しをちゃんとぼく

しをちゃんとぼく

少なくとも2000年以上は生きている不死者、しをちゃんは、危機察知能力の欠如により日常生活にも支障をきたすほど不器用でポンコツだった。そんなしをちゃんと友人の小学生男子、ぼくの触れ合いを描く、少々グロテスクながらもハートフルな日常系ブラックコメディ。「となりのヤングジャンプ」で2016年11月8日から2018年5月8日にかけて配信された作品。

正式名称
しをちゃんとぼく
ふりがな
しをちゃんとぼく
作者
ジャンル
オカルト
 
ブラックコメディ
関連商品
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あらすじ

ある日、ぼくは橋の上で、頭に深く鎌を突き刺して血を流しながらも平然と歩く男性とすれ違う。常軌を逸した光景に、ぼくは恐る恐る男性に声をかけて鎌のことを指摘する。彼は自らを「死を失いし者」だと語り、ぼくに大事ないことを伝えるが、ぼくは無視して救急車を呼ぶのだった。だが、やって来た救急隊員は、男性を一目見るなり事態を把握した様子で、ぼくが救急車を呼んだことは褒めながらも、この男性の場合に限っては通報の必要はないことを語って聞かせる。その後、寂しそうな顔で「不死はよいものではない」と語る男性に対し、忙しい母親とコミュニケーションを取る機会の少ないぼくは、同情とも共感ともつかない感情を覚えるのだった。こうして男性と知り合ったぼくは、彼を「しをちゃん」と呼び、頻繁に家に遊びに行ったりと交流を深めていく。そして、死の危険にさらされることのない彼が、どれほど危機察知能力を失い、尋常ではないほどのドジを繰り返しているのかを知ることとなる。(第1話「しをちゃんとぼく」)

いつものようにぼくがしをちゃんの家を訪ねてインターホンを押すと、なにやらしをちゃんは忙しくて出迎えに出られない様子。うながされるままにしをちゃんの家に入ったぼくは、そこでシーツをかけられた物体を目にする。シーツをめくってみると、そこには髭(ひげ)の生えた鼻眼鏡を付けて、ストライプの衣装に三角帽子、胸に「生」と書かれたゼッケンを貼った、あまりにも珍妙な姿のしをちゃんの身体が横たわっていた。ぼくが困惑する中、いつもどおりのしをちゃんが姿を現す。彼によれば、朝に料理をしていたところ包丁で指を切ってしまい、切り離された指先の方から再生してしまったのだという。すでに本体ではなくなってしまった身体は、しをちゃんにとっては爪切りで切った爪や、抜けた髪の毛程度の意味しか持たなかったが、通常の人間はこれを見ると恐れおののくだろうことが想起された。この理由が、動かなくなった身体が死を想起させるからなのではないかと考えたしをちゃんは、死のイメージを可能な限り払しょくするため、愉快な格好をさせたうえで、ゴミに出そうと考えていたのである。話を聞いたぼくは、素直に防衛庁(現在は防衛省)情報本部特別監視班不死人担当に連絡してみてはどうかと提案する。(第39話「死体にあらず」)

登場人物・キャラクター

ぼく

小学2年生の少年。埼玉県品津市在住で、母親と二人暮らしをしているが、母親が日々仕事で忙しくしているため、寂しい思いをしている。そんな中、しをちゃんと出会い、彼の境遇に同情とも共感ともつかない感情を覚え、交流を深めていく。物静かで落ち着いた素直な性格で、何かと常軌を逸した言動をするしをちゃんに対して、静かにツッコミを入れることが多い。本来は常識人のはずだが、しをちゃんと交友を深めていくにつれ、彼の特異な体質をふつうに受け入れるようになっていく。何かとしをちゃんの家に遊びに来ることが多く、生きがいを持てなかったしをちゃんには、「わが友」と呼ばれ非常に大事にされている。のちに新世界創造を目論むちかもとさんと知り合い、しをちゃんの推薦で彼の率いる「未来結社ネオゴッド」に加入し、「地獄軍師 デスキッド」の名を授かることとなった。ちかもとさんを交えて未来結社ネオゴッドの活動をする際には、彼に作ってもらった悪の組織の幹部然としたコスチュームを身につける。

主人公

2000年以上を生きる不老不死の男性。埼玉県品津市在住で、ぼくと初めて会った際に「死を失いし者」と自己紹介したため、彼には略して「しをちゃん」と呼ばれている。目には黒目がなく、髪をオールバックにしてウ... 関連ページ:しをちゃん

ちかもとさん

埼玉県品津市在住で、新世界創造を企む人物。ぼくと初めて会った際に「力を求めし者」と自己紹介したため、彼には略して「ちかもとさん」と呼ばれているが、ちかもとさん自身は新世界創造を目論む「未来結社ネオゴッド」の総帥、ヘルクラフトを自称している。目が四つ付いた仮面に、目が三つ付いた兜(かぶと)、さらにトゲの付いたショルダーアーマーに鎧(よろい)にマントと、全身黒ずくめの、まさしく悪の組織の幹部然とした姿をしており、年齢や性別は不詳。ちなみに外出時はいつもこの姿のため、職務質問を受けたり店に入れてもらえなかったりと、トラブルを招くことも多い。一人称は「吾輩」で、言葉遣いこそ悪の組織の幹部を意識したものだが、基本的には常識人のため、しをちゃんの特異な体質に対しても、なかなか慣れることはない。また、周囲に迷惑をかけるようなことはせず、外出の際にはショルダーアーマーのトゲが危なくないように緩衝材で先端を覆ったりと、良識的で気づかいのできる、腰の低い人物。実は対人関係を非常に苦手としており、ヘルクラフトの衣装も、他人の視線から自らを守るための防御壁としての役割が大きい。DIY好きで、自らの衣装はもちろん、しをちゃんの「不死身公爵 ダークフェニックス」の衣装、ぼくの「地獄軍師 デスキッド」の衣装を手作りしているほか、都市計画区域外の建造物は、小さいものなら建築確認申請が必要ないことを利用し、郊外にある自宅の離れとして、自ら設計したアジトを建設までしている。ちなみに自宅は、九州に移住した伯父夫婦から住み込みで管理を任されているもののため、家の買い手が決まればアジトも撤去しなくてはならない。ほかにも、シーケンサーを使って曲を作ったりとさまざまな分野で創造力に長(た)けている。ちなみに、ネオゴッドの掲げる新世界創造とは、新たな世界をDIYで作り上げることを意味している。ちかもとさんが不死者であるしをちゃんに協力を仰いだのも、限りある生ではDIYで新たな世界を作るために時間が足りなすぎることが理由である。

