あらすじ
第1巻
1966年、山口県から早稲田大学を受験するために島耕作は東京へとやって来た。受験場の下見で大学を訪れた島は、学生運動に巻き込まれて警官隊に包囲されてしまうが、事情を説明して何とか解放される。無事に受験を終え、早稲田大学の合格も決まった島は高校を卒業後上京し、旧知の女性である三沢淳子と再会する。島にとってファーストキスの相手でもある淳子は、芸能界へのデビューを目指してレッスンを受けていた。しかし淳子は、レッスン代を捻出するために風俗店でアルバイトをしていた。その事実を知りながらも島はどうすることもできなかったが、淳子の夢を応援することを決意する。夏休みになり山口県へと帰省した島は、外国人の女性と親しくなるが、英語でコミュニケーションを取ることができず、悔しい思いをする。大学へと戻った島はそんな悔しさを忘れないために英語研究会へと入部するのだった。
第2巻
島耕作は警察官の布施良介と親しくなる。布施は学生運動に巻き込まれた際に、島を助けてくれた警察官だった。経済学を学びたいと思っていた布施は、島に協力してもらい大学の講義を受けることになる。しかし、布施の正体が早稲田大学の学生運動家に知られることとなり、布施は監禁されてしまう。そんな中、友人の東北沢淳と協力して布施を救出した島は、学生運動が少しずつ過激な方向へと向かっていることを危惧していた。そんなある日、島の入居している寮が主催するダンスパーティーが行なわれることとなる。島たちの尽力もあってパーティーは満員となり、そこで島は最上陶子と知り合う。陶子は島と恋人同士になることを望まない代わりに、たまに会って話をしたいと願い出る。その申し出を承諾した島は、陶子と少しずつ親しくなっていく。
第3巻
島耕作は入居している寮が主催するバスツアーで、先輩から女子学生を参加させるように要請される。最上陶子に相談した島は、陶子の協力もあり無事にバスツアーを成功させ、陶子との距離を縮めていく。そんな中、島はファーストキスの相手である三沢淳子が、自らの体を売って芸能界でチャンスをつかもうとしていることを知る。淳子は芸能界で生きていくことの苦悩を島に打ち明けるが、その直後に別の男性に違う顔を見せる彼女の姿に、島は複雑な気持ちになる。そんなある日、島は陶子の誕生日をいっしょに祝うことを約束するが、偶然が重なり島はその約束を守ることができなかった。島の前では気丈に振る舞う陶子だったが、誕生日を一人で祝う陶子は内心では寂しさを募らせる。
第4巻
島耕作は、友人の東北沢淳の親から淳が最近家に帰っていないことを聞かされる。大学で淳と会った島は、彼が学生運動に傾倒し、同じ組織の横峯という女性と同棲していることを知る。しかし淳は、横峯と同棲している場所を決して教えようとはせず、横峯もまた島を敵視するようになる。そんなある日、島は最上陶子が神田川のほとりに借りているアパートに招かれる。この部屋ならホテルのように料金を払わなくても気兼ねなく会えると話す陶子に同意する島だったが、そのアパートの隣室には淳と横峯が同棲していた。その直後、横峯は学生運動の末に警察によって検挙され、淳もまた横峯と関係していたということで警察にマークされてしまう。淳を助けたい一心の島は学生運動をやめさせようと説得するが、淳はさらに運動にのめり込んでいく。淳のことを心配する島だったが、一方で陶子もまた島への思いを募らせていた。そんな中、自身の容姿にコンプレックスを持っている陶子は、島と釣り合う女性になるために美容整形を受けることを決意し、島の前から姿を消す。
\#第5巻
