あらすじ
第1巻
妖精国、リングフォールドに住むメルセデスは、母親で女王のエルファリアに大切に育てられ、何の不自由のない、幸せな日々を過ごしていた。しかしある日、軍事大国、ラグナネイブルの魔王、オーダインが、大軍を率いてリングフォールドを襲撃。その狙いは、リングフォールドが所有する、フォゾンを集めることができるこの世に唯一の大釜、コルドロンを手中におさめることであった。エルファリアは身を呈してメルセデスや民を守るために戦う中で命を落とし、コルドロンもオーダインに奪われてしまう。
第2巻
新女王となったメルセデスは、エルファリアの形見である弓矢を手に、妖精国、リングフォールドを再興するため旅立とうと決意。だがそんな中、今まで家臣として仕えていた政務官にして従兄のメルヴィンはメルセデスを裏切り、リングフォールドを我が物にしようとクーデターを起こす。剣士、オズワルド、魔術師、ベルドーといったリングフォールドの錚々たるメンバー達もメルヴィン側につき、メルセデスの旅を妨害するため、彼女の前に次々と立ちはだかる。
登場人物・キャラクター
メルセデス
妖精国、リングフォールドの女王。金色の長髪を左右に分けて三つ編みにしていて、頭部に白い花飾りを付けている。妖精族のため耳が尖っており、瞳の色が赤い。小柄で華奢な体型をしており、胸元に赤い宝石の付いた白いドレスを着用している。背中には緑色の蝶のような羽根を生やしており、飛行することが可能。先代の女王である母親、エルファリアを軍事大国、ラグナネイブルの魔王、オーダインとの戦いで亡くしてしまう。 その後、幼い身でありながら母親の形見の弓矢をあやつり、オーダインに奪われた、この世に唯一のフォゾンを集めることができる大釜、コルドロンを奪還するべく、さまざまな困難に立ち向かっている。我がままで子供扱いされるのを嫌い、自分勝手な面も多々あるが、正義感が強く、民を傷つける者は決して許さない。 リングフォールドの政務官のメルヴィンはメルセデスの従兄にあたる。
エルファリア
妖精国、リングフォールドの先代女王。金色のロングヘアで、前髪を左右に分けており、頭部に緑色の花飾りを付けている。妖精族のため耳が尖っており、瞳の色が赤い。草花のあしらわれた緑色のドレスを着用している。背中には緑色の蝶のような羽根を生やしており、飛行することが可能。魔力、智力、統率力に富み、その美貌と知性で民から信頼され、永く妖精国をおさめていた。 しかし、軍事大国、ラグナネイブルが、この世に唯一のコルドロンを狙って国内に侵入して来た際、娘のメルセデスや民を守るために戦った末に、命を落としてしまう。弓の使い手で、フォゾンを溜め込める弓矢で激しい爆発を起こす「フォゾンバースト」が得意技。生前はコルドロンをあやつることのできる唯一の鍵、ティトレルの指輪を身につけ、コルドロンを管理していた。 政務官としてエルファリアに仕えているメルヴィンは、自身の甥にあたる。
メルヴィン
妖精国、リングフォールドの政務官を務める妖精族の男性。金色の長髪で背が高く、耳が尖っていて長い鼻、赤い瞳を持つ。胸元が大きく開いた白いシャツの上からロングコートを着用している。メルセデスの従兄で、捨て子だったオズワルドの育ての親でもある。頭脳明晰な知将として有名なリングフォールドの重鎮。その紳士的な振る舞いにより、メルセデスをはじめとする周囲の者達や民に敬わられ、信頼されている。 叔母にあたる女王、エルファリア亡き後、リングフォールドを我が物にしようとクーデターを画策している。
オズワルド
妖精国、リングフォールドの男性剣士。白髪で、黒く重厚な鎧を身にまとう。妖精族のため耳が尖っており、瞳の色が赤い。冥界の女王「オデット」と契約した、最恐の武器と畏怖されている魔剣を所持している。剣の腕は一流で、一人でホルン山に棲む竜を退治してしまうほどの腕前。新女王のメルセデスからは、無口で無愛想な性格と評されていて、あまりいい印象を抱かれていない。 捨て子だったところをメルヴィンに育てられた。メルヴィンのためならば、死すらも恐れずに剣を振るうほどに忠誠を誓っている。
