星野くん、したがって!

運動の才能がない中学生の星野は、野球部に所属しながら、いつも球拾いばかりさせられていた。ある日の部活中、ボールを拾いに行った際、転校してきたばかりのクラスメイト、山田と出会う。ベンチで号泣していた山田は、上級生にカツアゲされたと語り出す。星野は彼女を放っておけず、力になりたいと思うものの、山田は星野が拾いにきたボールを人質に取り、奪われた1万円を代わりに払ってほしいと無茶苦茶な要求をしてくる。この日以降、山田は何かと星野に絡んでくるようになり、二人のあいだで繰り広げられる掛け合いやシュールなギャグを通じて、青春ラブコメディが展開される。

主人公の星野は、昔から素直で人を疑うことが苦手な上に、困っている人を放っておけないお人好しな性格の少年。一方の山田は、ふだんはお淑（しと）やかに振る舞いながらも、何を考えているのかわからないミステリアスな雰囲気を漂わせた美少女で、毒舌で星野を容赦なく追い詰めたり、パシリ扱いしたりと、学校で会うたびに理不尽かつ傍若無人な振る舞いで彼を翻弄し困惑させる。そんな日常が繰り返される中、山田は星野と肌が触れ合ったり、目の前で服を脱がれたりと、予想外のシチュエーションにドキドキさせられ、次第に彼女を異性として意識するようになる。

夏休みに入り、みんなが楽しみにしている花火大会が近づく中、星野は学校以外でも山田に絡まれることが増え、ついには彼女の自宅に呼び出される。しかし、その夜の山田の一言をきっかけに、星野は彼女との関係を見限り、謝罪があるまで二度と話さないと決意し、距離を置くことにした。それから数日後、山田から謎のクイズ動画が届き、星野はそのクイズを通して、彼女の過去や秘密を知ることになる。そして、星野は山田と初めて会話したあの日、彼女がベンチで泣いていた本当の理由を理解する。どのエピソードも、二人の不条理に満ちた会話劇や、強引ながらも巧みな話術で星野を従わせようとする山田の言動が楽しめるが、それ以外に主従のような奇妙な関係を築く二人のあいだで芽生えた恋の行方や、当初からつかみどころのないヒロインとして描かれてきた山田に隠された秘密も、本作の見どころとなっている。