あらすじ
第1巻
世界有数の観光地、京都の街角にある小さなタバコ屋で、店番を務めている新堂頼子は、今日もその目つきの悪さで通行人をビビらせていた。しかし彼女は、困っている人を見ると放っておけない隠れお節介だった。ある時、そんな頼子のタバコ屋を、予約した宿に辿り着けず、探し疲れてくたくたになったフランス人カップルが訪れる。片言の日本語で、何とか道案内をしてもらおうと話し掛けて来た彼らに、頼子はにらみをきかせながらも、流暢なフランス語で対応する。(第1話「観光地の頼子さん」)
朝10時、場所がわからないと道を聞きにタバコ屋を訪れたのは、久美子と連れの女性二人組。頼子は、目的の店が目の前にある事を教えてあげる。二人が探していたのは下町の名店で、おはぎが有名なお菓子屋「今北軒」だった。到着が遅かったせいで、目的のおはぎを買う事ができなかった久美子達は、翌日9時に再度来店する事を話し合いながら、その場をあとにする。そんな彼女らの会話を聞いていた頼子は、9時到着では遅すぎると、久美子達のために翌朝6時に行列に並ぶのだった。(第2話「地元のお店と頼子さん」)
ある日、頼子のタバコ屋を訪れたのは、中学校の修学旅行で京都を訪れている、男女五人組の修学旅行生だった。内輪ではしゃいだ挙句、ノリでタバコを買おうとする中学生に対し、頼子は厳しい目つきでたしなめる。ひるみながらも、寺ばかりで混雑した京都の観光に不満をこぼし始める中学生達に、頼子はうらみちマップを渡し、お勧めのスポットを紹介する。(第3話「修学旅行生と頼子さん」)
カメラ小僧の男性は、植木に水をやる頼子に話し掛けて来た。彼は、本物の舞妓をカメラに収める事を目的に、京都にやって来たのだ。カメラ小僧は観光客がなりきった偽舞妓ではなく、本物の舞妓に出会える場所が知りたいと頼子を頼って来る。頼子はそれを鼻で笑いつつも、本物の舞妓を見分けるポイントをレクチャーする。(第4話「舞妓と頼子さん」)
頼子は、タバコを購入した着物のカップルの、女性の着物の合わせが間違っている事に気づく。部屋に招き入れ、着つけをし直してあげているあいだに話を聞くと、そのカップルは着物で観光を楽しもうとしていた。しかし、彼女の無茶な計画に彼氏が機嫌を悪くし、険悪な状態になってしまったのだ。気落ちした彼女の様子にいたたまれなくなった頼子は、二人に鴨川の河川敷へ行くように勧める。(第5話「カップルと頼子さん」)
頼子は、東本願寺の前を通りかかる時、いつも堀の中を覗く習慣があった。それは幼い頃に、育ち過ぎてしまった金魚を捨てた事に端を発していた。ある日、堀を覗いていた頼子に声を掛けて来たのは、初老の男性、じいさんだった。彼は以前、息子が祭りですくって来たカメをこの堀に捨てた事があり、それ以来、堀の中を覗く事が習慣になったと話す。そこへ、2匹の金魚を手に少年が現れる。そして彼は、飼いきれなくなった金魚を堀に放そうとして、じいさんから止められる。(第6話「お寺の堀と頼子さん」)
テレビ番組の占いで、鳥居をくぐるほどに運気がアップする事を知った頼子は、千本鳥居で有名な[□伏見稲荷大社]に足を運んだ。意気揚々と足を進めようとした頼子に、鳥居信一が話し掛けて来た。彼は、独立して手に入れた自分の店の繁盛を願うためにこの地を訪れたが、どんな小さな事にも迷い、悩む性分だった。頂上に続く二つの道のどちらを行くかにも、絵馬を購入するかどうかにも、いちいち迷い悩む信一に苛立ちを覚えつつ、頼子は彼をリードしながら頂上を目指す。(第7話「神頼みと頼子さん」)
頼子は、幼なじみの池上順子からのお願いで、彼女の息子の俊介を京都の夏の風物詩「五山送り火」に連れて行く事になった。五山送り火のうちの四つが見られるという公園にやって来たものの、場所取りのピークは過ぎ、すっかり場所が埋まってしまっていた。当てが外れた頼子は、おとなしくテレビで鑑賞しようと自宅へ戻ろうとしたが、俊介の提案で、彼の知る穴場へと足を運ぶ事になる。(第8話「幼なじみと頼子さん」)
SNSに依存気味のアヤコは、京都へ旅行に来てもなお、つぶやきや写真にコメントを付けてSNSにアップする事に夢中になっていた。タバコ屋にカメラを向けた事で、頼子と話を始めるが、SNS自慢を始めたアヤコを理解できず、興味を持てない頼子は、彼女に対して自己主張したいだけではないかと言葉をぶつける。それに反発しながらも、自分が本当にやりたかった事が何なのかわからなくなり、考え始めてしまったアヤコに、頼子は[□哲学の道]へ行く事を勧める。(第9話「SNSと頼子さん」)
倉庫の片づけを始めた頼子は、掃除の最中に、思わぬものを見つけた。それは、ウエディングドレス姿の自分の写真だった。離婚歴のある頼子は、すべて処分したはずだった結婚当時の写真を目にして、元の夫、元旦との日々を思い起こす。そこには、関西弁に嫌悪感を示す夫の言葉に、標準語を話そうと努力する頼子の姿があった。(第10話「おそうじと頼子さん」)
テレビで、京都の漬物をたっぷり使ったお茶漬けが食べられる店を目にした頼子は、観光客向けの高い金額設定に憤慨しながらも、気分はすっかりお茶漬けを欲していた。そんな頼子が地元民として向かったのは、品ぞろえのいい老舗漬物店。三大京漬物と呼ばれる「しば漬け」「すぐき」「千枚漬け」に加え、お店お勧めのちりめん山椒を購入し、自分好みのお茶漬けをたらふく食べようと奮起する。(第11話「お茶づけと頼子さん」)
頼子は、久しぶりに帰省した兄貴と合流し、先斗町を散策したあと、鴨川が一望できる料理屋にやって来た。京都のおばんざいを肴に酒を飲み始めた二人だったが、観光に来ていた外国人3人組が、日本語のメニューを理解できず困っている事に気づいた頼子は、すかさず英語で解説し、世話を焼き始める。(第12話「お酌と頼子さん」)
足が悪く、新たに飼い始めた犬「サスケ」の散歩もままならない状態の高木を見た頼子は、話の流れから、犬の散歩を引き受ける事になった。頼子は、犬が苦手ながらも、持ち前の目力でサスケをけん制しつつ、京都御苑にやって来た。ようやくサスケにも慣れて来た頃、おとなしくなったところを撫でようと近づいた頼子に悲劇が訪れる。(第13話「ワンコと頼子さん」)
タバコ屋で井戸端会議中の頼子と順子のもとに挨拶に来たのは、タバコ屋の並びのマンションに引っ越して来たという山田麻里だった。岡山から来た麻里は、気難しい住人が多いと噂の京都での暮らしを順調にスタートさせるべく、マンションの並びすべてに挨拶をしようとしていた。そんな麻里に対し順子は、悪戯心から、昔からつまらない事で有名な京都タワーの観光を全力でお勧めする。(第14話「京都のシンボルと頼子さん」)