ベルドー
妖精国、リングフォールドの老魔術師の男性。小柄で、長い白髪と白い髭に顔中が覆われていて、鼻が長く、不揃いな歯をしている。黒いとんがり帽子を目深にかぶり、黒いローブを着用し、黒いマントを身につけている。フォゾンを調合してさまざまな薬品を作り出せるほか、守護竜、ベリアルに呪縛をかけて、巧みにあやつることができる竜使いでもある。 力や権力を持つ者に対しては絶対的な服従をする性格で、先代女王のエルファリアに永く仕えていた。軍事大国、ラグナネイブルの魔王、オーダインから国を攻められて、エルファリアが命を落としてからは、新女王のメルセデスには仕えず、メルヴィンの画策しているクーデターに協力している。
マシュウ
妖精国、リングフォールドの執事をしているドワーフ族の男性。小柄で、白髪と白い髭に顔中が覆われていて、先端に葉っぱの付いたとんがり帽子を目深にかぶり、シャツの上からロガーベストをベルトで締めて着用している。先代女王のエルファリアに仕えていた頃から、新女王、メルセデスの世話係をしていて、メルセデスからは「爺や」と呼ばれて懐かれている。 軍事大国、ラグナネイブルの侵攻に際してエルファリアが命を落としてからは、新女王となったメルセデスの妖精国の再興を目的とする旅に協力するため、味方を集めて旅の手助けをしている。世話好きで心配性な性格をしており、メルセデスが危険に見舞われるたびに気を揉んでいる。
ブロム
鍛冶職人のドワーフ族の男性。小柄で、頭頂部に一束だけ白髪が生えていて、顔の下半分を覆うくらいの白い髭を蓄え、白い半そでシャツの上から前掛けをかけている。つねに口にパイプを咥えているのが特徴。オズワルドが所持している魔剣を造った張本人で、ほかにもさまざまなサイファーを造っている。オズワルドがこのまま魔剣を振って殺生を続けていくと命を落とすことになると、オズワルドに忠告をするが、メルヴィンに捕らえられてしまう。
オーダイン
軍事大国、ラグナネイブルを率いる魔王。大柄な体躯を鎧で覆い、頭部には仮面を付けていて素顔は見えない。星柄のマントを首に巻いていて、先端に大きな刺のある鉄球の付いた黒い鎖を手に持っている。竜の鱗すらパンのように容易く切り裂くことができるといわれている大陸最強の魔剣「邪眼バロール」の所持者で、近隣の国からは「魔王」と呼ばれて恐れられている。 この世に唯一のフォゾンを集めることができる大釜、コルドロンを手中におさめるべく、大軍を率いて妖精国、リングフォールドを襲撃した。目的のためならば多くの犠牲者が出ることもいとわない、冷酷で残忍な性格をしている。
蛙 (かえる)
呪いで蛙の姿に変えられてしまっている男性。一般的な蛙とは違い、二足歩行で歩き、人間の言葉を話す。肩にショルダーバッグをかけている。イルリットの森で橋から落ちて大怪我をしそうになった妖精国、リングフォールドの女王、メルセデスを助けたことをきっかけに、メルセデスの旅の仲間になる。明るく前向きな性格だが、お調子者で気分屋なところもある。 しかし、メルセデスに危険が迫ると、蛙ながらも体を張ってメルセデスを助けるなど、勇敢な一面も持つ。
不審な女 (ふしんなおんな)
妖精国、リングフォールドに単身侵入した女性。長髪の頭に星のデザインが施された黒い帽子をかぶり、星型のデザインが施された大きな頭巾で覆っている。黒くて先端に刃の付いた長い鎖を身につけていて、この鎖を自在にあやつってリングフォールドに侵入した。一方で殺生は好まず、あくまでもエルファリアが身につけている、大釜、コルドロンをあやつるための唯一の鍵、ティトレルの指輪を盗むことを目的としている。
ベリアル
「守護竜」と呼ばれている竜。人の何倍もの体躯を持ち、頭部に二本の角が生えていて、両手両足に鋭い鉤爪がある。人間を信じたがために魔術師、ベルドーに心臓を縛り上げる呪縛をかけられ、下僕として使われるようになった。口の中には鋭い牙が生えていて、素早い動きで獲物に嚙み付いたり、フォゾンで生成された魔弾を喰らって吸収することができる。
場所
リングフォールド
