世界観
設定の根底に、特撮作品などによく見られる「正義」と「悪」の組織による対立構造を配置している。タイトル通り、悪の組織の生き残りが主人公となっているが、本作『はじめてのあく』における「悪」は、「自由」や「混沌」、「少数派」を示すダークヒーロー的な意味合いが強く、一般的な感覚を持つ人を不快にさせるような要素はほぼない。阿久野ジローも、世間知らず故にはた迷惑ではあるが、さっぱりした性格の好漢である。
あらすじ
1年生編(1話~58話)
阿久野ジローの実家は悪の組織。悪あれば正義もあるもので、組織はある日壊滅させられ、今は一家離散中。ジローと姉の阿久野エーコは親戚の渡家で世話になることになった。ジローは渡家の一人娘である渡恭子(キョーコ)の身体能力、凶暴性に魅了され、いつか手下にしたいと願っている。そして、その身体を改造したいとも考えている。キョーコは社会に溶け込めたら好きにしていい、と条件を提示するが、実はこれはジローとキョーコをくっつけるための、エーコの作戦だった。
2年生編(59話~113話)
2年に進級した阿久野ジローたちのクラスに、2人の生徒が転入してきた。しかし、やってきた転校生である来栖曜と大神姫乃は、正義、悪両方の完全なる駆逐と、現在の世界の破壊を目的とする過激派組織真世界の構成員だった。2人は一般人を巻き込まないというルールを生ぬるいと嘲笑し、ジローと黒沢アキラを狙い、無差別な破壊を繰り返す。しかし、阿久野エーコの提案により、それぞれの存在をかけた決闘を行うことに。正義、悪、そして学園における仲間たちは、変わらぬ日常を守るために真世界との決戦に挑む。
3年生編(114話~159話)
3年生へと進級した阿久野ジローと学友たちは、それぞれ受験、就職に向けて、迷いつつも一生懸命に日々を過ごしていた。そんなある日、ジローが草壁シズカや枕崎ルナと親密になっているように感じた渡恭子(キョーコ)は、無意識下に嫉妬を募らせ、ジローに冷たく当たってしまう。そんな折にキョーコは、ジローを逆恨みする四ノ原カズが引き起こした誘拐事件に巻き込まれるが、ジローは傷つきながらもキョーコを救出。この事件を通して、キョーコはついにジローへの恋愛感情を自覚するに至る。さらに、キョーコの友人である中津川秋穂や東雲雪路も、それぞれの恋に直面することとなる。
作風
学園コメディが中心。作中の時系列は現実の時間とほぼリンクしており、3年間の連載を通じて、阿久野ジローたちの三葉ヶ岡高校における学生生活が描かれている。正義と悪の対立はほぼ描かれないが、時折それぞれの組織における内部事情がピックアップされる。また、藤木俊が過去に手掛けた読み切り漫画「進め!ギガグリーン」と世界観が共通している。
単行本の装丁
カバー上は、その巻で活躍するキャラクターが描かれているという、オーソドックスなもの。逆にカバー下は阿久野エーコがほぼ毎回出張っており、彼女ののんべんだらりとした様子が毎回掲載されている。エーコは「カバー下は私のテリトリー」と宣言している。たまに他のキャラクターが大きく描かれることはあるが、大抵ロクな目にあっていない。
登場人物・キャラクター
阿久野 ジロー (あくの じろー)
悪の組織キルゼムオールの元構成員の男子高校生。優秀な科学者で、「ドクトルJ」の異名を持っていた。キルゼムオールの壊滅に伴い、住処がなくなってしまったため、従姉妹である渡恭子(キョーコ)の家に居候することとなる。幼い頃からずっと科学者として暮らしており、数多くのアイテムを開発してきた。しかし、科学者としての役割のみに心血を注ぎ、浮世離れしていたので、凄まじいまでの世間知らずに育ってしまった。 キョーコの身体能力に目をつけ、自らの部下にするべく追い回している。しかし、少々暴走気味な面を除けば、親しみやすく頼れる存在なので、多く友人たちに慕われている。科学者なので身体能力は高くないが、身につけているオートマントの力によって、常人を凌駕する挙動を見せる。
渡 恭子 (わたり きょうこ)
阿久野ジローの母方の従姉妹の女子高校生。寄る辺を失ったジローと阿久野エーコと同居することとなる。おしゃれには無頓着で貧乳だが、そのパワフルさが魅力なのか、渡キョーコファンクラブなるものが存在する。改造人間の素材としてジローに目をつけられており、友人の中津川秋穂と東雲雪路からは、頻繁にジローとの仲について冷やかされている。 渡恭子本人もまんざらでもないと考えてはいるものの、長きにわたって恋心を自覚していなかった。
