あのこにもらった音楽

あのこにもらった音楽

幼なじみと結婚した梅子と元天才ピアニストの夫、佐藤蔵之介の生活を、ほのぼのとした作風で描いた作品。作中にはクラシック音楽の曲名や豆知識が紹介されている。「メロディ」2001年5月号から2003年7月号にかけて不定期連載された。

正式名称
あのこにもらった音楽
ふりがな
あのこにもらったおんがく
作者
ジャンル
家族
レーベル
花とゆめCOMICS(白泉社)
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あらすじ

第1巻

今春高校を卒業する梅子は、進学するか、それともお世話になっている「梅の木旅館」で働こうかと悩んでいた。そこへ実父であるヘルマンが現われ、ドイツで暮らさないかと提案される。一時はヘルマンと共にドイツ行きを考えた梅子だったが、結局は佐藤蔵之介の弾くピアノ演奏を聴かないと眠れないため、その申し出を断る。その日、ドイツに行く予定だった梅子には寝る場所がなく、蔵之介の布団の中にもぐりこんでいたところを、蔵之介の父と佐藤玉子に発見されてしまう。(小梅夜曲)

その後、結婚した梅子と蔵之介のあいだに、娘の佐藤乃子が生まれる。そんな中、蔵之介の友人であり、人気バイオリニストの榛野茂が、娘の榛野麗と共に「梅の木旅館」を訪れる。実は麗は、蔵之介のピアノと自身のバイオリンでセッションしたいと長年願っていた。そして茂は、蔵之介に自分達のコンサートでピアノを弾いてほしいと依頼するのだった。(月下狂詩曲)

「梅の木旅館」には蔵之介のグランドピアノがあり、今日は調律師がやって来る日であった。ピアノの調律中、蔵之介は梅子に、自身が本格的にピアニストを目指すきっかけとなった人物、中村千夜子との出会いのエピソードを語る。(金糸雀序曲)

茂と麗のバイオリンコンサートに招待された蔵之介は、単身開催地のフランスへと向かう。その際、ピアニストを諦める原因ともなった、女性、エマ・ベラと偶然再会し、なぜか平手打ちをされてしまう。蔵之介はモヤモヤとした気持ちで帰国すると、今度は弟子入りをしたいという少年、山田廉太が現われる。実は廉太は家出をしており、蔵之介は廉太の親子間トラブルにも巻き込まれてしまうのだった。そんな中、なぜかエマがフランスから「梅の木旅館」にやって来る。(風色奏鳴曲 Ⅰ.アレ?グロ・クラノスケ)

ゴールデンウイークで忙しい「梅の木旅館」に、高峰の祖父と孫の高峰が宿泊するためにやって来る。宿のイベントで梅子の歌声を聴いた高峰は、以前にどこかで聴いたことのある声だと興味を抱く。その後、一人で写真撮影中に道に迷った高峰は、偶然通りかかった梅子の声を聴き、かつて自分が好きだったのり子の声と同じであると気づく。うれしそうに微笑む高峰を見て、梅子は初めて胸のときめきを感じるのだった。(風色奏鳴曲 Ⅱ.アダダ・アデーショ・ウメコ)

「梅の木旅館」に宿泊していたエマは、いつも不機嫌そうな態度を見せていた。なんのために旅館を訪れたのか目的もわからず、蔵之介は戸惑うばかりだったが、そんな中、乃子がいたずらでエマの楽譜を持ち出してしまう。その楽譜を見た廉太は、エマにピアノを弾いてほしいと頼むのだった。ピアノを弾いて心を落ちつかせたエマは、蔵之介に指の怪我を負わせてしまったことを素直に謝罪する。(風色奏鳴曲 Ⅲ.アレグレット・エット・アモローソ)

第2巻

佐藤蔵之介は、ピアノの個人レッスンをしている若後家と、親密な関係を築いていた。そんなある日、「梅の木旅館」周辺で地元の祭りが行われることとなった。若後家は何かと梅子と張り合い、梅子は彼女が蔵之介を狙っているのではないかと警戒する。しかし、実際は「子供といっしょにお祭りに参加する」という叶わなかった夢を実現させるため、佐藤乃子を一時的に預かりたいと考え、蔵之介と梅子に接近していただけだった。祭りのあと、乃子は若後家に懐き、いっしょに遊ぶことも多くなるが、ある日、乃子は地域の小学校に勝手に入り込んでしまう。若後家や梅子と共に乃子を探していた蔵之介は、久々に自分が通っていた小学校を訪れ、そこで大人になり妻になった梅子と、自分の子供である乃子といっしょにいることに、人生の不思議さを感じるのだった。(星影幻想曲)