甘いものでも買おうと、京銘菓の店を訪れた頼子は、スーツ姿の男性、店長から声を掛けられる。京都には出張でやって来たという店長は、パートのおばさん達に渡すための土産を選んでいた。相手側からの要望で、八つ橋以外の京都土産を探していた店長は、頼子に助けを求め、いかにも京都らしいお土産を紹介してもらう。(第15話「観光客と頼子さん」)
第2巻
世界有数の観光地、京都の大通りから一本入った裏通りにある小さなタバコ屋。そこで店番をしている新堂頼子の前に現れたのは、大きな荷物を傍らに、余裕なさげな子連れの女性だった。三人の子供を連れた彼女は、京都に引っ越したという姉のもとを訪ねようと歩いていたが、引っ越し先をメモしたスマートフォンは電池切れになり、道に迷って途方に暮れていたという。唯一耳に残っていた謎のキーワード「アブラノコウジブッコウジ」について頼子に尋ねると、頼子はその場所への行き方を子連れの女性に伝えようと、何か不思議な呪文のようなものを何度となく唱え始める。それは碁盤の目状に交差した、京都の通りの名前を歌にした「通り数え歌」だった。(第16話「不思議な呪文と頼子さん」)
頼子がタバコの配達に訪れたのは、京町屋を改装して新規開店したゲストハウス。そこで顔を合わせたのは、意外にも、先日近所に引っ越して来たばかりの山田麻里だった。麻里は、京町屋を一度は体験してみたいとそのゲストハウスに宿泊していたが、ほかに宿泊客がおらず、寂しい思いをしていた様子で、頼子にいっしょに泊まっていかないかと誘う。宿の斎藤からは、スタッフの教育のためにも泊まっていってほしいとお願いされ、頼子は思いがけず宿泊する事になる。(第17話「京町屋と頼子さん」)
頼子のもとに、友人から3通も同時に結婚式の招待状が届いた。しかしタバコ屋の売り上げが急に増えるはずもなく、金入りとなったこの状況に、頼子は預金通帳を睨みつけていた。この際、何かアルバイトを始めた方がいいのではないかと考えた頼子は、通行人を眺めつつ、どんな仕事が自分に向いているかを想像し始める。(第18話「バイトと頼子さん」)
久しぶりに頼子のもとを訪れたのは、SNS依存のアヤコだった。彼女は、友人であるライトノベル作家、ナガレカワ★ショウを連れてやって来た。彼は、執筆中の中高生向け恋愛小説「ぼっちだけどアンタとは友達になれない」にある、京都を舞台にしたシーンについて、地元民の頼子に意見を求める。(第19話「ライトノベルと頼子さん」)
大学受験を来年に控えた由利とハルは、学業成就のお参りをするために滋賀県からやって来たが、北野天満宮へ行くためのバスに乗り遅れてしまった。頼子は別のバス停を案内をするが、大学に進学する意味が見いだせない由利と、就職のためには大学進学が必要だと考えるハルが、タバコ屋の前でケンカを始めてしまう。見かねた頼子は、彼女達に百万遍へ行く事を勧める。(第20話「受験と頼子さん」)
池上順子から、いっしょにフリーマーケットで出店しないかと誘われた頼子は、自宅にある「きれいで不要なもの」を探し始める。押し入れの中に大量に見つけたのは、元旦がデザインしたブランド物の服。頼子は、苦い結婚生活を思い出しつつ、思い出の品をすべてフリーマーケットで売り払う事を決める。(第21話「フリーマーケットと頼子さん」)
頼子と麻里は、新しくできたオシャレな家具屋に行こうと、車で出かけた。道の狭さや一方通行の多さに、京都の道の走りにくさを痛感しつつ、目的地への行き方を模索していた時、曲がり角で石に車をこすってしまう。石を置いていた扇子屋から出て来た有希は、申し訳ない事をしたと笑顔で対応。そのお詫びにと、頼子と麻里にお茶を飲んでいくように勧める。店内に入ったあと、頼子は有希の話を聞いて突然機嫌を悪くし、すぐに帰ろうと麻里を連れて出て行ってしまう。それは、有希の言葉によそ者を蔑む意味がたくさん含まれていた事に気づいたからだった。(第22話「京都人と頼子さん」)
女子学生の星野は、東本願寺の鳩と戯れたあと、羽根にまみれた状態でタバコ屋に鏡を借りに来た。彼女は、転校して来たばかりで修学旅行に参加しなければならなくなり、知らない人しかいない状況から逃げ出して来たのだ。一人のほうが気楽でいいと言い張る星野に対し頼子は、一人旅に来る女性はたくさんいるが、星野は彼女達のように楽しそうではないと指摘。星野の強がりを見抜いたうえで、仲間と合流するようにうながし、とっておきの場所を教えるのだった。(第23話「お友達と頼子さん」)
頼子のもとに威勢のいいお義父さんが、タバコを買いにやって来た。彼は、自分の娘と結婚の約束をしているという婚約者に連れられて京都へ旅行に来たが、京都の気取った様子が何もかも気に入らなかった。それは、娘との結婚を認めたくない相手との旅である事も理由の一つになっていたが、それでも尚、祇園の店に向かおうとする二人の様子を見て、頼子は究極に気取ったところがないリド飲食街に行く事を勧める。(第24話「お義父さんと頼子さん」)
頼子は、雑誌で京都のおばんざいランチの特集を目にした事がきっかけで、幼い頃母親が作ってくれたおばんざいを思い出した。久しぶりに食べたくなったため、たくさんの材料を買い出し、野菜が主役のおばんざいを手際よく作り始める。(第25話「おばんざいと頼子さん」)
頼子は、京スイーツ巡りがしたいというお義姉さんに連れられて、スイーツ店を巡り歩いていた。兄貴の嫁であるお義姉さんは、底抜けに明るく自由奔放な性格。天然キャラのお義姉さんに振り回されつつ、頼子は京スイーツの代表ともいえる抹茶味のスイーツを連続して食べ歩く。(第26話「京スイーツと頼子さん」)
タバコ屋の近所に住む麻里は、京都に引っ越して来て早3か月。頼子や順子ともすっかりなかよくなり、京都での暮らしにもすっかり慣れて来た。そんな中、麻里と頼子、順子の三人が話し始めたのは、京都に住んでいるとよくある、「京都あるある」について。基本的にネガティブな要素の強い観光客の関連話が続くが、そこへゲストハウスの斎藤も加わって、話は思わぬ方向へヒートアップしていく。(第27話「あるある話と頼子さん」)
第3巻
世界有数の観光地である京都の街角には、小さなタバコ屋があった。ある日、その前を通りかかったのは、大きすぎる荷物にフラフラしながら歩く小柄なバックパッカーだった。彼女は、宿が開くまで2時間の待ち時間を、西本願寺と東本願寺を見比べに行くと、タバコ屋の店番の新堂頼子に話した。見かねた頼子は、バックパッカーの荷物を預かると声を掛ける。(第28話「バックパッカーと頼子さん」)
