謎の生き物「きのこいぬ」と人間の心温まる交流
一軒家で暮らす絵本作家・夕闇ほたるは、愛犬のはなこを亡くしてしまう。幼い頃に両親を亡くしたほたるは、はなこが親代わりのような気がしていたため、悲しみは大きかった。そんなある日、庭の雪柳の下に生えていた、鮮やかなピンク色のきのこが揺れ動き、土の下から犬のような丸っこい生き物が現れる。ピンクのきのこはその生き物の左耳だったのだ。「きのこいぬ」と名付けられたその生き物は、幼児程度の知能を持っており、原稿に落書きをしたり、ほたるのごはんを食べてしまったりと、自由気ままに振る舞う。そんな、「きのこいぬ」の「笑える」行動が、傷心のほたるを癒やしていく。本作は、シュールな生き物「きのこいぬ」と人間の交流を通じて描かれる、心温まるファンタジーストーリーである。
「きのこいぬ」の大胆な行動がほたるを救う
ホラー絵本作家・ほたるは、愛犬・はなこを亡くして以来、新作も描かずに無気力状態になっていた。幼馴染で担当編集でもある天野こまこは、四十九日を過ぎても、ドッグフードや首輪を捨てられずにいるほたるの尻を叩くが、まったく効果がない。そんなときに、突如として現れたのが、「きのこいぬ」だった。「きのこいぬ」は、ほたるが目を離したすきに、ドッグフードや首輪を庭で燃やしてしまう。それを見たほたるは呆然とするが、はなこが亡くなった現実を、やっと受け入れることができた。豪快な方法で「きのこいぬ」に慰められたほたるは仕事を再開。「きのこいぬ」を主人公に、初のハートフル作を描き上げた。予測不能で大胆な「きのこいぬ」の行動が本作の魅力の一つである。
登場人物・キャラクター
夕闇 ほたる (ゆうやみ ほたる)
デビュー10周年を迎えたホラー絵本作家の青年。幼い頃事故で両親を亡くした後、祖父に引き取られて、犬のはなこと出会う。両親に少ししか「好き」と言えなかったため、「好き」をたくさん伝えるために、絵本作家になることを決意した。大学生の時に祖父を亡くしてからは、はなことともに暮らしていたが、そのはなこも17歳で亡くなる。心の支えを失うが、突如現れたきのこいぬのお陰で、前向きに生きていけるようになる。
きのこいぬ
夕闇ほたるの家の庭に生えていた、まピンクのきのこが姿を変え、犬のようになった生物。左目にかかる顔半分がピンク地に白の水玉模様になっており、左耳はきのこである。尻尾があり、まるまると太った犬のような姿をしている。幼児程度の知能があり、人の言葉を理解するほか、ひらがなを覚えて意思疎通を図ろうとする。ドッグフードは食べないが、人間の食べるものはだいたいOKである。特に好きなものはたこ焼き。時々庭に出て、気持ちよさそうに胞子を飛ばす。
天野 こまこ (あまの こまこ)
夕闇ほたるの担当編集者の女性。幼馴染でもある。はっきりと物を言う勝ち気な性格で、ほたるを叱咤激励する。編集長の息子で、ほたるの大ファンという矢良いつきを、ほたるに紹介する。
矢良 いつき (やら いつき)
夕闇ほたるの家の近所にある、きのこ研究所の職員。天野こまこの上司である編集長の息子でもある。初登場時は強烈なモヒカン頭だったが、あるトラブルで、こまこに髪を切られてからは、おとなしい髪型になった。ただし、それ以来、こまこのことは「ビッチ」と呼ぶようになった。同性愛者で、ほたるの絵本の大ファン。ほたるに好意を寄せており、おかしな行動をしがちである。
書誌情報
きのこいぬ 12巻 徳間書店〈リュウコミックス〉
第6巻
(2016-08-12発行、 978-4199505225)
第7巻
(2017-03-13発行、 978-4199505560)
第8巻
(2017-11-13発行、 978-4199505973)
第9巻
(2018-07-13発行、 978-4199506345)
第10巻
(2019-02-13発行、 978-4199506697)
第11巻
(2019-09-13発行、 978-4199506864)
第12巻
(2020-05-13発行、 978-4199507076)
リュウコミックス きのこいぬ 5巻 徳間書店
(2011-10-01発行、 978-4199502675)
第2巻
(2012-06-01発行、 978-4199502972)
第3巻
(2012-12-01発行、 978-4199503160)
第4巻
(2013-05-01発行、 978-4199503412)
第5巻
(2013-09-01発行、 978-4199503542)