あらすじ
第1巻
高校1年生の泉さらは、映画などのフィクションに夢中になるあまり、恋愛に対する理想が高く、現実の恋愛には縁のない生活を送っていた。そんなある日、さらは同級生の九条翼が、恋人の春川に暴力を振るっている光景を目撃してしまう。慌てて止めに入るさらだったが、暴力というのは誤解で、二人は単に別れ話をしていただけであった。さらに別れの理由とは、翼が春川を思って身を引いたという事を知ったさらは、翼こそが自分の理想の恋愛を実践する人物だと思い込むようになる。その日から二人は急速に親しくなっていくが、ある日、衝撃の事実が発覚する。翼は表面上はさらに親しげに振る舞っていたが、本当はさらのような夢見がちで、恋愛を美化している女性が大嫌いなのだという。そんな翼に腹を立てたさらは、自分が本当の愛を教えてやると宣言するが、翼はそんなさらに別の男性を紹介したり、かと思えばクラスメイトに意地悪されて困っているところを助けてくれたりと、なにを考えているのか今ひとつわからないのであった。しかもその直後、突然翼は、さらに交際しようと言い出す。
第2巻
泉さらと九条翼は、9歳の頃に知り合って結婚の約束までしていたが、当時さらは、翼に「ダイアナ」と偽名を名乗るなど噓をついていたうえ、現在では翼の事をまるで覚えていなかった。これに腹を立てた翼は、さらと交際し、さらを自分に夢中にさせてからふる事で、復讐しようと考えていた。しかし翼の様子がおかしいと気づいたさらは、これを断って別の男性と親しくなるため、北高校の学園祭に遊びに行く事にする。しかし当日さらは、校内でお金を払うと一定時間その生徒と恋人として過ごせる「レンタル彼氏」という出し物をしている大家詠一とぶつかってしまう。そこでさらは、お詫びに彼を「レンタル彼氏」として雇い、いっしょに過ごす事にする。しかし、それを翼に目撃された事で、二人はケンカになってしまう。そんなさらと翼の関係を案じた詠一は、学園祭後もさらに会いに来るようになり、二人はどんどん親しくなり、まるで本当の恋人のようになっていく。だが詠一の真の目的とは、さら自身ではなく、翼のような優秀な男性に好かれている女性と交際する事であった。さらはそれを知らぬまま、さら達の学校の文化祭が訪れる。
第3巻
泉さらは、文化祭中に大家詠一の本音を知り、詠一と距離を置く事にした。しかしその直後、詠一の飼い犬が行方不明になった事を知ったさらは、いっしょに探す事を決意。必死の捜索が実を結び、犬は無事に見つかるのだった。これによってさらと詠一は元の友人関係に戻るが、一部始終を見ていた詠一の友人の藤田は、二人がお似合いなのではと考えるようになる。そこで藤田は、自身の恋人であり、さらの友人でもある小島咲も交えて、四人でクリスマスを過ごす事にする。しかし詠一は、さらが自分ではなく、九条翼を気にしている事に気づいていた。そこで詠一はさらの携帯電話を使って翼に連絡をし、さらと翼は、急きょ会う事になる。その途中、二人は気まずくなる場面もあったものの、帰り際にキスをして別れるのだった。そしてそのまま年が明けるが、さらは翼とキスはしたものの、特に交際を始めたわけでもなければ、好きだと言われたわけでもない事に気づく。そこでさらは咲の助言で早速翼に会いに行くが、そこでも二人はすれ違い、険悪になってしまう。だが、このままではいけないと考えたさらは、ついに翼に告白する。
第4巻
泉さらと九条翼はついに交際を始めたが、小島咲は翼に不信感を抱いていた。咲は、翼が犬飼に対して、自分がさらに本気になる事はないと宣言しているのを聞いてしまったのである。これを知った犬飼はすぐさま翼に伝え、その日から翼は咲が余計な事を言わないように、必要以上にさらといっしょに過ごすようになる。そんなある日、さらは街で見知らぬ少年に声を掛けられる。彼は翼の弟の九条葵で、翼の恋人であるさらに関心があり、ぜひなかよくなりたいのだという。これに応じるさらだったが、葵と楽しく過ごしたあと、翼はどうやら彼をよく思っていないらしい事を思い出し、今日の事は秘密にしておく事にする。だが、後日二人が知り合った事が翼にばれてしまい、翼は不機嫌になり、葵はますますさらにまとわりつくようになるのだった。しかしその直後、さらは、翼がさらを気に入ったのは、翼の初恋の女性である「ダイアナ」に似ているからだろうと葵に言われ、ショックを受ける。これがきっかけでさらと翼はまたも気まずくなってしまうが、翼は、もはや自分達がかつて親しくしていた事を隠す必要はないと判断。真実を伝える事にする。
第5巻