ある日、なんちゃって文豪はタバコ屋のショーウィンドウに置いてある置物が価値のある物だと、店番の頼子に声を掛けて来た。しかし、それは駅前の100円ショップで購入した大量生産品だった。自分の目利きが間違っていた事にショックを受ける文豪だったが、骨董の目利きを磨くために京都に来たという彼に、頼子は東寺で行われる骨董市へ行く事を勧める。(第29話「骨董品と頼子さん」)
最近頼子は、早朝に自転車でタバコ屋の前を通る男性の古川伸をよく見かけるようになり、気になっていた。ある朝、いつものようにタバコ屋の前を通り過ぎたところで、自転車がパンクした古川は、遅刻ギリギリの時間で立ち往生してしまう。それに気づいた頼子は、すかさず自分の自転車を差し出し、古川はそれを借りる事で事なきを得た。古川の顔を見て、何となく見た事があるような気がしていた頼子は、夜、自転車を返しに訪れた古川が仕事着を着ていた事で、彼が誰なのかを知る。(第30話「なじみのお店と頼子さん」)
頼子は、亡くなったばーちゃんの墓参りのため、真正極楽寺の墓地に来ていた。頼子そっくりの眼力を持つばーちゃんは、はっきりとした厳しい性格だったが、小さい頃から頼子のよき理解者だった。離婚で傷ついて苦しんだ時期も、頼子に睨みを利かせる事を勧め、笑顔に導いてくれた温かい存在だった。頼子は、そんな彼女の在りし日の姿を思い出す。(第31話「ばーちゃんと頼子さん」)
3か月前、夏休みの宿題が終わらず、頼子に泣きついて来た俊介は、自分の代わりに工作を手伝ってほしいと懇願する。見るに見かねた頼子は、龍安寺の石庭を作る事を提案。大きな箱に砂を敷き詰め、俊介オリジナルの石庭を作り始める。(第32話「宿題と頼子さん」)
頼子、池上順子、俊介、山田麻里、有希、古川の六人はひょんな事から、ファミリーレストランでいっしょに食事をする事になった。和やかな食事タイムになるかと思われていた矢先、腹黒い有希からの「どのへんに住んでいるか」という質問に、空気が凍りつく。京都には、京都御所を中心として、どこに何年住んでいるかで人をランク付けするという恐ろしいカーストが存在するからだ。頼子は、そんな古くからの選民思想に捕らわれる事を嫌い、この空気を一掃しようとする。(第33話「暗黙の了解と頼子さん」)
頼子は、お気に入りの店の店員、古川と顔見知りになってからというもの、気恥ずかしさからお店を利用できなくなる。意識的に彼と顔を合わせないように生活する事を心がけていたが、先日ファミリーレストランでいっしょに食事をした際、酒蔵見学に行かないかという古川からの誘いに、頼子はついOKしてしまった。そんな経緯で、京都の酒どころ「伏見」にやって来た二人は、酒蔵見学で試飲を楽しんだあと、ここからが本番とばかりに日本酒の美味しい店へと足を運ぶ。(第34話「お酒と頼子さん」)
順子から、元旦が乗っていた車と同じ車種の車を町内で見かけたという目撃情報を聞いた頼子は、今は赤の他人であると強がりつつも、精神的な圧迫から胃の痛みを訴え始めていた。そんなある日、テレビで嵐山の湯豆腐を見た頼子は、お気に入りの店まで足を運び、豆腐を購入しようとするが、運悪く定休日。なんとか美味しい豆腐を手に入れようと奔走するが、結局近所のスーパーで買って帰って来るはめになってしまう。(第35話「お豆腐と頼子さん」)
麻里は、地元の彼氏、太一が京都へ遊びに来る事になって、すっかり舞い上がっていた。頼子からのアドバイスを受け、鈴虫寺にやって来た麻里と太一は、楽しい時間を過ごしていた。しかし、願いを叶えるお地蔵さまの前まで来た時、太一は、地元を出て、京都へ来てしまった事について麻里を責め始める。(第36話「縁結びと頼子さん」)
毎年正月になると、頼子の実家では年始の挨拶を兼ねた宴会が行われる。付き合いの濃厚な親族がたくさん集まる正月は、頼子や家族にとって大人数をもてなす強制労働の日であり、実家は戦場となっていた。京都ならではのおせち料理に白みそのお雑煮も登場して一層盛り上がりを見せる宴会の最中、コワモテのタクシードライバー、母方叔父が一升瓶を片手に頼子を呼びつけ、説教を始める。(第37話「お正月と頼子さん」)
1月2日、頼子は宴会の合間をみて、叔母や従妹弟を連れて伏見稲荷大社へ初詣にやって来た。そして1月3日、親戚達がそれぞれ帰路に着き、ようやく正月の強制労働から解放される。頼子は、開放感を感じつつも、帰ろうとする自分に何の声も掛けて来ない両親に一筋の期待を込めて見つめ返してみるが、結局何にもならなかった。実は1月3日は頼子の誕生日だったが、それを覚えていてくれる人は毎年誰もいなかった。今年も同様だったと肩を落としつつ帰宅した頼子だったが、帰るなり家のチャイムが鳴り、彼女を訪ねて来た人がいた。(第38話「参拝と頼子さん」)
順子は、「呉服屋」の前で、元旦の乗っていたものと同じ車種の車を見かけた事が気になっていた。そんな中、偶然にも呉服屋を営む川辺のおばあちゃんに遭遇。順子は、最近になって元旦が出入りし始めた事を聞き出す。そして順子は、元旦が京都で一番大きな繁華街、四条にいるらしい事を知るが、頼子は店番をしているだろうと考え、特に鉢合わせする心配はしていなかった。しかし、そうとは知らない頼子は、そんな日に限って古川との待ち合わせのため、四條へと足を運んでいたのだった。(第39話「思い出と頼子さん」)
第4巻
古川伸との待ち合わせの時間まで 鴨川の河川敷に腰を下ろし、暇を潰していた新堂頼子は、偶然にも元旦との再会を果たす。元旦は、飾り気もなく、安価な服に身を包んだ頼子の姿を見て、以前は綺麗だったのにがっかりしたと吐露する。当初は平静を装っていた頼子だったが、一方的で勝手な言い分の元旦に対して静かに反撃を開始し、結婚していた頃の彼の態度の変化に言及する。元旦からの暴言に負けじと最後まで気丈に振る舞った頼子だったが、彼が立ち去ったあと、ようやく合流した古川に、自分に離婚歴がある事を打ち明ける。(第40話「元旦那と頼子さん」)
ある日の早朝、頼子は托鉢のお坊さんの声で目が覚めた。人通りがいつもより少なく感じたその日、交通調査を行ってみようと思いついた頼子は、托鉢のお坊さんの数、タバコを買いに来てくれた客の数と、道案内をしてあげた観光客の数を記録し始める。その結果、一番少ないのは客の数である事が判明。頼子が今後の生活に不安を感じていると、そこに再び托鉢のお坊さんが現れる。そこで頼子は、苦しい時こそ誰かのためにと、お坊さんに施しをしようと思い立つ。そしてそれは、意外な形で彼女のもとに帰って来る事になる。(第41話「托鉢と頼子さん」)
