概要・あらすじ
渋谷の一角にあるとんかつ屋「しぶかつ」の三代目、アゲ太郎は家の商売に興味を持てないでいた。そんなある日、出前で訪れたクラブでクラブミュージックに出会い、どっぷりとクラブカルチャーにはまる。数週間後、行きつけのクラブに、アメリカの伝説の黒人DJであるビッグマスターフライがやってきた。ビッグマスターを見ているうちに、その姿がとんかつを揚げる父とダブリ、曲の速いテンポがキャベツの千切りのリズムと重なる。
「とんかつ屋とDJは同じなのか!?」と驚くアゲ太郎の頭に、ビッグマスターがテレパシーで語りかける。「とんかつとDJは同じグルーヴ。ブタを揚げるか、客をアゲるかなのだ」と。とんかつとDJに目覚めたアゲ太郎は、翌朝、父に頭を下げ、とんかつ修業を願い出る。
アゲ太郎の、とんかつDJとしての修行が始まった。
登場人物・キャラクター
勝又 揚太郎 (かつまた あげたろう)
渋谷のとんかつ屋「しぶかつ」三代目の少年。漫然と家業を手伝っていたが、ある日訪れたクラブで、クラブミュージックと出会い、経験したことのない高揚感を味わう。伝説の黒人DJのプレイで、とんかつ屋もDJも同じだと気づいたアゲ太郎は、とんかつもフロアもアゲられる、「とんかつDJ」を目指す。
勝又ころも (かつまたころも)
アゲ太郎の妹の女子高生。家業であるとんかつ屋「しぶかつ」を手伝う。接客に優れ、客の動きを見極めて素早く動くという、接客の基本「注意力とノンストップ」をアゲ太郎に伝える。
勝又 揚作 (かつまた あげさく)
アゲ太郎の父。渋谷のとんかつ屋「しぶかつ」二代目。ストイックにとんかつ道を歩む厳格なオヤジで、ロースとヒレ以外は頑としてやらない。アゲ太郎を一人前の職人に育てるため、厳しく指導する。
忍堀 修吾 (おしぼり しゅうご)
とんかつ屋「しぶかつ」に出入りするおしぼり業者。アゲ太郎が初めてクラブに訪れた時に偶然会い、以来一緒にクラブ通いするようになる。アゲ太郎にクラブカルチャーのイロハを教える。
服部 苑子 (はっとり そのこ)
スタイリスト見習いの女の子。クラブではマドンナ的な存在で、アゲ太郎も一目惚れする。
DJビッグマスターフライ (でぃーじぇいびっぐますたーふらい)
「マンハッタンの大魔神」の異名を持つ、伝説の黒人DJ。クラブカルチャー黎明期から活躍する。渋谷のクラブに招かれた際、アゲ太郎に「とんかつもDJも同じグルーヴだ」とテレパシーで語りかけ、アゲ太郎をとんかつDJへと導く。また、自身が初めてDJをしたときのレコードをアゲ太郎に譲る。 とんかつ屋「しぶかつ」のとんかつが好き。
溝黒 五郎 (みぞくろ ごろう)
中古レコード店「Digger's」店主。昔店に来た、DJビッグマスターフライが選んだものと同じレコードを選んだアゲ太郎に、可能性を見出す。極度の女嫌いで、女性が店を訪れると閉店してしまう。アパッチという名の看板犬を飼っている。
屋敷 蔵人 (やしき くらうど)
イケメンの若手実力派DJ。アゲ太郎のライバル。選曲のセンスやテクニックもトップクラスで、有名アーティストからのリミックスの依頼も多い。アゲ太郎と同い年ながら、IT会社の社長も務める。その圧倒的なDJプレイで、アゲ太郎に初めての挫折感を与える。
尾入 伊織 (おいり いおり)
アゲ太郎のDJの師匠。いぶし銀のテクニックを持つ中堅DJ。油ものや油そのものが好物。ケタはずれの大食いのため食費が足りず、たまに栄養失調で倒れる。ラードを報酬に、アゲ太郎にDJプレイを教えることになる。
藤井 頼太 (ふじい らいた)
カルチャー誌に「ウッ! このカルチャーを見逃すな!」などの連載コラムを持つ売れっ子ライター兼エディター。音楽はもちろん映画、お笑い、漫画、エロなどあらゆるカルチャーに深い造詣を持つ。アゲ太郎のDJデビュープレイに感動し、自分のコラムに「とんかつDJ」として取り上げる。渋谷界隈の若きDJたちを、その象徴である屋敷蔵人にちなんで「屋敷世代」と呼び、アゲ太郎にも大きなムーヴメントを起こしてほしいと願う。