妖精族達が住んでいる妖精の国。エリオン大陸の南に位置し、樹々や花々に囲まれた自然豊かな美しい国。魔法大国のバレンタインで作り出された、この世に唯一のフォゾンを集めることができる大釜、コルドロンが所在している。エルファリアが永く女王を務めていたが、軍事大国、ラグナネイブルの魔王、オーダインに攻め入られて命を落とし、以後はエルファリアの娘のメルセデスが新女王となった。
ラグナネイブル
魔王、オーダインが率いている軍事大国。かつて妖精国、リングフォールドの妖精族と対立していたドワーフ族が争いに敗れ、一部のドワーフ族がラグナネイブルに入国。彼等の鍛冶の技を活かして武器の製造を進めた結果、現在の近隣国に恐れられるほどの、強力な武器や防具を持つ軍事大国にまで成長した。
その他キーワード
フォゾン
魔素と呼ばれる、生命エネルギーの源。この世に唯一のフォゾンを集めることができる大釜、コルドロンを持っている妖精国、リングフォールド以外の国ではフォゾンを収集できないため、非常に貴重なエネルギーである。この世界の生命体のすべてが枯れ朽ちる際にフォゾンを放出し、その放出したフォゾンを草木等の生命体が吸収して生長する。 そのほかにも、サイファー等のフォゾンを吸収できる武器で使用し、絶大な破壊力を発揮できる。
妖精族 (ようせいぞく)
妖精国、リングフォールドに住む森から生まれた民族。目鼻立ちが整った容姿端麗な外貌を持つ者が多い。尖った耳と赤い瞳が特徴の種族で、女性の背中には緑色の蝶のような羽根が生えている。大陸中に漂っているフォゾンは、妖精族にとって生気そのもので、フォゾンが枯渇してしまうと、生きていかれないくらいに自然と調和した民族。かつてはドワーフ族と敵対していたが、争いの末、ドワーフ族が降伏して忠誠を誓い、以後は妖精族と共存して生活を営んでいる。
ドワーフ族 (どわーふぞく)
小柄で毛深い外貌が特徴的な種族。鍛冶の技に優れている。かつて妖精国、リングフォールドと敵対していたが、争いに敗れて当時のリングフォールドの女王に降伏し、忠誠を誓った。その後、鍛冶の技を禁じることを条件に、リングフォールドの女王からリングフォールドへの入国を許可され、以後は妖精族と共存して生活を営んでいる。しかし、一部のドワーフ族はリングフォールドの敵国の軍事大国、ラグナネイブルの軍門に下り、魔王、オーダインの下でサイファーの製造を行っている。
サイファー
フォゾンを溜め込むことができる、魔石でできた武器。弓矢や剣等、多くの形状の武器が存在し、溜め込んだフォゾンを解き放って、「フォゾンバースト」という激しい爆発を起こすことができる。メルセデスが所持している母親の形見の「タスク」と呼ばれる弓矢や、オズワルドが所持している魔剣「オーダイン」が所持している魔剣「邪眼バロール」、不審な女が持つ鎖などが、このサイファーという武器にあたる。
コルドロン
巨大な魔法の大釜。魔法大国、バレンタインの魔法技術を結集して作り出された。大陸中から生命の源であるフォゾンを収集することができる唯一の結晶炉で、この大釜を作動させるためにはティトレルの指輪の使用が必要。現在は妖精国、リングフォールドで管理されているが、この結晶炉を略奪しようと、族や近隣の大国に狙われ続けていて、大国間の争いの火種になることも多い。
ティトレルの指輪 (てぃとれるのゆびわ)
大釜、コルドロンをあやつることのできる唯一の鍵。妖精国、リングフォールドの女王、エルファリアが所持していたもの。コルドロンを使用するためには、このティトレルの指輪が必須となるため、賊や近隣国に狙われることも多く、エルファリアはリングフォールドに侵入して来た不審な女に、このティトレルの指輪を奪われた。
マンドラゴラ
自身の足で歩くことができる不思議な植物。ホルン山に生息しており、丸い体に目と鼻、足が付いて、頭部に草が生えている。気が弱く、近くを人が通っただけで驚いて飛び上がってしまう。料理の材料としてだけではなく、薬の材料としても重宝されている。
クレジット
- 原作
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アトラス