クリスマスを前に、梅子はチカから、数合わせ要員として合コンに誘われる。既婚の事実を隠して参加したその合コンで、梅子は一人の男性から積極的なアプローチを受け、いけないと思いつつも、初めての経験に舞い上がってしまう。後日、件の男性がほかの女性と楽しそうに歩いている姿を目撃した梅子はショックを受けるが、自分を想う蔵之介の姿を見て、人生の幸せを実感する。(深雪譚詩曲)

海を見たことがないという乃子のために、梅子と蔵之介は、蔵之介の恩師が経営する海の見える宿への旅行を計画する。しかし、残念ながら蔵之介の恩師は亡くなっていた。梅子は温泉で偶然会った黒髪の女性に「髪の毛にいいから」と言われ、椿油の石けんを貸してもらう。彼女の言うとおり、髪がツヤツヤになってご機嫌の梅子だったが、夜中、宿屋の玄関ホールでオーナーの男性が死んでいるのが発見される。事故死として処理されたものの、死因は「石けんによって滑ったこと」が原因で、梅子はあの女性が関係しているのではないかと恐怖する。(海浜鎮魂歌)

雛祭りを迎えた「梅の木旅館」では、乃子のひな人形が飾られていた。ひな人形を眺めながら、蔵之介は乃子が生まれた日に思いを馳せる。陣痛が始まった梅子が心配で何も手がつかず、なぜか梅の花を持って病院に向かったことを思い出し、蔵之介はいつか嫁にいってしまう乃子のためにピアノを弾くのだった。(日日間奏曲)

蔵之介は大学時代の恩師から、東京でピアノの助手をしないか誘われる。乗り気ではないものの、一応話だけを聞こうと上京した蔵之介は、そこで若き期待のピアニスト、室井の奏でるピアノ演奏を聴く。これをきっかけに音楽への情熱を取り戻した蔵之介は、単身上京しようと決意するが、実は恩師はドイツでも活動をしており、国外にも行くことが多くなる事実を知る。最終的に蔵之介は夢をあきらめて、梅子と乃子、そして「梅の木旅館」での穏やかな生活を選ぶのであった。(あの子の子守歌)

登場人物・キャラクター

梅子 (うめこ)

「梅の木旅館」で育った女子高校生。年齢は18歳。生まれてすぐに、未婚の母、のり子の幼なじみ、佐藤玉子が女将を務める「梅の木旅館」に預けられた。その後、3歳の頃に母親と死別した。籍には入っていないが、父親はドイツ人のヘルマン。ちなみに「梅子」という名前は、「梅の木旅館」から安易に付けられたもの。 ヘルマンがドイツ人と日本人のハーフであるため、梅子はクォーターだが、佐藤蔵之介やチカからは「びっくりするほどの平面顔」と言われ、残念がられている。複雑な生い立ちではあるものの、玉子や佐藤雷蔵、蔵之介からは本当の家族同然に可愛がられ、まっすぐ育った。蔵之介のピアノ演奏がないと眠れない体質で、一時はヘルマンと共にドイツ行きを決意したものの、結局「梅の木旅館」に戻り、蔵之介と結婚することとなった。

佐藤 蔵之介 (さとう くらのすけ)

「梅の木旅館」の長男。佐藤雷蔵と佐藤玉子のあいだに生まれた一人息子。年齢は32歳で独身、実家である「梅の木旅館」で暮らしている。ルックスがよく、チカからも「麗しい」と評されている。梅子が1歳の頃に出会い、以降、彼女の子守りをするなど本当の家族のように接してきた。もともと将来を有望視されたピアニストであり、高校卒業後は音大へと進み、大学院まで出ている。 しかし、エマ・ベラに指の怪我を負わされたためピアニストをあきらめ、現在は大学の非常勤講師として働いている。時々近所の子供にピアノを教えているが、その母親と何かとベタベタするなど女好き。梅子からは「たらし」と呼ばれ、冷たい視線を向けられている。梅子が実父、ヘルマンのいるドイツに行かずに戻って来たあと、結婚した。