阿久野 エーコ (あくの えーこ)
悪の組織キルゼムオールの元構成員。24歳。阿久野ジローの姉で、時折ジローと従姉妹の渡恭子の仲をからかう。イタズラ好きで、普段はだらーっとした日々を暮らしている。しかし戦闘力は並外れており、他の組織には「歩く悪ふざけ」と呼ばれ恐れられている。一般人が巻き込まれることは許さず、そういった状況を迎えた場合のみ本気を出す。 現在はキルゼムオール再興までの糊口をしのぐべく、就職活動に勤しんでいるが、適当な性格が災いして成果は芳しくない。なお、好きな食べ物はガリガリ君のチョコレート味。
キョーコの父 (きょーこのちち)
渡恭子の父親。阿久野ジローの叔父。キルゼムオールの崩壊に伴い住処を失ったジローと阿久野エーコを受け入れた。その際にジローに改造を施されることによって、禿げ上がっていた頭にふさふさの頭髪を復活させる。学生時代はワンダーフォーゲル部で、持ち前の社交性によって知らないうちに、悪の組織幹部や大企業の社長などの大人物との人脈を築き上げている。 妻は既に他界しているが、現在も懐かしむことが多い。
ポチ
渡家の飼い犬。阿久野ジローが開発したジハクシールの効果で、人間の言葉を話すことができる。落ち着いた性格と含蓄のある発言がジローの尊敬を招いており、師匠と呼ばれ敬われている。ジローには寛大で、渡恭子やキョーコの父には従順。だらしのない阿久野エーコに対しては、それなりに厳しく接している一方で、共にいる時間が一番長いためか、いいコンビっぷりを発揮している。
中津川 秋穂 (なかつがわ あきほ)
三葉ヶ岡高校に通う少女。渡恭子(キョーコ)の親友。お好み焼き屋の娘で、巨乳のスポーツウーマン。さばさばとした性格だが、年相応の女子高生らしく、キョーコと阿久野ジローの関係には興味津々。学力は人並み以下だが、のちに赤城隆司に想いを寄せるようになり、受験のために家庭教師をしてもらうことになる。キョーコ同様素直になれない性格のため、赤城との仲はなかなか進展しない。
東雲 雪路 (しののめ ゆきじ)
三葉ヶ岡高校に通う少女。渡恭子(キョーコ)の親友。大きな屋敷に住むお嬢様。コスプレが趣味で、演劇部に所属している。ノリがいいイタズラっ子で、大抵のことにはすぐに順応する。恋の話が大好きで、よくキョーコや中津川秋穂の恋愛事情に突っ込む。偶然、緑谷康彦が東雲雪路(ユキ)に想いを寄せていることを知ってしまい、ユキ自身も徐々に緑谷を意識するようになっていく。 やがて告白して欲しいという願望を抱くようになるが、緑谷が告白しようとすると決まってアクシデントが起こってしまう。
赤城 隆司 (あかぎ りゅうじ)
三葉ヶ岡高校に通う少年。生徒会長と渡キョーコファンクラブ会長を兼任している。成績は学年トップで、スポーツも万能だが、渡キョーコファンクラブの例に漏れない変態。貧乳が好みで、渡恭子の魅力のひとつとして数えている。また、阿久野ジローの人望に目をかけており、彼を次期生徒会長に推薦するが、アクシデントのため実現せずに終わっている。 のちに中津川秋穂(アキ)に想いを寄せられるようになり、卒業後は彼女の実家であるお好み焼き屋のバイトと、アキの家庭教師を担当するが、彼女の想いには長らく気づかなかった。
黄村 ヨシヒト (きむら よしひと)
三葉ヶ岡高校に通う少年。渡キョーコファンクラブの会員。肥満体系の人物で、自らの身体をアイデンティティーと感じている節がある。よく半裸になったり、女性に踏んでもらいたがる行動派の変態。嫉妬深い性格でもあり、身の回りで恋愛が成就すると、決まってヤキモチを焼く。しかし、欲望に正直であることが信頼を集める結果になることも多く、3年時には赤城隆司の跡を継いで生徒会長に就任している。
青木 シンペイ (あおき しんぺい)
三葉ヶ岡高校に通う少年。渡キョーコファンクラブの会員。黄村ヨシヒトとは対照的に筋肉質な体型をしているが、自らの体型をアイデンティティーだと考えている点では共通している。渡キョーコファンクラブ会員の例に漏れない変態だが、他の会員に比べると若干影が薄い。受験に一度失敗しており、浪人生となるが、二度目の受験では無事に合格している。