島耕作は、東北沢淳が学生運動にさらに傾倒していることを、知人の布施良介から聞かされ、淳を説得するために自らも学生運動の組織に加入する。島の目的は淳と同じ目線に立ち、そのうえで淳を学生運動から脱却させることにあった。島は寮を出てアパートを借り、そのアパートで淳と共同生活を始める。そんな島たちの新たな住まいの向かいには、鈴木恵子という女性が一人で暮らしていた。淳は恵子に誘惑され、島のアパートを出て恵子と同棲を始める。しかしその直後、警察に検挙された横峯が釈放されて戻って来る。横峯は島を追い出して淳と暮らそうとするが、すでに恵子との生活を始めていた淳は、恵子に事情を話してなんとか身を引いてもらおうとする。恵子は淳との同棲を解消する代わりに、定期的に自分と会ってくれるように淳に話を持ちかけ、淳もその申し出を承諾する。一方、島は中学生の高畑亜希子の家庭教師のアルバイトを始めていた。
第6巻
東北沢淳と恋人関係にある横峯は、淳が鈴木恵子と会っていることを知り、恵子に抗議する。そこで恵子の正体は警察官であり、横峯を再び逮捕するために淳に近づいたことを知る。横峯が逮捕され、恵子が警察官だったことを知った淳は、自身がこれまで心酔していた学生運動に虚しさを覚え、組織からの脱退を決意。島耕作は淳が学生運動から脱却できたことを喜び、さらにその直後、しばらく姿を消していた最上陶子と再会する。陶子はフランスで美容整形を受け、見違えるような美しい容姿を手に入れていた。そんな中、島は初恋の女性である三沢淳子から連絡を受け、彼女が芸能界で苦境に立たされていることを知る。励ますために淳子に会った島だったが、その様子を偶然陶子に目撃されてしまう。陶子とのすれ違いを感じながらも、気がつけば島には就職活動を開始しなければならない時期が迫っていた。
登場人物・キャラクター
島 耕作 (しま こうさく) 主人公
キャラクター紹介『島耕作シリーズ』の主人公。1947年9月9日生まれ。1970年に大手電器メーカー初芝電器産業に入社した団塊世代のエリート。派閥争いに巻き込まれて左遷されることも多いがそれを糧に変える... 関連ページ:島 耕作
三沢 淳子 (みさわ じゅんこ)
島耕作の高校時代のファーストキスの相手でもある若い女性。福岡出身の在日朝鮮人で、タレント事務所にスカウトされ、現在は東京に住んでいる。島と東京で再会し、彼の初体験の相手となる。芸能関係者と関係を持つことで、芸能界で生き抜こうとしている。
東北沢 淳 (ひがしきたざわ じゅん)
島耕作のクラスメイトの男性。旧財閥系商社の社長の息子。学生運動に身を投じて、「革青同」というセクト(主張を同じくする者の集団)に所属するようになる。のちに学生運動をしていることが厳格な父親にばれ、勘当されてしまう。それからはセクトの先輩である横峯と同棲していたが、彼女が逮捕されたことをきっかけに、島とアパートで共同生活を送るようになる。 ひ弱でお坊ちゃん風な印象だが、プライドは非常に高い。受験の日に豪勢な弁当とクラムチャウダーを分けてもらったことから、島は心の中で彼のことを「クラムチャウダー」と呼んでいる。
最上 陶子 (もがみ とうこ)
山形出身の日本女子大の1年生の女性。お嬢様育ちで上から目線なところもあるが、正直で思いやりのある性格。太い眉が特徴で、自分が美しくないことを自覚している。学生寮「敬和学舎」主催のダンスパーティーで島耕作と知り合い、成り行きでラブホテルに行くが、その後もガールフレンドとして付き合っていく。
布施 良介 (ふせ りょうすけ)
青森出身の機動隊員で、21歳の男性。島耕作が受験場を下見に行った際に知り合い、のちに歌声喫茶で偶然再会して交友関係がスタートする。男らしい性格ながら、きめ細かな気配りができ、島を通じて知り合った活動家の東北沢淳のことを本気で心配している。