Dr.グレイ

19世紀半ばに、しをちゃんの不死の秘密を研究していた男性。左目に眼帯を付けている。28歳の時にしをちゃんを捕らえ、79歳で自らが死ぬまでしをちゃんの研究を続けた。だが、しをちゃんの細胞は完全にふつうの人と同じで、しをちゃんの切られた身体が再生する際も、切られた大元と切り落とされた部位のどちらから再生するかは法則性がなく、完全にランダムだと考えられることなど、何一つ有用な研究結果を残せず、最終的に「とにかくデタラメに不死」という言葉をレポートに残してこの世を去った。ちなみに最後の晩餐(ばんさん)は、しをちゃんが作った印度カリー(マリガトーニスープ)だった。

名義の者

埼玉県品津市役所やれるならすぐやる課に勤務する男性。眼鏡をかけた堅物然とした姿をしており、性格も非常にまじめだが、意外にも熱血漢。実は、身寄りや保証人のなかったしをちゃんが、軍の研究所から品津市に引っ越してきた際、厚意から彼に家の名義を貸していた一族の末裔(まつえい)である。そのため、しをちゃんには「名義の者」と呼ばれている。名義の者自身も当初は祖先と同様にしをちゃんに家の名義を貸していたが、ある時、身分を証明するものがなければ不便だろうと考え、しをちゃんに人権を求める運動を開始した。これはうまくいかなかったものの一計を案じ、最終的にしをちゃんをゆるキャラのようなマスコットキャラクターとして登録したうえで、特別住民票を発行してもらうことに成功。この出来事が10年ほど前のことで、以降は身元を証明できるようになったしをちゃんが自立したため、名義貸しを辞めたという経緯がある。その後もしをちゃんのことは友人のように大事に思っており、彼のことを気にかけていた。ブラックな条件でアルバイトを始めたしをちゃんを心配したぼくとちかもとさんが、やれるならすぐやる課に相談を持ち掛けたことで、しをちゃんの現況を知り、同時に交流を復活させる。何かと悪の組織の幹部のような物言いをするちかもとさんに対して、まるで正義のヒーローのように受け答えをするノリのいいところがあり、ちかもとさんには非常に喜ばれている。

「Margaretの呪い」の者

17世紀半ばに、しをちゃんとかかわりのあった女性、Margaretの一族に連なる女性。当時、しをちゃんはMargaretに思いを寄せられつつも、不死者ということで彼女の愛を受け入れなかった。怒りを覚えたMargaretは、しをちゃんに子々孫々に至るまで呪うことを告げるが、しをちゃんに子孫ができないことを伝えられると、逆に自らに連なる者が代々しをちゃんのことを呪うと宣言した。以来、Margaretの一族の長女は、18歳になったらしをちゃんを探し出し、思いつく限りの呪いの言葉を浴びせることが定例の儀式となっている。そして代を重ねるうちにいつしか、この儀式を無事に済ませると幸運が訪れるという言い伝えまでできるようになった。当代の「Margaretの呪い」の者は13代目にあたり、少々ノリの軽いところはあるが明るく元気な女性で、多少片言ながらも日本語を上手にあやつる。黒服のボディーガードを伴ってしをちゃんの家を訪れ、彼の顔を見るなり笑顔でさまざまな悪態をついたが、しをちゃんには自分に会いに来てくれる数少ない人ということで、非常に歓迎された。

語を操りし者

明治時代末期に翻訳の仕事をしていた男性。しをちゃんに日本語を教えた人物。もともと友人から、アメリカの書物だと思って「The Man Who Lost The Death」というものを譲り受けるはずだったが、これは実際は本ではなくしをちゃん本人であり、彼のことを譲り受けることとなってしまった。だが、語学と文学を学ぶには本以上の存在だと前向きにとらえ、しをちゃんを世話すると同時に、彼に日本語を教え始めた。そのため、しをちゃんには「語を操りし者」と呼ばれている。その後、大戦が勃発し、しをちゃんが陸軍兵器行政本部に連行されることになった際は、異国人にかかわる者として世間から白い目で見られることも覚悟のうえで、しをちゃんの通訳を願い出て軍に同行し、彼に日本語を教え続けた。のちにこの行為は、一人称や語尾など、しをちゃんが語を操りし者の理想どおりに日本語をしゃべるように仕立てた「翻訳作業」であり、彼を自らの最高傑作の翻訳本(作品)として完成させるためだったことを明かすが、それ以上に友人として、しをちゃんのことを思っての行動でもあった。そのことを理解しているしをちゃんには強い感謝の念を抱かれている。語を操りし者は戦後を迎えることなく病で亡くなったが、今でもしをちゃんは、時おり自らの頭蓋骨を割って栞(しおり)を挟み、自らを本扱いすることで彼を偲(しの)んでいる。

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