佐藤 雷蔵 (さとう らいぞう)

佐藤蔵之介の父親。妻は佐藤玉子。婿養子で、玉子と共に「梅の木旅館」で働いている。梅子を実の娘のように可愛いがっている。ほのぼのとした優しい性格で、過去のエピソードを野球に絡めて説明する癖がある。

佐藤 玉子 (さとう たまこ)

「梅の木旅館」の女将。佐藤蔵之介の母親。夫である佐藤雷蔵と共に「梅の木旅館」で働いている。のり子とは幼なじみで、一人で出産をしたのり子の力になろうと、生まれた時から梅子の面倒を頻繁に見ていた。梅子が3歳の頃にのり子が死去したあとは、正式に梅子を引き取っている。もともと女の子が欲しかったので、梅子との生活もまったく苦にしておらず、むしろ実際の息子である蔵之介よりも可愛いがっている。

佐藤 乃子 (さとう のこ)

梅子と佐藤蔵之介のあいだに生まれた女の子。「梅の木旅館」で暮らしており、両親および祖父、佐藤雷蔵や祖母、佐藤玉子のもとでのびのびと元気に成長している。つちのこのぬいぐるみがお気に入り。

ヘルマン

梅子の実父。ドイツ人と日本人のハーフではあるものの平面顔で、これは梅子にも受け継がれている。のり子と恋に落ちたものの、新規事業を起こしている最中だったので、ドイツへと帰国した。事業が成功したら、のり子を迎えに来る予定だった。当時、のり子が梅子を妊娠していたとは知らず、のり子の死後に初めて自分に娘がいるのを知る。 ずっと梅子を引き取ろうと願っていたが、佐藤玉子らに反対されており、送金だけを続けていた。梅子が高校を卒業すると聞き、ドイツへ受け入れることを伝えるために「梅の木旅館」を訪れる。

ヨーゼフ

梅子の実父であるヘルマンと共に、「梅の木旅館」を訪れた親日家の男性。丸々としたふくよかな体型に、薄い髪の毛という外見で、マスコット的な雰囲気を醸し出している。日本に不慣れなヘルマンに同行しただけの立場ながら、何かと話に割り込むなど、梅子とヘルマンの親子関係に興味津々である。ピアノが好きで、かつて佐藤蔵之介が参加したコンクールでの演奏を覚えており、予期せぬ再会に喜んでいた。 日本語が堪能で、ハイテンションなキャラクターもあり、梅子とチカには「まったくドイツ人らしくない」と評されている。

のり子 (のりこ)

梅子の母親で故人。芸妓として働いており、ドイツ人男性とうたかたの恋をし、その際に梅子を未婚のまま妊娠した。周囲から出産を反対されていたため、幼なじみで「梅の木旅館」の女将である佐藤玉子しか頼る人がおらず、生まれた頃から頻繁に梅子の面倒を見てもらっていた。梅子が3歳の頃に急死し、梅子はそのまま「梅の木旅館」で暮らすようになった。

チカ

梅子と同じ学校に通う女子高校生。年齢は18歳。梅子とは仲がよく、いつも一緒に行動している。大学への推薦入学が早々に決まっており、毎日暇にしているので、気まぐれで佐藤蔵之介のピアノレッスンを受けている。つかみどころのない自由奔放な性格で、物事をはっきりと口にするタイプ。蔵之介に対しては「麗しい」と評しているものの、女たらしであるのも知っているため、恋愛対象としては見ていない。 昔から梅子と蔵之介が結婚すると言い続けており、実際に入籍した時は「やっぱり」と得意げな顔をしていた。

榛野 茂 (はるの しげる)

プロの男性バイオリニスト。正規のルートではチケットが入手できないほどの人気を集めている。現在は家族と共に海外に住んでいる。佐藤蔵之介の大学時代の友達であり、その頃は仲がよかったものの、お互いに忙しくなってからは連絡を取り合っていない。ちなみに、子供ができて学生結婚をしており、その娘が榛野麗である。

