あらすじ
旅立ち編
装備品と装備枠が人生を決定づける世界で、装備枠がゼロのノロア・レータはずっと周囲からさげすまれ、都合よく利用されていた。そんなある日、ほかの冒険者の荷物持ちを終えて活動拠点のマハリジの町に戻ってきたノロアは、武器屋のヤブキから呪いの装備の話を聞いて呪いの装備があるとされるダンジョンへと向かう。しかし、ノロアの実力ではダンジョンの魔物を倒すことができず、早々にマハリジの町に戻ることとなる。ノロアが悲嘆にくれていると、ほかの冒険者が呪いの装備を装備して暴走状態となり、人間を手当たり次第殺して町を瓦礫の山にしてしまう。ノロア自身も殺されかけるが、ヤブキの店にあった呪いの装備の呪呪人形(ジュジュ)から話しかけられてジュジュを装備。ジュジュの能力のおかげで惨状を引き起こした呪いの装備の「血舐メ丸」を奪取し、一連の騒動をおさめるのだった。そしてノロアは、ジュジュと共にほかの呪いの装備を求めてマハリジの町を旅立つ。
獣ト薔薇編
ノロア・レータと呪呪人形は、呪いの装備を持つドラゴンを6日間追い続け、危険地帯である森にたどり着く。森に入ったノロアたちは、目的のドラゴンが魔物に襲われているところを見かけ、魔物を追い払って無事に呪いの装備を発見する。ノロアは、人間の装備である呪いの装備をドラゴンが装備していること、ドラゴンが人の言葉をしゃべることを不思議に思ってドラゴンに尋ねると、ドラゴンの正体は人間のシルルーラ・トゥ・レイク(シルル)で、ドラゴンに変身した時の状況を語るのだった。シルルから装備している獣ト薔薇の詳細を聞いたノロアは、自分は獣ト薔薇の代償を払えないため、装備することができないと判断して奪うことを断念する。しかし、呪いの装備のせいで困っているシルルを放っておくこともできず、シルルを人間に戻すために共にシルルが住んでいた宗教都市サンプールに向かう。
エムド伯領編
ノロア・レータと呪呪人形(ジュジュ)は、新たに旅の仲間に加わったシルルーラ・トゥ・レイク(シルル)と共に、羅針眼が指すモートブッテ・ミン・イタイノスキー伯爵(エムド伯)の領地へと向かう。ドラゴンに変身したシルルに乗ってエムド伯領の森を飛んでいると、魔物に襲われているエムド伯の騎士団を発見する。彼らを救助後、騎士団長のセラ・リッツァーから呪いの装備や盗品などを取り引きしている裏装備ギルドの壊滅に向かう途中であることを教えてもらったノロアは、目的地が同じならと騎士団と同行することを決める。裏装備ギルドの根城で、無事に呪いの装備の「スライムソード(ラム)」と「スライムシールド(スイ)」を手に入れてギルドを壊滅させたが、ノロアはラムとスイの代償によって血を噴き出して意識不明となってしまうのだった。運び込まれたエムド伯の屋敷で意識を取り戻したノロアは、つねに回復薬の点滴を受け続けなければ生きられないことを知り、ラムとスイの代償を打ち消すような呪いの装備を探し始める。何げなく羅針眼を発動させると目的の装備が近い場所にあることがわかり、夜になって羅針眼が示しているエムド伯邸本館のある部屋に忍び込む。部屋の中には呪いの装備をつけたレイシャ・イタイノスキーとセラがおり、二人から事情を聞いたノロアはジュジュの効果で虐楽首輪を奪い、ラムとスイの代償を打ち消すことに成功する。安心したのもつかの間、3日後にエムド伯領の商業都市トーリマリナで別の呪いの装備が暴走し、セラたち騎士団は巻き込まれてしまう。
ソノン神聖国編
ノロア・レータたちは、手紙を送ってきたソノン神聖国にやって来たものの、差出人である謎の人物「ドールマスター」がいる聖都には入れないでいた。強力な結界で守られている聖都には入市許可証なしでは入ることはできず、ノロアたちは都市レイヴンヤードで入手手段を模索する日々を送っていた。許可証を管理する呪装審問官に近づいて盗み出すのが早いと感じたノロアは、「ノア・コレクタ」という偽名で呪装審問官の部下である調査員として働き出す。調査を終えるまで正体がばれるわけにはいかないノロアは、調査員の任務をそつなくこなしていく。コンビを組む先輩のリッカと共に幽霊屋敷の調査に向かうと、屋敷内部では不可思議な現象が次々と発生するのだった。
