ふらいんぐうぃっち

ふらいんぐうぃっち

青森県弘前市を舞台に、新人魔女の木幡真琴が送るほのぼのとした日常を描く。「別冊少年マガジン」2012年9月号から隔月で連載中の作品。

正式名称
ふらいんぐうぃっち
ふりがな
ふらいんぐうぃっち
作者
ジャンル
日常
レーベル
講談社コミックス(講談社)
巻数
既刊12巻
関連商品
Amazon 楽天

世界観

作者である石塚千尋の出身地、青森県弘前市を舞台に描かれた本作『ふらいんぐうぃっち』は、日常のすぐ隣に、魔女だけが知っている不思議な非日常の世界が広がっている、という世界観を持つ。魔女の世界には、マンドレイクといった悲鳴を上げる植物や、冬を送り春を届ける事を仕事とする春の運び屋さん、空を飛ぶ巨大なくじらや、幽霊が働く喫茶店、といった不思議なものが多数存在している。木幡真琴の居候先にあたる親戚の兄妹、倉本圭倉本千夏、また、真琴の友人である石渡なお、といった一般人の目線や、真琴や姉の木幡茜といった魔女からの目線――両方の目線が同じ日常のなかで描かれる事によって、両方の世界の緊密さが表現されている。これが本作の大きな特徴であり、魔女の送る日常といった本作のテーマを表している。また、事細やかに描かれた弘前市の様子が、登場人物が現実世界に存在するかのような錯覚を強める効果を発揮し、世界観やテーマに、一層の深みを与える作用をもたらしている。

作品が描かれた背景

本作『ふらいんぐうぃっち』は、作者である石塚千尋が、2010年に行われた「週刊少年マガジン第84回新人漫画賞」で、佳作を受賞した漫画『ふらいんぐ・うぃっち』(本名である「石岡千斐(いしおかちかい)」名義)が基になっている。2010年8月に発売された「別冊少年マガジン」に、受賞作が読みきりとして掲載されたが、すぐには連載に至らず、2012年9月まで待つ事となる。「弘前経済新聞」の取材に対して、石塚千尋は、「魔女の日常を書きたかったが、それだけでは漫画として成立させるのには足りなかった。作品の舞台を地元である青森県の弘前市とする事により、はじめて漫画にできた」と語っている。青森県や弘前市の微細な描写は、本作の大きな特徴となっており、石塚千尋が自転車で同市を回って取材している。こうした事には、弘前市が石塚千尋の地元であるというほかに、東京で漫画家としてデビューしたにもかかわらず、地元の青森県へ戻って仕事を続けている、という特異性があり、『ふらいんぐうぃっち』が現在の形で描かれる背景となっている。

あらすじ

第1巻

新米魔女木幡真琴は、魔女のしきたりに従い、高校入学を機に親元を離れて親戚である倉本家で暮らすため、黒猫のチトと共に青森の弘前を訪れていた。迎えに来た又いとこの倉本圭に案内されて家へと招かれた真琴だったが、荷ほどきの最中にチトと話していたところを聞かれてしまい、圭の妹である倉本千夏に不審がられてしまう。警戒されている事に気づいていない真琴は、千夏の視線を不思議に思うだけだったが、そんな最中、日用品の不足分を買いに真琴は千夏と二人で少し離れたホームセンターへ出かける事となる。買い物の合間にドーナッツをおごった事で多少打ち解けた二人は、真琴が探していた竹ぼうきを発見する。竹ぼうきを熱心に点検する真琴の様子を千夏は不思議そうに見つめる。そんな千夏をよそに、真琴が竹ぼうきを握りながら地面を蹴り上げると、次の瞬間、真琴はふわりと宙に浮かび上がるのだった。

