あらすじ
中学生時代、友達のいなかった秋良キミエは、「ヴィンセント・F・フェルデヴェント」というキャラクターを創作し、空想の中で日々を過ごしていた。成長と共にその行為の恥ずかしさに気づいたキミエは、黒歴史と決別し、イメチェンして充実した高校生活を送ろうと決意する。しかし、高校生になったばかりのキミエに、早速ピンチが訪れる。クラスメートの紺野めぐみが、キミエのイラストが描かれた卒業文集を偶然手に入れ、過去を暴かれそうになってしまったのだ。キミエが狼狽(ろうばい)していると、なぜか突然ヴィンセントが目の前に現れ、語りかけてくる。さらには、めぐみが過去に生み出したキャラクターの姿も見え始める。キミエは、人が幼い頃に生み出したキャラクターの幻影「失幻夢」が見えるようになってしまったのだ。ヴィンセントは、暴走を始めた「失幻夢」と戦って浄化しなければならないと、キミエに告げる。楽しい青春を過ごしたいという願いとは裏腹に、キミエは次々とトラブルに巻き込まれ、クラスメートたちの「失幻夢」と戦う羽目になるのだった。(第1話「終焉と黎明」)
キミエのクラスでは、遠足で遊園地に行くことになった。高校入学後に友人になった飯田のあや美城ベルカと同じ班になりたかったキミエだが、くじに外れてしまい落胆する。それでも、同じ班になった縁堂が気遣いのできる温厚な人柄だったおかげで、キミエは気を取り直す。ところが、クラスメートの赤井愛が事あるごとにキミエに辛く当たってくるようになる。実は、愛は縁堂に片思いしており、縁堂と親しくしているキミエに嫉妬していたのだ。さらに、キミエの目に愛の生み出した「失幻夢」である「いとちゃん」が見え始める。「失幻夢」が暴走していると知ったキミエとヴィンセントは、いとちゃんと戦おうとする。しかし、いとちゃんの愛らしい見た目と純粋な言動に、ヴィンセントはペースを乱され、戦うどころではなくなってしまう。(第8話「運命」)
登場人物・キャラクター
秋良 キミエ (あきら きみえ)
高校1年生の女子。中学時代は根暗な性格で友達もおらず、いつも空想に浸ってオリジナルのマンガを描いていた。空想の中では、自分は「キミュエル」という呪われし姫で、「鏡の世界の薔薇の騎士」ことヴィンセント・F・フェルデヴェントに守られているという設定だった。やがてその妄想の恥ずかしさに気づき、中学卒業時にいっさいの黒歴史ノートを処分した。高校入学時にイメチェンを図り、友達を作って充実した高校生活を送ろうと決意した。しかし、記憶から消したはずのヴィンセントが突然目の前に現れ、さらにはクラスメートたちの生み出した「失幻夢」と戦わなくてはならなくなる。ヴィンセントや「失幻夢」を見ることができる唯一の人間で、周囲に時おり不審がられている。ヴィンセントを忘れたい過去だと思っており、鬱陶しくも思っている。ヴィンセントや「失幻夢」に毎回振り回される一方で、飯田のあや美城ベルカといった友達もでき、少しずつひとりぼっちから脱却しつつある。責任感が強く、遊園地への遠足で班長になった時は、みんなのために一生懸命行動していた。
ヴィンセント・F・フェルデヴェント
「鏡の世界の薔薇の騎士」である若い男性。秋良キミエが中学時代に生み出したキャラクターで、キミエを自己投影した姫「キミュエル」を守る騎士という設定。中学生の稚拙な画力で描かれたため、腕が長すぎるなどデッサンの狂った外見をしている。また、頰に重罪の証(あかし)である十字架の刻印があるなど、いわゆる「中二病」らしいデザインが多用されている。恥ずかしい過去を忘れようとしていたキミエの前に、彼女を守るために突然現れた。キミエのことを「キミュエル」と呼び、つねに傍に寄り添っている。キミエへの態度は紳士的だが気障(きざ)な言動も多く、キミエからは鬱陶しがられている。クラスメートたちの生み出した「失幻夢」の暴走を止めるため、キミエと共に戦うことになる。
紺野 めぐみ (こんの めぐみ)
高校1年生の女子。秋良キミエのクラスメートで、高校に入学して間もない頃、キミエの中学の卒業文集を偶然手にする。その文集に描かれたイラストをネタにして、キミエをからかい弄んだ。キミエの黒歴史がクラス中に暴かれてキミエはピンチに陥るが、そのことがヴィンセント・F・フェルデヴェントがキミエの前に現れるきっかけとなる。また、紺野めぐみ自身が生み出したキャラクター「怪盗コンソメ」が知らないうちに暴走を始め、キミエとヴィンセントとバトルすることになった。怪盗コンソメが倒され浄化されると、自分の非を認めキミエに謝罪した。
怪盗コンソメ (かいとうこんそめ)
