あらすじ
第1巻
中学2年生の加賀見一也は、母親の形見である着物の帯「あやさくら」を何よりも大切にしている。そんなある日、謎の化け物に襲われた一也は、桐葉と名乗る見知らぬ少女に出会う。桐葉曰く、化け物は「あまそぎ」と呼ばれ、生徒会長の只田忠孝の所有するかつらに取り憑いて、忠孝をあやつっているのだという。このあまそぎによって危機に陥った一也は、桐葉に助けてもらう代わりに、彼女の下僕になると約束する。これによって桐葉はあまそぎを退治するが、そのままどこかへいなくなってしまう。しかし一也には、桐葉の正体の見当がついていた。桐葉は一也のことをよく知っているうえに、彼女が現れたとともに、あやさくらが消えてしまったからである。ここから、桐葉があやさくらの付喪神であると推測した一也は、翌朝再び現れた桐葉を受け入れる。そして、約束どおり下僕としていっしょに生活することになるのだった。その直後、一也が幼なじみの近石千里と図書館で勉強していると、突如扉が開かなくなり、二人は閉じ込められてしまう。偶然、学校まで一也を追いかけてきた桐葉が助けに来たことで二人は事なきを得るが、これによって桐葉は、この土地を管理する土地神が原因で、図書館内の「呪詛(すそ)」の濃度が上がっていたことに気づく。
第2巻
加賀見一也たちが通う上岡東中学校に、黒耀と名乗る女性がやって来た。黒耀は白山神社の巫女で、一也を上岡の土地神として祀っているくくりに会わせたいらしい。こうして一也、桐葉、近石千里の三人が白山神社に向かうと、一也は衝撃の事実を知らされる。一也は「あまそぎ」の元凶となる「呪詛(すそ)」を引き寄せる特異体質で、先日起きた二件の怪異も、一也が原因で起きたものなのだという。そこでくくりは、一也に自ら怪異を祓う「すそはらい」になるように命じるが、これに反対する桐葉と、くくりの戦いとなってしまう。しかし、布の付喪神である桐葉と、水神であるくくりではくくりの方が有利で、桐葉は苦戦。一也も、くくりが放った水に飲まれて意識を失ってしまう。だがここで、一也の意識の中に謎の女性が現れる。彼女から桐葉を使役する方法と、くくりの弱点を教わった一也は、意識を取り戻して応戦。結局一也と桐葉は敗北するが、事態を重く見た一也は、自らすそはらいになることを決意する。今後も現れるであろうあまそぎたちと戦うため、まずは基礎的なところから桐葉と特訓を始めるのだった。そんなある日、一也と桐葉は、先日かつらのあまそぎの被害に遭った生徒会長の只田忠孝に呼び出される。
第3巻
ある日、加賀見一也が登校すると、上岡東中学校が恋愛シミュレーションゲーム「ピュアハート」の世界になっていた。桐葉は、これを大門ひろしの所有するピュアハートの付喪神によるものだと考えていた。つまり、ひろしが近石千里にふられた現実を受け入れられず、付喪神の力を無意識に借りて、現実を捻じ曲げた結果なのだという。さらにこのままでは、千里はゲームシステムに従い、ひろしと交際することになってしまう。そこで一也は、ゲームに詳しい小山内治に相談。この状況を打破するには、一也がゲームを攻略し、ひろしよりも先に千里に好意を持たれる男性になるしかないことを理解する。こうして一也と治は、千里を興味を持ってもらおうと思いを巡らすが、千里はひろしの操作によって別人と化し、一也に対して非常に冷たくなっていた。それでも一也は幼なじみとしての関係を生かし、千里の好感度を上げていく。そして千里の心をつかむには、二人の思い出の品である、人形の存在が鍵であることに気づくのだった。こうして一也は千里を射止めるが、ここで桐葉と治は、ひろしの所持するゲームは全年齢版のピュアハートではなく、アダルト版の「ピュアハート エクスレイテッド」であったため、一也と千里の思いが通じてもゲームは終わらず、セックスシーンが続くことを知る。一方、その事実を知らずに安堵する一也のもとに、まだゲームにあやつられたままの千里がせまっていた。
第4巻
くくりと黒耀が、お金がなくて食うに困っており、加賀見家を頼ってきた。そこで加賀見一也と桐葉が、加賀見一明と加賀見霞に相談したところ、桐葉と旧知で彼女に頭の上がらない一明は了承し、くくりと黒耀はしばらくのあいだ加賀見家で暮らすことになるのだった。そんなある日、上岡東中学校に別の地域からやって来た「すそはらい」皇すなおがやって来る。すなおは一也の亡くなった母親で、すそはらいの加賀見奏歌にあこがれており、いつか奏歌のようなすそはらいになりたいと願っていた。そこで、すそはらい養成所「つづら殿」に入って鍛錬を重ねていたが、そんな折、上岡の異変を察して相棒の虎鉄と共に訪れたところ、一也が桐葉を使役している場面に遭遇。これによって奏歌の死と、今は一也が後継者として戦っていることを知ったのだという。しかし、すなおは今の一也では、すそはらいの役目は荷が重すぎると感じていた。そこですなおはくくりを通じて一也に決闘を挑み、もし自分が勝ったら、自分が代わりに奏歌の後継者になると言い出すのだった。しかし一也はこのところ、自分が「呪詛(すそ)」を呼び寄せたせいで、「あまそぎ」を追い払いはしたものの、その後遺症によって只田忠孝は髪の毛、奈中井ななこは声を失ったことを気に病み、すそはらいとしての自信を失っていた。
第5巻
加賀見一也は桐葉に励まされたことで、「すそはらい」として戦う意志を新たにした。こうして二人は、皇すなおとの決闘に向けて特訓を始めるが、布の付喪神である桐葉と、刀の付喪神である虎鉄では桐葉の分が悪い。そこで二人はこれまでに得た情報から対策を練るが、くくりと近石千里は、すなおと虎鉄にはまだ隠し技があるのではないかと不安を感じていた。そのまま決闘当日となり、一也と桐葉は事前に練った作戦どおり戦い、優勢となる。すなおは完全に一也を見下しているため、相棒の虎鉄の意見を無視するばかりでなく、一也の技をすべて受け切ったうえで勝とうとしていたからである。それでも次第に形勢は逆転し、一也と桐葉は追い詰められていくが、ここで一也の桐葉への思いが、新しい技を生み出す。これによってエネルギー切れ寸前のすなおはほぼ打つ手がなくなり、一也たちはこのまま時間経過を待つだけで、勝利は目前となった。しかし一也は、このような勝ち方では完全勝利とはいえず、すなおに自分を認めさせることはできないと考えていた。そこで一也は、虎鉄を道具扱いするすなおの考えを改めさせるためにも、最後の力で大技を仕掛ける。
第6巻
加賀見一也と皇すなおの決闘は一也の勝利に終わったが、決闘中に行った「かみがかり」という技の副作用により、一也と桐葉は一時的にパワーダウンしていた。そんなある日、一也は不思議な夢を見る。それは黒い帯をあやつる若い女性と、桐葉が戦っている夢だった。これは一也の過去の記憶なのだが、くくりが昔、一也の身に降りかかる危険を防ぐために封じたものだった。しかし、かみがかりによって一也と桐葉が一時的に一体化したことにより、一也は桐葉経由で記憶を取り戻してしまったのである。これを知ったくくりは、ひとまず夢の件をはぐらかして時間を稼ぐのだった。一方その頃、桐葉とすなおは、一也には秘密で二人で会っていた。決闘以来考えを改めたすなおは、桐葉に謝罪したうえで、一也の前では聞けない疑問をぶつける。それは、加賀見奏歌ほどの「すそはらい」が、なぜ亡くなったのかということだった。これに桐葉は、奏歌はある日「あまそぎ」に取り憑かれ、これを祓うために桐葉に討たれて死亡したという、衝撃の事実を伝えるのだった。
第7巻
桐葉が、土地神であるくくりのコネクションを使って、上岡東中学校の加賀見一也たちのクラスに転校してきた。一也はこれに驚きつつ、すぐにその意図に気づく。このところ一也と桐葉は、一也が在籍しているために、上岡東中学校に「呪詛(すそ)」が集まりやすく、生徒や教師が怪異に巻き込まれやすいことへの対策を練っていた。具体的には、校内に「お悩み相談室」という部活動を始め、困っている生徒や教師の情報を収集し、その中に「あまそぎ」がらみと思われる問題が見つかった際には、積極的に解決していこうと考えたのである。これに桐葉が生徒として加わり、すでに事情を知っている近石千里と、過去に怪異に巻き込まれた経験があり、今回を機に一也の体質と校内の状況を知った小山内治、白峰四郎も部員となったことで、お悩み相談室は活動を開始するのだった。そんなある日、一也は見知らぬ女子から、突如不思議な物語を聞かされる。それは同級生であり、陸上部員の真中まなと水島みつりの関係をモチーフにしたものだったが、二人と面識のない一也は、これに気づかないままその日を終えてしまう。一方その頃、四郎はまなに告白をしようとして手紙を書いたものの、誤ってみつりが受け取ってしまったことに気づいて慌てていた。さらに、事情を説明しようとする四郎を無視して、みつりは告白に応じてしまう。
第8巻