九条翼は、泉さらと自分が子供の頃親しくしていた証拠として、当時の写真を見せようとしたが、その写真は何者かによって塗りつぶされ、顔が判別できない状態にされていた。犯人は九条葵であると察した翼は葵を叱るが、葵は話を聞かず、その場を去ってしまう。しかしさらは、葵がさらと翼の関係を邪魔しようとするのは、葵が淋しさを感じているからではないかと考える。その直後さらは、葵が同級生の渡辺といっしょに、さらと翼を別れさせようと作戦を立てている場面を目撃する。しかし、渡辺がさらの悪口を言った事で、状況は一変。葵はさらをかばい、さらもまた葵を許した事で、二人のわだかまりは解け、またいっしょになかよく遊ぶ関係に戻るのだった。そして後日さらは、葵の提案で子供の頃よく遊びに行った山川市に、翼も交えて三人で遊びに行く事になる。しかし当日葵は体調を崩し、さらと翼は二人で出かける事になる。そこでさらはおばの知人の田中と出会うが、二人の親しげな雰囲気に嫉妬した翼は、突然別れようと言い出す。だが、すぐに後悔した翼は、さらに謝罪し、ずっと昔、さらの名前を「ダイアナ」だと思っていた頃から好きだった事を打ち明ける。
登場人物・キャラクター
泉 さら (いずみ さら)
集英高校1年G組に在籍する女子。前髪を目の上で切り、肩につくほどまで伸ばした茶色のセミロングヘアにしている。額にバツ印の傷跡があり、これは小学生の頃、ハサミでケガをしてできたもの。大の映画好きで、子供の頃から多数の作品を鑑賞しており、特に理想的な美しい恋愛を描いた作品が大好き。そのため恋愛を美化して、現実で繰り広げられる恋愛は醜いものばかりと考えている。 その結果、泉さら自身はまるで恋愛に縁のない生活を送っていた。しかし、ある日学年の王子様的存在である九条翼が、恋人の春川のために身を引いたという話を聞き、翼こそが自分の理想の恋愛を実践する人物ではと思い込むようになる。そこで翼に懐くようになるが、翼は女性嫌いでふだんは猫をかぶっており、特に自分のような、夢見がちな女性が大嫌いだと知り、ショックを受ける。 そこで、そのようなひねくれた翼に自分が真実の愛を教えてやる、つまり好きにさせて見せると宣言する。実は9歳の頃おばの住む田舎ですでに翼と出会っており、結婚の約束をするほど親しかった。しかしさら自身は当時の事や、翼に対して、お気に入りのキャラクターから取った「ダイアナ」という偽名を名乗っていた事はすっかり忘れてしまっている。
九条 翼 (くじょう つばさ)
集英高校1年G組に在籍する男子。泉さらの思い人で、前髪を目が隠れるほど伸ばした、焦げ茶色の短髪。裕福な家に生まれ、美形なうえ、誰に対しても非常に親切な事から、周囲からは王子様的存在として知られている。しかし実際は、気難しくひねくれた性格の持ち主。9歳の頃、おばの住む山川市の田舎で「ダイアナ」と名乗る少女と出会い、親しくなる。 そこで「じょーくん」と呼ばれ、結婚の約束をするほどダイアナを思うようになるが、ある日突然彼女が自宅に帰ってしまったうえ、自分が贈った指輪も置いていき、そもそもダイアナというのは偽名であった事を知り、深いショックを受ける。それ以来女性不信となり、同時に恋愛に対しても冷めた考えを持つようになってしまった。そして高校1年生になったある日、春川との別れ話がきっかけでさらと親しくなるが、さらが自分を理想的な男性だと思い込んでいる事を知り、その幻想を砕いてやろうと意地悪に振る舞うようになる。 しかしその直後、さらこそがダイアナである事に気づき、ますます意地悪するようになる。食べ物の好き嫌いが激しく、見ず知らずの人間が作ったものは食べたくないという理由で、市販のパンなども食べない。 血液型はA型。三人兄弟で、兄と弟の九条葵がいる。
大家 詠一 (おおや えいいち)
北高校に通う1年生の男子。泉さらの友人で、前髪を目にかからないように切って左寄りの位置で分けた短髪。シビアな現実主義者で、たとえば時間に余裕がある時は恋人を作って楽しむが、受験勉強で忙しくなってきたらさっさと別れてしまうといった、自分にとって最も都合がよく、効率的な道を選んで生きて来た。しかし他人にも、そんな無駄のない生き方をするようにとアドバイスしてしまう事があり、その結果、自分なりに相手を思って接しているつもりが、いつも嫌われてしまうという人生を送って来た。 高校1年生の秋、学園祭でさらと出会い、いいヒマつぶしになると考えてさらに近づき、九条翼から奪おうとするが、その過程でさらの事を本当に好きになってしまう。しかし最終的には、さらと翼が両思いである事を理解して身を引いた。
九条 葵 (くじょう あおい)