関連作品
小説
本作『装備枠ゼロの最強剣士 でも、呪いの装備(可愛い)なら9999個つけ放題』は、坂木持丸の小説『装備枠ゼロの最強剣士 でも、呪いの装備(可愛い)なら9999個つけ放題』を原作としている。原作小説版は、坂木持丸が「小説家になろう」に投稿していた同名小説で、カドカワBOOKSから刊行されている。イラストはゆのひとが担当している。
登場人物・キャラクター
ノロア・レータ
呪いの装備を求めて世界を巡っている冒険者の男性。装備品に対して人一倍の愛情があり、新しい装備品を見るたびに目を輝かしているが、今まで人から愛されたり人を愛したりすることを知らずに育ってきたため、愛情がどんなものなのかを知らない。装備枠がゼロで低級の魔物すら倒せない実力だったため、周囲からは「ゼロのノロア」とさげすまれていた。実際は物心がついた時には装備していた謎の装備品のせいで、呪いの装備だけなら9999個装備できるのだが、呪いの装備は忌み嫌われているため、周囲には秘密にしている。活動拠点のマハリジの町が呪いの装備「血舐メ丸」の暴走によって壊滅した際、呪いの装備である呪呪人形(ジュジュ)と出会い、ジュジュを装備することで騒動をおさめることに成功した。その後、各地に眠る呪いの装備を集める旅に出るが、いつも夢に出てくる謎の女性や、不明瞭な記憶についても解明させたいと考えている。ソノン神聖国の都市レイヴンヤードでは、「ノア・コレクタ」という偽名で呪装審問官の部下である調査員として働きながら、聖都に入るための入市許可証を盗む機会を探っている。
呪呪人形 (じゅじゅわらどーる)
ノロア・レータが装備する呪いの装備。周囲からは「ジュジュ」と呼ばれている。分類は人形タイプのアクセサリーで、ランクは不明。効果は呪呪人形(ジュジュ)が作り出した針を、ジュジュの心臓に刺すことで他人の装備している呪いの装備を奪うことができる「略奪愛」で、効果範囲は約10メートル。代償は運の能力値がゼロになる。自我を持っているため、人と会話することができる。お転婆な性格で、いたずら好きなところがあり、シルルーラ・トゥ・レイク、スライムソード、スライムシールドにノロアについてのウソを教えては、ノロアたちの対応を見て楽しんでいる。また食欲旺盛で、旅で訪れた場所で毎回食べ歩きをしている。
シルルーラ・トゥ・レイク
ノロア・レータといっしょに旅をする女性。周囲からは「シルル」と呼ばれている。もともとは宗教都市サンプールで、世界に数人しかいない聖女をしており、当時は「陽だまりの聖女」とも呼ばれていた。優しく穏やかな性格で、慈愛に満ちあふれているが、少し世間知らずな一面もある。自室にいつの間にか置かれていた呪いの装備「獣ト薔薇」に触れたことで、大型のドラゴンに変身してしまい、サンプールの兵士から討伐されそうになり、遠く離れた森に逃げ込んだ。そこでノロアと出会い、ノロアの人柄や行動に触れてノロアのことを心から愛するようになる。ノロアとキスすることで人間に戻れるようになったあとは、移動時はドラゴンに変身してノロアたちを背中に乗せて目的地まで飛んでいる。
スライムソード
ノロア・レータが装備する呪いの装備。周囲からは「ラム」と呼ばれている。分類は特殊な武器で、ランクはSSS。効果は装備者の意思によって形状を変化できる「すらいむぱわー」で、代償は装備しているだけ毎秒最大HPの0.5%のダメージを受ける。自我を持っているため、人と会話することができる。ふだんは人間の幼女の姿をしている。活発な性格で、ノロアの役に立てることを嬉しく思っている。
スライムシールド