緑谷 康彦 (みどりたに やすひこ)
三葉ヶ岡高校に通う少年。渡キョーコファンクラブの会員だが、その中では唯一の常識人。阿久野ジローとは同じクラスで、彼が転入した早々に打ち解け、親友となっている。やや内気な性格のため、破天荒な渡恭子に憧れを抱いていたが、のちに東雲雪路に想いを寄せるようになる。絵を描くのが大好きで、イラストレーターとして生計を立てることを目標に、美大への進学を志す。
九条 輔之進 (くじょう すけのしん)
日本の三大財閥のひとつである九条家の嫡男。酔った勢いにおける親同士の婚約を真に受けており、渡恭子の許嫁を名乗り、渡家に突如現れた。馬を乗り回し和装に身を包んでいるため、凄まじく悪目立ちしているが、本人はまったく気にしていない。
藤田 (ふじた)
三葉ヶ岡高校の教師。3年にわたって、阿久野ジローのクラス担任となっている。生徒たちに理解のある常識人で、ジローからは「教官殿」と呼び慕われている。学校でたびたび巻き起こる騒動に翻弄されるが、次第に慣れていってしまう。しかし時には厳しく注意することもある。
阿久野 アヤ (あくの あや)
悪の組織キルゼムオールの元構成員。阿久野ジローと阿久野エーコの姉。28歳。妹のエーコとは対照的にしっかりとしており、組織壊滅早々、銀行員としてバリバリ働いている。定職につけないエーコに厳しい反面、歳の離れた弟であるジローには甘く、その溺愛ぶりは職場の後輩からも生暖かい目で見られている。鋭い見た目に反して、目下の夢は可愛いお嫁さん。 極端にあがりやすいため、何度もお見合いに失敗している。
山下 みのり (やました みのり)
三葉ヶ岡高校に通う少女。合唱部に所属しており、高校に通いながらアイドル活動をしている。その華やかさから40人以上のファンがおり、「山下みのりファンクラブ」と呼ばれる大規模なファン組織まで存在する。しかし内心は腹黒く、自分が一番目立たないと我慢できないという悪癖がある。
アキの親父 (あきのおやじ)
中津川秋穂(アキ)の父親。お好み焼き屋を営む中年男性。娘に似てさっぱりした性格だが、アキに近づく男性を認めたがらないという、年頃の娘を持つ父親らしい一面を持つ。一方で人情家としての面も併せ持ち、阿久野ジローが海水パンツを買うためにバイトを始めたと知った時は、涙を流して感激した。
山川 (やまかわ)
三葉ヶ岡高校に通う少年。新聞部の部長。かつて阿久野ジローが悪の組織の科学者であったことを聞きつけ、興味を抱きインタビューを敢行する。ベテランとしての雰囲気を漂わせており、インタビュー慣れしているため、ジローの奇行に対しても和やかに接している。ジローの持つオートマントには、特に強い興味を示していた。
田辺 (たなべ)
三葉ヶ岡高校に通う少女。新聞部の部員。山川の助手を務めており、インタビューの際には写真撮影を担当している。一見物静かな女の子だが人の扱い方を心得ており、インタビューに対する下調べも綿密に行う。インタビューの際には、山川と共に悪の組織についての質問を行うが、去り際には悪の組織を元から知っていたかのような、意味深な発言をしている。
校長先生 (こうちょうせんせい)
三葉ヶ岡高校の校長。1学期の終業式終了後、突然校内放送で夏休みを中止する宣言を行う。当然生徒は怒りと困惑を露にするが、これは学校生活が楽しくて仕方がなく、夏休みの存在自体を知らない阿久野ジローに脅された結果である。さらには刷り込みホルムを使われることにより、今後一切の夏休みを中止する署名をさせられそうになるが、渡恭子の秘策によって何とか阻止された。
影山 ゲンゾウ (かげやま げんぞう)
悪の組織・ゲドウ団の頭領を務める少年。阿久野ジローのライバルの1人。起術符と呼ばれる札を用いた攻撃を得意とする。キルゼムオールが撤退したことで、正義の組織の矛先がゲドウ団に向いたとして、福岡に帰ってきたジローに手荒い歓迎をする。しかし、内心は憎からず思っており、渡恭子からはジローの友達とみられることとなる。
阿久野 エミ (あくの えみ)