加賀見一也が謎の女子から聞かされた話は、水島みつりが真中まなにコンプレックスを抱くあまり、「あまそぎ」の力を借りてまなを超えようとしたことを示唆しているように思えた。一方その頃みつりは、白峰四郎に諭されて、あまそぎとなった靴の使用をやめようとしていた。しかしこれは以前、まなからプレゼントされたものだった。みつりはこのところ、あまそぎとなった靴が能力を底上げしてくれたから、自分は陸上選手として調子がよいのだと考えていた。しかし実際は逆で、みつりはずっとこの靴によって本来の力を封じ込められていたのである。これによって、真に危険なのはまなの方だと気づいた一也たちは、どうにかまなに取り憑いたあまそぎを打ち倒す。しかし、このあまそぎは、祓う直前に突如暴走して力を増すなど、不審な点が残ったのだった。そして翌日一也たちが登校すると、なぜか非常に休みの生徒が多く、その次の日はさらに休みの生徒が増えていた。これを怪異の仕業と考えた「お悩み相談室」の面々は、休んだ生徒たちはみな、眠ったまま目を覚まさない「眠り病」にかかっている事実に至る。ここから一也たちは、犯人が担任教師の伊良波いすずの持つ枕であることをつき止める。
第9巻
加賀見一也たち「お悩み相談室」の面々は、謎の枕によって眠り続ける伊良波いすずに会うためにくくりと、その知人である獏楽の力を借りていすずの夢の中へ向かった。いすずは生徒たちと思うようにコミュニケーションが取れず、教師として自信を失っていた。そこを美鷹みまねにつけ狙われ、「夢枕」というアイテムを与えられたのである。夢枕を使えば、いすずは夢の世界で、理想の自分として暮らすことができる。さらに、任意の生徒を夢の世界に取り込むと、夢の世界で矯正することまでできるようになっていた。生徒たちが「眠り病」になっていたのも、全員いすずの夢に取り込まれていたからだったのである。やがていすず自身も、このままではいけないと思うようになっていたが、その頃には、鏡の付喪神であるみまねが生み出した、もう一人のいすずに夢の世界を支配されていたのだった。そんないすずと合流した一也たちは、みまねが生み出したもう一人の自分たちと戦って勝利。この件を通じて己を見つめ直したいすずは自信を取り戻し、以前よりも強気で生徒たちに指導できるようになるのだった。こうして事件は解決するが、そんな中、皇すなおがやって来る。
第10巻
響石(ひびきいし)の祭壇で対話したことにより、皇すなおと虎鉄は絆を深めていた。しかし、伊良波いすずに「夢枕」を与えたり、白峰四郎、奈中井ななこ、真中まなに接触して怪異に巻き込んだりした者たちの正体は、依然としてつかめずにいた。四人とも当時の記憶があいまいで、犯人は上岡東中学校の生徒だったような気がする程度のことしか思い出せずにいた。そんなある日、加賀見一也と桐葉がゲームセンターに遊びに行くと、二人は同級生の安次峰あきとと美鷹みまねに出会う。そして四人がいっしょにゲームを始めようとすると、突如「あまそぎ」が現れ、ゲームセンター内にあるゲーム「鉄人拳」の世界に吸い込まれてしまう。これは店内にいた鉄人拳の大ファンである広橋広樹の、ずっとゲームをして遊んでいたいという欲望が生み出したものだった。脱出するには、ゲームのルールにのっとって広樹と戦い、勝利するしかない。一也は桐葉と協力して無事に広樹を倒し、四人は元の世界に戻るが、これによって桐葉は、みまねが鏡の「つぐもも」であると気づく。そうであれば、あきとがその所有者だろうと一也は推測して別れるが、実はあきともまたハサミのつぐももであり、これを隠して生活していた。
第11巻
獏楽が、伊良波いすずの件に協力した報酬を求めて加賀見家にやって来た。獏楽は枕を集めており、枕に記憶された所有者の夢の中を探索するのが趣味なのだという。そこで、加賀見一也は自分の枕をプレゼントするが、獏楽だけでなく、一也の夢がどんなものかと興味を持った桐葉、くくり、黒耀にまで夢の世界を覗かれ、散々な目に遭うのだった。その直後、一也と桐葉が学校で安次峰あきとと、その妹の安次峰あるみに出会う。あるみこそが、水島みつりと真中まなの件において、一也に不思議な物語を聞かせてヒントを与えた女子だった。しかし、一也がこれについて話を聞く間もなく、四人は怪異に巻き込まれる。それは、脇坂わかなが作り出した、カップル限定すごろく「恋のスゴロクイズ」の世界だった。このゲームでは、勝者には特典として、敗者にどのようなことでも質問できる権利が与えられるのだという。自分たちの正体を知られたくないあきとは、一也と桐葉、あきととあるみの二チームでゴールを競うことを提案。そして自分とあるみが勝つことにより、秘密を守ろうとする。最終的にあきととあるみが勝利し、四人は脱出に成功するが、これを見た一也は、あきとを「お悩み相談室」に誘う。
第12巻
安次峰あきとと美鷹みまねが「お悩み相談室」に入部したある夜、くくりの張った結界を越えて、四人の「つぐもも」が侵入してきた。様子を見に行った黒耀は襲われ、事態に気づいた金山たぐりが助けに入って加賀見家までいっしょに逃げたものの、大ケガを負ってしまう。そんな黒耀の話を聞いたくくりは、つぐももたちは「迷い家(が)」という組織の者たちであり、彼らの狙いは自分であることを理解する。迷い家は人間の横暴に耐えかねた付喪神が集まる場所であり、彼らは、かつて土地神から奪った力の源「石片」を使って自分たちの住処を維持している。しかし、現在の石片の力はすでに弱まっているので、別の土地神、つまりくくりから新たな石片を奪おうとしているのである。これを聞いた加賀見一也と桐葉は、たぐりとみまねの四人で、じきに現れるだろう彼らに対抗することを決意。そして、みまねがあきとも呼んだことで、五人で迎え撃つ形となる。しかし、実はあきととみまねもまた迷い家の一員であり、くくりを狙っていた。だが二人は戦力差を理解していたため、今一也たちと戦っても勝ち目はないと考えていたのである。こうして、迷い家に対抗する一也たちと、迷い家のつぐももたちを止めるために戦うあきとたちの、長い夜が始まる。
第13巻
上岡に侵入して加賀見一也たちと戦ったのは「迷い家(が)」の中でも、一刻も早く土地神から「石片」を奪うべきだと考える「急進派」のメンバーたちだった。一也たちは無事急進派たちを倒したものの、くくりが危険な状態にあるのは変わりなかった。そんな折、「つづら殿」から皇すなおと虎鉄が派遣され、しばらくいっしょにくくりを守ることになる。こうしてすなおは、当面のあいだ加賀見家に居候するだけでなく、上岡東中学校に通うことになる。さらに「お悩み相談室」にも入部するが、この日のお悩み相談室に安次峰あきとと美鷹みまねの姿はなかった。二人は迷い家に戻り、残ったメンバーであらためてくくりを倒すための策を練っていたのである。この直後、くくりのもとに、現在岩手県に謎の船が現れ、上岡に向かっているという報せが入る。これを迷い家の船だと判断した一也たちは、その船を迎え撃つ準備に入る。また、となり町の土地神であるほのかも参戦するが、みまねの鏡の力によって騙され、迷い家の精鋭たちを取り逃がしてしまうのだった。こうして、白山神社で敵を待つ一也たちと、迷い家の精鋭たちの戦いが始まるが、迷い家の長であるミウラヒとくくりが戦っていると、突如何者かによってミウラヒが刺されてしまう。
第14巻
ミウラヒの胸を刺し、そこに埋まっていた「石片」を奪ったのは、あざみという名の、まったく同じ容姿と名前を持つ二人の付喪神と、かつてあざみに取り込まれて死亡したはずの加賀見奏歌だった。これに衝撃を受ける加賀見一也と桐葉だったが、くくり曰く、一也はあざみの記憶を失っているが、実はあざみたちを生み出したのは一也であるという。そのため、一也が持ち主としてあざみたちを倒さなければ、すそがえしにより、街に甚大な被害が出てしまうというのだ。しかしその前には、奏歌を倒さなくてはならない。だが、奏歌は「迷い家(が)」の面々が束になって挑んでもまるで歯が立たないほど強く、金山たぐりと皇すなお、そして応援に来た八意思兼命(やごころおもいかねのみこと)が協力しても敵わないほどの強敵だった。それでもくくりはぎりぎりまで一也を戦わせることはできないと判断し、単身挑むが、敗北。さらに桐葉までが重傷を負い、人の姿を保てなくなってしまうのだった。だがそこへ、「すそはらい」ではなかったはずの加賀見霞と、その相棒らしき「つぐもも」の砂織が助けに入る。
第15巻
加賀見霞は、砂時計の「つぐもも」である砂織の力を借りて、加賀見奏歌を倒すための3年間の時間を稼いだ。これは、砂織が作り出す時間の止まった空間に、奏歌と二人のあざみを閉じ込めたことによるものだったが、いっしょに霞と砂織も閉じ込められてしまっていた。こうして一時的にではあるが、奏歌たちは無力化。その3日後に目を覚ました加賀見一也は、応援に駆け付けた織小花央姫によって、五人が砂織の空間に3年間閉じ込められ、この間は外には出てこないこと、くくりと桐葉が死亡したことを知らされる。大切な二人の死に深く落ち込む一也だったが、打倒奏歌のために「つづら殿」で修行することになるのだった。しかしその前に、一也と央姫は奏歌の情報を集める必要があった。そこで央姫は、獏楽に依頼。一也たちは三人で、奏歌本人とその関係者の枕を使って、奏歌の過去を探り始める。そこには、妖魔によって家族を殺された奏歌がつづら殿に入り、桐葉と出会って共に戦う「すそはらい」となり、上岡を守る土地専任のすそはらいになるまでが記憶されていた。