第2巻

木幡真琴は授業中に居眠りした際、友人の石渡なおが故郷の横浜にいた真琴のもとへ、青森から泳いで会いに来たという妙な夢を見た。そして夢の中でなおは、真琴に見てほしいと、首筋にあったホクロくらいの大きさの「大吉」と書かれた跡を見せる。放課後、真琴からその話を聞かされたなおは、最初こそ夢の話だろうとまともに聞き入れなかったが、真琴が魔女の見る夢は予知夢の場合もあると告げると、途端に態度を変えて上機嫌になる。一方、いっしょに下校していた倉本圭は道端に「ばっけ」と呼ばれる山菜を見つける。ほかの地域では「ふきのとう」と呼ばれる山菜だが、食べた事がないという真琴に食べさせようと、三人は道端で「ばっけ」集めを始める。そして家に帰った圭は、勉強道具の入っていないかばん一杯に集められた「ばっけ」をてんぷらにするのだった。圭の女子力の高さに驚きながらも初めてのふきのとうを口にした真琴は、独特の風味や苦みによる「大人の味」に舌鼓を打つ。

第3巻

倉本圭の料理するこごみに、木幡真琴とその姉の木幡茜は舌鼓を打っていた。いっしょに食卓を囲んていた倉本千夏が苦手な山菜を食べたのを見た茜は、ふと近くにおいしいケーキを出すお店、喫茶コンクルシオがある事を思い出し、口直しに食べて来てはどうかと勧める。茜の勧めに乗った三人は、もらった地図に従って喫茶コンクルシオの場所を訪れるが、そこにあるのは廃墟だけだった。一行は首をかしげながらも、その場で地図の裏に書いてあった「二礼二拍一礼」を行う。すると、廃墟だった場所に綺麗な喫茶店が姿を現す。案内板に従って奥のお店へ足を運んだ三人が無人の座席に腰を下ろすと、なにもないところからそっと紙が差し出される。誰もいないように見えたが、そこには幽霊の店員が一人いたのである。注文などを筆談でやりとりしながら、幽霊などが苦手な圭がおびえているのに気づいた真琴は一計を案じ、幽霊の姿が目に見えるようにするため、店員が通る場所に魔法陣を記した紙を置く。真琴の呼びかけに応えて店員の幽霊が近づくと、そこに浮かび上がったのは着物姿の優しげな女性の姿だった。明治39年(1906)生まれの幽霊は、恥ずかしがり屋で、ふだんは姿を隠しているのだという。自分の姿が三人に見えている事に気がついた幽霊店員は、恥ずかしげに店の奥に姿を隠すと、次に注文のケーキを持って来る時には、なぜか能面をかぶって現れる。

第4巻

木幡真琴は、昔のローブを荷物から引っ張り出して姿見の前で確認していた。中学に入学した時に自作したローブは既にあちこちが小さく、チトによって爪研ぎされた痕が残っているなど、ボロボロになっていた。新しいローブを新調する事に決めた真琴は倉本奈々に布屋の位置を聞くと、方向音痴の克服のためにチトと二人で出かける。ほうきに乗って地図に従い、迷わずに目的地にたどり着けた真琴は布選びを開始。自分の想定以上に予算を抑えられたため、もう一着作ろうか悩んでいた真琴に、チトはとある提案をする。布を買って家に帰った真琴は早速ローブ作りを始める。買って来た真っ赤な布で出来上がったのは、真琴のものよりも小さな、倉本千夏のためのローブだった。

第5巻

木幡真琴倉本圭倉本千夏と共に、リビングでオセロを楽しんでいた。そこに縁側から1匹の蝶が現れる。障子に止まった蝶にたまらず、チトは手を出してしまい、障子に小さな穴を開ける。蝶を捕らえられなかったものの、チトは障子を破った時に堪えられない快感を味わい、立て続けに大きな穴を沢山開けてしまう。真琴達がそれに気がついた時には、障子はすでに穴だらけになっていた。倉本奈々はチトと共に謝る真琴に、丁度新しいものに張り替えたかったところだと告げ、障子の張り替え作業をみんなで始める事になる。古い紙を剝がし、新しい紙をみんなで貼り付けて真っさらになった障子を前に、真琴はチトに対して改めて穴を開けないようにいさめる。しかし、そこにまた蝶がやって来て、チトは堪えきれず蝶に飛びかかった拍子に、障子に穴を開けてしまうのだった。