悪の組織・キルゼムオールの元構成員。阿久野ジローたち姉弟の母親。福岡にある阿久野家に住んでいる。料理上手で家庭的な女性だが、阿久野エーコに匹敵するイタズラ好きで、密かにジローと渡恭子をくっつけようと画策する。
枕崎 ルナ (まくらざき るな)
悪の組織・ドラキュリアの総帥を務める少女。幼く見えるうえに、ハイテンションで考えなしなため、渡恭子からは小学生と思われていた。実際は中学2年生である。血を吸った相手をコントロールするという特殊な能力を持つが、血が嫌いなため、汗を舐めとることで能力を発動させる。のちに阿久野ジローに対して想いを寄せるようになり、彼を追って三葉ヶ岡高校に入学する。
セバスチャン
悪の組織・ドラキュリアの構成員を務めるコウモリ。枕崎ルナの執事の役割を果たしている。ルナの考えなしな性格をしっかりと把握しており、フォローを怠らない。ドラキュリアが資金不足によって壊滅の危機に陥った際も、何とか組織を立て直すべく、ハンバーガーショップのバイトに精を出している。
プニ太郎 (ぷにたろう)
女の子の赤ん坊。阿久野ジローと渡恭子が阿久野家から帰る最中に、電車内で偶然発見した。両親を探すことになった際に、ジローが面倒を見ようとするが、なかなか懐かなかった。しかし、渾身の変顔を見せられたことで心を許した。女の子でありながらプニ太郎と呼ばれ、両親が見つかるまで可愛がられた。
キョーコ乙型 (きょーこおつがた)
阿久野ジローが開発した家政婦ロボ。渡恭子(キョーコ)の家事による負担を減らすために作られた。キョーコそっくりの容姿をしているが、胸のサイズはキョーコより大きい。人格プログラムに関しては、ジローではなくキルゼムオールで広く用いられる疑似人格を搭載しており、手を加えることができない。なお、戦闘機能も搭載しており、腕に仕込まれている内蔵火器を用いて戦うこともある。
草壁 ゲン (くさかべ げん)
かつて正義の組織だった草壁ファミリーの長男。真面目だが思い込みが激しい性格で、憧れている先輩のような正義の味方になるため、山にこもって修行を続けていた。ある時、悪の組織の人間がいるという話を聞きつけ、三葉ヶ岡高校に潜入。あっさりと阿久野ジローを見つけるが、信頼を集めていることに疑念を抱き、渡恭子が洗脳を受けていると勘違いし連れ去ってしまう。 のちに誤解は解けるが、ジローがキルゼムオールを復活させた時への備えは怠っていない。
草壁 シズカ (くさかべ しずか)
かつて正義の組織だった草壁ファミリーの長女。草壁ゲンの妹。一家の家事を一手に引き受けている。兄に似て真面目だが妄想癖が強い。ゲンが昼間のバイトにかかりきりとなったため、代わりに阿久野ジローを監視することを頼まれ、三葉ヶ岡高校に入学する。しかし、ジローを見ていくうちに悪い人ではないと認識していき、危ないところを助けられたことで惚れてしまう。 それからは積極的にジローにアタックを続けて、渡恭子やキョーコ乙型をヤキモキさせている。
倉田 シンイチ (くらた しんいち)
悪の組織・フランに所属する中年男性。「Dr.クラータ」と呼ばれている。温泉旅行のために長野を訪れた阿久野ジローと偶然知り合い、意気投合する。その後、新しいアイテム開発のために渡恭子(キョーコ)の力を貸してほしいとジローに依頼するが、承諾したキョーコを突如連れ去ってしまう。
新見 (にいみ)
東雲雪路の家に務めるメイドの女性。男性に対して不信感を抱いている節があり、「男は皆狼である」という持論を持っている。格闘技に秀でており、どこからともなく東雲家に潜入してきた阿久野ジローに、絞め技やロープによる攻撃を食らわせることもある。
阿久野 サブロー (あくの さぶろー)
ウクライナ出身の少年。新たに三葉ヶ岡高校に入学してきた。街でブラブラしていたところを、偶然出稼ぎに来ていた阿久野イチローに、会うなりキルゼムオールに引き抜かれ、そのまま養子にされる。組織に所属してからは九州で育ったため、九州弁を喋る。日本といえば忍者という、外国人によくある思い込みが高じて、現在は忍者になるための修業をしている。 しかし腕前はまだまだ半人前といったところである。
緑谷 花子 (みどりたに はなこ)
