この本を盗む者は

この本を盗む者は

深緑野分の小説『この本を盗む者は』のコミカライズ作品で、漫画は空カケルが担当。「本の街」として知られる読長町を舞台に、本嫌いの少女、御倉深冬と、御倉館で出会った不思議な少女、真白が、「ブック・カース」によって物語の世界に呑み込まれた街を救うために奔走する冒険ファンタジー。各章のタイトルは、作品名でもある「この本を盗む者は」に続く述語となっており、それぞれが深冬たちの冒険の舞台となる世界の特徴を表している。KADOKAWA「ヤングエース」2022年1月号から2023年4月号まで連載。原作小説は2025年12月26日に劇場アニメ化。監督は福岡大生、アニメーション制作はかごかん(株式会社かごめかんぱにー)が務める。

正式名称
この本を盗む者は
ふりがな
このほんをぬすむものは
原作者
深緑 野分
漫画
ジャンル
ファンタジー
 
推理・ミステリー
レーベル
角川コミックス・エース(KADOKAWA)
巻数
全3巻完結
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本嫌いの少女と魔術的現実主義の呪い

高校生の深冬は、読長町の名家「御倉家」の一人娘。御倉家は、古今東西の書物を蒐集(しゅうしゅう)した巨大な書庫「御倉館」を所有している。しかし、深冬は過去の経緯から読書を激しく嫌っており、御倉館に近づくことすら避けていた。ある日、父親、あゆむが怪我をしたため、叔母のひるねの様子を見に、しぶしぶ御倉館へ足を運ぶことになる。そこで深冬が、「この本を盗む者は、魔術的現実主義の旗に追われる」と書かれた札を手に取ると、背後から「真白」と名乗る少女が現れる。真白は深冬に親しげな態度で、「繁茂村の兄弟」という小説を読むようせまってくる。言われるままに本を読み、周囲の空間が変質していることに気づいた深冬に、真白は衝撃的な事実を告げる。読長町は「ブック・カース」に侵食され、住人たちが異質な存在に変貌してしまったというのだ。そして、本を盗んだ泥棒を捕まえることで、この呪いが解けることも知らされる。こうして深冬は、真白と共に御倉館から本を持ち出した犯人を捜すことになる。

盗まれた本が創り出す物語の檻と読長町の危機

「ブック・カース」とは、印刷機が普及する以前に、本を守るために考案された防衛魔術の一種で、「アナテマ」とも呼ばれている。この魔術は、対象となる本が保管場所から持ち出されると発動し、本の周囲に「物語の檻」と呼ばれる領域を形成する。この檻の中では、盗まれた本の世界観が反映され、そこにいる人々は物語の登場人物として再構成される。ただし、本を盗んだ犯人は再構成されず、犯人を捕まえることでブック・カースは解除される。御倉館にかけられたブック・カースは、以前よりも広範囲に対応できるよう進化しており、一度発動すると読長町全体が盗まれた本の影響を受けてしまう。さらに、もし物語の途中で舞台となる地域が滅びる展開が描かれていた場合、それに引きずられて読長町も滅亡する危険性がある。深冬と真白は、読長町の滅亡を防ぎ、町とその住民を元に戻すため、ブック・カースを引き起こした泥棒を捕まえるべく、変貌した世界を巡ることになる。

読長町を襲うブック・カースの謎

深冬が御倉館に出入りし始めて以来、読長町では「ブック・カース」による変容が頻繁に発生するようになる。そのきっかけとなる書物はさまざまで、例えばマジックリアリズムをテーマにした悲劇「繁茂村の兄弟」や、一部の権力者によって独自に制定された法に縛られた世界を舞台にしたハードボイルド小説「BLACK BOOK」、さらには1匹の獣によって引き起こされた技術のブレイクスルーを描いたSF小説「銀の獣」などがある。発動するブック・カースは、それぞれの物語に即した世界観が読長町に投影される形で現れる。深冬と真白は、次々と巻き起こる異変に翻弄されながらも、泥棒を捕まえるという目的に向かって邁進する。なお、ブック・カースの発生源となった本には、深冬が知らない共通点が存在することがのちに明らかになる。

登場人物・キャラクター

御倉 深冬 (みくら みふゆ)

読長町の名家「御倉家」の一人娘である女子高校生。周囲から特別な存在として見られているが、幼い頃から祖母のたまきに厳しく育てられたため、家の在り方に窮屈さを感じている。その反発から、本や読書に対して強い嫌悪感を抱いている。現状への不満から神経質になりがちで、特にマイペースな叔母のひるねに対して苛立ちを募らせている。柔道道場を営む父親のあゆむが事故で入院すると、ひるねの世話を頼まれ、渋々彼女が住む御倉館へ向かう。そこで不思議な少女、真白と出会い、街を襲う災厄「ブック・カース」に立ち向かうことになる。

真白 (ましろ)

御倉館を訪れた深冬の前に、突然現れた謎の少女。真っ白な髪と、その存在感の希薄さから、深冬は彼女を幽霊ではないかと疑ったほどだった。御倉家の内情や、街を蝕む「ブック・カース」の仕組みに精通しており、その発生に応じて狐のような耳が生えるなど、その存在は謎に包まれている。深冬に対しては強い思い入れを抱いているようで、ブック・カースに侵食された読長町を探索する際には、つねに彼女の身を案じている。しかし一方で、ブック・カースが発生した際には、その原因となった本を読むように本嫌いの深冬にせまるなど、冷酷な一面を見せることもある。

クレジット

原作

深緑 野分

書誌情報

この本を盗む者は 全3巻 KADOKAWA〈角川コミックス・エース〉

第1巻

(2022-06-03発行、978-4041123850)

第2巻

(2022-11-04発行、978-4041130575)

第3巻

(2023-04-04発行、978-4041135112)

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