第6巻

倉本圭は縁側を歩いていたところ、庭でびしょぬれの犬養が隠れているのを見つける。圭が声を掛けたところ、現れた倉本千夏の姿を見た犬養はとっさに身を隠す。一方の千夏は、圭に近づくと犬養の行方を尋ねるが、圭は知らない振りを決め込む。実は魔法が使えるようになって有頂天になった千夏は、水鉄砲でだれかれ構わずびしょぬれにしようと暴れ回っており、犬養は木幡真琴と共に彼女を止めようとしていたのだった。真琴と犬養によって捕らえられた事で落ち着いた千夏を前に、彼女達は、千夏が初めて魔法が使えた事を記念してお祝いをしようと話す。話をいっしょに聞いていた圭は、この地方でよく行われている「もつ」を開こうと提案する。屋外で肉の「もつ」を焼くというパーティーのような催しに、木幡茜石渡なおや、喫茶コンクルシオ椎名杏子ひな達も呼ばれて大人数が集結。これにより魔女も多く集まった事で、自然と話題は、自分達が使った初めての魔法はどんなものだったか、という方向に流れていく。各々が初めて使った魔法を披露していく中、仕事の都合で遅れて駆けつけたなおは、カラフルなシャボン玉や蝶々が飛び交うファンタジーな「もつ」に遭遇するのだった。

第7巻

中国の山奥に現れた木幡茜は、リーという人物が営む飲食店を訪ねていた。食事の注文の際にあらかじめ決められた符号を告げると、茜はリーが隠れて営む魔女向けの薬屋に案内される。茜の目的は、犬養にかかった魔法を解除できるという呪解薬だったが、リーから解呪薬の値段や材料を告げられ、頭を抱えてしまう。しかし、自分が瞬間移動の魔法を使える事を思い出した茜は、場所だけを聞いて材料を自ら取って来ようと決意する。南極にある10万年前の氷を求めて、南極探検隊の知り合い、徳間のもとを訪れたかと思えば、採取後1時間で枯れてしまう花を求めてフランスの片田舎へと移動する茜。しかし、転送位置をミスしてしまい、うっかり崖の上から落ちてしまう。死を覚悟する茜だったが、スローモーションに見え始めた時間の中でとっさに、崖の触れた部分を砂に変える魔法を思いつき、急死に一生を得る。どうにか薬の材料をリーのもとへ持ち帰った茜は、目的の呪解薬と共に「崖えぐり」という二つ名を手に入れてしまうのだった。

モデルになった町

青森県の弘前市が主な舞台となっており、下湯口にある神明宮を始め、「喫茶コンクルシオ」のモデルとなった「藤田記念庭園洋館」など、実際の建物や土地が数多く登場する。また、弘前市内でも、本作『ふらいんぐうぃっち』とのコラボレーションやタイアップ企画などを積極的に行っている。「弘前ねぷたまつり」への参加や、舞台となった土地や場所を案内する観光マップが、市内各所で配布されるなどしている。

関連商品

スマートフォンアプリ「舞台めぐり」

ソニー企業株式会社が提供するスマートフォンアプリ「舞台めぐり」に、本作『ふらいんぐうぃっち』が参加し、収録されている。本アプリは、アニメや漫画の舞台となった場所を旅行する、いわゆる聖地巡礼をサポートするアプリ。キャラクターと一緒に写真を撮影する事ができるAR撮影機能や、漫画やアニメの舞台となった場所の解説が見られる機能が備えられている。

コラボレーション

弘前ねぷたまつり

青森県弘前市で行われた2016年の「弘前ねぷたまつり」で、本作『ふらいんぐうぃっち』とのコラボレーション企画が行われた。『ふらいんぐうぃっち』に登場するキャラクターをモチーフとした「キャラクターねぷた」を制作する、というコンテストで、応募した団体により制作されたねぷたが、実際に展示された。企画には、TVアニメで木幡真琴役を務めた篠田みなみや石渡なお役を務めた三上枝織も参加。「弘前ねぷたまつり」の様子は、TVアニメの12話にも登場している。