新たに三葉ヶ岡高校に入学してきた少女。緑谷康彦の妹で、兄に輪をかけて人見知りが激しい。入学早々阿久野ジローの奇行を目撃し怯えてしまう。誤解が解けた後はジローと仲良くなり、以降は遠くからではあるが、誰かに話しかけることもできるようになった。お兄ちゃん子で、康彦が恋煩いをしていることを見抜くと、事もあろうに当の相手である東雲雪路(ユキ)に相談。 さらに、ユキは康彦が渡恭子を好きだと思い込んでいるため、さらなる誤解を植え付けられてしまう。
大貫 シズエ (おおぬき しずえ)
阿久野ジローの祖母。一昨年夫が逝去したため、現在は東京で一人暮らしをしている。かつてはキルゼムオールの最高幹部で、現在でも強靭な体力を誇り、英語もペラペラと非の打ち所がない。建設途中の東京スカイツリーに強い興味を示している。
戦部 イオリ (いくさべ いおり)
悪の組織・キルゼムオールの構成員だった強面の男性。かつては腕利きの戦闘員で、阿久野ジローに対して格闘技の指導を行っていた。頭が固く、民間人となれ合うことを快く思っていない。阿久野アヤに想いを抱いており、ジローたちに応援されているが、肝心の本人同士が固すぎるため、まったく進展しない。
四ノ原 カズ (しのはら かず)
悪の組織・ザ・ゴージャスの総統代理。組織の威光を盾に威張り散らしているが、実際はただの嫌味な小悪党である。キルゼムオールを弱小組織と罵るが、阿久野ジローの活躍によって幾度も煮え湯を飲まされる。このことを激しく恨み、ついには渡恭子を誘拐。彼女の命を盾にジローからオートマントを奪い取り、それを使ってジローを抹殺しようと襲い掛かる。
黒沢 アキラ (くろさわ あきら)
正義の組織・ギガレンジャーの一員。ブレスレットを使うことで、正義のヒーロー「ギガブラック」に変身できる。キルゼムオールの復興を阻止するため、阿久野ジローの監視を命じられる。任務の一環として三葉ヶ岡高校に潜入するが、文化祭の最中、偶然行動を共にした渡恭子と仲良くなってしまう。それからも監視を続けていたが、真世界の刺客である大神姫乃と戦って重傷を負わされてしまい、やむなくジローに共闘を求める。
来栖 曜 (くるす よう)
過激派組織・真世界の日本支部長を務める少年。一見明るい少年だが、非情な性格の持ち主である。正義と悪の両方が集う三葉ヶ岡高校に潜入し、まとめて一掃しようと目論む。殺気を、剣や弾丸など様々な形に具現化させて自在に操る能力を持ち、具現化した殺気が霧のように見えることから「黒霧」と呼ばれている。学校の仲間たちを次々に傷つけたことで阿久野ジローの怒りを買い、1対1の対決に持ち込まれるが、その際にはオートマントを使っても歯が立たないほどの実力差を見せつけた。
大神 姫乃 (おおがみ ひめの)
過激派組織・真世界に所属する少女。不愛想だが風格を漂わせている。来栖曜と共に三葉ヶ岡高校に潜入する。山野大神流という流派の拳法を習得しており、活動中に居合わせた黒沢アキラを襲撃した時は、強烈な打撃によって重傷を負わせている。さらに重力を操る力を持ち、打撃の威力を増したり、空中に足場を作って上空から強襲することも可能。
七緒 ありさ (ななお ありさ)
過激派組織・真世界に所属する少女。組織の長とされる「アバドン」に強い忠誠心を抱いている。凶暴かつ執念深い性格で、狙った獲物は決して逃がさない。髪の毛を操る能力を用いて複数のナイフを自在に操り、あらゆる方向から攻撃することができる。ナイフがひとりでに動くような戦い方から、「ポルターガイスト」と呼ばれている。
木下 重蔵 (きのした じゅうぞう)
過激派組織・真世界の構成員。七緒ありさ付の執事を務める老年の男性。筋力を10倍にすることができる「筋力増強(ブースター)」という特殊能力を持っている。この能力により筋肉を操作することで、あらゆる攻撃をはじき返す鉄壁の鎧に変えることができる。自らの筋肉に絶対的な自信を持っており、「ナイスマッチョ」の異名を持つ。
清里 ユカリ (きよさと ゆかり)
三葉ヶ岡高校の新任教師。阿久野ジローが3年に進級した際に着任した。担当教科は英語で、のちにキルゼムオール高校支部の顧問を務める。酒癖が異常に悪く、ひとたび酔っぱらうと、周りを巻き込んで騒動を巻き起こしてしまう。阿久野エーコは学生時代の先輩で、今でも強く憧れている。なお、ジローやエーコが悪の組織の構成員だったことは知らなかった様子。
ホメ