頼子は、タバコを買いに来た母方叔父と金閣寺について話をしていた。実は彼女は、意外にも金閣寺に行った事がなく、テレビや雑誌で十分だと金閣寺を軽んじる。そんな頼子に対し、母方叔父はキレ気味にその素晴らしさを説き、一度は行ってみた方がいいと勧める。その言葉に一念発起した頼子は、交通事情を考慮して、8キロ先の金閣寺まで自転車で向かう事を決める。(第42話「金閣寺と頼子さん」)
例年のごとく、夜間、清水寺をライトアップするためのサーチライトが点灯し始めた。その様子に目をやっていた頼子が、声を掛けられて振り向くと、そこにはちょっと怪しげな格好の男子中学生、坂口が立っていた。彼は、サーチライトを見て、「聖戦の鼓動」「異世界からの信号」などと表現するいわゆる「中二病」であった。頼子は、真実を色気なく語ってしまうほど夢のない大人ではないと、坂口の考え方にのってあげる事を決め、話を合わせ始める。(第43話「サーチライトと頼子さん」)
池上順子の90歳のおばあちゃんは、丸山公園の祇園枝垂桜を見に行くと言ってきかない。頼子と順子で説得を試みるが、どうしても行きたいと言い張るため、急遽三人で丸山公園へ行く事になった。バスに乗り、周囲の人に謝りながらようやくたどり着いた公園の枝垂れ桜は、見事ながらも、昔のような勢いがなくなっている事に気づく。そんな桜の様子を自分に重ねたおばあちゃんは、人の手を借りてまで生きている必要があるのかと悲しみを漏らす。(第44話「円山の桜と頼子さん」)
ある日頼子は、路上でアイドルとして歌を歌ったり、ファンと握手や写真撮影に臨むマキの姿を目撃する。その後、いろんな世界があるものだと感心していた頼子のタバコ屋に、マキがたばこを購入しに現れた。店の前でタバコをふかす彼女の姿に、頼子は思わず「アイドルがタバコを吸っていいのか」と声を掛けてしまう。自分の正体に気づかれていた事を驚きながら、マキは自分の音楽をわかってくれない客から馬鹿にされていると、現状の不満を吐露し始めた。そんな彼女に、頼子は三十三間堂を勧める。(第45話「アイドル?と頼子さん」)
節分のこの日、しばらくぶりに頼子のもとを訪れたのは、頼子が東京で暮らしていた頃になかよくなった元モデルの白井舞だった。舞は、去年産んだばかりの息子と、夫の連れ子の白井小夜を連れていた。小夜は舞を慕っていたが、クラスメイトからの心ない一言がきっかけで、舞と血のつながっていない自分だけが、本当の家族ではない事を気に病んでおり、そのせいで素直になれず苦しんでいた。頼子は、舞達に壬生寺へ行く事を勧めたが、自分が行くと家族水入らずにならないから、といっしょに行く事を拒む小夜を見て、頼子も混ざり、四人で壬生寺の祭りに足を運ぶ事になる。(第46話「節分と頼子さん」)
錦市場に出かけた帰り道、頼子はうっかり有希と顔を合わせてしまった。二人は相変わらずトゲトゲしい会話する事になったが、そこに男性、沢渡が突然有希を訪ねてやって来た。大学の友人だという彼は、有希の社交辞令を真に受け、彼女の店を探して来たと周囲に目もくれず、ずかずかとお店の中に入っていく。そんな沢渡に対して、有希はいつものように「イケズ」全開な言葉を投げかけるが、あけすけで裏表のない性格の彼にはまったく通用しない。それでも負けじと頑張って虚勢を張り続ける有希に、見かねた頼子が助け舟を出す。(第47話「イケズ女と頼子さん」)
順子は少々お節介ながらとてもいい人で、頼子は小学生の頃、彼女からたくさん世話を焼いてもらっていた。小学校低学年の頃、順子は、人見知りで何かと孤立しがちな頼子を率先して自宅まで迎えに行き、学校までいっしょに行く事が日常になっていた。頼子がそんな順子から教えてもらった学校の愉しみ、それは年に1回給食で食べる事ができる「三色ゼリー」だった。時は過ぎ、高学年になってもなお、お節介を焼き続ける順子をうっとおしく思った頼子は、ある時つい本音をぶつけてしまい、順子を傷つけてしまう。(第48話「池上さんと頼子さん」)
山田麻里は、遠距離恋愛中の彼氏、太一から週末の約束をドタキャンされ、素っ気なくされた事で落ち込んでいた。心を空っぽにしたいと、頼子に泣きついて教えてもらったおすすめスポット、京都国際マンガミュージアムを訪れた。そこで、思いがけず懐かしい漫画に再会した麻里は、心が物語で満たされる感覚に、すっかりハマりこんでしまう。(第49話「漫画と頼子さん」)
相変わらずSNSに夢中のアヤコは、久しぶりに京都を訪れた。今回の目的は、パワースポットと呼ばれる下鴨神社の参道の森、糺の森。タバコ屋に寄って、頼子にひとしきり自己主張を済ませたアヤコは、気分を目いっぱい盛り上げて、「神様に逢いたい」と目的地へと向かった。(第50話「パワースポットと頼子さん」)
京都に祇園祭の季節がやって来た。しかし頼子は、暑さと人の多さでゆっくり見る事はできないからと、見に行かない事を心に決めていた。しかし、タバコ屋の前を通るのは、グアムから来た親子をはじめとする、お祭りを匂わせる人ばかり。決意がゆらぎ、少し心がソワソワし始めた頼子は、店を早めに閉め、自宅でテレビ中継を見ようと準備を始める。そんなところに現れたのは、順子とおばあちゃん、俊介だった。祭り帰りの彼らを見た頼子は、結局心が折れ、祭りに向かうのだった。(第51話「祇園祭と頼子さん」)
第5巻
年間約5500万人が訪れる観光地、京都は、旅行カバンを持った人であふれている。宿が多く存在するタバコ屋の近隣では、週末になると特にさまざまなスタイルの旅行カバンを持った観光客がよく見られた。おかげで、店番を務める新堂頼子は、旅行カバンの種類や特徴、それぞれの良し悪しについてとても詳しかった。旅行を快適に楽しむためのコツを、手に余る荷物を持った観光客達に紹介する。(第52話「旅行カバンと頼子さん」)
夜も更けた頃、騒がしくしていた旅行者を注意しに外へ出た頼子は、旅行中の大学生、サトシ、エミ、サキの三人に出会う。高校からの腐れ縁だという三人だったが、よく見れば、エミとサキがサトシを取り合う構図になっていた。それに気づいた頼子は、三人に船岡温泉へ行く事を勧めた。宿泊先のゲストハウスでは、一部屋を三人で利用していたため、温泉で初めて女性だけになり話をするきっかけができたエミとサキは、互いにサトシを狙っている事を口に出し、宣戦布告。火花が飛び散る状況に陥る。(第53話「銭湯と頼子さん」)