中学生の男子。九条翼の弟で、前髪を目の下の高さまで伸ばして左寄りの位置で分けた短髪。一見穏やかでかわいらしい雰囲気を漂わせているが、人に平気で噓をついたり、騙そうとしたりするなど、なにを考えているのかわからないところがある。子供の頃は身体が弱く、あまり学校にも行けずにいたため、いつも自分と遊んでくれる翼の事が大好きであった。 そのため、翼を傷つけて一方的に姿を消した「ダイアナ」の事も快く思っていなかった。しかし、翼が中学生になり、九条葵自身がとうとう退院できた直後、翼が実家を出て親戚の家で暮らすようになってしまったうえ、結局ダイアナの事も未だに引きずっているらしい事に腹を立てる。そこで、ダイアナの正体である泉さらと翼を別れさせるため、さらに近づく。 しかし最終的にはさらと親しくなってしまい、別れさせる事をあきらめた。
小島 咲 (こじま さき)
集英高校1年G組に在籍する女子。泉さらの友人で、前髪を目が隠れそうなほど伸ばして左寄りの位置で斜めに分け、胸の高さまで伸ばしたロングヘアにしている。恋多きタイプで、以前は10歳以上年上の27歳の男性と付き合っていた。その後、北高校の文化祭をきっかけに藤田と交際を始める。さらと九条翼の関係については一歩引いた位置で見守っていたが、二人が交際を始めた直後、翼が犬飼に対して、さらと交際を始めたのは復讐をするためであるという話をしているのを聞いてしまう。 これがきっかけで、翼に対して不信感を持つようになる。しかし、これとは関係なく、ある日偶然に九条葵と出会った事を翼に伝えたところ、翼の事を調べるため、葵にまで近づいたと誤解される事となる。
犬飼 (いぬかい)
集英高校1年G組に在籍する男子。九条翼の友人で、前髪を目が隠れそうなほど伸ばした短髪。目が細く、いつも目を閉じているように見える。穏やかで落ち着いた性格をしている。翼とは非常に親しく、翼に二面性がある事を理解しつつも受け入れて付き合っている。ある日翼から、9歳の頃に泉さらと親しくしていたが、実はいくつも噓をつかれていたうえ、本気の告白をないがしろにされて去られた事を打ち明けられる。 そのため、翼に同情しつつも、子供の頃の思い出を引きずりすぎている翼を案じている。
春川 (はるかわ)
集英高校に通う女子。九条翼の元交際相手で、前髪を目の上で切り、胸の高さまで伸ばしたロングヘアにしている。翼とは問題なく交際していたが、ある日親の再婚で引っ越す事になってしまう。しかし、翼といっしょにいたいあまり、自分だけ引っ越さないと言い出す。それが原因で翼と揉めていたところを泉さらに目撃され、さらと知り合った。 その後、結局翼と別れる事になるが、翼とさらが急接近している事を知って腹を立てる。そこでさらの机や持ち物に落書きをしたり、靴を盗んだりと嫌がらせをするようになる。
吉川 (よしかわ)
泉さら達とは別の高校に通う男子。九条翼の友人で、前髪を目が隠れそうなほど伸ばした短髪。気さくで話しやすい性格の持ち主。翼に紹介される形でさらと知り合い、お互いに映画好きという事で親しくなる。
水沢 (みずさわ)
集英高校1年G組に在籍する女子。泉さらと九条翼のクラスメイトで、前髪を目が隠れそうなほど伸ばして真ん中で分け、胸の高さまで伸ばしたストレートロングヘアにしている。翼に思いを寄せており、最近翼と親しいさらの事を、翼のストーカーだと思い込んでいる。そこで二人を引き離すため、翼のとなりに座っているさらに席を交換しろと詰め寄る。
藤田 (ふじた)
北高校に通う1年生の男子。大家詠一の友人で、小島咲の恋人。前髪を耳の高さまで伸ばして真ん中で分けた短髪。穏やかでおっとりとした性格の持ち主。誤解されやすい詠一の事を案じており、詠一は唯一本音で接する事のできる泉さらと交際するのがいいと考えている。
渡辺 (わたなべ)
集英高校に通う1年生の女子。前髪を顎の高さまで伸ばして真ん中で分けて額を全開にし、胸の高さまで伸ばしたロングヘアにしている。気が強く傲慢な性格の持ち主。九条翼に思いを寄せているが、翼が泉さらのと交際を始めてしまい、なぜ翼はさらのようなさえない女性を選んだのかと納得できずにいた。そこで高校1年生の冬、九条葵の協力を得て、二人を別れさせようと作戦を立てるが、葵の前でさらの悪口を言ったせいで葵に嫌われてしまう。
田中 (たなか)
山川市に住む高校生の男子。泉さらのおばの知人で、前髪を目の上で切った短髪。穏やかでおっとりとした性格をしている。2年ほど前に山川市に引っ越して来てさらのおばと親しくなった。田中をさらの恋人にしようと考えたさらのおばに、頻繁にさらの写真を見せられていたため、さらとは直接の面識はないものの、一方的に彼女の事をよく知っている。