赤城隆司の脳内で具現化した謎の人物。上半身が全裸で、サスペンダーだけを付けた白人の巨漢。肉類が好物。彼が赤城の脳内に現れた理由は、赤城が家庭教師をしている最中、中津川秋穂が英語の基礎問題で「I'm home!」「Welcome home」(「ただいま」「おかえりなさい」)を「私はホメです」「ようこそホメ!」と日本語訳してしまったことによる。
阿久野 イチロー (あくの いちろー)
悪の組織・キルゼムオールの首領。阿久野ジローたち姉弟の父親。豪快な性格だが、シビアな側面を持つ中年男性。ジローたちが三葉ヶ岡高校を卒業する時期に姿を現す。自身は悪という概念に「わがまま」、「少数派」という意味を見出しており、ジローに対し悪とは何かと問いかける。
集団・組織
キルゼムオール
九州に本拠を置く悪の組織。地域密着型で、「人にやさしい悪の組織」をモットーにしている。規模はそこまで大きくないが、構成員の知能や戦闘力は他の悪の組織を大きく凌駕している。ある時、正義の組織の攻撃により壊滅的な被害を被り、現在はメンバーも散り散りになってしまっていた。しかし再興の目途はたっており、阿久野ジローが高校を卒業した後に、新たな首領に据える予定である。
渡キョーコファンクラブ (わたりきょーこふぁんくらぶ)
渡恭子(キョーコ)をアイドル視する男子4人組。キョーコの、一見物静かな文系少女に見られがちな外見と、優れた運動能力のギャップをアイドル視している。活動内容はキョーコを陰から見守ることだが、構成員がほぼ変態なので、ストーカー集団と思われることも少なくない。キョーコと親しい阿久野ジローを警戒していたが、行動を共にするうちに意気投合している。
山下みのりファンクラブ (やましたみのりふぁんくらぶ)
山下みのりを称える男子による集団。見守るだけの渡キョーコファンクラブとは異なり、アイドルとして活動しているみのりのプロモーションや、関連グッズの販売なども行っている。数ある三葉ヶ岡高校のファンクラブの中でも最大級の規模を誇り、40人以上の団員を擁っている。クラブ用の部屋を目的として、渡キョーコファンクラブの部室を狙うが、阿久野ジローの策によって失敗している。
ゲドウ団 (げどうだん)
九州に本拠を置く悪の組織。影山ゲンゾウが在籍し、キルゼムオールのライバルと目されている。構成員は全員和装を纏っており、戦闘員は大極図をモデルとした仮面を被っている。ライバルであったキルゼムオールが壊滅してしまったため、正義の組織による攻撃にさらされているが、現在は無事な模様。
ドラキュリア
九州に本拠を置く悪の組織。「シルバームーン」こと枕崎ルナが首領を務めている。ゲドウ団とは対照的に欧米の雰囲気を纏っている。構成員不足に悩まされており、阿久野ジローを科学者にするべくスカウトしたりもしていた。のちにザ・ゴージャスの手により壊滅の危機に陥ったが、ジローの介入で事なきを得ている。
草壁ファミリー (くさかべふぁみりー)
かつて正義の味方を生業としていた家族。近くに悪の組織が栄えていなかったため、正義の味方としての活動を行えない現状にある。現在は草壁ゲンが家長を務めており、ゲンはファミリーの大黒柱となるべく正式な正義の味方を志している。家族そろって妄想癖がひどい。
ザ・ゴージャス (ざごーじゃす)
九州に本拠を置く悪の組織。組織としては新参だが、強力なスポンサーがバックについており、豊富な資金故に規模も大きい。目的のためなら手段を択ばず、キルゼムオールなど他の組織を見下しているなど、ある意味最も「悪」らしい組織ではある。しかしあまりにモラルのないやり方故に、阿久野ジローの怒りを度々買っている。
フラン
長野に本拠を置く悪の組織。正義の組織との共倒れを目論む男に唆され、倉田シンイチの恋人を蘇らせるためとして、魂を定着させるための身体を確保すべく民間人の女性をさらっている。さらには渡恭子も拉致の被害に遭ったため、阿久野ジローの怒りを買うこととなる。
アキスブラザーズ
空き巣を専門とする2人組の泥棒。7年間続けているが、狙った獲物は必ず逃がさないと豪語している。渡家をターゲットに選定し、住人がいないすきを狙って侵入。ほとんど外出しない阿久野エーコが家に残っていたため、彼女の無茶に振り回されて酷い目に遭う。
ギガレンジャー