ノロア・レータが装備する呪いの装備。周囲からは「スイ」と呼ばれている。分類は特殊な防具で、ランクはSSS。効果は装備者の意思に合わせて形状を変化できる「すらいむぱわー」で、代償は装備しているだけ毎秒最大HPの0.5%のダメージを受ける。自我を持っているため、人と会話することができる。ふだんは人間の幼女の姿をしている。冷静沈着で物静かな性格で、いつも丁寧な口調で話す。
セラ・リッツァー
モートブッテ・ミン・イタイノスキーの騎士団で団長を務める女性。謹厳実直な性格をしている。Aランクのムチタイプの武器「九岐大蛇」を使い、国でも随一の実力者。長年仕えているレイシャ・イタイノスキーが、呪いの装備である虐楽首輪に苦しめられているため、呪いの装備やそれにかかわる人物を憎悪している。ふだんは凛とした行動を心がけているが、夜になるとレイシャのSM趣味に付き合わされ、ムチでレイシャのお尻を叩いている。その際は蝶のマスクをつけて「セーラー仮面」を名乗って変装しているが、知人にはすぐにばれている。
レイシャ・イタイノスキー
モートブッテ・ミン・イタイノスキー(エムド伯)の長女。10年前に虐楽首輪に誤って触れてしまい、以降、虐楽首輪の代償によって些細なケガや事故が致命傷になりかねないため、エムド伯によって自室に軟禁されている。極端に刺激と切り離された生活を送っていくうちに、ダメージを受けてもすぐに回復する虐楽首輪の効果を快楽に感じ始めるようになる。10年前までは聡明で理知的だったが、今ではマゾヒストに目覚めてしまい、夜な夜なセラ・リッツァーを自室に呼んでお尻を叩いてもらっている。
モートブッテ・ミン・イタイノスキー
レイシャ・イタイノスキーの父親。周囲からは「エムド伯」と呼ばれる貴族で、かつて国王近衛騎士隊長も務めていた。質実剛健な性格で、領民のことを第一に考える名領主でもある。娘を溺愛しており、虐楽首輪を装備してしまったレイシャを危険から守るため、断腸の思いで彼女を部屋に軟禁した。レイシャを救ってくれたノロア・レータには感謝したうえで、セラ・リッツァーからの推薦もあったために仕官を後押しした。
略奪者 (ふぁんとむ)
ソノン神聖国の都市レイヴンヤードに最近現れるようになった謎の人物。その正体はノロア・レータだが、フード付きのマントと仮面をかぶっているため、仲間以外にはばれていない。呪いの装備だけを奪っていくため、呪いの装備を持っているだけで処刑対象となるソノン神聖国で指名手配犯となっている。しかし市民のあいだでは、悪人を倒して呪いの装備を奪う正義のヒーローとして認識され、法の番人とされる呪装審問官より頼りになると思われている。
リッカ
ソノン神聖国の都市レイヴンヤードで、呪装審問官の部下である調査員として働く女性。体が小さいために少女によくまちがえられる。面倒見がよく、偽名で潜入したノロア・レータの指導員を務めるが、座学は不得意なために逆にノロアにフォローしてもらうことも多い。
チェスター・ヴィル
ソノン神聖国の都市レイヴンヤードで、呪装審問官の司令官を務める男性。傲慢な性格で、部下の調査員たちを「野良犬」と呼んで捨て駒のように扱っている。装備枠が4つあり、装備品のランクも高い実力者だが、周囲からはあまり信頼されていない。呪いの装備を狩るのが主任務なため、手柄を横取りしている略奪者に対して強い憎悪を抱いている。
その他キーワード
謎の装備品 (なぞのそうびひん)
ノロア・レータが物心がついた時には装備していた呪いの装備。分類はアクセサリーだが、名称やランクは不明。効果は装備枠が9999になる「装思装愛」で、代償は呪いの装備しか装備できなくなる。ノロアは色も形も体のどこに装備しているかもわからない。
血舐メ丸 (ちなめまる)
ノロア・レータが装備する呪いの装備。分類は剣タイプの武器で、ランクはSSS。効果は倒した生物の攻撃力ぶんの攻撃力が上昇する「吸血」で、代償は抜刀時に精神を乗っ取られて暴走状態となり、視界の生物を殺しつくすまで納刀できない。さらに定期的に血を与えないと装備者まで殺してしまう。敵味方関係なく殺すため、「皆殺しの剣」とも呼ばれている。なお、抜刀時に目を閉じていれば意識を奪われずに済む。