頼子は、仏壇からばーちゃん愛用のラジオを発見した事がきっかけで、幼い頃食べた「にしんそば」の思い出が蘇った。にしんそばは京都の名物だが、骨が多いにしんの甘露煮の食感も、見た目も、匂いも、どれをとってもどうしても好きになれなかった。幼い頃祖母に連れられて食べて以来20年以上、にしんそばを嫌いな物として口にしていなかった頼子は、大人になった今なら、京都人として美味しく食べられるようになったのではないかと、にしんそばを食べてみる事を一念発起。祖母の作ったレシピをもとに、にしんそばを作り始める。(第54話「にしんそばと頼子さん」)
以前、金閣寺を訪れてからというもの、観光客に金閣寺か銀閣寺、どちらがお勧めの場所かと聞かれれば、迷わず金閣寺と答えていた頼子は、思い立って銀閣寺にも足を運ぶ事にした。銀閣寺は、地味な佇まいながらも、そこでの生活を想像すると、とても気持ちが豊かになる不思議な場所だった。それをもとに、頼子は「見るなら金閣寺、住むなら銀閣寺」というオリジナルな答えを見つけ出す。(第55話「銀閣寺と頼子さん」)
タバコを買いに訪れた男性、タカの様子がおかしい事に気づき、声を掛けた頼子は、彼がこれからプロポーズを予定している事を耳にする。タカは、21時頃に彼女と京都駅で待ち合わせをして食事を済ませ、「大階段」へ。そこから空中経路へ向かい、夜景の見えるところでプロポーズしようと考えているという。それを聞いた頼子は、プランはばっちりだと緊張でガチガチの彼を見送るが、夜になって不意に、22時以降は空中経路が通れなくなる事を思い出す。古川伸との待ち合わせ時間が迫る中、頼子はタカに忠告すべく、京都駅へと走り出す。(第56話「京都駅と頼子さん」)
北野天満宮へ行った帰り道、頼子は立ち寄った喫茶店で偶然有希と鉢合わせする。いつも口を開けば憎まれ口ばかりの彼女が、ちょっと落ち込んでいる事に気づいた頼子は、彼女の話を聞いてあげる事にした。有希は、京都人への偏見を身に染みて感じる出来事があり、心を痛めていた。頼子に話を聞いてもらって、ある意味彼女らしさを取り戻した有希が自宅へと帰ると、そこには、沢渡がいつもの笑顔で待っていた。(第57話「京都人と頼子さん」)
頼子の店に、母方叔父がタバコを買いにやって来た。タバコの値上がりや禁煙ゾーンの増加により、喫煙者の数がどんどん減っている事を頼子が嘆いている事を知った叔父は、喫煙者がたくさんいるところへ連れて行ってやると、京都競馬場を訪れる。ギャンブルに対して否定的な頼子は、最初気乗りはしなかったが、叔父といっしょに場の空気を楽しむうち、馬券を購入してみる事に決めた。その結果はなんと万馬券。しかし100円しか購入していなかった悔しさが、頼子のやる気に火をつけてしまう。(第58話「競馬場と頼子さん」)
少し前、長年付き合った彼女、リョウコへのプロポーズを無事行う事ができたタカが、再びタバコ屋の頼子のもとを訪れた。プロポーズの返事として、女々しいところ、器の小さいところを直す事が条件に挙げられたため、相談に訪れたのだ。頼子は、そんなタカに不動明王を祀っている法住寺へ行き、「大根焚き」を食べて不動明王の男らしさにあやかる事を勧める。(第59話「不動明王と頼子さん」)
埼玉県から京都に旅行にやって来たひーちゃんは、友人と観光を堪能し、2時間後の新幹線に乗って帰るだけとなっていた。そんな中、時間が余ったからとタバコ屋の頼子に近隣の観光地について話を聞くが、彼女の目つきの怖さに負け、会話もそこそこに逃げるようにその場をあとにする。頼子に勧められた市比賣神社が、思った以上に気に入った二人は、そこで犬の散歩中だった高木と知り合い、頼子の人となりについて、話を聞く事になる。(第60話「世話焼きな頼子さん」)
メディアミックス
TVドラマ
2018年4月から、テレビ愛知にて本作『はんなりギロリの頼子さん』のTVドラマ版が放送された。全4話。新堂頼子役を横山由依、池上順子役を土村芳、TVドラマ版オリジナルキャラクターの山田優一を中尾暢樹が演じた。
登場人物・キャラクター
新堂 頼子 (しんどう よりこ)
京都に住む女性。祖母から引き継いだ小さなタバコ屋で店番をしながら、時々やって来る観光客の世話を焼いている。人見知りで目つきが悪く、口調もぶっきらぼうなため、愛想のない印象を与えがち。これらはすべて照れ隠しゆえであり、実はおせっかいで気遣いのできるいわゆるツンデレ。かつて元旦と結婚していたことがあるが、現在は離婚。 もともとは京都弁をしゃべっていたが、当時の結婚生活で心に負った傷のため、現在は京都弁が使えずにいる。フランス語をはじめとして、さまざまな外国語を話すことができる。それは外国人観光客に対応できるように努力を重ねた結果である。犬が苦手。
フランス人カップル (ふらんすじんかっぷる)
エピソード「第1話 観光地の頼子さん」に登場する。京都に観光に来ているフランス人の男女2人組。自分たちが泊まる予定のホテルの場所がわからず、迷子になっていたところ、店番中の新堂頼子を見つけ、道を尋ねる。彼女の迫力にたじろぎながらも、道案内してくれた頼子の親切心に感謝する。
久美子と連れ (くみことつれ)
エピソード「第2話 地元のお店と頼子さん」に登場する。京都に観光に来ている女性2人組。雑誌に掲載されているおまんじゅうとおはぎの有名店「今北軒」を探していたところ、店番中の新堂頼子を見つけて場所を尋ねる。しかし時間が遅すぎたため、目的のおはぎを手に入れられず、翌日改めて出直すことになる。
修学旅行生 (しゅうがくりょこうせい)
エピソード「第3話 修学旅行生と頼子さん」に登場する。修学旅行で京都を訪れている中学生の男女5人組。清水寺に向かう途中でタバコ屋を見つけ、妙にはしゃぎながら新堂頼子に絡み、勢いにまかせてタバコを購入しようとする。
カメラ小僧 (かめらこぞう)
エピソード「第4話 舞妓と頼子さん」に登場する。本物の舞妓をカメラに収めるために京都にやって来た男性。しかしどこへ行ったら本物の舞妓がいるかが分からず、通りかかったタバコ屋で新堂頼子に尋ねる。そこで、舞妓体験をしている観光客と、本物の舞妓の違いについてレクチャーを受ける。
着物のカップル (きもののかっぷる)