第16巻
時はさかのぼる。上岡専任の「すそはらい」となった加賀見奏歌は、白山神社で桐葉とくくりとの共同生活を送りながら、高校生になっていた。すそはらいとして類いまれなる実力を持つ奏歌は、怪異発生率もその討伐難易度も高い、上岡においても圧倒的な強さを見せ、高校卒業とともに加賀見一明と結婚。すぐに、加賀見霞と加賀見一也を出産する。しかし、奏歌が一也を妊娠中に出会った怪異が関係しているのか、一也は「忌み子」と呼ばれる、強い霊力を持つ故に「呪詛(すそ)」を引き寄せる体質の子供として生まれてきたのだった。そこでくくりは、対策として桐葉の所有権を奏歌から一也に移す。付喪神は所有しているだけで霊力を消費するうえ、その付喪神を誰かに貸すと、ますます霊力を使ってしまう。くくりはこれを利用して、一也の高い霊力を、桐葉の存在によって故意に消費させることで、呪詛を集めない体にしたのだった。そのまま霞と一也は成長し、奏歌からすそはらいになるための修行を課せられるようになっていく。あまりにも強すぎる奏歌は、すでに上岡の怪異や、「くらこごり」と呼ばれる高難易度の怪異討伐では飽き足らず、自分を脅かすような強い存在を求めていたのである。これを理解した一也は、自分こそが奏歌を倒す存在になろうとするが、これが悲劇を招いてしまう。
第17巻
時はさかのぼる。小学生となった加賀見一也は、加賀見奏歌に対抗するため、自らの強い霊力を生かして「つぐもも」の自作を進めていた。つぐももは本来短期間で生まれる存在ではないが、一也は「あまそぎ」にさえならないように霊力と「呪詛(すそ)」をつなげば、それがつぐももを生み出すと考えたのである。こうして帯のあまそぎ、あざみを誕生させた一也は、彼女はつぐももであると認識したまま、あざみと絆を深めていく。しかしある日、戦闘訓練のためにわざとあまそぎを作り出したところ、これに汚染されたあざみが暴走。その場は桐葉と奏歌によっておさめられたものの、桐葉が目を離した途端、奏歌もまたあざみに取り憑いていたあまそぎに汚染されてしまう。奏歌を正気に戻すには、あざみを破壊するしかない。しかし、あざみは一也の作り出したあまそぎであるため、一也以外が壊すとすそがえしが起きてしまう。そこで奏歌はかろうじて残った意識で、桐葉と一也に、自分を殺すように命じるのだった。これに従い、桐葉は一也に協力して奏歌を殺させるが、一也はこの事態を引き起こしたことを深く後悔していた。このままでは一也の心がもたないと判断した桐葉は、くくりに頼んで自分の存在と引き換えに、事件に関する一也の記憶を消してもらうのだった。だが事件はこれでは終わらず、あまそぎは奏歌の人格を模した状態で生きていた。
第18巻
加賀見一也は、織小花央姫と獏楽の協力により、過去の記憶をすべて取り戻し、修行のために央姫が頭首を務める「つづら殿」に向かった。しかし、一也と央姫がつづら殿に到着すると、二人は突如捕えられてしまう。現在のつづら殿は央姫を中心とした「親付喪神派」と、副頭首の斑井枡次を中心とした「隷付喪神派」という二つの派閥に分かれていた。そのため、枡次は央姫がつづら殿を離れたスキに、つづら殿のっとり計画を実行したのである。こうして牢屋に閉じ込められた二人だったが、そこで一也の荷物から、付喪神の声が聞こえてくる。それは、以前一也が倒し、その後笛の姿に戻ってしまっていた「迷い家(が)」の一員、笛の響華のものだった。一也たちを親付喪神派と信じた響華は、将来的に迷い家の付喪神全員を救うことを条件に、一也に協力。三人は脱獄を開始し、途中で出会った「隠れ親付喪神派」の田鎖たかのに助けられて、ほかの親付喪神派の開放に成功する。こうして形勢逆転した央姫は、枡次に「九殿武闘会(きゅうてんぶとうかい)」の開催を提案する。これは、つづら殿の意思決定を司る上位九名の「すそはらい」である「九殿冠(きゅうてんかん)」を選出する武闘会のことだった。央姫は、この九殿冠に親付喪神派と隷付喪神派、どちらがより多く選ばれるかで、決着をつけようと考えたのである。
第19巻
「九殿武闘会(きゅうてんぶとうかい)」当日となり、加賀見一也は斑井枡次と戦うことになった。九殿武闘会は現在の「九殿冠(きゅうてんかん)」に、挑戦者九名が挑む形式になっており、「親付喪神派」は九人中八人が挑戦者側で、「隠れ親付喪神派」である田鎖たかののみが九殿冠側だった。これでは一見親付喪神派が不利に思えるが、織小花央姫は、九殿冠一人一人の性質を考えたうえで対戦順を決めていた。そのため、親付喪神派にも「隷付喪神派」にも属さない「すそはらい」たちから見ても、親付喪神派の勝利は当然に思えた。しかし1試合目、2試合目ともに隷付喪神派の勝利となり、一也たちは驚く。実力的にも、「つぐもも」の相性的にも、親付喪神派が圧倒的に有利だったからである。これは何かあると考えた鈴谷すみれは、次の自分の試合でできるだけ時間を稼ぎ、隷付喪神派の秘策を探ることにする。その結果すみれは勝利し、同時に隷付喪神派が「傀儡帯(かいらいたい)」という禁忌の秘具を使って戦っていることに気づく。傀儡帯は、未契約のつぐももに貼り付けることで、強制的に使役できる。これによって隷付喪神派は、自分の所持するつぐももに加え、現在「つづら殿」の管理下にある「迷い家(が)」のつぐももたちを、二体目として奴隷のように扱っていたのである。
第20巻
「九殿武闘会(きゅうてんぶとうかい)」は6試合目までが終了し、現在「親付喪神派」と「隷付喪神派」は3対3の状態にあった。斑井枡次はこれに焦りつつも、次の織小花央姫と四百伊織しおりの戦いにおいて、もう一つの秘策を用意していた。枡次は事前に「吐露香(とろこう)」を使って央姫にしおり戦の作戦を吐かせており、最後はしおりに自分から降参するよう促すことを聞いていた。そのため、しおりには「傀儡帯(かいらいたい)」を二つ持たせ、基本はふだんしおりが持っている「つぐもも」と、一つ目の傀儡帯を使って戦わせつつ、しおりが「参った」と言いそうになったら、二つ目が発動する細工を仕掛けていたのである。このれによって不意を突かれた央姫は敗北し、親付喪神派は残り2試合を必ず勝たなくてはならなくなってしまう。この試合で作戦が漏れていると感じた央姫と、央姫の半身である織小花央菜は、その夜に加賀見一也、笛の響華、そしてなぜか正体を明かさずにいる親付喪神派の選手、狐面の人物を呼び出して今後の対策を練る。これとともに狐面の人物は、自分の正体が皇すなおであることを明かす。すなおは一也のことが心配でならず、ほのかからの勧めもあって、こっそり「つづら殿」に戻ってきていたのである。
第21巻
「九殿武闘会(きゅうてんぶとうかい)」は、8試合目の皇すなおと煤墨卓の戦いまで進行。自分に「傀儡帯(かいらいたい)」は必要ないと判断した卓は、すなおと正々堂々の勝負を繰り広げ、次第にすなおは圧倒されていく。それでも負けられないすなおは、虎鉄と一体化する「かみがかり」を使用。これによってすなおが勝利し、「親付喪神派」と「隷付喪神派」は4対4となる。そして、次の加賀見一也と斑井枡次の試合ですべてが決まることとなる。しかし、すなおと卓の激しい戦いにより、武闘台はボロボロになってしまい、一也たちの最終試合は武闘台復旧後の明日に持ち越されるのだった。その夜「迷い家(が)」の一員であり、親付喪神派に保護された糸信が一也にお礼をしたいと声をかけてくる。糸信は縫い針の「つぐもも」であるため、加賀見奏歌との戦いで端切れになってしまった桐葉を縫い合わせたいと考えたのである。これによって桐葉は元の帯の形に戻り、まだ目覚めることはできないものの、一也は桐葉復活の希望を取り戻し、精神的にも安定するのだった。そして最終試合当日となり、一也は笛の響華と共に枡次に挑む。しかし枡次の情報は少なく、どのようなつぐももを使役しているのかも謎だった。だが、響華対策に特化した迷い家のつぐももを連れていることはまちがいなさそうだった。
第22巻
加賀見一也たちの予想どおり、斑井枡次が「傀儡帯(かいらいたい)」を使って使役していたのは、音を封じる技を持つ杖の「つぐもも」三条杖だった。そこで一也と笛の響華はまず傀儡帯を破壊し、三条杖を開放。続けて、枡次が隠し持っているはずの残り2本の傀儡帯の破壊を目指す。傀儡帯はそもそも6本しか存在せず、8試合目までに3本が破壊された。これによって一也たちは、枡次が持つのは、先ほど破壊されたのを除いて残り2本と考えたのである。一也たちは枡次が「迷い家(が)」のどのつぐももをあやつる気なのだろうと考えるが、枡次はそのうち1本を、突如自分のつぐもも「蟲心蔵(ちゅうしんぐら)」に使用する。蟲心蔵はその名のとおり蔵の形をしており、中で道具を多数保管し、回復させる力がある。枡次はこれに傀儡帯を使うことで、まずは無理やり蟲心蔵の能力を引き上げる。それから蟲心蔵の中にある道具、つまりつぐももたちの力を奪い取り、自分と一体化しようとしたのである。こうして無理やり枡次と一体化させられたつぐももたちの中には、美鷹みまねと安次峰あるみもいた。これに激怒した一也は暴走し、響華と自分が正しく一体化する「かみがかり」ではなく、響華に取り憑いて無理やり力を使う「人憑(ひとつき)」を行ってしまう。