弘南バス

青森県弘前市内を走る弘南バスとのコラボレーション企画が、2016年4月より行われた。内容は、『ふらいんぐうぃっち』に登場するキャラクター達が描かれた、バスの案内チラシやPDFデータの配布。ラッピングバスの運行と、ラッピングバス車内で流れる木幡真琴(声優:篠田みなみ)によるオリジナルの車内放送。『ふらいんぐうぃっち』のキャラクターがラッピングされたコラボバス停の設置、といったもの。

弘南鉄道

弘南鉄道とのコラボレーション企画が、2016年4月28日より行われた。企画では『ふらいんぐうぃっち』仕様にラッピングされた電車が運行され、車内アナウンスが、登場人物である木幡真琴(声優:篠田みなみ)による特別なものに変更された。また、2016年6月からは、ラッピング電車運行記念として、「弘南線1日フリー切符」と「大鰐線1日フリーきっぷ」をセットにした「『ふらいんぐうぃっち』ラッピング電車運行記念乗車券」が販売された。

りんごの紅茶&さくらの紅茶

弘前観光コンベンション協会が運営している藤田記念庭園洋館の「大正浪漫喫茶室」が、『ふらいんぐうぃっち』に「喫茶コンクルシオ」として登場した事を記念し、2016年6月より、TVアニメ化に合わせてコラボレーション商品の販売が、同協会によって行われた。商品は、桜の葉のエキスやさくら葉が入った「さくらの紅茶」と、林檎チップがブレンドされたりんごの甘い香りを特徴とする「りんごの紅茶」の2種類。各600個限定の商品として販売され、先着購入者100名には、クリアファイルもプレゼントされた。

「ふらいんぐうぃっち×SWEETSPARADISE」

飲食店「スイーツパラダイス」とのコラボレーションカフェ企画が、2016年5月20日から6月24日にかけて、期間限定で行われた。期間中はキャラクターをイメージした各種メニューが登場し、バイキングメニューとして提供されたほか、コラボセットを注文すると、もれなく限定コースターがプレゼントされた。

ふらいんぐうぃっち はちみつ飴

岩木山養蜂とのコラボレーション商品として、「ふらいんぐうぃっち はちみつ飴」が2016年5月中旬より発売された。青森の岩木山で採れたりんご蜂蜜を使用した手作り飴で、パッケージに木幡真琴が描かれている。販売は、岩木山養蜂店舗や弘前市りんご公園などで行われた。

ポロショコラ・弘前 ふらいんぐうぃっち限定パッケージ

株式会社ラグノオとのコラボレーション商品として、「ポロショコラ・弘前 ふらいんぐうぃっち限定パッケージ」が、2016年3月より販売された。ポロショコラは株式会社ラグノオが販売するチョコレートケーキで、コラボレーション商品は木幡真琴がパッケージに描かれた特別仕様となっている。

タイアップ

弘前観光コンベンション協会

弘前観光コンベンション協会とのタイアップで、青森県弘前市のPR用ポスターや、市内の観光マップに、本作『ふらいんぐうぃっち』が協力をしている。黒猫のチトが弘前の街並みを案内するマップ「チトナビ」が配布されたほか、スマートフォンアプリ「舞台めぐり」を使用して、漫画の舞台となっている場所を簡単に探す事ができるようにするなど、多くの企画が行われている。

弘前フィルムコミッション実行委員会

弘前フィルムコミッション実行委員会とのタイアップで、本作『ふらいんぐうぃっち』をモチーフとする弘前市のPR動画「魔法が使えるかもしれない街 弘前~HIROSAKI~」が制作された。動画はYoutube上の弘前観光アカウントで公開されている。

メディアミックス

TVアニメ

2016年4月から6月にかけて、日本テレビや青森放送からTVアニメ『ふらいんぐうぃっち』が放送された。制作はJ.C.STAFFが行っており、監督は桜見かつし。シリーズ構成は赤尾でこが務めている。キャストは木幡真琴役を篠田みなみ、倉本千夏役を鈴木絵理、倉本圭役を菅原慎介、石渡なお役を三上枝織が、それぞれ務めた。

