若返ったおじいさんとおばあさんの愛にあふれた物語
ある日、金色のりんごを食べたことで高齢者夫婦が20代に若返ったことから物語が始まる。当然、身内や近所の人たちは突然の若返りに驚愕するが、当の本人たちは気にする素振りも見せない。新婚時代に戻ったような若き夫婦生活を謳歌する元老夫婦の姿をコメディタッチに描いたハートフルストーリー。作者の新挑限は青森出身で、二人の会話からもシニア愛と津軽愛が伝わってくる。
50年連れ沿った老夫婦の絆
斎藤正蔵は穏やかな性格で、妻の斎藤イネを心から大切にしている。正蔵は結婚当初からりんご農園を営んでいたこともあり、イネを新婚旅行に連れていけなかったことを悔やみ続けている。妻のイネもまた、正蔵と同じく心優しい性格の持ち主で、正蔵が糖尿病を患い、好物の豆大福を控えるようになった際には、自分も食べないようにするなど、気配りを欠かさない。正蔵とイネはがむしゃらに働き続けたシニア世代で、結婚してから50年が経つが、若返ってもその絆は変わらず、二人で過ごす時間を大切にしている。また、若返ったイネはゲートボール仲間の男性陣からひそかに人気で、正蔵は孫の斎藤未乃からアイドルのように扱われている。
夢に現れる砂時計の謎
斎藤正蔵と斎藤イネは、自宅に実っていた金色のりんごを食べたことで若返るが、正蔵はたびたび大きな砂時計が夢に現れるようになる。夢の中で砂時計をひっくり返すと、現実世界で若かった正蔵は老人に戻ってしまう。さらにひっくり返すと、正蔵は老人から若者の姿に戻ることが判明する。ただし、砂は時間の経過と共に減っており、命は永遠ではないことが暗示されている。一方で正蔵が老人に戻っても、イネは若い姿のままである。お互いに残された時間や死について考えるシーンをはじめ、コメディ作品ながらシニア世代でなくても身につまされるシリアスなエピソードが描かれる。
登場人物・キャラクター
斎藤 正蔵 (さいとう しょうぞう)
青森県弘前市の近くにある農村「南町」で、妻の斎藤イネと共にりんご農家を営んでいる老齢な男性。禿げ上がった頭にたれ目で、優しい雰囲気を漂わせた落ち着いた性格をしている。50年以上連れ添ったイネのことを心から愛しており、ふだんは冷静ながらイネが絡むと気持ちに抑えが効かなくなることがある。昭和初期生まれで貧しく忙しい人生を送っていたため、イネを新婚旅行に連れて行ってやれなかったことを悔やんでいる。そんなある日、自宅の果樹園で一個だけ生っていた金色のりんごを発見し、イネといっしょに食べると突如若返り、20代の姿となる。若返ってからも髪の毛は白髪のままだが、芸能人並みの容姿と農作業で鍛え上げられた筋肉を取り戻す。この奇跡に戸惑いながらも、イネと仲睦まじく暮らしながら、これまではできなかった新しいことにチャレンジしている。
斎藤 イネ (さいとう いね)
青森県弘前市の近くにある農村「南町」で、夫の斎藤正蔵とりんご農家を営んでいる老齢な女性。旧姓は「佐々木」。白髪をオールバックにまとめ、正蔵に似た穏やかな雰囲気を漂わせた優しい性格の持ち主。一見物静かながら肝が据わっており、こうと決めたら曲げない意志の強さを持つ。東京都出身のお嬢様で、お見合い結婚をさせられるはずだったが、正蔵と出会って駆け落ちも辞さない覚悟で結婚を果たす。そんなある日、自宅の果樹園で一個だけ生っていた金色のりんごを発見し、正蔵といっしょに食べると突如若返り、20代の姿となる。若返ってからも髪の毛は白髪のままだが、芸能人並みの美貌と抜群のスタイルを取り戻す。また20代の頃は身体が弱かったが、金のりんごを食べてからは健康な身体となる。この奇跡に戸惑いつつも、正蔵と仲睦まじく暮らしながら、これまではできなかった新しいことにチャレンジしている。
書誌情報
じいさんばあさん若返る 全8巻 KADOKAWA〈MFC〉
第1巻
(2020-06-22発行、 978-4040645322)
第2巻
(2020-11-21発行、 978-4040659817)
第3巻
(2021-04-23発行、 978-4046803535)
第4巻
(2021-10-22発行、 978-4046807274)
第5巻
(2022-04-22発行、 978-4046813367)
第6巻
(2022-10-21発行、 978-4046817990)
第7巻
(2023-08-16発行、 978-4046823786)
第8巻
(2024-06-21発行、 978-4046836830)