第23巻
加賀見一也は「人憑(ひとつき)」を行ったせいで、笛の響華を壊してしまった。だが、ぎりぎりのところで復活した桐葉に助けられ、最終的に試合は一也の勝利となる。これによって「九殿武闘会(きゅうてんぶとうかい)」は「親付喪神派」の勝利となり、「隷付喪神派」に捕えられていた「迷い家(が)」の「つぐもも」たちも全員解放される。こうして平和は戻ったが、次の問題は、迷い家のつぐももたちの新しい所有者だった。そこで一也は、織小花央姫の勧めにより、高い霊力を生かして、新たに四人のつぐももと試験的に契約する。まず復活した響華と契約し、それから美鷹みまね、糸信、そそぐの三人とも、契約を結ぶのだった。仲間を増やした一也は、次に加賀見奏歌が生前よく行っていた高難易度の怪異討伐「くらこごり」に挑むことになる。それは、3年前から夢遊病状態となった真見坂まみの夢の世界に入り、彼女がこの世界を作り出した目的を果たす、手伝いをすることだった。しかしこの世界は、まみの愛読する小説「魔法大陸 ジラル戦記」を基にしたもので、小説をろくに読まずに突入した一也と桐葉は、そうそうに響華たち四人とはぐれ、大苦戦することとなる。
第24巻
加賀見一也と桐葉は、笛の響華たちとはぐれたうえ、卑劣な半獣族(アノマール)の少女ティルトに騙され「ダバハール奴隷商会」に売られてしまった。さらに商会の主ダバダ=ダバハールから、彼女に絶対服従となる「魔証紋(ましょうもん)」を入れられた二人は、仕方なくダバダに従って派遣奴隷となり、さまざまな任務へ向かうことになる。その最中で二人は少しずつ「魔法大陸 ジラル戦記」の世界観を理解したり、力を取り戻して以前のように戦えたりするようになっていく。一方その頃、響華、美鷹みまね、糸信、そそぐの四人は、なかなか一也に呼び出されないことを不思議に思っていた。四人はみまねの鏡の中にある空間で待機していたのだが、一也がこの鏡をティルトに奪われたため、そのまま2日が経過してしまったのである。それでも待っていると、四人は突如ティルトの前に呼び出される。ティルト家にやって来た地上げ屋が、無理やり鏡を使おうとしたのである。これによってティルトと、その妹のティーニャが危機に陥っていることを知った四人は、地上げ屋を倒して二人を助ける。しかし、ティルトはそんな四人さえ騙して、一也たち同様にダバダの所へ連れていき、売り飛ばすのだった。
第25巻
笛の響華たちは、ティーニャもまたダバダ=ダバハールに捕えられ、「超魔苑茸(ちょうまえんたけ)」と呼ばれる転送装置の苗床にされそうになっていることを知り、ティルトと協力してダバダを倒す決意をした。魔王軍の一員であるダバダの好きにさせては、この「魔法大陸 ジラル戦記」の世界そのものがあやういからである。そこで五人は、ティルトだけは「魔証紋(ましょうもん)」を入れられていないことを利用して、奇襲をかける。この騒ぎによって事態を知った加賀見一也と桐葉も合流するが、魔証紋は消えたものの、ダバダはティーニャを養分にして、さらに強力な姿に変化。一也たちは苦戦するが、一也には秘策があった。一也は派遣奴隷としての任務の最中、ディオーサという魔女から、体内の魔力の扱い方を教わっており、いざというときはこれを利用して戦うように勧められていたのである。一也はこれを生かしてダバダに勝利。同時に、国中に生えた魔苑茸も消滅したことで、これまで「魔力過敏症」という病気に苦しめられていたティーニャも元気になるのだった。同時に、一也たちは元の世界に戻されることとなった。実はティルトの正体は真見坂まみで、まみはずっと作中のティルトとティーニャの関係に、自分と亡くなった妹を重ねていた。そのためまみは、ティーニャの病気だけでも治したいと考えており、それが果たされたことによって夢の世界は消滅したのである。
コラボレーション
コミックス11巻に掲載されている特別篇「すそはらいと神領流」は、砂原真琴の漫画『赫焉のヒナギク』とのコラボレーションコミックとなっている。こちらは『赫焉のヒナギク』に登場する大森いつきと初雪が本作『つぐもも』の世界に登場し、加賀見一也、桐葉と協力して足狩浜に発生したトラブルを解決するという内容になっている。
メディアミックス
2017年4月から6月にかけて、本作『つぐもも』のTVアニメ第一期『つぐもも』が、2020年4月から6月にかけて、TVアニメ第二期『継つぐもも』が放映された。監督とシリーズ構成を倉谷涼一、キャラクターデザインと総作画監督を中原清隆が務めている。キャストは加賀見一也を三瓶由布子、桐葉を大空直美が演じている。
登場人物・キャラクター
加賀見 一也 (かがみ かずや)
上岡市立上岡東中学校2年2組に所属する男子。前髪を眉上で短く切り、襟足まで伸ばしたショートカットヘアをしている。やや気弱だが穏やかかつ心優しい性格で、異性にも同性にも非常にもてる。しかし、好意を寄せられてもまるで気が付かないという、かなり鈍感なところがある。母親の形見である着物の帯「あやさくら」を非常に大切にしており、肌身離さずに持ち歩いていたところ、ある日「あまそぎ」に遭遇。 「あやさくら」の付喪神である桐葉に助けられる。また、その件がきっかけで、一也自身が強すぎる霊力を持つあまり、怪異を引き起こす源「呪詛(すそ)」を引き寄せ「あまそぎ」を産んでしまう特異体質であることを知る。そのため、自分の周囲に起こる災いから人々を守るために、「呪詛」を倒す「すそはらい」として桐葉とともに戦うことになる。 くくりにより一部の記憶や力を封印されており、母親である加賀見奏歌の顔や、奏歌がいた当時の出来事などを思い出せずにいる。
桐葉 (きりは)
加賀見一也の持ち物である着物の帯、生絹爪掻本綴袋帯「あやさくら」の付喪神。幼い少女の姿で現れるがそれは弱体化によるもので、本来は大人の女性の姿をしている。前髪を眉の高さで切りそろえて真ん中で分け、腰まで伸ばした水色のロングヘアを、手前に持ってきた二房だけ低い位置で結んでいる。明るく豪快で積極的な性格で、一也にとっては姉や母親のようでもあり、恋人のようでもある特別な存在。 かつては一也の母親である加賀見奏歌の持ち物で、奏歌とともに「すそはらい」として戦っていた。しかし、一也の強すぎる霊力を抑えるために奏歌から一也へ所有権が移譲され、一也の持ち物となった。奏歌が亡くなり、一也の記憶の一部が封じられてからは長らく帯の姿で眠っていたが、一也に降りかかる怪異から一也を守るため、再び人間の姿となって一也と一緒に生活することになる。 家の外では、正体を隠すため「帯奈桐葉」と名乗って生活している。好物はプリン。
くくり
白山神社の祭神で、加賀見一也たちの住む上岡市を守る土地神。正式名称は「白山妙理大権現菊理媛大神」だが、人間の姿で「白山くくり」を名乗り、「くくり」という愛称で呼ばれることが多い。幼い少女の姿で現れるがそれは弱体化によるもので、本来は大人の女性の姿をしている。人間の姿をとる時は、前髪を真ん中で分けて額を全開にし、足首まで伸ばした黒髪ストレートロングヘアを、低い位置で1つにまとめて結んでいる。 関西弁で話す。明るく親しみやすい性格をしており、幼い姿になっていることから普通の子供のように見えるが、強大な力を持つ神様で、周辺地域のすべてを守っている。桐葉とは非常に親しく、実力の拮抗したライバルのような関係。また、一也の霊力を抑えるのにも協力しており、一也の記憶を封じた本人でもある。
近石 千里 (ちかいし ちさと)
加賀見一也の幼なじみで、上岡市立上岡東中学校2年2組の学級委員長を務める女子。前髪を眉上で切りそろえ、腰まで伸ばしたロングヘアを後ろで一本の三つ編みにしてまとめ、眼鏡をかけている。真面目で知性的な、責任感の強い性格。しかし、ややお堅いところがあり、不真面目な人間や破廉恥なことをする人間には説教をしたり、持ち歩いているハリセンでお仕置きをしたりする。 子供の頃から一也に想いを寄せているが、一也にはまるで気づいてもらえず、もどかしい日々を送っている。ある日、自身の一也への想いが「あまそぎ」化してしまったのがきっかけで、一也から桐葉を紹介され、一也が「すそはらい」として活動することになった事情を知る1人となる。千里自身も人に教えるのが好きで、勉強を教えるのが得意。
黒耀 (こくよう)