黒沢アキラが所属する正義の組織。国そのものが秘密裏にバックについているため、キルゼムオールを含めた悪の組織を遥かに凌駕する規模と科学力を持ち合わせる。変身能力を持つ構成員は、それぞれの色を冠したコードネームを持つ。正義の組織なので悪とは相容れないが、真世界の台頭に伴い、一時的に悪の組織と手を携える。
真世界 (ねびろす)
正義と悪の組織一掃を目論む第3勢力。現在の世界を破壊し、新たな世界を構築することを目的とする過激派組織である。「アバドン」と呼ばれる謎の存在に導かれ、正義、および悪を排除すべく活動する。構成員はいずれも幼い頃から特殊な能力を持つために、その特異性を世間に疎まれ、その結果世界そのものを憎悪するようになった者たちである。そのため、正義と悪の双方が掲げる「一般人を巻き込まない」という主張を、生ぬるいと一蹴する。 来栖曜率いる日本支部のメンバーは、キルゼムオールの一員である阿久野ジローとギガレンジャーに所属する黒沢アキラが通う三葉ヶ岡高校に目をつけ転入。生徒を巻き込んだ破壊活動を実行する。
キルゼムオール高校支部 (きるぜむおーるこうこうしぶ)
3年に進級した阿久野ジローが新設した部活。その名の通りキルゼムオールの三葉ヶ岡高校支部としての役割を持つ。部長はジローで、部員に渡恭子、阿久野サブロー、黒沢アキラ、枕崎ルナが名を連ねている。黒沢アキラは正義の人だが、半ば無理やり入れられた形となっている。設立の理由は、赤城隆司の卒業によって使えなくなってしまう渡キョーコファンクラブの部室の再利用と、ジローが3年間高校に通った証を残すためである。
場所
三葉ヶ岡高校 (みつばがおかこうこう)
渡恭子らが通う高等学校。のちに阿久野ジローも転入している。学校そのものは自由な校風ながらも平凡ではあるが、通っている生徒が曲者揃い。ポチには「アホの集まり」と言われてしまったこともある。のちに悪の組織と正義の組織、両方の構成員が通っている高校として、真世界に目をつけられてしまう。
阿久野家 (あくのけ)
阿久野ジローの実家。キルゼムオールのアジト。駅から車で40分かけた先の山奥に存在する。現在は阿久野エミと阿久野アヤの2人が在住している。悪の組織のアジトと言われても、誰も信じられないほどのどかな一軒家で、渡恭子にも気に入られている。なお、裏庭に温泉があるが、これは組織が壊滅した時に偶然湧いたものである。
その他キーワード
オートマント
数あるアイテムの中でも最も高性能で、ジローは常にこれを身につけている。使用者の意思に応じて自在に形状を変える物質で構成されており、拳を形成することで攻撃や防御も思いのままに実行できる。ジローは科学者なので身体能力は低いが、このマントを使うことで並の戦闘員はおろか、他の組織の幹部とも渡り合うことができる。
ジハクシール
貼り付けられた対象の、心の声を音声化する機能を持っている。心の声は嘘をつけないため、捕虜に自白させるために用いられる。動物に張り付けた場合は、会話をすることができるようになる。渡家のペットであるポチは、このアイテムによって喋ることができる。
透明クリーム
身体に塗ると透明になり、視認されなくなる効果を持つ。敵から隠れるために開発されたもので、服の上から塗っても効果を発揮する。全身に塗らないといけないため、ジローからは使い勝手が悪いと評される。
変身用光線銃 (へんしんようこうせんじゅう)
撃たれた対象の衣装を一瞬で変える効果を持つ。悪の組織としてのコスチュームを身につける際に用いられる。マガジンにメモリースティックが搭載されており、使用者の持つコスチュームデータをインストールできる。ただし、民間人に使った場合、そのコスチュームに応じた役作りを強制させられてしまうという副作用がある。 女王様になったユキが使用することによって、大きな騒動が巻き起こってしまった。
刷り込みホルム (すりこみほるむ)
クロロホルム同様に、吸わせた人間を昏睡させてしまい、目覚めた時に初めて見た相手を盲目的に慕うようになる。キルゼムオールでは人質を操る際に用いられていた。渡キョーコファンクラブと山下みのりファンクラブの抗争の際に使用され、見事に渡キョーコファンクラブの勝利に貢献した。
自動追尾キャップ (じどうついびきゃっぷ)
