此花亭奇譚

此花亭奇譚

あの世とこの世の境目にある宿、此花亭で働く仲居達の生活を、時にほのぼのと、時に感動的に描いた和風ファンタジー。続編に『このはな綺譚』がある。「コミック百合姫S」Vol.9からVol.14にかけて連載された作品。

正式名称
此花亭奇譚
ふりがな
このはなていきたん
作者
ジャンル
ファンタジー
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あらすじ

上巻

狐の娘、柚は新人仲居として此花亭で働く事になった。柚の教育係には皐が選ばれたが、皐は能天気な柚の事が気に入らなかった。そんな中、柚の失敗の責任を取るため、皐は柚と共に客に謝罪する。そこで皐は謝罪の気持ちで、薬屋の客から薬一式を買い取ろうとするが、それでは却って薬屋の迷惑になると柚は気づく。すると薬屋は薬の材料となる「星」を拾って来てほしいと口にした。皐が子供相手にからかっているのかと思う一方、柚は「星」を落としてみせると言って、薬屋を庭に連れ出した。(エピソード「星を落とす」)

柚は皐のようになりたいと、はりきっていた。しかし仕事をがんばり過ぎて、へばってしまう。だが、それでも休もうとしない柚を気遣った桐が、櫻と仕事をするようにと指示を出す。柚は皐から仕事は見て覚えろと教わっており、その教えどおりに櫻の真似をする事にする。櫻は自然体で仕事をこなしており、そんな櫻の真似をした事で、柚は自分の肩に力が入り過ぎていた事に気づくのだった。(エピソード「花の散るらむ」)

仕事の休みをもらった皐は、同じく休みをもらった柚のために町の案内を買って出た。町を案内する最中、柚が神社に行きたいと言い出した事で、皐が露骨に不機嫌そうな表情を見せた。さらに柚がこれから神社にお勤めするのではないのかと尋ねると、皐は怒り出してしまう。そして、柚が皐を怒らせた事を反省する中、妹を探して歩いている女性と出会う。柚はその女性を放って置けず、いっしょに妹を探す事にした。一方、皐は道に迷ったという童女を出会っていた。(エピソード「春の旅路」)

蓮は新人仲居の柚に苦手意識を持っていた。また、がさつな仲居仲間の棗と相方を組む事を嫌がり、相方の変更を桐に申し出ていた。そんな中、男嫌いの蓮は大広間にいた男性客にお尻を触られた事に怒り、思わず客を蹴飛ばしてしまう。すると、棗がセクハラを働いた客につかみ掛かり、帰ってもらうように告げる。ところが、その騒ぎで大広間の雰囲気は悪くなってしまう。そんな中、柚が踊りを披露すると言い出し、棗もそれに続き、大広間の雰囲気を一気に和らげる。そんな二人のフォローに蓮は感謝して、彼女達に対する印象を改めるのだった。(エピソード「此花亭日誌」)

八百比丘尼は雪に埋まっている小さな野狐を拾い、「柚」と名付けて育てる事にした。柚は最初こそ人間の八尾比丘尼を警戒していたが、徐々に彼女に対する態度を改め、懐くようになっていく。(エピソード「柚が拾われた日」)

下巻

此花亭の仲居達が怪談話をしていると、突然此花亭中の明かりが消えてしまう。仲居達は客の安全確認をするために奔走する中、他人そっくりに変身する幽霊が現れ、仲居達に襲いかかる。そんな中、皐に変身した幽霊が、柚の手を引いて彼女を連れ去ってしまう。しかし、柚にはそれが皐の偽物だとわかっていた。なぜ偽物だとわかっていながらついて来たのか、と幽霊が柚に尋ねると、柚は放って置けなかったからついて来たのだと口にした。そんな柚の優しさに触れた幽霊は、彼女をあの世に連れて行く事を止め、一人で三途の川を渡って行くのだった。(エピソード「此花亭怪談」)

街で祭りが開かれる事となり、此花亭の仲居達は交代で祭りに出かける。そして、皐と櫻といっしょに祭りに行った柚は、初めての祭りに目を輝かせる。そんな中、柚が盆踊りを踊っていると周囲の景色が真っ暗になり、盆踊りを踊っていたはずの人だかりも、なぜかどこかを目指して並ぶ人の列に変わっていた。柚がその列に加わっていると、一人の少女が柚に声を掛ける。柚は間違って、この世からあの世に戻る霊の列に並んでおり、その少女は柚を安全な場所に案内する。(エピソード「夏まつりの夜-前編-」)

蓮は棗と祭りに出かけるため、新品の浴衣を着ておめかししていた。しかし、棗は蓮の浴衣に気づいてくれず、屋台にばかり夢中になっていた。そんな棗の様子を見ていた蓮は昔、彼女といっしょに祭りに行った時の事を思い出す。その時も棗は蓮のおしゃれに気づかず、さらに足も痛めた蓮は、花火も見ずに寂しい気持ちを引きずったまま帰ったのだ。今日もそんな一日になる事を蓮が予感する中、棗は蓮が新調した下駄により足を痛めている事に気づき、彼女を気遣い始める。(エピソード「夏まつりの夜-後編-」)

此花亭の定休日を利用して、仲居達で河原に遊びに行く。そこで遊んでいた櫻は河童を見つけ、その河童に饅頭をあげる。そんな中、泳げない柚が川に流されてしまい、櫻は柚を助けようと川に飛び込む。しかし、流れが急だった事から櫻も柚といっしょに溺れてしまう。すると河童が、櫻を助けるために龍の姿をした河の神様に助けを求め、河の神様は二人を助けるのだった。(エピソード「櫻と河の神様」)

幼い頃の柚は、八百比丘尼のもとで暮らしていた。そんな中、柚は八百比丘尼が客と話しているのを耳にして、自分が奉公に出されてしまうものだと勘違いしていた。すると、柚は八百比丘尼に見捨てられないように、彼女から与えられた仕事を必要以上にこなし始めた。それを知った八百比丘尼は庭に咲いている花を指さし、あれは役立たずだと思うかと、柚に尋ねる。(エピソード「柚が旅立つ日」)

場所

此花亭 (このはなてい)

あの世とこの世の狭間にある宿場町の温泉宿。宇迦之御魂神が建てた。当初は宇迦之御魂神が、知り合いの神々を招くなどしていた。いつしか神様だけでなく、迷い込んできた人間や人ならざるものなど、様々な客がやってくるようになっている。由緒正しき宿で、一見さんは基本的に泊まれず、常連客や招待客、または手形を持つ客だけが宿泊できる。 狐の椿が女将を務め、仲居は少女の姿をした狐の娘たちが担当している。

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