キツネをモデルにした怪盗のキャラクター。「失幻夢」の一つで、紺野めぐみが幼い頃に空想していたキャラクターが具現化したもの。目元を隠すためのマスクを付け、マントに身を包んでいる。創造主に忘れられた寂しさが原因で暴走し、紺野に攻撃的な言動を取らせる。最終的に、秋良キミエとヴィンセント・F・フェルデヴェントの手で倒され、浄化された。
飯田 のあ (いいだ のあ)
高校1年生の女子。秋良キミエのクラスメートで、入学当初、中学時代の黒歴史が周囲にバレそうになり、窮地に陥っていたキミエを、とっさの機転で助けた。明るくフレンドリーな性格で、キミエが内心で理想としている人物。美城ベルカとは中学からの親友で、キミエと友達になってからは三人で遊びに行くようになる。可憐な美少女だが、大食漢。
美城 ベルカ (みしろ べるか)
高校1年生の女子。秋良キミエのクラスメートで、目つきが鋭く、愛想があまりよくない。親友である飯田のあへの独占欲が強く、キミエがのあと親密になりそうになると冷たく当たる。キミエの黒歴史である卒業文集の存在を知ると、それを脅迫のネタにして、のあに近づかないよう約束させようとした。実は、美城ベルカ自身の生み出したキャラクターの「ジェニファー」が失幻夢となって暴走しており、無自覚に攻撃的になっていた。ジェニファーが浄化されてからは態度が軟化し、キミエを友人として認めるようになった。キツめの印象に反して、女の子らしいかわいいものを好む。
ジェニファー
お姫様のような少女のキャラクター。「失幻夢」の一つで、美城ベルカが幼い頃に空想していたキャラクターが具現化したもの。たくさんの星マークが付いた、かわいいドレスを着ている。ベルカの心の闇が原因で暴走するが、秋良キミエとヴィンセント・F・フェルデヴェントの手で倒され、浄化された。
赤井 愛 (あかい いと)
高校1年生の女子。秋良キミエのクラスメート。お下げの黒髪が特徴で、同じクラスの縁堂に片思いしている。遠足で遊園地に行くことになった際、縁堂と同じ班を希望するが、叶わなかった。縁堂と同じ班になったキミエに対し、嫉妬心から辛く当たるが、それは過去に創作したキャラクターである「いとちゃん」が失幻夢となって暴走した影響だった。いとちゃんが浄化されると我に返り、キミエと班を交換することで丸く収まった。
いとちゃん
うさぎをモデルにしたキャラクター。「失幻夢」の一つで、赤井愛が幼い頃に空想していたキャラクターが具現化したもの。人間の女の子という設定だが、人間がうまく描けないという理由で、人間の胴体とうさぎの顔という見た目になった。気の弱い性格で泣き虫。サッカーが好きな男の子「あっくん」が好き。失幻夢となって暴走するが、秋良キミエとヴィンセント・F・フェルデヴェントの手で倒され、浄化された。
縁堂 (えんどう)
高校1年生の男子。秋良キミエのクラスメートで、遠足で遊園地に行くことになった際、キミエと同じ班に振り分けられる。相手のことを思いやるのがうまく、誰からも好かれている。相手の言うことを必ず肯定することから、皇帝(こうてい)が転じて「エンペラー」というあだ名を付けられた。赤井愛の片思いの相手。キミエが遊園地で縁堂と行動することになったため、キミエに嫉妬した愛がひと騒動起こすことになった。
風見 タクト (かざみ たくと)
高校1年生の男子。秋良キミエのクラスメートで、遠足で遊園地に行った際、キミエたちと同じ班になった。根暗で斜に構えた性格で、集団行動には向いていない。遊園地のアトラクションを、子供っぽいと小馬鹿にしたため、同じ班の美城ベルカを怒らせた。しかし、班のみんなで楽しもうというキミエの申し出により、遊園地のカーレースで勝負する成り行きになる。実は心の中に「失幻夢」が潜んでおり、キミエやヴィンセント・F・フェルデヴェントと戦うことになった。
タクシード
レーシングカーに目鼻が付いたキャラクター。「失幻夢」の一つで、風見タクトが幼い頃に空想していたキャラクターが具現化したもの。タクトが子供の頃に訪れた遊園地で乗った車がモデルになっている。タクトに忘れられた寂しさから暴走していたが、秋良キミエとヴィンセント・F・フェルデヴェントとの対決に敗れ、浄化された。
その他キーワード
失幻夢 (ろすと・ふぁんとむ)
幼い子供が生み出した空想のキャラクターが具現化したもの。成長と共に忘れられたキャラクターが、寂しさ故に暴走すると「失幻夢」となる。生み出した本人は気づかないが、「失幻夢」が暴走していると心が荒(すさ)み、他者への攻撃性が強くなる。人間では、秋良キミエのみが姿を見たり、声を聞いたりできる。キミエの周囲の人々がたびたび生み出すが、毎回キミエとヴィンセント・F・フェルデヴェントが戦うことによって倒され、浄化される。