妖精が見える人間は疎まれる国
騎士のルークスとクローニア姫が生まれた国には、至るところに妖精が存在している。しかし、多くの人々は妖精の存在を信じようとせず、妖精の姿が見える者を気味悪がる風潮さえあった。特に王妃から疎まれていたクローニアは、妖精を見ることができるものの、王城での生活では自分の好きなことややりたいことをすべて否定され、心を傷つける日々を送っていた。しかし、北領の古城へ移り住んだことで、ようやくその抑圧から解放される。そして、同じく妖精を見ることができるルークスと出会い、彼と共に妖精たちを助けながら、新たな生活を心から謳歌(おうか)していく。
妖精専門の家職人、クローニアの決意
ルークスの後押しと、古城に住む炎の精霊、ドラピュールの承認を得て、クローニアは「妖精専門の家職人」になることを決意した。彼女は妖精たちが大切にしているものや、一つひとつの思い入れを丁寧に汲み取り、その妖精に最もふさわしい家を次々と築き上げていく。その過程で、ほかの王族から疎まれる中、唯一自分を守ってくれていた姉姫のリアナの真意を知って和解し、さらに一層精力的に家づくりに邁進する。
クローニアを邪魔する王妃の存在
騎士と姫というぎこちない関係から始まった二人は、共に行動するうちに絆を深め、ついには正式に婚約を交わすことになる。しかし、周囲との人間関係が良好になる一方で、思いがけない事実も明らかになる。クローニアが北領へ移住した当初、王妃は領主のモルデブラントに対し、「クローニアへのいっさいの援助を禁ずる」という冷酷な命令を下していたのだ。さらに、モルデブラントには監視者がつけられていたため、彼がクローニアを密かに支援するには、一見嫌がらせのように見える遠回しな手段を取らざるを得なかったことが判明する。なぜ王妃がここまでクローニアを疎んじるのか、そして二人が王妃の嫌がらせをどのように乗り越えていくのかが、本作の大きな見どころとなっている。
登場人物・キャラクター
ルークス
騎士の青年。年齢は23歳で、金髪に碧眼(へきがん)を持つ。貴族の父親と使用人の母親のあいだに私生児として生まれ、義母や義兄たちから虐待を受けて育ったため、貴族に強い嫌悪感を抱いている。王からクローニア姫との婚約話を持ちかけられた際も、「権力と富を振りかざすわがままな姫」に違いないと決めつけ、わざと嫌われるような行動をとって姫から婚約を断らせようと画策していた。また、妖精の姿が見え声を聞くことができるという稀有(けう)な能力を持ち、それゆえに過去には周囲から気味悪がられ、疎外された苦い経験もある。やがてクローニアと出会い、彼女の飾らない本当の姿に触れることで強く惹かれていく。まずは「騎士」としてクローニアに仕えたいと申し出て、共に北領の古城で暮らし始めるようになる。
クローニア
王国の第七王女。年齢は15歳で、ピンク色の長い髪と緑色の瞳が印象的な少女。死産として生まれ、埋葬される直前に息を吹き返すという壮絶な過去を持つ。常人には見えない妖精の姿が見えるため、王城の家臣たちからは気味悪がられ、心に深い傷を負っている。そのため王城には馴染めず、現在は北領にある古城で一人暮らしをしている。かつてルークスに救われたことがあり、その時から彼に淡い好意を抱き、やがて夫になってほしいと望むようになる。手先が器用で、幼い頃から妖精のために小さな家具を作ることを趣味としている。ある日、植物の妖精から「ティーポットを利用した家を作ってほしい」と依頼を受けたことがきっかけで、「妖精専門の家職人」としての道を歩み始めた。また、古城に住む炎の精霊、ドラピュールとは、妖精のための家を作り続けることで、この古城もかつての輝かしい姿を取り戻すだろうと約束を交わしている。
書誌情報
ひねくれ騎士とふわふわ姫様 古城暮らしと小さなおうち 3巻 スクウェア・エニックス〈ガンガンコミックス〉
第1巻
(2024-05-11発行、978-4757591851)
第2巻
(2024-11-12発行、978-4757595125)
第3巻
(2025-07-11発行、978-4757599512)