寺村 正和 (てらむら まさかず)
学生寮「敬和学舎」の寮長を務める男性。上智大学法学部4年生で、島耕作とはルームメイト。ヤクザのような風貌で、入寮当日の島を飲みに連れ出すなど、多少強引な一面もあるが、基本的には面倒見のいい性格。大学の試験で「優」を取ることが、就職に有利になることを島に教える。
樫村 健三 (かしむら けんぞう)
初芝電器産業の次期社長候補大泉裕介の秘蔵っ子。将来は社長になると目されていた優秀な社員で島耕作も一目置いている。岡山出身。明るく社交的で如才ない性格。 島耕作と樫村健三 島耕作とは大学時代からの同期で... 関連ページ:樫村 健三
星 恒為 (ほし つねため)
法政大学3年生の男性。寺村正和が卒業後に、学生寮「敬和学舎」で島耕作のルームメイトとなった。エレキギターにハマっているロングヘアの自由人。東大の学食で島の高校時代の同級生である小鹿伴美と知り合い、彼にエレキギターを教える。
小鹿 伴美 (こじか ともみ)
東大の学生で、島耕作の高校時代の同級生の男性。両親も田舎の教師、という堅い家庭に育った真面目な青年。島と一緒にいた星恒為に「ぬらりひょん」などとからかわれて泣きだしてしまう。星にエレキギターを教わり、人生観を一変させる。
森下 和巳 (もりした かずみ)
島耕作の麻雀仲間。早稲田大学に通う男性。麻雀好きで血気盛んなところがある青年。実家が新宿歌舞伎町で寿司屋と雀荘を経営しており、麻雀が弱い島のためにプロ雀士である中村誠三を紹介する。
中村 誠三 (なかむら せいぞう)
島耕作が森下和巳に紹介されたプロ雀士の中年男性。中村雪絵の夫。酒、たばこ、ギャンブルに明け暮れる、荒んだ生活を送っているため大腸がんになり入院してしまう。入院中、島にこっそり雪絵の相手をしてやってほしいと依頼する。雪絵には「誠ちゃん」と呼ばれている。
中村 雪絵 (なかむら ゆきえ)
中村誠三の妻。ショートカットの美人。森下和巳とともに家に遊びに来た島耕作に、皆に隠れてキスをするなど、大胆なところがある。夫への情が深く、誠三の死後、彼が勘当された和歌山の実家へ遺骨を届けるために島を誘う。
東北沢淳の母 (ひがしきたざわじゅんのはは)
東北沢淳の母親。神経質そうな中年女性。息子が家に帰って来ないことを心配して島耕作のもとを訪ね、学生運動をしていると聞いて顔色を失う。旧財閥系商社の社長である厳格な夫が学生運動のことを聞き、東北沢を勘当して家から追い出してしまう。面と向かって夫に反発できず、東北沢のためにこっそり学費を払っている。
横峯 (よこみね)
早稲田大学4年生の女性。過激な発言で周囲から一目置かれている活動家。ドイツ革命で活躍した理論家のローザ・ルクセンブルクにちなんで「ローザ」と呼ばれている。家から勘当された東北沢淳と同棲しているが、のちに逮捕されてしまう。気性が荒く、ノンポリ(政治運動に関心がない)の島耕作を嫌っている。
鈴木 恵子 (すずき けいこ)
30代の女性。小学校の教員を務めている。島耕作と東北沢淳が共同生活を始めたアパートの向かいに住んでいる。ふとしたきっかけで、島と東北沢を家に招き入れたことから、東北沢と深い関係になる。東北沢から「革青同」についての情報を積極的に聞き出そうとする。
宮川 俊子 (みやかわ としこ)
島耕作がアルバイトしている焼肉店「幸楽」のオーナーの中年女性。気前が良く、賄いとしてハラミを食べ放題にしている。しかし肉嫌いの次田が、アルバイト店員たちに肉を食べさせないでいることを、まったく知らない。
次田 (つぎた)
