。沼田陽子から、姉の沼田久留美が蛇であり、自分を殺そうとしているという内容の手紙が届き、中には久留美の鱗が同封されていた。魔子が手紙を読み上げるが、「どうせまたいい加減な作り話だろう。最近、漫画にしてくれと言って、よくそのような手紙が来るから」と言って、取り合わなかった。 その場にいたアシスタント2人も、手紙の話を信じていない。
沼田 陽子 (ぬまた ようこ)
『うろこの顔』に登場する少女。山梨県在住。姉の沼田久留美とは実の姉妹ではなく、6歳の時に母親と沼田家に来た。姉妹仲は良かったが、陽子が小学生の時、中学生の久留美は脳の病気で手足が動かなくなる。ある夜、久留美が果物ナイフをくわえ、陽子の写真の手足を切り裂いているのを見てしまう。這いずって移動し、背中に鱗があるなど、蛇になっていく久留美に、陽子は手の傷口から血を入れられた。 久留美の死後、陽子は人の奇麗な血を吸わないと、顔や手に鱗が浮き出るようになってしまう。
沼田 久留美 (ぬまた くるみ)
『うろこの顔』に登場する沼田陽子の姉。久留美は父親の連れ子で、陽子と血は繋がっていない。中学生の時、脳の病気で手足が動かなくなり、体に鱗が浮き出るなど蛇のようになっていく。陽子が窓から落ちて大ケガをし、筋向いの医院に入院すると、毎晩、這いずってベッドにたどり着き、包帯を噛み千切って手の傷から自分の血を入れた。 だが突然、久留美は顔を布で隠した状態で変死する。布を取ると、顔に鱗はなかった。父親は久留美を灰にすることに耐えられず、死体は屋敷の地下室に安置される。
沼田 奈津江 (ぬまた なつえ)
『うろこの顔』に登場する沼田陽子の母親。6歳の陽子を連れて沼田家に来ている。陽子の父親に恨みを持つヘビ村の巫女は、久留美に続き陽子を呪いで蛇にしたのち、奈津江に「蛇になれ」と呪いをかける。
陽子の父 (ようこのちち)
『うろこの顔』に登場する、沼田久留美と沼田陽子の姉妹の父親。久留美は彼の連れ子。彼が若い頃、奥秩父に出張に行った時、好奇心から双頭のヘビ神を祀るヘビ村に入り込む。そこの草むらで双頭のヘビに遭遇し、石で片方の頭を叩き潰す。その双頭のヘビが御神体であり、ヘビ村の巫女の恨みを買う。 巫女は呪いで家族全員を蛇にして、最後に父親を蛇いするつもりだった。
ユリカ
『うろこの顔』に登場する沼田陽子の学校の友達。休み時間、陽子を屋上に連れていき、母親に買ってもらった金のネックレスを見せる。ユリカが陽子の首につけると、それが蛇に変わって陽子の首を絞めつけた。陽子は蛇を屋上の下へ放り投げるが、それはただのネックレスで幻覚だった。振り向いたユリカも鱗の顔に見え、突き飛ばしたため、フェンスが壊れて下に転落しそうになる。 ユリカは陽子のスカートを掴むが、その手にも鱗が見えた。陽子は手をほどこうとするが、元のユリカに戻ったため助け上げる。
ばあや
『うろこの顔』に登場する、沼田家のばあや。しかし、その正体はヘビ村の巫女であり、沼田久留美を殺し、沼田陽子を蛇にした犯人である。沼田家の物置で、御神体である双頭のヘビを布団に寝かせ、沼田家の家人に呪いをかける。かつて、陽子の父は双頭のヘビの片方の頭を石で叩き潰しており、その恨みを買っていた。 巫女は傷が治るまで沼田家を呪い続け、沼田家にかかわる者すべてを蛇にするつもりでいた。陽子の部屋の鏡の裏に釘で蛇を打ち付けたのも、巫女の細工だった。
友子 (ともこ)
『うろこの顔』に登場する怪事件の犠牲者。鱗の顔をした人物に襲われ、喉に不思議な咬みあとが残っていた。
集団・組織
沢田医院 (さわだいいん)
『うろこの顔』に登場。沼田家の屋敷の筋向いにある小さな医院。沼田陽子が入院していた。
場所
沼田家の地下室 (ぬまたけのちかしつ)
『うろこの顔』に登場。沼田陽子の姉沼田久留美が死んだ後、娘を灰にしたくなかった父親が、死体を安置した場所。
ヘビ村 (へびむら)
『うろこの顔』に登場する、元は平家の落武者の村。奥秩父にあり、近隣の人間は恐れて近づかない。村は蛇が多く、御神体として双頭のヘビを巫女が祀っている。
その他キーワード
北川 春美 (きたがわ はるみ)
『うろこの顔』に登場する怪事件の犠牲者。何者かに襲われ発狂し、傷あとはないのに血液が異常欠乏し、入院中、「鱗の顔」などと口走り、悲鳴を上げて気絶を繰り返していた。
沼田陽子の手紙
『うろこの顔』に登場する沼田陽子が、東京の漫画家楳図かずお先生宛に送った封書。生臭い変なにおいがする。中には、手紙の他に、陽子の写真と、気味の悪い大きな鱗が2枚入っていた。その鱗は、陽子の姉沼田久留美のものだという。手紙は、陽子の姉が蛇になり、自分を殺すつもりだと書かれ、楳図かずおに助けを求めるものだった。
魔子の恐怖ノート (まこのきょうふのーと)
『うろこの顔』に登場する楳図魔子が持ち歩く大型のノート。魔子は漫画家楳図かずおの妹で、兄を助けるために奇怪な話を集めている。それを記録するのが魔子の恐怖ノート。沼田家を襲った怪事件の経緯は、『うろこの顔』という見出しで魔子の恐怖ノートに詳しく記されている。
陽子の部屋の鏡 (ようこのへやのかがみ)
『うろこの顔』に登場する沼田陽子の部屋の鏡。壁にかけられ、観音開きの扉が付いている。陽子の部屋には異常に蠅が多く、腐ったようなにおいがした。特に壁にかかった鏡に、蠅が多く集まる。鏡は半年前からあり、姉の沼田久留美が病気になる少し前ごろ、陽子がそこに打ち付けたという。楳図魔子が鏡を取ろうとすると、腐った壁の板がはがれてしまう。 そして、鏡を打ち付けた釘が蛇の首を貫いていた。陽子は蛇を打ち付けたまま放置していた祟りで、姉の手足が動かなくなったと怯える。
双頭のヘビ (そうとうのへび)
『うろこの顔』に登場するヘビ村の御神体。陽子の父は若い頃、ヘビ村に足を踏み入れ、双頭の蛇の片方の頭を石で叩き潰していた。これが原因で、沼田家の人間はヘビ村の巫女の呪いを受ける。