あらすじ
第1巻
奥吉野の山奥にある過疎の村に住む女子中学生、さつきは古くから村に伝わる「キツネ伝説」に深い関心を抱いていた。村の大人たちが信じているこの伝説が事実なのか、ただの迷信なのかを解明するために、さつきは独自の調査と研究を続けていた。ある日、村長の親戚の少女である奈美子が東京から村にやって来る。奈美子は「キツネ伝説」が迷信であることを証明すると意気込んでいた。さつきは高慢な態度で、村人を見下す奈美子と対立して激しく口論する。そんな中、奈美子がふたまたキツネに取り憑かれ、次々に奇行を見せ始めたことで村中が大騒ぎとなる。さつきは、奈美子に取り憑いたふたまたキツネの言葉に従うことで、キツネ伝説の真相にせまる決心をするのだった。
登場人物・キャラクター
さつき
村で生まれ育った中学生の女子。五月生まれなことから「さつき」の名前が付いた。毎日となり村の中学校まで通学している。好奇心旺盛な性格で、村人たちが信じている「キツネ伝説」の真相を解き明かそうと研究を続けている利発な少女。
かんな
小学生の女の子でさつきの妹。十月生まれなことから「かんな」の名前が付いた。木登りが好きなやんちゃでお転婆な性格をしている。姉のさつきとはつねに喧嘩ばかりしているが、実際は亡き母の代わりに甘えられる存在として慕っている。
おばあちゃん
さつきとかんなの祖母。父子家庭で育つ孫娘のために、母親代わりとなって面倒を見ている優しい性格の持ち主。「おキツネさま」の命日にはお供え物を欠かさないほど、「キツネ伝説」を深く信じている。持病の神経痛が悩みの種となっている。
おとうさん
さつきとかんなの父親。見た目は瘦せ型のイケメンだが、いつも労務者風のスタイルでキセルをくわえている。ふだんは優しいが、一度怒ると娘たちが縮み上がるほど怖い存在となる。
奈美子 (なみこ)
村長の親戚の女子。夏休みの課題で「キツネ伝説」を題材にするため、東京からさつきたちが住む村にやって来る。美少女ながら傲慢な性格で、さつきとは意見の相違から激しく対立している。
重太郎 (じゅうたろう)
村に住む猟師の中年男性。一人娘のつぐみと二人で暮らしている。猟の腕には非常に自信を持っており、自分が仕留めた数々の獣の毛皮を家に飾って来客に自慢している。
つぐみ
重太郎の一人娘の少女。家の中で寝たきり状態のため、外に出ることはない。長髪で顔を隠しており、その素顔を見た村人は少ない。猟師の父親である重太郎の殺生がたたり、寝たきりの体になってしまったと村人は噂している。
ふたまたキツネ
さつきが住む村に古くから言い伝えられている妖怪。全身白い毛で覆われた大型のキツネで、尻尾が二つに割れている。若い女性に化けて人間を襲うとされている。信心深い村人からは「おキツネさま」と呼ばれ、村人が「おやしろ」と呼ぶ村はずれにある祠に祀られており、信仰の対象ともなっている。獣狩りなどの殺生をすると、祟られると恐れられている存在。