5年越しの来店から始まった1話完結のショートストーリー
高校教師の柳凛が、気になりつつも入る勇気が出せず、5年ものあいだスルーし続けてきた定食屋「味処くちなし」に、思い切って入ってみたことをきっかけに物語は始まる。実は定食屋の店員、くちなし日代乃も、ランチタイムになると毎日コンビニの袋を持って素通りする柳のことが気になっており、何とかお店に入ってくれないものかと悔しい思いを抱くものの、声をかけられずに悶々(もんもん)としていたのだ。そんな二人の5年越しの出会いから始まった、ほのぼのとした日常が描かれる。
不器用な二人の心温まるハートフルドラマ
初来店以来、柳凛は定食屋「味処くちなし」の常連客になったものの、柳もくちなし日代乃も互いに自分の気持ちを伝えるのが苦手な口下手タイプ。そのため、思ったことを言葉にできないでいるが、好意を抱く心の声は周囲にダダ漏れになっていた。二人が苦し紛れに身振り手振りを交えつつ、必要以上に空気を読もうと四苦八苦する様子が笑いを誘う。それでも互いの名前は知らないまま、不器用な二人は少しずつ距離を縮め、信頼関係を築いていく。
柳凛にとってのオアシス「味処くちなし」
物語の舞台となる定食屋「味処くちなし」は、オーナー兼店長である日代乃の叔父が体を壊したことで、日代乃がランチタイムの営業を任されることとなった。柳にとってはオアシスのような存在であり、なくてはならない推しの店で、多くの常連客に愛されている。看板メニューはからあげ。柳は店がインターネット上で評価され、もっと店が繁盛して欲しいと願っているものの、一方で誰にも知られたくない、自分だけの隠れ家であってほしいとも望んでいる。
登場人物・キャラクター
柳 凛 (やなぎ りん)
北空羽高校の英語教師と柔道部の顧問を務める女性。学校では生徒たちから慕われており、親しみを込めて「ヤナギちゃん先生」と呼ばれている。自宅のとなりにある定食屋「味処くちなし」が気になっていたものの入る機会に恵まれず、5年の歳月を経てついに入店を果たす。それ以来、料理の美味しさに感激して常連客となり、平日も昼休みに学校を抜け出して日替わりランチを食べに足しげく通っている。明るい性格ながら、シャイで口下手なところがある。何かとネガティブ思考で自己完結タイプながら、感情がすぐに顔に出てしまう。味処くちなしの料理を心から愛しており、店員のくちなし日代乃をリスペクトしている。店に通い詰め、口下手ながらも身振り手振りで意思疎通を図り、日代乃と親しくなる。
くちなし 日代乃 (くちなし ひよの)
定食屋「味処くちなし」を切り盛りしている女性店員。店ではポニーテールで三角巾、エプロン姿がいつものスタイル。明るいが控えめな性格で、口下手なところがある。5年に渡りランチタイムに店の前を通り過ぎていくだけの柳凛が、最近常連客になってくれたことを喜んでいる。柳が来店するたびに彼女の動向を注視し、その度に身振り手振りで自分の気持ちを伝えようと必死になって意思疎通を図り、柳と親しくなる。店を運営するうえでの困難もあるが、気づかぬうちに柳に助けられていることも少なくない。登山好きで、幼い頃からキャンプなど屋外での活動を好んでいるが、現在は料理人として忙しい日々を送っている。大学生の妹、くちなし陽香に店を手伝ってもらうこともある。
書誌情報
くちべた食堂 4巻 KADOKAWA〈ビームコミックス〉
第1巻
(2021-12-10発行、 978-4047368361)
第2巻
(2022-08-12発行、 978-4047371002)
第3巻
(2023-04-12発行、 978-4047373952)
第4巻
(2024-04-12発行、 978-4047378780)