羅針眼 (らしんがん)
ノロア・レータが装備する呪いの装備。分類は義眼タイプのアクセサリーで、ランクはSSS。効果は探しているものの方向を知ることができる「針眼」で、探したいものを指定して発動すると羅針盤が回転してその方向を指し示す。代償は装備時に片目を失い、発動後に捜査対象を7日以内に見つけられないと羅針眼に脳を食われて死んでしまう。ノロアは発動時に範囲を指定することで、7日間で行けないような場所にある対象物を探知しないようにしている。
獣ト薔薇 (ろーずあんどびーすと)
シルルーラ・トゥ・レイク(シルル)が装備する呪いの装備。分類は髪飾りタイプのアクセサリーで、ランクはSSS。効果は装備者が最も恐ろしいと思う姿に変身し、変身した姿に応じた能力を得られる「獣化」で、シルルは大型のドラゴンに変身して非常に速いスピードで飛行できる。代償は人間に戻るには心から愛する人とキスをする必要がある。装備品しか愛せず、人間との愛を知らずに今まで育ってきたノロア・レータには代償を払うことができないため、シルルから奪うことができなかった。
虐楽首輪 (どぅえむ)
ノロア・レータが装備する呪いの装備。分類は首輪タイプのアクセサリーで、ランクは不明。効果はダメージを受けた直後に同じだけダメージを回復する「被虐趣味」で、代償は受けるダメージが10倍になる。もともとはレイシャ・イタイノスキーが装備していたが、ノロアが呪呪人形の効果を使って奪い、10年間苦しんでいたレイシャを救った。虐楽首輪の効果により、スライムソードとスライムシールドの代償を打ち消すことにも成功している。
暴食鞄 (ぐらとにーみみっく)
ノロア・レータが装備する呪いの装備。ノロアからは「ミミちゃん」と呼ばれている。分類は鞄タイプのアクセサリーで、ランクはSSS。効果は口に入れたものを収納する「暴食」で、収納できる数は100万。代償は毎日収納した一部が消化されることと、中身が空になると満腹になるまで暴走して見境なしに食らうこと。暴食鞄に入れているあいだは時間が止まっているため、時間が関係する代償を無効化できる。
刀刈鎌 (そーびぶれいかー)
ノロア・レータが装備する呪いの装備。分類は大鎌タイプの武器で、ランクはS。効果はAランク以下の装備品を必ず切断する「装備狩り」で、装備品以外は攻撃してもすり抜ける。代償は刀刈鎌から目を離すと勝手に移動して装備を破壊する。
装備品 (そうびひん)
世界に存在するあらゆるアイテムの総称。冒険者の剣や鎧といった武具だけでなく、司祭の聖典や書記官の筆記具など戦闘に関係ないものまで該当し、「どんな装備品を使いこなすかで人生が決まる」といわれている。装備品は身につけるだけではただの飾りと同じで、装備者の能力値や職業などの条件を満たして装備品そのものに持ち主に相応しいと認められると、装備品と「魂の契約」を結ぶことができ、装備品の真価を発揮させることが可能となる。
装備枠 (そうびわく)
装備品の真価を発揮させられるようになる「魂の契約」を結べる数。人間の才能ともいえるもので、一つならふつうの人、二つなら優秀な戦闘職、三つなら歴戦の強者、七つなら英雄と認識されている。装備品が人生を決める世界で、装備品を装備できる数は強さや周囲からの対応の差に直結する。
呪いの装備 (のろいのそうび)
冒険者にとって天敵ともいえる装備品。性能はふつうの装備品より格段に強力だが、その代償も大きい。装備する際の条件はいっさいなく、触れただけで強制的に装備されて装備枠を一つ使ってしまう。外すこともできず、一度装備してしまうと死ぬまで代償を払い続けなくてはいけない。かかわった人を不幸にすることから、多くの人間たちは呪いの装備を嫌っている。
クレジット
- 原作
-
坂木 持丸
- キャラクター原案
-
ゆのひと