優等生すずめとお嬢様めだかの友情
新年度の塾で、小学4年生のすずめは私立小学校に通うめだかと出会う。天真爛漫なすずめと、愛らしいけれど世間知らずなめだか。対照的な二人はすぐに意気投合し、親友となった。ある日、めだかは「かわいい制服を貸してあげるから、髪を切ってほしい」とすずめに頼む。すずめが短く切った髪を、めだかは嬉しそうに見つめるが、そこに迎えに来ためだかの母親、あかねが現れる。娘の変わり果てた姿を見たあかねは、その怒りをすずめに向け、「雑草のくせに図々しい」と言い放つ。しかし、すずめは怯むことなく「雑草なんて草は存在しない」と反論する。その堂々とした言葉に驚きを隠せないあかねは、かつて自分が劣等感を抱いていた同級生、たがめ優子を思い出し、すずめに対して言いようのない嫌悪感を覚える。
中学受験に挑む子供たちの葛藤と成長
本作は、中学受験に挑む小学生たちをテーマにした物語。登場人物には、しっかり者の優等生でありながら将来の夢と家族の苦労の狭間で苦悩するすずめ、英才教育を受けながらも心の中では自由を求めているめだか、頭脳明晰で容姿端麗でありながら勉強の退屈さから不登校になり、女性の服装を好むことで周囲から孤立している大野からす、音楽の道を志しながらも父親の干渉に心をすり減らしている水島タクトなど、さまざまな悩みを抱えた子供たちが描かれている。彼らは厳しい受験勉強に励む中で、それぞれのコンプレックスと向き合い、自らの将来を見つめ、進むべき道を見定めていく。作者の今日マチ子自身も中学受験を経験しており、その体験が本作に生かされていることが、あとがきで語られている。
中学受験を支える母親たちの苦悩と家族の絆
中学受験の苦悩は、子供たちだけでなく、彼らを支える家族にも影響を及ぼし、複雑な問題や事情を生み出している。すずめの母親は、決して裕福ではない家庭環境の中で、娘の受験を支えるために複数の仕事を掛け持ちしている。めだかの母親、あかねは、義母、みすずとの確執に加え、かつての同級生、優子に対するコンプレックスに悩まされていた。そして、からすの母親、わたげは、夫と別れたあと、一人で病院を切り盛りしている。周囲から慕われる一方で、彼女も息子の教育方針について深く悩んでいる。母親たちは、多感な子供たちとの向き合い方に戸惑いながらも、我が子が本当に望むものを必死に考え、家族の絆を深めていく。
登場人物・キャラクター
すずめ
公立小学校に通う4年生の女子。明るく活発な性格で、目上の人にも丁寧かつ毅然とした態度で接することができるしっかり者。街の小児科医、わたげにあこがれ、医師を目指している。その夢を実現するために、自分のお小遣いで塾に通いたいと申し出たところ、両親も中学受験を応援してくれ、毎日勉強に励んでいる。優しく物怖じしない性格から、男女問わず人気があり、学校や塾にも友人が多い。家族への思いは人一倍強く、母親が自分のために働き始めたことに負い目を感じている。その頑張る姿は、弟のむくに「姉のようになりたい」と勉強を始めるきっかけを与えている。同じ塾に通うめだかやからすからは一目置かれる存在だが、すずめ自身は彼らの持つ才能や個性を眩しく感じている。
藤原 めだか (ふじわら めだか)
私立小学校に通う4年生の女子。すずめと同じ塾に通っている。裕福な家庭で育ったため、少しおっとりとしていて世間知らずな一面もある。しかし、基本的には好奇心旺盛で、誰に対しても明るく接する。自分とは対照的なすずめの快活な性格に、あこがれに近い感情を抱いている。児童文学が大好きで、将来の夢には「ピーターパンになりたい」と書くような独特の感性を持っている。文学評論家の祖母、みすずとは気が合い、よく文学についての話で盛り上がっている。一方で、教育熱心な母親、あかねとはあまり気が合わず、言いつけを素直に守りながらも、時おり不満をのぞかせることがある。
書誌情報
すずめの学校 全3巻 竹書房
第1巻
(2023-09-22発行、978-4801937031)
第2巻
(2025-04-17発行、978-4801944275)
第3巻
(2025-04-17発行、978-4801944282)