榛野 麗 (はるの うらら)

榛野茂の娘で10代の美少女。プロのバイオリニストである父親譲りの才能の持ち主で、「天才美少女バイオリニスト」とマスコミを騒がせている。現在は家族と共に海外に住んでいる。幼い頃に佐藤蔵之介のピアノ演奏を聴いて以来、いつかセッションしたいと願い、「梅の木旅館」を訪れた。実は榛野麗自身は蔵之介に対して淡い恋心を抱いていたが、彼が梅子と結婚し、二人のあいだに娘の佐藤乃子ももうけているため、気持ちを明かさずに去っていった。

中村 千夜子 (なかむら ちやこ)

有名なピアニストだった女性。年齢は90歳。過去にはレコードを出したこともある。「梅の木旅館」の近くに住んでおり、かつて佐藤蔵之介が本格的にピアニストになりたいという夢を抱いたのも、中村千夜子の奏でる音を聴いたのがきっかけ。若い頃は黒髪で、幼い雰囲気の可愛らしい女性だった。現在はその面影はほとんどないものの、まだまだ元気に暮らしている。

エマ・ベラ (えまべら)

元ピアニストのフランス人女性。かつてピアノコンクールで佐藤蔵之介と競ったことがあり、その際に蔵之介の指に怪我を負わせ、結果的に、これが蔵之介のピアニストとしての道を閉ざした。榛野茂と榛野麗のバイオリンコンサートで偶然蔵之介と再会した際、なぜかいきなり平手打ちを見舞うが、これは突然の再会にどうしていいのか分からなかっただけであり、本当はずっと蔵之介に謝罪したいと願っていた。

山田 廉太 (やまだ れんた)

佐藤蔵之介のもとに弟子入りした少年。年齢は18歳。榛野茂と榛野麗のバイオリンコンサートで蔵之介を見て以来すっかりファンになり、「梅の木旅館」に押し掛けて来た。素朴な外見で、女好きの蔵之介にはあまり興味を抱かれていない。「梅の木旅館」に1週間滞在し、その後はゴールデンウイークが始まるので、手伝いと称してさらに滞在し続けた。

高峰 (たかみね)

ゴールデンウイークに、高齢の高峰の祖父と共に「梅の木旅館」へ宿泊するためにやって来た若い男性。ワイルドな外見だが、優しく穏やかな性格の持ち主。以前、高峰の祖父が持っていた音源の中に、芸妓時代ののり子の歌声が入っており、それを非常に気に入っていた。梅子と会話をしているうちに、のり子とよく似た声であると気づき、母子であるという事実を知って、偶然の出会いに感動していた。

高峰の祖父 (たかみねのそふ)

ゴールデンウイークに、孫の高峰と共に「梅の木旅館」へ宿泊するためにやって来た高齢の男性。元画家であり、「見えない音をインスピレーションで絵に落とし込む」絵画を得意としていた。そのために所持していた多数の音源の中には、芸妓時代ののり子の歌声が入ったものもあり、高峰にもよく聴かせていた。

若後家 (わかごけ)

「梅の木旅館」の近くに住む女性。スタイル抜群のアンニュイな雰囲気の美しい未亡人。金持ちだった夫から遺産を受け継いでおり、地元ではやや浮いた存在。佐藤蔵之介にピアノの個人レッスンをお願いしたり、祭りで梅子に張り合ったりと、佐藤夫婦に何かと絡んでいる。その行動は、「子供と祭りに行きたい」と願い、佐藤乃子と接触を持ちたいという理由からのものであった。

室井 (むろい)

プロのピアニストを目指す少年。年齢は17歳。佐藤蔵之介の大学時代の恩師の秘蔵っ子である。室井のピアノ演奏を聴いて、蔵之介は音楽への情熱を取り戻すようになった。

場所

梅の木旅館 (うめのきりょかん)

都会から遠く離れた片田舎にある、こぢんまりとした純和風の旅館。女将は佐藤玉子で、佐藤雷蔵が中心となって経営している。ちなみに雷蔵は婿養子。広い庭には咲くのが遅い梅の木が多数生えており、開花の時期になると見事な景観になる。

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