概要・あらすじ
漫画家の上野顕太郎が、執筆の休憩時に2階の仕事場から降りてみると、妻のキホが倒れていた。必死で蘇生を試みるも、搬送された病院で死亡宣告を受ける。自宅での葬式を経て、忙しい執筆生活が戻るが、様々な後悔や「最愛の人がいない日々」は彼を苛み続ける。写真やビデオの映像や妻のメモなどに、過去の再現を求めるが、考えは常に「あの時なぜ妻の異変に気づけなかったのか」に向かってしまう。
一度は自殺まで思いつめるも、10歳になる娘の存在がそれを押しとどめる。そして、最後に美しい夢でこの作品は締めくくられ、エピローグで一筋の光明が差し込む。
登場人物・キャラクター
上野 顕太郎 (うえの けんたろう)
劇画系のリアルな絵で、シュール・ナンセンスを得意とする ギャグ漫画家だが、最愛の妻キホの急死によって、身を切られるような絶望と激しい後悔に襲われ苦しむ。10歳の娘、カリンがいる。上野顕太郎自身をモデルにしている。
上野 キホ (うえの きほ)
上野顕太郎とは、出版記念パーティで知り合い、半年で結婚する。結婚後すぐ妊娠して、娘カリンを生む。喘息の症状があり、うつ病の治療も受けていた。11年間連れ添うも、2004年12月10日、突然の心臓発作で死去。解剖の結果、心臓に前から疾患があったことがわかる。 享年34才。本名の漢字は、作中の喪中欠礼状にのみ提示。実在の人物、上野希穂がモデル。
上野 カリン (うえの かりん)
上野顕太郎とキホの娘。母親が死去した時、10歳。父に心配をかけまいと気丈に振る舞う。しかし実際は気づかれないように泣いていた。本名の漢字は、作中の喪中欠礼状にのみ提示。実在の人物、上野華凛がモデル。
アシスタントY (あしすたんとわい)
漫画家上野顕太郎の作画を手伝う。上野がキホの心臓発作に気がついたとき、2階の仕事場で仮眠をとっていた。始発で帰宅する。
コミックビーム担当編集者I (こみっくびーむたんとうへんしゅうしゃあい)
漫画家上野顕太郎の担当編集者。エンターブレインが出版している、月刊コミックビーム勤務。編集長と葬儀に出席。葬儀から11日後、上野の完成原稿16枚を受け取る。その際、上野からの「今回のことを漫画化したい」という申し出に対し、もう少し時間を置くことを提案する。
救急隊員 (きゅうきゅうたいいん)
上野顕太郎の連絡により、救急車で到着。3名。救急措置を施し(AED使用)、キホを病院に搬送する。上野とカリンはこれに同乗する。
刑事 (けいじ)
二人。死亡状況が特異だったため、キホの死亡に事件性がないか、病院で上野顕太郎から状況を聴取する。死因解剖を行うことも、上野に説明する。また、上野の自宅で、現場検証を行う。
葬儀社社員 (そうぎしゃしゃいん)
警察付きの葬儀社の社員。キホの死亡宣告後の遺体の管理(大学病院での死因解剖とその後の自宅への搬送)、葬儀の手配・進行を行う。
キホの友人S (きほのゆうじんえす)
キホの高校時代からの友人。女性。キホが心を開ける数少ない友人の一人。キホの棺に入れるため、青いストールを持ってきた。「キホが寒くないように」という彼女の言葉に、上野顕太郎はこらえきれずに涙を流す。
場所
上野顕太郎の自宅 (うえのけんたろうのじたく)
漫画家上野顕太郎の自宅。ニ階建ての一戸建て。二階は仕事場、アシスタントの仮眠室あり。キホは一階の居間で、うつ伏せに倒れていた。葬儀も自宅で行った。
火葬場 (かそうじょう)
通夜のあと、2004年12月12日に、キホの遺体を火葬した場所。火葬後、骨を骨壷に収める。遺骨を胸にいだき、喪主である上野顕太郎は「キホは幸せでした」「これからも家族3人で頑張ります」と、挨拶をする。