人間が消えて文明だけが残された国
本作の舞台は、人間が消えて文明だけが残された世界にある「ゲネシス」という王国。縦に長い巨大な建造物の構造をしており、大きく分けて「上層」「中層」「下層」というエリアに分かれる。人類がいなくなってから400年が経過しているが、人間に奉仕していた機械人形のゴーレムが文明を維持し続けている。人類がいた頃に、運動麻痺などの要介護患者用に「仮想現実器」が開発されたが、不正に転売され下層エリアを中心に、広く健常者にも使用された。その結果、現実の生命維持活動を忘れ、仮想現実器をつけたまま餓死する使用者が続出。その亡骸は400年後も散見される。また、牛と羊の異種交配による「牛羊」が存在する他、クローン技術による生物の複製も行われていた。
ゴーレムとは
人間の命令に忠実に従い、人間のために存在する人形がゴーレムである。ゴーレムは、状況に応じて最適な行動を自律的に行う「自律型」と、工場の単純作業など定められた行動のみを行う「固定型」の2種類に分類される。また、役割に応じて多種多様なゴーレムが存在し、人間の友達になるために作られた「コミュニケーション用ゴーレム」や、王の権限により特定の任務を遂行する「王宮ゴーレム」、生物を育てる「飼育用ゴーレム」などがいる。なお、ゴーレムにはマスターが存在し、その命令に従うが、正規品のゴーレムは王宮の管理下にあり、マスターより王宮ゴーレムが優先される。しかし、非合法に改造されたゴーレムは自由度が高く、特殊な戦闘能力を持つものもいる。
記憶を探す少女と自律型ゴーレムの出会い
ガラスの箱で目覚めた記憶喪失の少女、シイは、三角頭の王宮ゴーレムに追われるが、自律型ゴーレムのバルブとその相棒のムイムイに助けられる。シイを自宅に招いたバルブは、彼のマスターの治療を要請するが、マスターはすでに白骨化していた。シイの説明により、マスターが死んでいることを認識したバルブは、プログラムに従い、溶解炉で「自己処分」しようとする。ムイムイによると、バルブを止めるには、自己処分よりも優先度が高い目的を与える必要があるという。そこでシイは自分が置かれている危機的状況を説明し、自分を守ってほしいと伝える。するとバルブは自己処分プログラムを一時停止し、シイと行動を共にする。記憶を取り戻すために旅立ったシイは、さまざまなゴーレムとの出会いを通じて成長し、自分や彼らの存在意義について考えるようになる。
登場人物・キャラクター
シイ
ガラスの箱で目覚めた三つ編みの少女。以前の記憶を失っている。王宮ゴーレムに追われているところを、物言わぬゴーレムのバルブに救われ、共に旅をする。ただ一人の人間として世界を旅するうちに、次第に人類が消えた謎に迫り、自分のなすべきことを見つけることになる。
バルブ
旧型の王宮ゴーレムを非合法に改造した自律型ゴーレム。金色の球根のような頭と一つ目が特徴。言葉を発することができず、小型ゴーレムである相棒のムイムイを通じて意志を伝える。街でシイと出会い、彼女を保護することになる。一つ目から強力なビームを発するなど、戦闘能力が高い。
書誌情報
人間のいない国 全5巻 双葉社〈アクションコミックス〉
第1巻
(2020-04-10発行、978-4575854305)
第4巻
(2022-08-10発行、978-4575857436)
第5巻
(2023-08-09発行、978-4575858716)