白山神社と、その祭神であるくくりに仕える巫女。若い人間の女性の姿をして暮らしているが、正体は鴉の化身。人間の姿をとる時は、前髪を真ん中で分けて額を全開にし、腰まで伸ばしたストレートロングヘアを1つに結んで頭頂部で一度お団子にしたのち、残りの髪を後ろに垂らした髪型をしている。胸が大きくスタイル抜群であることから男性から非常にもてるが、黒耀自身はあまり自覚がなく、関心も薄い。 男性のような口調で話し、一見クールで寡黙な雰囲気だが、実際は世間知らずで、少しとぼけたところがある。くくりとは非常に親しく、特にくくりが幼い少女の姿になってしまってからは、くくりの母親のような存在になりつつある。非常に大食い。
金山 たぐり (かなやま たぐり)
金羅神社の祭神。正式名称は「金山毘売神たぐり」だが、縮めて「金山たぐり」と呼ばれることが多い。若い女性の姿をして現れる。羊のようなふんわりした癖のある髪の毛を、前髪を目の上で切り、顎の高さまで伸ばしたボブヘアにしている。目が細く、いつも笑っているように見える。穏やかでおっとりとした雰囲気だが、実は幼い少女を何よりも愛するロリコン。 幼い姿となったくくりと桐葉には、会えばセクハラをしたり、色々な服装をさせて楽しんでいる。非常に裕福で、くくりにはよく金銭的援助をしている。その見返りとしてやはりセクハラをしているが、くくりのことは非常に大切に想っており、くくりに危害を加える者には容赦しない。
加賀見 霞 (かがみ かすみ)
加賀見一也の姉で、加賀見一明と加賀見奏歌の娘。前髪を眉の高さで切りそろえ、肩につくほどのセミロングヘアを耳の下の高さで一度段をつけて切った姫カットをしている。母親がいない加賀見家において、家事全般など担当しているしっかり者。一也を溺愛しており、やや過保護。一也のためであれば危険な場所にも駆けつけ、また、一也に近づく女性には容赦がない。 奏歌の後継者を志願して幼いころから修業を受けていたため、「すそはらい」としての力を持っているが、記憶を失った一也に合わせ、一般人を装って生活している。
加賀見 奏歌 (かがみ かなか)
加賀見一也と加賀見霞の母親で、加賀見一明の妻。故人。旧姓は「甲斐谷」。前髪を目の上で切り、胸まで伸ばした癖のあるロングヘアをしている。明るく飄々としたつかみどころのない性格で、周囲の女性に「スキンシップ」と称してセクハラばかりしているお騒がせな人物。しかし、「すそはらい」としては他を寄せつけぬほどの超実力者で、伝説的人物でもあった。 子供の頃、高すぎる霊力を持つゆえに、妖怪化した悪質な付喪神「ヒトクイ」に家族を殺され、天涯孤独になってしまう。そこに織小花央奈から声をかけられたことで「つづら殿」への所属を決め、「すそはらい」となった。「すそはらい」として圧倒的な強さを持つゆえに、無意識に自分を脅かす存在や、危機を求めている危うい一面があり、それが原因で亡くなった。
加賀見 一明 (かがみ かずあき)
加賀見一也と加賀見霞の父親で、加賀見奏歌の夫。前髪を上げて額を全開にし、オールバックヘアにしている。奏歌とは高校時代に知り合い、異性から非常に人気のあった奏歌を射止め、高校卒業後すぐに結婚した。桐葉のことは、奏歌との交際を幾度となく邪魔された経験から「小姑」呼ばわりしている。
皇 すなお (すめらぎ すなお)
上岡の隣の地域である小宮で「すそはらい」として活動する少女。相棒は刀の付喪神の虎鉄で、加賀見奏歌の生前は、奏歌の弟子でもあった。前髪を眉上で短く切り、耳の下まで伸ばした赤髪ボブヘアをしている。やや気が強く直情的だが、根は心優しく素直な性格。しかし、「すそはらい」である兄の皇すおうが「あまそぎ」との戦いで亡くなって以来、すおうの死因は虎鉄が満足な働きをしなかったからだと考え、虎鉄に冷たい態度をとっていた。 ある日奏歌の死を知り、奏歌の後継者となった加賀見一也の実力を確かめるため、上岡市立上岡東中学校を訪れ、一也に決闘を挑む。そこで敗北したことで考えを改め、虎鉄との関係を見直すとともに、一也を気にかけるようになっていく。
虎鉄 (こてつ)
皇すなおとともに「すそはらい」として活動する刀の付喪神。以前の持ち主はすなおの兄である皇すおう。幼い少年の姿で現れる。前髪を真ん中で分けて目の上で切り、耳の下まで伸ばして切り揃えた前下がりボブヘアをしている。気が弱くおどおどした性格で、すおうが亡くなってからは、すおうの死因が自分の力不足にあると思い込み、すっかり委縮してしまっていた。 しかし加賀見一也と戦って敗北したのをきっかけに考えを改めたすなおと、新たな関係を築いていく。
小山内 治 (おさない おさむ)
加賀見一也と白峰四郎の友人で、上岡市立上岡東中学校2年2組の男子。漫画研究部に所属している。前髪を眉上で切りそろえ、ヘルメットのような刈り上げヘアに眼鏡をかけている。一見地味で目立たないが、常に冷静で頭の回転が速く、状況把握能力にも長けた頼れる存在。絵を描くのが非常に得意で、漫画家志望。一也や四郎にも、漫画原稿の制作作業をよく手伝ってもらっている。 中島のスケッチブックが「あまそぎ」化した件で一也の境遇を知り、一也に協力することになる。アニメやゲームなどにも詳しく、オタク趣味には明るくない一也に知恵を与えてサポートすることも多い。
白峰 四郎 (しらみね しろう)
加賀見一也と小山内治の友人で、上岡市立上岡東中学校2年2組の男子。前髪を目の上で切り、顎の高さまで伸ばしたボブヘアをしている。大の女性好きで、特に胸の大きい女性が好み。気に入った女性には手あたり次第に声をかけることから周囲の評判は芳しくないが、実際は決して嘘をつかない誠実な性格。女性がらみで怪異に巻き込まれやすく、持ち物が「あまそぎ」化してしまったこともある。
只田 忠孝 (ただた ただたか)
上岡市立上岡東中学校3年3組の男子で、生徒会長を務めている。前髪を上げて額を全開にした撫でつけ髪をしている。明るく爽やかな性格で生徒会長としても優秀だが、女装癖があり、同性である加賀見一也に以前から想いを寄せている。しかし、その想いが、女装用のカツラの「あまそぎ」となって一也を襲ってしまう。一也と桐葉により事件は解決したものの、「すそ返し」のために、当面髪の毛が生えない身体になってしまった。 事件解決後は、一也の境遇を知る者として、一也に協力することになる。
中島 (なかじま)
上岡市立上岡東中学校に通う男子。前髪を真ん中で分けて額を全開にし、一房だけ前に垂らした撫でつけ髪をしている。三白眼に大きな口の、カエルのような顔立ちをしている。テーブルトーク・ロールプレイングゲーム(TRPG)が大好きで、校内に同好会を設立したいと考えている。しかし生徒会には受理されず腹を立てていたところ、TRPGへの想いが「あまそぎ」化。 「あまそぎ」となったスケッチブックに描いた絵が具現化するという力を手に入れてしまう。
大門 ひろし (おおかど ひろし)
上岡市立上岡東中学校に通う男子。前髪を上げて額を全開にした角刈りヘアをしている。自分の容姿をさえないと感じていてコンプレックスを抱いており、その反動で恋愛シミュレーションゲームが好きで得意。 近石ちさとに想いを寄せていたが、ある日振られてしまう。その悔しさが、お気に入りかつ得意な恋愛シミュレーションゲーム「ピュアハート」を「あまそぎ」化させてしまう。 その結果、上岡市立上岡東中学校全体が「ピュアハート」のゲームシステムそのものの世界に変容してしまい、加賀見一也は大門ひろしに再度狙われたちさとを助けるために、ゲームに挑むことになる。
名護 えいこ (なご えいこ)
2年前まで上岡市立上岡東中学校に在籍していた女子で、故人。奈中井ななこの姉だが、現在は両親が離婚しているため苗字が異なる。前髪を目の上で切り、肩につくほどのセミロングヘアをしている。生前は非常におとなしく目立たない性格だったが、死の直前、突如別人のような、明るく正直で歯に衣着せぬもの言いの性格に変貌し、周囲を驚かせていた。 仁科ゆういちという男子に想いを寄せていたが、彼がらみのトラブルが原因で自殺した疑いがある。死後、名護えいこが幽霊となって上岡市立上岡東中学校に出現しているという噂を聞いた加賀見一也は、只田忠孝らとともに調査に乗り出すことになる。
奈中井 ななこ (ななかい ななこ)
名護えいこの妹で、上岡市立上岡東中学校1年4組の女子。新聞部に所属している。えいことは実の姉妹だが、現在は両親が離婚しているため苗字が異なる。前髪を目の上で切り、ポニーテールヘアをしている。えいこの死後、えいこの死因を探るため上岡市立上岡東中学校に入学し、新聞部に所属して独自の調査を行っていた。そこで同じく事件について調べていた加賀見一也たちと知り合う。 えいこの生前は、周囲からはえいこと比べられることが多く、えいこもななこも、それを負担に感じていた。
ほのか