被せた対象が一番親愛の情を持っている相手に向けて、光が伸びるという効果を持つ。捕虜の背後関係を調べるために開発された。光の色によって距離を把握することも可能で、黄色い光が伸びた場合は、同じ市内にいることを意味する。プニ太郎の両親を探す際に用いられた。
自信RZ (じしんあーるぜっと)
飲むことで自信が満ち溢れる。あがり症の克服のために使われることが多く、急遽三葉ヶ岡高校でのミスコンに参加することになった渡恭子に使用される予定だった。しかし、同じくミスコンに参加していた山下みのりに奪われ、使用されてしまう。元々自信が強いみのりは、これの効果で自信過剰になり、暴走してしまう。
キタカZ太陽 (きたかぜっとたいよう)
いわゆる人工太陽というべきもので、周囲を暖めることができる。赤城隆司の頼みによって講演会を設営する際に、寒さをしのぐために使用される。実際は、正義の組織が自発的にスーツを脱ぐために開発されたもので、衣服を脱ぎたくなってしまうという恐ろしい作用がある。
愛情チェッカー (あいじょうちぇっかー)
物質に込められた愛情を数値化することができる。本来は取引の準備などに使用するアイテムだが、渡キョーコファンクラブの提案で、バレンタインのチョコレートに込められた愛情を示すために使用されることとなる。しかし、このアイテムで計測される愛情には恋愛感情が計算に入らないため、渡恭子に大きな誤解を招くこととなる。
強制契約ペーパー (きょうせいけいやくぺーぱー)
止めさせたい事柄を記入することで効力を発揮する。強制契約ペーパーに書き込まれた事柄を破ると、電撃によるお仕置きをされてしまう。このアイテムはキルゼムオール時代に開発したものではなく、卒業式の意味を勘違いしたジローが、何かを卒業するために作ったもの。東雲雪路の悪戯に利用されてしまう。
人間コントローラー (にんげんこんとろーらー)
あがり症である阿久野アヤのお見合いを成功させるために開発された。後頭部にアンテナを付けた人間を自在に遠隔操作することができる。身体を動かすのはもちろん、マイクに喋りかけることで、本人の台詞として再生する機能も搭載されている。
性格増幅剤 (せいかくぞうふくざい)
元々は悪の組織に志願した人員の適性を図るために開発されたもの。吹きかけた相手の性格を強める効果を持つ。例えば緑谷康彦の場合は、シャイな部分が増幅され悲観的になる。この効果は逆化剤を使用することで中和される。しかし、このアイテムを使われてない人間に逆化剤を吹きかけると、性格が逆転してしまう。
起術符 (きじゅつふ)
空中に張り付けることができ、ゲンゾウの声に合わせて、符に込められた効果を発動することができる。阿久野ジローに戦いを挑んだ際には、強力な衝撃波を発射する「爆砲」の起術符が用いられたが、オートマントに防がれてしまう。
ジロー・ワイルドドリルキック (じろーわいるどどりるきっく)
阿久野ジローの必殺技。オートマントをドリル状に変形させ、それを纏ったまま繰り出す飛び蹴り。大地がえぐれるほどの威力を持つ。ジローはオートマントを使った攻撃を得意としており、これの応用技として、纏ったマントを高速で振り回す「ジロー・ワイルドドラゴン」などが存在する。
ジロー・ワイルド・プリズナー (じろーわいるどぷりずなー)
阿久野ジローの新たな必殺技。真世界との決闘のために修行を積んで会得した。広げたオートマントで対象を包み込み、外から拳による無数の打撃を浴びせる。広範囲に渡って攻撃できるというのが最大の特徴。また、修行によってジロー自身も大きくパワーアップを遂げたため、パンチの威力も従来とは比較にならないほど上昇している。
雷撃拳・槍 (ぎがぼるとすぴあ)
黒沢アキラの必殺技。ギガブラックに変身した時に使用できる。スーツから生成されるエネルギーを電力に変えて拳に集め、打撃と同時に敵の身体に打ち込む。電撃を帯びた衝撃が敵の内部を駆け抜けるため、防具を纏っていても十分な効果を発揮する。
撃・重崩 (げきじゅうほう)
大神姫乃の必殺技。山野大神流の拳法のひとつ。打撃が命中する瞬間に拳に重力を纏わせ、威力を増幅させる。見た目こそ通常の正拳突きだが、その威力は巨大な障害物を弾き飛ばすほど。ベテランの正義の味方である黒沢アキラも、この技によって大きなダメージを受けた。