エピソード「第5話 カップルと頼子さん」に登場する。2泊3日で京都に観光に来ている男女2人組のカップル。着物で観光を楽しもうとしていたが、彼女の無茶な計画に彼氏が機嫌を悪くし、険悪な状態になってしまう。タバコを買いに店に立ち寄ったところで、新堂頼子と知り合う。
じいさん
エピソード「第6話 お寺の堀と頼子さん」に登場する。東本願寺の堀をのぞき込んでいた初老の男性。自分の息子がまだ小さかった頃に、祭ですくってきたカメをこの堀に放したことがあり、そのカメの行く末を案じて、いまだに堀をのぞいては、カメを探す癖がついている。
少年 (しょうねん)
エピソード「第6話 お寺の堀と頼子さん」に登場する。2匹の金魚を持って東本願寺の堀に現れた男の子。自宅で飼いきれなくなった出目金と和金を堀に放しに来た。本当は気が進まなかったが、「東本願寺の堀なら、仏様が守ってくれる」という友達の助言を信じ、放流しようとしたところを、じいさんに止められる。
鳥居 信一
エピソード「第7話 神頼みと頼子さん」に登場する。埼玉県で、小さな店の店主を務める男性。独立して手に入れた自分の店が繁盛するようにと、神頼みに訪れた伏見稲荷大社の千本鳥居前で新堂頼子と知り合う。2つのルートのどちらで頂上に向かうか悩んだり、絵馬を買うかどうか悩んだりと、選択肢が発生するたびに、どうすべきかを必要以上に迷っている。
池上 順子 (いけがみ じゅんこ)
エピソード「第8話 幼なじみと頼子さん」に登場する。新堂頼子とは幼い頃からのご近所さんで、幼なじみの女性。昔からよく無茶をするタイプだが、結婚・出産の後、離婚して戻って来た。それからというもの、頼子を頼って来ることが多く、何かにつけて「一生のお願い」を連発する。
おばあちゃん
第44話「円山の桜と頼子さん」、第51話「祇園祭と頼子さん」に登場する。池上順子の祖母。いつもニコニコ笑顔の90歳。耳も遠く、足もだいぶ弱くなってしまい、トイレに立つのも難しい状況。しかし本人は心配する周りの事などお構いなし。思い立ったら行きたいところへ行こうとし、周りが止めても聞こえないふりの頑固者。今回は丸山公園の祇園枝垂桜を見に行くと決め、順子や頼子の手助けを得て現地へと向かった。
俊介 (しゅんすけ)
エピソード「第8話 幼なじみと頼子さん」に登場する。池上順子の息子で、よくしゃべる小学校2年生。仕事を休めない母親の代わりに、新堂頼子と2人で「五山の送り火」を見に行くことになる。頼子を慕っており、次の彼氏に立候補する。
アヤコ
エピソード「第9話 SNSと頼子さん」に登場する。SNSにどっぷりはまっている眼鏡をかけた女性。SNSに依存し、旅行に来た京都での写真やつぶやきを、SNSにアップして自己表現している。タバコ屋を写真に撮ったことで新堂頼子と知り合い、考え事に適しているからと、「哲学の道」を紹介される。これをきっかけに、その後ハガキをやり取りする仲になる。
元旦 (もとだん)
エピソード「第10話 おそうじと頼子さん」に登場する。新堂頼子と結婚していた元夫で、本名は不明。東京の有名服飾ブランド「ブラックスープ」のデザイナーを務めている。関西人に対して偏見を持っており、京都弁を使う頼子に対し、みっともないと方言を止めるように提言。他にも、自分の考えを笑顔で押し付けるなど、DV気質だが外面はいい。
兄貴 (あにき)
エピソード「第12話 お酌と頼子さん」に登場する。新堂頼子の兄。出張ついでに帰省し、頼子と待ち合わせして、しばらくぶりに一緒にお酒を飲むなど、京都の夜を満喫した。頼子の人となりをよく把握しており、外国人観光客とトラブルになりそうなところに助け舟を出す。以前、頼子の夫だった元旦を殴ったことがある。
外国人3人組 (がいこくじんさんにんぐみ)
エピソード「第12話 お酌と頼子さん」に登場する。京都に観光に訪れていた外国人観光客の男性3人組。料理屋で、メニューの意味が分からず困っていたところを、英語が堪能な新堂頼子に助けられる。しかし頼子がつい口にした一言から、互いの食文化についてトラブルになりかける。
高木 (たかぎ)
エピソード「第13話 ワンコと頼子さん」に登場する。飼い犬の「サスケ」の散歩をしている足の悪いおばあさん。若くてヤンチャなサスケのあり余る体力に引きずられて困っていたところで、新堂頼子と知り合う。頼子にサスケの散歩を手伝ってもらうことになる。
山田 麻里 (やまだ まり)
エピソード「第14話 京都のシンボルと頼子さん」に登場する。タバコ屋の並びにあるマンションに引っ越して来た岡山出身の女性。通りの並び全件に引っ越しのあいさつ回りをし、それがきっかけで新堂頼子と池上順子と知り合う。
太一 (たいち)
第36話「縁結びと頼子さん」「第49話 漫画と頼子さん」に登場する。山田麻里の彼氏。麻里の地元でもある岡山に住んでいるが、麻里に会いに日帰りで京都へやって来た。会社の異動の話を受けて自分と離れ、京都へ来てしまった麻里を責めるように、早く戻って来てほしいと伝えた。帰る間際、麻里を冷たく突き放したものの、涙する麻里の様子にほだされ、京都通になるくらい麻里のもとへ通う決心をする。
店長 (てんちょう)
エピソード「第15話 観光客と頼子さん」に登場する。出張で京都に来た男性。会社のパートのおばさんたちに、出張のたびにお土産として、生八つ橋を買って帰っていたところ、「次は生八つ橋以外で」というリクエストを受けた。お土産選びに苦手意識を持っていたため、偶然近くにいた新堂頼子に声をかけ、お土産選びを手伝ってもらう。
子連れの女性 (こづれのじょせい)
エピソード「第16話 不思議な呪文と頼子さん」に登場する。3人の子供を連れた余裕なさげな女性。京都に引っ越したという姉の顔を見がてら観光にやって来た。姉の引っ越し先をメモしたスマートフォンの充電が切れ、途方に暮れていた。頭の中に残っていた「アブラノコウジブッコウジ」という言葉だけを頼りに、新堂頼子に道を尋ねる。
斎藤 (さいとう)
エピソード「第17話 京町屋と頼子さん」「第27話あるある話と頼子さん」に登場する。京都の町屋を改装し、新装開店したゲストハウスのオーナーを務める男性。ゲストハウスという業務上、タバコの入荷は必須と考えた新堂頼子の売り込みを受け、頼子のタバコ屋の大口の固定客となった。表具師としての顔も持っている。
ナガレカワ★ショウ
エピソード「第19話 ラノベ作家と頼子さん」に登場する。新進気鋭のライトノベル作家を自称する男性。個性的なセンスを持った自信家。執筆中の中高生向け恋愛小説で、京都を舞台にしたシーンについて、現地を良く知る新堂頼子に意見を求めるため、友人のアヤコとともに訪れる。