加賀見一也たちが暮らす上岡のとなり町にある小宮の土地神を務める、炎の力をあやつる神様。正式名称は「火之迦具土」だが、主に「ほのか」と呼ばれている。ロングヘアをポニーテールにしており、男性的な口調で話すが、実際は女性である。落ち着いた性格の姉御肌で、土地神として「すそはらい」の皇すなおと虎鉄の指導も担当している。そのため、すなおの実力を評価しつつも、すなおの虎鉄への冷たい態度を案じていた。しかし、直接口出しはせず二人の関係を静かに見守っていた。そして、すなおが一也との戦いを経て虎鉄との絆を深め、大きく成長してからは、すなおの恋路を陰ながらサポートしている。
皇 すずり (すめらぎ すずり)
皇すなおと皇すおうの母親で、皇すすむの妻。前髪を右寄りの位置で斜めに分けて額を見せ、襟足まで伸ばしたショートカットヘアをしている。非常に厳しく高圧的な性格で、逆らう者には武力行使をするため、すなおはすずりに頭が上がらない。すなおが加賀見一也に敗北したのをきっかけに、一也を皇家に呼び出し、一也とすなおの意思とは無関係に2人を結婚させようとする。
水島 みつり (みずしま みつり)
上岡市立上岡東中学校2年5組の女子。陸上部に所属している。前髪を上げて額を全開にし、ポニーテールの癖のある髪の毛を、リボンカチューシャでまとめている。体型が小柄で子供っぽく、陸上部での成績もいまいちであることから、自分よりも優秀な友人の真中まなに強いあこがれを抱いていた。しかし、ある日、白峰四郎がまなと間違えてみつりにラブレターを送ったことで、宛先を間違えられただけとは知らず、初めて他人に認められたと感じて非常に喜んだ。 同時に陸上の記録も不自然に伸び始め、加賀見一也たちは、みつりのまなへのコンプレックスが、何らかの「あまそぎ」を生んだのではと疑うようになる。
真中 まな (まなか まな)
水島みつりの友人で、上岡市立上岡東中学校2年5組の女子。みつりとは同じ陸上部に所属し、クラスも同じ。さらに出席番号も「まなか」と「みずしま」で連続しているという非常に親しい関係。前髪を目の上で切って真ん中で分け、胸のあたりまで伸ばしたロングヘアをポニーテールにしてまとめている。左目尻にほくろがある。美人で成績も人柄も良く、周囲から憧れられる存在。 そのため白峰四郎からも想いを寄せられていた。しかし四郎が、真中まなとみつりの出席番号が連続していたことが原因で、ラブレターの宛先を間違え、親友であるみつりとの関係に変化が生じ始める。密かにみつりに想いを寄せており、同性ではあるが、自分が優秀な存在になればみつりが振り向くかもしれないと考えて努力を続けていた。
伊良波 いすず (いらは いすず)
加賀見一也たちが通う上岡市立上岡東中学校2年2組の担任を務める、28歳の女性教師。目の上で切った前髪を右から左に向かって流し、肩につくほどのセミロングヘアをヘアバンドでまとめている。おっとりとした性格から、生徒たちからはやや軽く見られており、いすず自身も自らに指導力が欠けていると感じ悩んでいた。その悩みを美鷹みまねにつけこまれ、みまねから与えられた「夢枕」を用いて生徒たちを自分の夢の中へ連れ込み、目が覚めなくなる「眠り病」状態にして、自分の意のままになる世界で再指導しようとする。
獏楽 (ばくら)
枕の付喪神。若い女性の姿をして現れる。前髪を真ん中で分けて額を全開にし、肩につかない長さのボブヘアをしている。語尾に「~すん」と付ける独特の口調と、まろ眉が特徴。上岡市立上岡東中学校2年2組で発生した「眠り病」を調査するため、くくりの紹介で加賀見一也たちのところへやって来た。他人の夢の中に入り込むという能力を持ち、事件を起こした張本人である伊良波いすずの夢の中へ、一也たちを連れていく手助けをする。 事件解決後も、たびたび現れては一也たちに協力してくれるようになる。
美鷹 みまね (みよう みまね)
「迷い家」に所属する、鏡「血鏡」の付喪神。幼い少女の姿をして現れる。八津川やすきとは兄妹のような存在。前髪を眉上で短く切り、ぼさぼさの赤毛を肩につくほどまで伸ばしている。楽しいことが好きで退屈を嫌う、正直で無邪気な性格。常に刺激を求めて、自由奔放に生活している。「血鏡」に映した対象に変身することができ、容姿のみならず、能力もコピーして戦うことができる。 「迷い家」を維持するため、あざみの協力のもと、安次峰あきと、安次峰あるみ、やすきとともに上岡市立上岡東中学校に潜入。加賀見一也に近づく。大人の女性の身体に憧れており、あるみの身体に強い関心を持ち、頻繁にセクハラしている。
安次峰 あきと (あしみね あきと)
「迷い家」に所属する、はさみの付喪神。少年の姿をして現れる。安次峰あるみとひふみとは、同じ家で三代におわたって使われたため、義理の兄弟に等しい存在。そのためあるみからは「兄様」と呼ばれている。前髪を眉上で短く切り、癖のある銀髪を顎の高さまで伸ばしたボブヘアをしている。真面目で義理堅い誠実な性格。武力に長じた付喪神で、元いた家では用心棒として生活していた。 しかし、ある日元の主人がひふみの運命操作能力を酷使した結果、化け物と化したため、あるみとともに、所持者のいない付喪神が集まる秘密の場所「迷い家」に逃げ込んだ。以来「迷い家」の一員として「迷い家」を維持するために活動している。「迷い家」存続のため、あざみの協力のもと、美鷹みまね、あるみ、八津川やすきとともに上岡市立上岡東中学校に潜入し、加賀見一也に近づく。
安次峰 あるみ (あしみね あるみ)
「迷い家」に所属する、水晶玉の付喪神。少女の姿をして現れる。安次峰あきととひふみとは、同じ家で三代にわたって使われたため、義理の兄弟に等しい存在。前髪を目の上で切りそろえ、灰色のストレートロングヘアを腰まで伸ばしている。物静かでおしとやかな性格で、性に関する話題は苦手。ひそかにあきとのことを想っているが、あきとにはまるで気づかれていない。 未来と過去をのぞき見する「千里眼」の能力を持ち、元いた家では重要な決定の参考に使われた。しかし、「千里眼」の力は消耗が激しく、時間と距離が離れるほど精度が落ちる。ある日、元の主人がひふみの運命操作能力を酷使した結果、化け物と化したため、あきととともに「迷い家」に逃げ込んだ。以来「迷い家」の一員として「迷い家」を維持するために活動している。 「迷い家」存続のため、あざみの協力のもと、美鷹みまね、あきと、八津川やすきとともに上岡市立上岡東中学校に潜入し、加賀見一也に近づく。みまねのセクハラには手を焼いている。
ひふみ
サイコロの付喪神で故人。少女の姿をして現れる。安次峰あきとと安次峰あるみとは、同じ家で三代にわたって使われたため、義理の兄弟に等しい存在。前髪を目の上で切り、癖のある髪の毛を肩につくほどまで伸ばし、外にはねさせている。サイコロを振った人間の運命操作をする能力を持つ。振った人間には、1から6の出目のうち、2に近い目ほど良い運命、6に近い目ほど悪い運命が、2時間(一刻)訪れる。 しかし、1が出た場合はひふみにも予測不能の凶運が訪れてしまう。出目はひふみ自身の力で操作できるが、良い目を出し続けた人間にはその分だけ呪いが生じ、呪いが蓄積した状態で1の出目を出すと、その人間は化け物になってしまう。また、出目の操作を行えば行うほどにひふみは消耗してしまい、消耗した状態では1の出目が出やすくなってしまう。 そのため、故意に良い出目を出し続け、ひふみを消耗させたひふみたちの主人は、ある日1の出目を出して化け物と化してしまう。
八津川 やすき (やつかわ やすき)
「迷い家」に所属する、弓の付喪神。少年の姿をして現れる。美鷹みまねのことを、妹のように想い気にかけている。前髪を目が隠れそうなほど伸ばし、胸のあたりまで伸ばしたロングヘアを後ろで1つに結んでいる。三白眼。寡黙で落ち着いた性格だが、みまねには過保護なところがある。ある日「迷い家」存続のため、あざみの協力のもと、みまね、安次峰あきと、安次峰あるみとともに上岡市立上岡東中学校に潜入。 加賀見一也に近づく。
椀爺 (わんじい)
「迷い家」の長を務めるお椀の付喪神。年老いた男性の姿で現れる。逆さにしたお椀を頭にかぶり、小柄な身体と福耳、長いひげが特徴。霊力の源となる「石片」の効力が切れかけていることによって危機に瀕している「迷い家」を救うため、所属する付喪神たちとともに新たな「石片」を手に入れるための作戦を立てている。女性が大好きで、特に安次峰あるみによくセクハラをしている。
広橋 広樹 (ひろはし ひろき)
ゲームで遊ぶのが大好きな33歳の男性。坊主頭をしている。ある日「いつまでもゲームをしていたい」という想いが、ゲームセンターにある格闘ゲームの筐体を「あまそぎ」化させてしまう。その場に居合わせた加賀見一也たちは、広橋広樹の作り出したゲーム「鉄人拳」の世界の中でトーナメントバトルに参加することになる。
脇坂 わかな (わきさか わかな)
上岡市立上岡東中学校に通う女子。前髪を右寄りの位置で分けて額を全開にし、肩につくほどのセミロングヘアをしている。意中の男子に振られてしまい、その悔しい思いが、すごろくゲームの「あまそぎ」を生んでしまう。さらに、すごろくの「あまそぎ」を用いて、校内のカップルを巻き込み、お互いへの関心と知識を問うクイズを出し、正解しないとクリアできないゲーム「すごろクイズ」に強制参加させる。 巻き込まれた加賀見一也、桐葉、安次峰あきと 、安次峰あるみの4人は、2ペアに分かれてクイズに挑むことになる。