島耕作が学生時代にアルバイトをしていた、麻布十番の焼き肉店「幸楽」でシェフをしている30代半ばの男性。人間性は最低で、元大阪の暴力団組織にいたと自称し、何かにつけてアルバイト店員たちを威嚇。自分がファ... 関連ページ:次田
大迫 (おおさこ)
焼肉店「幸楽」で、島耕作とともにアルバイトとして働く青年。自称大学6年生だが、周りからは偽学生だと思われている。島が次田の悪行をオーナーの宮川俊子に告発した際には、事実を知っていながら島が嘘をついていると告げ、自己保身に走る。
時岡 (ときおか)
島耕作の高校時代の同級生で悪友。現在は千葉浦工大に通う男子学生。高校時代は坊主頭だったが、大学1年生の夏休みに島と再会した時は、反体制の象徴ともいえる長髪にしていた。島と同じ英語研究会「ESS」に所属しているが、英語はまったくしゃべれない。たまに達観したもの言いをする。
重松 (しげまつ)
島耕作の高校時代の同級生で悪友。北大に通う男子学生で、「ビートルズ研究会」に所属して、マッシュルームヘアにしている。北海道を防衛する自衛隊の姿を見て感動して、のちに防衛大学に入学し直し、髪も角刈りにした。学生運動を嫌悪している。
島 怜子 (しま れいこ)
島耕作の妻。大学のサークルで知り合った島耕作と結婚し、一女島奈美をもうける。仕事への理解はあるが、勝気な性格。 出会いと結婚 島耕作と同じ早稲田大学の英語研究会「ESS」に1年生の時に入部。3年生だっ... 関連ページ:島 怜子
島耕作の母 (しまこうさくのはは)
山口県岩国に住む島耕作の母親。呉服店を営むパワフルな女性。島の早稲田大学の入学式を夫とともに参観した。しかし、上京した理由は東京見物をしてみたかったというもので、息子にはあまり干渉しない放任主義。
中川 敏江 (なかがわ としえ)
学生寮「敬和学舎」のお手伝いをしている独身の中年女性。一見地味だが行動は大胆。敬和学舎で自殺した学生の幽霊騒動があった最中、寮で2人きりになった島耕作に襲い掛かり、男女の関係を結ぼうとした。
集団・組織
革青同 (かくせいどう)
学生運動のセクト(主張を同じくする者の集団)。超過激派集団で、火炎瓶を使って武力闘争をしている。横峯がナンバー5の幹部として所属しており、のちに東北沢淳も所属する。布施良介のアドバイスを受けた島耕作が、東北沢を過激派セクトから脱出させようと、「革青同」の集会に参加するようになる。
場所
敬和学舎 (けいわがくしゃ)
東京の島耕作の下宿。渋谷の高級住宅街の一角に建つ、木造2階建ての古い建物で、賄いつきの学生寮。島が入寮した時の寮長は寺村正和。2人1部屋という決まりで、部屋は全25室。エアコンなし、風呂なしだが、朝夕の賄い付で寮費は1か月6000円。高齢の寮母と、お手伝いの中川敏江が寮生の世話をしている。 島は2年間この学生寮で過ごすことになる。
関連
島耕作シリーズ (しまこうさくしりーず)
大手電機メーカー初芝電器産業に務める島耕作が課長から社長へと昇進して活躍する約30年間を描いた弘兼憲史の代表的シリーズ作品。初期はサラリーマンの悲哀、オフィスラブを中心にした物語だったが、出世するにつ... 関連ページ:島耕作シリーズ
書誌情報
学生 島耕作 6巻 講談社〈イブニングKC〉
第1巻
(2014-11-21発行、 978-4063545494)
第2巻
(2015-06-23発行、 978-4063545746)
第3巻
(2015-11-20発行、 978-4063545944)
第4巻
(2016-05-23発行、 978-4063546255)
第5巻
(2016-11-22発行、 978-4063546415)
第6巻
(2017-05-23発行、 978-4063546699)