由利 (ゆり)
エピソード「第20話 受験と頼子さん」に登場する。来年に大学受験を控えた女子高校生。合格祈願のためにハルとともに北野天満宮に行こうとしていたが、バスに乗り遅れて困っていたところで新堂頼子と知り合う。成績は優秀だが、大学に目的もなく進学することに意味を見出せず、このまま受験していいのか迷っている。
ハル
エピソード「第20話 受験と頼子さん」に登場する。来年に大学受験を控えた女子高校生。合格祈願のために由利とともに北野天満宮に行こうとしていたが、バスに乗り遅れて困っていたところで新堂頼子と知り合う。大学進学を希望したのは、将来就職する時に不利にならないように、と考えてのものだった。優秀な頭脳を持っていながら、大学受験に対して後ろ向きな由利に、苛立ちを隠しきれない。
有希 (ゆき)
エピソード「第22話 京都人と頼子さん」に登場する。京都の扇子屋の主人を務める女性。扇子屋の敷地にあるイケズ石に、山田麻里が車をぶつけたことをきっかけに知り合う。物腰の柔らかい女性らしい人物だが、言葉の端々に裏の意味を込め、密かに相手を馬鹿にした話し方をする厄介者。
星野 (ほしの)
エピソード「第23話 お友達と頼子さん」に登場する。修学旅行中の女子学生。転校したばかりで修学旅行に来たため、友達もおらず1人で京都を回っていた。動物好きで、東本願寺の鳩と戯れてボロボロになり、新堂頼子のタバコ屋に鏡を借りにやって来る。1人を好むような口ぶりだが、実際は友達と一緒にいたかった寂しがり屋。
お義父さん (おとうさん)
エピソード「第24話 お義父さんと頼子さん」に登場する。娘の「桜子」と結婚を約束しているという婚約者に連れられて、京都に観光に訪れた男性。娘を大事に想うあまり、婚約者との結婚を許せないでいる。そのうえ、彼の誘いで京都を巡ったが、あまり良いことがなく、京都の人ともそりが合わずに機嫌が悪くなっている。
婚約者 (こんやくしゃ)
エピソード「第24話 お義父さんと頼子さん」に登場する。「桜子」という女性と結婚を約束している男性。桜子の父親であるお義父さんに結婚を許してもらおうと京都旅行を計画するが、裏目に出てばかりで、うまく行かずに困っている。
お義姉さん (おねえさん)
エピソード「第26話 杏スイーツと頼子さん」に登場する。兄貴の妻で、新堂頼子にとっては義姉にあたる。年齢は頼子の2つ年下。底抜けに明るく、ちょっと強引で、いつも笑顔で人を巻き込む。夫の出張に付いて京都を訪れ、京スイーツ巡りがしたいと、頼子を引っ張ってお店を巡り歩く。
古川 伸 (ふるかわ しん)
錦市場にある、新堂頼子の行きつけでありお気に入りの店、揚げ物屋「ハナマス」の従業員の男性。早朝、頼子のタバコ屋の前を通勤のためによく自転車で通っていた。ある時、自転車がパンクし、タバコ屋の前で立ち往生していたところを頼子に助けてもらった事がきっかけで、話をしたり、いっしょに出掛けたりするようになる。頼子に思いを寄せている。
バックパッカー
第28話「バックパッカーと頼子さん」に登場する。お団子ヘアの外国人女性。自分の前後に大きな荷物を背負って、さまざまな地を転々と旅しているいわゆるバックパッカーと呼ばれる旅行者。英語を話すが、かなりのおしゃべり。身長143センチと小柄で、大きな荷物でフラフラしていたところ、新堂頼子に声を掛けられ、頼子に荷物を預かってもらう事になる。 予約した宿があと2時間待たないと開かないため、その待ち時間のあいだに西本願寺と東本願寺を見比べようと足を運ぶ。
なんちゃって文豪 (なんちゃってぶんごう)
第29話「骨董品と頼子さん」に登場する。一見して文豪のようなたたずまいの男性。東京の本郷から、骨董の目利きを磨くために京都へやって来た。何でも知ったかぶりをする。新堂頼子からの情報を受けて、東寺で行われる骨董市へと足を運ぶが、見るものすべて自分が思う価値とは正反対の結果ばかり。すっかり自信をなくしてしまうが、頼子の助言により、自分が思ったものとは反対の意見をいう事で、骨董の価値をぴたりと当てる事ができるようになる。
ばーちゃん
第31話「ばーちゃんと頼子さん」に登場する。新堂頼子の祖母。もともとタバコ屋でいつも一人で店番をしていたが、体を壊し、入院。病床で、頼子に対し、住んでいた自宅を好きにしていい、タバコ屋は続けてくれたら嬉しいと言い残し、秋には帰らぬ人となった。生前、まだ小さかった頼子に、「女は愛嬌、笑顔はみんなを幸せにする」と教えたが、離婚して出戻り、傷ついた頼子に対しては、「オトコも嫌な事も嫌な自分もぜんぶその目で睨み殺してしまえ。 愛嬌なんかクソくらえ」と教えた。もともと頼子とそっくりな眼力を持ち、憎まれ口をたたいていたが、頼子のよき理解者だった。真正極楽寺の墓地に眠っている。
母方叔父 (ははかたおじ)
第37話「お正月と頼子さん」、第42話「金閣寺と頼子さん」、第58話「競馬場と頼子さん」に登場する。パンチパーマで強面のタクシードライバーの男性。新堂頼子にとって、母方の叔父にあたる。正月、頼子の実家で行われた宴会で、一升瓶を片手に頼子に説教を始めた。いつまで続けられるかわからないタバコ屋をダラダラと続けている事や、離婚して2年経つならきちんと仕事をみつけて再婚も考えなければいけない事を頼子に諭す。 離婚については、誰もが頼子を腫れもの扱いする中で、母方叔父だけが歯に衣着せず接しており、頼子にもそんな姿勢を好もしく思われている。
明日香 (あすか)
第37話「お正月と頼子さん」、第38話「参拝と頼子さん」に登場する。新堂頼子の従妹にあたる、中学2年生の女の子。ちょっとおませさんで、現在付き合っている彼氏がいる。親が不在の間に自宅に招いた事があると頼子に可愛くカミングアウトしたが、こっぴどく怒られた。
川辺 (かわべ)
第39話「思い出と頼子さん」に登場する。着物の誂え、制作、販売を行っている「呉服屋」のおばあちゃん。店は繁盛し、忙しいが、足を悪くしている事もあって、お払い箱となって久しい。昔、京都のデザイン会社に勤めていた元旦に、呉服の勉強をさせてあげていた事があった。しかし、東京に出て仕事のめどが立って以降、彼からまったく音沙汰がなくなった事を怒っている。 そのため、最近になって、また急に出入りし始めている元旦を信用できないと公言している。
坂口 (さかぐち)