布津浦 ふう (ふつうら ふう)
上岡市立上岡東中学校2年4組の女子。会員が自分のみの、オカルト研究会の会長を務めている。前髪を目の上で切りそろえ、顎の高さで切りそろえたボブヘアをしている。目の下のクマと、両頬にあるそばかす、額につけた五芒星マークのリボンが特徴。平凡な生活に嫌気がさしており、何か面白いことはないかと日々調査を行っていた。その想いが、自身の執筆した小説を「あまそぎ」化させてしまい、加賀見一也たちに助けられる。
小林 このか (こばやし このか)
上岡市立上岡東中学校2年3組の女子。前髪を目が隠れそうなほど伸ばし、肩につかない長さのボブヘアを外にはねさせている。演劇部に所属していたが、無理やり執筆させられた台本が他の部員たちによってまるで違う内容に改変され、さらに劇中で端役を担当させられたことで腹を立てる。その怒りが台本を「あまそぎ」化させてしまい、上岡市立上岡東中学校全体を、台本の舞台であるファンタジー世界に変容させてしまう。
織小花 央姫 (おりおばな おうひ)
妖魔や怪異の調伏を目的とした「すそはらい」を養成する組織「つづら殿」の頭首を務める老齢女性。一見若い女性にしか見えないが、実際は斑井枡次と変わらないほどの高齢である。「忌み名」の習慣から、現在は「央菜」から「央姫」に名を変えているが、自分の能力と体を二つに分けることができ、今はもう一人の自分を織小花央菜としている。人間と「つぐもも」のハーフという珍しい存在だが、霊力はふつうの人間と同程度しかない。家族を亡くし、天涯孤独となった加賀見奏歌(当時は甲斐谷奏歌)をつづら殿に勧誘した人物でもある。まじめで心優しい性格で、加賀見一也と同様に、付喪神のことを「器物」ではなく、生き物と変わらない、いっしょに生きていく大切な存在だととらえている。
東那 ひより (ひがしな ひより)
妖魔や怪異の調伏を目的とし、「すそはらい」を養成する組織「つづら殿」に所属する若い女性。加賀見奏歌 (当時は甲斐谷奏歌)、鈴谷すみれ、楠墨くすみ、阿畑屋あることは同期。特にくすみとあることは子どもの頃から一緒に過ごしているため親しく、3人の中ではリーダー的存在。自分たちより後から「つづら殿」にやって来た奏歌のことは「外様」と呼んで見下し、くすみとあることともに意地悪ばかりしていた。 しかし、一緒に活動するうちに奏歌の実力を知り、考えを改めるようになる。現在では「つづら殿」の幹部となった。
鈴谷 すみれ (すずたに すみれ)
妖魔や怪異の調伏を目的とし、「すそはらい」を養成する組織「つづら殿」に所属する若い女性。加賀見奏歌(当時は甲斐谷奏歌)、東那ひより、楠墨くすみ、阿畑屋あることは同期にあたる。前髪を真ん中で分けて目の高さで切り、肩につくほどのセミロングヘアを毛先だけゆるく巻いている。眼鏡をかけている。ひよりたちとは違い奏歌に意地悪することはなかったが、目立たず気弱な性格から、いじめの被害に遭う奏歌を助けられず悩んでいた。 現在では「つづら殿」の幹部となった。
獅子崎 信九郎 (ししざき しんくろう)
「つづら殿」に所属する「すそはらい」で、かつてくくりの「すそはらい」を務めていた若い男性。鉢巻を巻いて前髪を上げ、癖のある髪の毛を肩まで伸ばしている。長身で筋肉質の、非常にたくましい体型をしている。非常に高い実力を持つことから、くくりの「すそはらい」業務をやめて「つづら殿」で別の仕事を任せられる予定だったが、くくりに想いを寄せているために嫌がっていた。 そのため、後任となる予定の加賀見奏歌(当時は甲斐谷奏歌)と勝負することになる。料理が得意。
あざみ
加賀見一也の手によって生まれた「つぐもも」の少女。「つぐもも」ではあるが長い年月をかけて自然に生まれたのではなく、幼い一也が高い霊力と「呪詛(すそ)」を使い、着物の帯を用いて短期間で誕生させた存在。前髪を目の上で切りそろえ、腰まで伸ばしたストレートロングヘアをしている。着物姿と、普通の人間とは違って両耳がとがっているのが特徴。 無口だが一也を強く慕っており、一也とは良好な関係だった。しかし、一也が新しい「あまそぎ」の素材を探して試行錯誤していた際に暴走。一也が記憶を封印される原因となった大事件を起こしてしまう。以来、一也のもとから離れ、現在では「迷い家」の付喪神たちに協力している。着物を着たあざみのほかに、洋服を着たあざみもおり、2人で連携をとって行動している。
砂織 (さおり)
加賀見霞とともに戦う、小さな砂時計の付喪神。若い女性の姿をして現れる。癖のある髪の毛を前髪を眉上で短く切り、前下がりのボブヘアにしている。語尾に「~スナ」と付けて話す。時を操るという強力な力を持つが、制限も多い。
笛の響華 (ふえのきょうか)
「迷い家」に所属する、笛の付喪神。少女の姿をして現れる。前髪を目の上で切り、顎の高さまで伸ばし、外にはねさせたボブヘアをし、まろ眉をしている。過去の持ち主との間に起きたトラブルから人間を毛嫌いしており、自身を武器として扱われることを非常に嫌っている。「迷い家」を維持するための戦いにおいても、加賀見一也たちに非常に攻撃的、挑発的な態度をとる。 しかし一也に敗北し、人間の姿をとる力を失って笛の姿で眠ってしまったところを桐葉に回収される。その後、意外な形で一也と協力して戦うことになる。
真見坂 まみ (まみさか まみ)
南太良病院に入院している学生の少女。癖のあるボブヘアに眼鏡をかけている。瞳に生気のない、どんよりとした雰囲気を漂わせている。3年ほど前から夢遊病にかかり、自発的に食事や排泄はできるものの意思疎通はできず、ほとんど眠って暮らしている。そのため、つづら殿は「あまそぎ」の被害に遭っていると認定し「くらこごり」の1517番救出対象とした。このあまそぎは、真見坂まみの所持しているお気に入りのファンタジー小説「魔法大陸 ジラル戦記」の本であり、まみは現在は、この作品をベースにした夢の世界で、登場人物の一人であるティルトと一体化しているその原因は、かつて妹を亡くしたことにあり、自分同様病気の妹を持つティルトに、自分の境遇を重ねているためである。そのため、まみを夢の世界から出すには、現実では叶えられなかった、妹を病気から救う夢を成就させる必要がある。
ティルト
ファンタジー小説「魔法大陸 ジラル戦記」の登場人物で、ネコ科の動物と人間の半獣族(アノマール)の少女。ティーニャの姉。ネコ科の動物と同じ耳としっぽを持つ。身のこなしは軽いが、視力はよくないのか、眼鏡をかけている。一見人懐っこく誰に対しても調子のいい態度を取るが、実際は狡猾で抜け目なく、目的のためには手段を選ばない。そのため、恩人であっても平気で騙(だま)し傷つけるが、ティーニャのことだけは大切に思っている。ティーニャの病気を治す魔法をかけてもらうためにダバダ=ダバハールと契約しており、「ダバハール奴隷商会」の奴隷にできそうな人間を騙して連れてきては、ダバダに献上している。この境遇を真見坂まみに共感され、まみと「魔法大陸 ジラル戦記」の「あまそぎ」が作り出した世界においては、まみと一体化している。
ティーニャ
ファンタジー小説「魔法大陸 ジラル戦記」の登場人物で、ネコ科の動物と人間の半獣族(アノマール)の幼い少女。ティルトの妹。ネコ科の動物と同じ耳としっぽを持つ。「魔力過敏症」という病気を患っており、思うように運動することもできない。そのため、家から出ることもできず非常におとなしい性格だが、ティルトのことは深く慕っている。体内に強い魔力を有しており、それゆえにダバダ=ダバハールに目を付けられてしまう。
田鎖 たくみ (たぐさり たくみ)
つづら殿に所属するすそはらいの少年。田鎖たかのの兄。鎖の付喪神「しぐれ」を扱う。つづら殿においては隷付喪神派で、つづら殿の意思決定を司る上位9名のすそはらい「九殿冠(きゅうてんかん)」のうち、第3位でもある。セミロングヘアをポニーテールにしており、顔立ちはたかのと非常によく似ている。非常にまじめで厳格な性格で、すそはらいとしても優秀である。そのため、隷付喪神派である自分の考えに自信を持っており、つぐももを道具として扱うことに抵抗がない。さらに、自分よりも劣っているたかのには強く当たりがちで、自分の言うことさえ聞いていればよいという、価値観の押し付けをしている。そんなある日、斑井枡次が織小花央姫の不在に乗じてつづら殿を乗っ取る。そこで自分も隷付喪神派として枡次につくが、ここで初めて自分に反抗してきたたかのと「九殿武闘会(きゅうてんぶとうかい)」で戦うため、九殿冠第3位を返上。挑戦者側として、第4位であるたかのに勝負を挑む。
糸信 (しのぶ)