第43話「サーチライトと頼子さん」に登場する。京都へ修学旅行に来ている男子中学生。夜、かなり怪しげな格好で街中を一人で歩いていた時、偶然出会った新堂頼子に話し掛けた。清水寺をライトアップするためのサーチライトを見て、「聖戦の鼓動」「異世界からの信号」と言うなど、非日常にあこがれを持つかなり夢見がちなタイプ。
マキ
第45話「アイドル?と頼子さん」に登場する。シンガーソングライターを自称しているが、現在は路上でアイドル活動を行っている女性。可愛らしい外見から、未成年の様に見えるが、れっきとした大人。もともとは路上で歌を歌っていたが、誰にも聞いてもらえなかったため、友人からの助言を受けて、ミニスカートなどのかわいい恰好で意識的に通行人の目を引くようになった。 それ以降、歌う以外に、握手や写真撮影などを行うようになり、お客さんは増えたものの、音楽を理解してくれる人は減ったと嘆いている。そんな経緯もあり、現在の自分のファンを馬鹿にしている部分がある。
白井 舞 (しらい まい)
第46話「節分と頼子さん」に登場する。東京の麻布在住の女性。元モデルで、新堂頼子とは東京で結婚生活を送っていた時に知り合い、頼子の離婚後も連絡を取り合っている。昨年初めての息子・優斗を出産し、現在は子育てに忙しい日々を送っている。夫の前妻は亡くなり、連れ子にあたる白井小夜にも分け隔てなく愛情を注いでいる。今回は、夫の仕事の都合で急遽京都への旅行が決まり、小夜と優斗を連れて、頼子のもとを訪れた。
白井 小夜 (しらい さよ)
第46話「節分と頼子さん」に登場する。小学生の女の子。実母を亡くし、後妻としてやって来た白井舞の事は大好きだが、クラスメイトから、新しいお母さんとは本当の家族ではないと言われた事を気にして、舞に対して素直になれなくなってしまった。舞と似ていない事に敏感になっている。
沢渡 (さわたり)
第47話「イケズ女と頼子さん」に登場する。有希と同じ大学で、同じゼミの男子生徒。京都府外出身で、ちょっと変わり者。あけすけで裏表のない性格。よく言えば無邪気で自由奔放だが、悪く言えばノーテンキでおめでたい、空気が読めない人。有希がどんなに言葉の裏に悪意を隠していても、まったくそれに気づこうともしない。
グアムから来た親子 (ぐあむからきたおやこ)
第51話「祇園祭と頼子さん」に登場する。グアムから、祇園祭に参加するために観光にやって来た親娘三人連れ。浴衣をしっかりときれいに着ており、下駄を履いている。タバコを買いに新堂頼子のもとを訪れた際、後々足が痛くなるからと忠告を受けるが、地元ではいつもサンダルを履いているから問題ないと頼子が差し出した絆創膏を受け取らなかった。
サトシ
第53話「銭湯と頼子さん」に登場する。サキとエミと三人で京都に観光旅行にやって来た男子大学生。大学では日本史を専攻している。旅行のプランはサキと二人で練った。三人の関係は、高校時代からの腐れ縁で、自分を中心にずっとこのままつるんでいきたいと考えており、二人とは別に彼女も存在する様子。京都の町を夜の散歩に出かけた際、住宅地で騒がしくし過ぎた事で新堂頼子に注意を受けた。 タバコ屋の近くにあるゲストハウスに宿泊しているが、三人で狭い一部屋を使っている。頼子から勧められ、船岡温泉を訪れる。
エミ
第53話「銭湯と頼子さん」に登場する。サキとサトシと三人で京都に観光旅行にやって来た女子大学生。大学では建築科に在籍している。三人の関係は、高校時代からの腐れ縁だが、サトシに思いを寄せており、この旅行でなんとか一歩前進したいと考えている。京都の町を夜の散歩に出かけた際、住宅地で騒がしくし過ぎた事で新堂頼子に注意を受けた。 タバコ屋の近くにあるゲストハウスに宿泊しているが、三人で狭い一部屋を使っている。頼子から勧められ、船岡温泉を訪れた際、サトシへの気持ちに関してサキから宣戦布告を受け、受けて立つ。
サキ
第53話「銭湯と頼子さん」に登場する。サトシとエミと三人で京都に観光旅行にやって来た女子大学生。大学では日本史を専攻している。旅行のプランはサトシと二人で練った事を強調している。三人の関係は、高校時代からの腐れ縁だが、サトシに思いを寄せており、この旅行で一歩前進したいと考えている。京都の町を夜の散歩に出かけた際、住宅地で騒がしくし過ぎた事で新堂頼子に注意を受けた。 タバコ屋の近くにあるゲストハウスに宿泊しているが、三人で狭い一部屋を使っている。頼子から勧められ、船岡温泉を訪れた際、サトシへの気持ちに関してエミに宣戦布告する。
サラリーマン
第55話「銀閣寺と頼子さん」に登場する。出張で京都を訪れたサラリーマン男性。仕事が早く片づいたため、観光もしようと思い立ち、タバコ屋でタバコを買うついでに、新堂頼子に金閣寺と銀閣寺のどちらがお勧めかを聞いた。ものすごい勢いで金閣寺をお勧めされたが、その1か月後、今度は京都への転勤が決まり、引っ越し先の下見に訪れた。 そこで再びタバコ屋を訪れ、頼子に「住むならどこに住みたいか」と問い、「銀閣寺に住みたい」という理解を超えた回答をされる事になる。
タカ
第56話「京都駅と頼子さん」、第59話「不動明王と頼子さん」に登場する。頼子のタバコ屋にタバコを買いに来た男性。お釣りと買ったものを全部置いて行くなど、あまりにもぼーっとしていたため、新堂頼子から心配された。実は長く付き合った彼女・リョウコへのプロポーズを京都で予定しているが、緊張しすぎて心ここにあらずの状態になってしまっていた。 頼子の努力により、プロポーズは無事済んだものの、その返事にまた頭を痛める事になる。女々しくて器が小さく、細かい性格。
リョウコ
第59話「不動明王と頼子さん」に登場する。タカの彼女。人見知りを理由に店員への注文を人任せにする事や、少額のクーポンで大騒ぎするなど、タカのダメさ加減に嫌気がさしている。少し前にタカからプロポーズを受けたが、女々しく器が小さいところへの不満を爆発させ、それらを直す事を条件に、結婚を考えると返事をした。
ひーちゃん
第60話「世話焼きな頼子さん」に登場する。埼玉県から友人と二人で京都へ観光旅行に来ていた女性。観光を終え、帰りの新幹線の時間まで2時間空いていたため、近所の観光地を求めてタバコ屋の新堂頼子のもとを訪れた。頼子の目つきがあまりにも怖かったため、お勧めの観光地を聞いてすぐ、逃げるようにその場をあとにしたが、市比賣神社で飼い犬サスケの散歩に来ていた高木から、頼子についての話を聞いて、彼女を誤解していた事に気づく。 その後、頼子にお土産を購入し、友人と共に再び頼子のタバコ屋を訪れる。