「迷い家(が)」に所属する縫い針のつぐもも。小柄な体型をした、黒のロングヘアの少女の姿で現れる。いつもまじめで落ち着いており、理不尽な目に遭っても感情に流されることなく、状況を冷静に判断できる。また、男性のような硬めの口調で話し、細身で胸も小さいことから、中性的な印象を与える。この人柄から、迷い家のメンバーにおいてはあまり目立たない方で、加賀見一也とも、つづら殿に行くまでは話したことがなかった。しかし、内には熱いものを秘めており、義理堅く心優しい。そのため、当初は敵であった一也が、迷い家の付喪神たちを積極的に救うだけでなく、霊力を失いかけている自分のような付喪神に対しては、一時的な所有者になってまで助ける姿を見て好感を抱く。そこで、せめてものお礼にと、加賀見奏歌に敗北したことで端切れ状になってしまった桐葉を縫い合わせ、復活の手伝いをした。この一件から一也と交流を持つようになり、「九殿武闘会(きゅうてんぶとうかい)」終了後は美鷹みまね、笛の響華、そそぐと共に、正式に一也のつぐももとなった。この新たな四人の中では、まとめ役割を務めることが多い。
そそぐ
「迷い家(が)」に所属する盃のつぐもも。長身の少しふっくらした体型で、マッシュルームボブヘアの少女の姿で現れる。前髪が長く、両目は前髪に隠れている。寡黙でおとなしい性格で、ふだんはほとんど発言しない。しかし、さまざまな効果を持つお酒を所有しており、これを他者に飲ませることで、記憶を消したり、身体を治療したり、一時的に身体能力を上げたりするなど、多種多様な技を用いる。迷い家のメンバーにおいてはあまり目立たない方で、加賀見一也とも、つづら殿に行くまでは話したことがなかった。しかし、「九殿武闘会(きゅうてんぶとうかい)」終了後は美鷹みまね、笛の響華、糸信と共に、正式に一也のつぐももとなった。
織小花 央菜 (おりおばな おうな)
織小花央姫の半身。少女の頃の央姫の姿で現れ、自分は「忌み名」の習慣により、央姫がかつて使っていた「織小花央菜」を名乗っている。央姫よりも実直な性格で、特に央姫のミスには手厳しい。また、戦いに関しても央姫の甘さを危惧しており、負けそうだと判断した場合は自分と精神を入れ替えることがある。
田鎖 たかの (たぐさり たかの)
つづら殿に所属するすそはらいの少女。田鎖たくみの妹。鎖の付喪神「ささぐれ」を扱う。つづら殿においては隷付喪神派で、つづら殿の意思決定を司る上位9名のすそはらい「九殿冠(きゅうてんかん)」のうち、第4位でもある。セミロングヘアをポニーテールにしており、顔立ちはたくみと非常によく似ている。幼い頃からたくみに厳しく指導されて育ち、そのためか気が弱く自分に自信が持てない。その結果、たくみに価値観をゆだねがちになってしまっている。しかし本来はまじめで心優しく、隷付喪神派の考えにも疑問を抱いていた。そこで「隠れ親付喪神派」の立場をとっていたある日、斑井枡次が織小花央姫の不在に乗じてつづら殿を乗っ取る。これを機に自分らしく生きるため、初めてたくみに反抗して、親付喪神派として「九殿武闘会(きゅうてんぶとうかい)」に参加することになる。加賀見一也とはこの時に親しくなり、一也の自分の価値は自分で決めるべきであるという考えに強く励まされる。以来、一也をひそかに慕っている。
斑井 枡次 (まだらい ますじ)
すそはらいの年老いた男性。「つづら殿」の副頭首を務め、蔵の付喪神を扱う。つづら殿においては、付喪神は道具として扱うべきで、人間のためなら壊れても構わないと考える「隷付喪神派」の筆頭でもある。頭頂部は禿げ上がっており、残った髪の毛を外はねボブヘアにし、口ひげとあごひげを長く伸ばしている。目的のためには手段を選ばない冷徹な性格で、それゆえに付喪神には冷たく当たるが、これは怪異に襲われる人間たちを、最優先で守るための考えでもある。ある日加賀見奏歌の復活により、織小花央姫が上岡へ出向いた際、央姫の不在に乗じて、つづら殿を乗っ取り頭首となる。そして、これに反発した央姫たち「親付喪神派」と決着を付けるべく「九殿武闘会(きゅうてんぶとうかい)」を開催し、大将として加賀見一也と戦うことになる。央姫とは複雑な関係で、考えこそ対立しているものの、完全に憎み合っているわけではない。
ダバダ=ダバハール
ファンタジー小説「魔法大陸 ジラル戦記」の登場人物で、魔王軍に所属する魔女の中年女性。ふだんは素性を隠して、ヨーネの町で「ダバハール奴隷商会」の主として暮らしている。ロングヘアをお団子にし、たれ目で唇が厚く、太った醜い容姿をしている。そのため、自らの容姿を若く美しかった頃に戻したいと願っており、それを可能にする「超魔苑茸(ちょうまえんたけ)」を生み出そうと考えている。そこで、その苗床となる強い魔力を持った人間と、その養分となる奴隷たちを「魔証紋(ましょうもん)」を使って絶対服従させて暮らしている。また、すでに苗床候補としてティルトに目を付けており、ティルトの病気を治す方法があるとティーニャを騙して彼女を近くに置きながら、超魔苑茸の完成を目指す。
場所
迷い家 (まよいが)
人間に冷遇され、行き場を失った付喪神たちを保護している秘密の家。椀爺が長を務めている。迷い家の中には霊力が満ちており、本来は所有者がいなくなれば人間の姿をとることができず、器物に戻ってしまうはずの付喪神も、所有者なしで活動することができる。付喪神たちにとっては楽園のような場所だが、その霊力は「家」の付喪神であるミウラヒが「迷い家」の維持だけを願う即身仏として「迷い家」の奥に鎮座していることで維持されている。 ミウラヒの身体には「石片」と呼ばれる、土地神クラスの神々が身に宿している「呪詛(すそ)」の結晶が埋め込まれており、この「石片」が霊力の源となっている。しかし現在「石片」の効力はなくなりかけており、「迷い家」の付喪神たちは「石片」を所有する他の神を殺して新たな「石片」を手に入れ、ミウラヒの身体に移植するという方法で「迷い家」を維持しようとしている。 そのターゲットにくくりが選ばれ、くくりが守る上岡の土地は危機に瀕することになる。
その他キーワード
付喪神 (つくもがみ)
『つぐもも』に登場する、物に霊が宿った存在。長い年月をかけて生まれる、人間性の宿ったつぐももと、人の願望の力によって突発的に生まれ、人間性の希薄なあまそぎに大別される。
つぐもも
命を宿した器物である「付喪神」のうち、長い年月をかけて命を宿した存在。桐葉や安次峰あきとなどが該当する。確固とした自我を持ち、人の姿をとることができる。人間の姿をとっている間は人間と同じ身体機能を得るが、人間と同様に、致命傷を受けると死んでしまう。また、本来の姿であっても、修復不可能なまでに破壊されると死んでしまう。 基本的には人間なしでは存在できず、所有者の付喪神への想いと絆が力の源となっている。
あまそぎ
人の強い願いに、怪異を引き起こす源「呪詛(すそ)」が集まり、器物にとりついたことで生まれた即席の付喪神。長い時間をかけて生まれる「つぐもも」に対し「あまそぎ」は生まれたての存在のため赤ん坊にも等しく、人間の世界で度々トラブルを起こす。「あまそぎ」を倒すには以下の4つの方法がある。まずは「あまそぎ」が生まれる原因となった、「あまそぎ」の所有者である宿主の願いを成就させること。 2つ目は宿主自身が「あまそぎ」のついた器物を破壊すること。3つ目は宿主以外が「あまそぎ」のついた器物を破壊することだが、宿主自身が器物を破壊した場合とは違い、宿主の身体にトラブルが起きる「すそ返し」が発生するため推奨されていない。4つ目は宿主を殺すことだが、こちらは当然推奨されておらず、最悪の場合のみ行う方法となっている。 本来「あまそぎ」は、簡単に発現するようなものではない。しかし、加賀見一也たちの暮らす地域ではくくりの力が弱まっていることや、一也が「呪詛」を引き寄せてしまうことも手伝い、上岡市立上岡東中学校などに頻繁に出現するようになってしまう。
すそはらい
「あまそぎ」の発生など、「呪詛(すそ)」の乱れにより発じる怪異を調伏し、平和を守る存在。各地域ごとに「すそはらい」が存在して担当地域を守っており、皇すなおや生前の加賀見奏歌が該当する。また、「つづら殿」のような、「すそはらい」を養成する組織もある。
すそがえし
「あまそぎ」が本人以外の手で破壊された際に生じる災厄で、あまそぎを生んだ願望の持ち主がその被害を被ることになる。毛髪が抜け落ちたり、声が出せなくなるなど、「すそがえし」の効果は、あまそぎに応じてさまざま。
書誌情報
つぐもも 33巻 双葉社〈アクションコミックス〉
第1巻
(2008-06-28発行、 978-4575835090)
第29巻
(2022-08-10発行、 978-4575857450)
第30巻
(2023-02-09発行、 978-4575858037)
第31巻
(2023-07-12発行、 978-4575858624)
第32巻
(2024-02-08発行、 978-4575859355)
第33巻
(2024-08-08発行、 978-4575859942)