Web特別番組

TVアニメの放送に先駆けて2016年4月10日より、株式会社バップのYoutubeアカウントから、ショートムービー「ふらいんぐうぃっち ぷち」が配信された。約2分間ほどの短い動画で、頭身を小さくデザインされた『ふらいんぐうぃっち』の登場人物達の日常風景が、コミカルに描かれている。

ファン層

本作『ふらいんぐうぃっち』の舞台となっている青森県に、根強いファン層を築いており、漫画の売り上げの約8パーセントが、青森県内で占められているほどの規模となっている。また、舞台となっている青森県や弘前市が広報に力を入れており、聖地巡礼マップの配布やラッピングバスの運行、青森県を代表する祭り「弘前ねぷたまつり」でコラボが行われている。こうした努力の結果として、聖地巡礼を行うファンが数多く存在している。

登場人物・キャラクター

木幡 真琴 (こわた まこと)

新米魔女である高校1年生の少女。「15歳になったら自立のために家を出て暮らす」という、魔女の古い風習に従って、横浜から東北の親戚である倉本家へと引っ越してきた。同居人の倉本圭や倉本千夏とは、又いとこの関係にあたる。方向音痴で天然な性格をしており、常に前向き。魔女であることは、できる限り秘密にしなければならないのだが、その辺りの自覚は薄い。 人前で箒に乗って空を飛んだりして、周囲の度肝を抜くことも。姉の木幡茜は白い髪に褐色肌で、外国人に間違われるような外見だが、妹の木幡真琴は、長い黒髪にぱっつんに近い形に切りそろえられた前髪で、純日本人らしい外見と肌の色をしている。

倉本 圭 (くらもと けい)

倉本千夏の兄。木幡真琴の又いとこにあたる。石渡なおとは中学時代からの同級生で、同じ高校のクラスメイト。飄々とした性格の、マイペースな男性。映画好きで、休日には居間でよく映画を見ている。幽霊などホラー関係が苦手で、縁日のお化け屋敷に入ったときには、真琴の肩に手を置いて誘導してもらい、一切顔を上げなかったほど。

倉本 千夏 (くらもと ちなつ)

小学生の女子。倉本圭の妹。木幡真琴とは親戚で、又いとこにあたる。好奇心旺盛で天真爛漫な性格をしている。また独特な感性の持ち主で、妙にこましゃくれた言動をする事もある。魔女の存在を知らなかったが、真琴と触れ合ううちに魔女という職業に興味を抱いた。その後、母親である倉本奈々に許可をもらって正式に魔女見習いとなる。最初は見学をするだけだったが、不思議な出来事に触れ合ううちに常識の範囲が広がり、マナを扱えるようになっていく。また、ハマベーという不思議な生物との交流を経て手に入れた歯をもとに、媒介具を手に入れた事で、水鉄砲を指先から放つ魔法を使用できるまで、魔女としての成長を遂げている。

石渡 なお (いしわたり なお)

酒屋の娘。木幡真琴や倉本圭と同じ高校に通う女子高生。圭とは中学時代に同級生だった。赤っぽい色の髪を2本のお下げにしてまとめ、両肩から垂らしている。性格はいたって常識的。魔女であることを隠そうとしない真琴の突拍子のない行動に、よくも悪くも振り回されている。

木幡 茜 (こわた あかね)

木幡真琴の姉。魔女界にも名の知れた、才能ある魔女。魔女の修行と趣味を兼ねて世界中を旅しており、聞いたこともないような国に、フラっと出かけていることもある。お気楽でポジティヴな性格をしており、自身のやりたいことに素直。また、お土産のセンスが致命的に悪く、使い道のよくわからない中東の「原油」とか、海外の売店に置かれていた変な文字の書かれたTシャツなど、さまざまなお土産を買ってきては、真琴たちを困らせている。 同じ魔女である犬養とは古くからの知り合いで、飲み仲間。また、「喫茶コンクルシオ」をよく利用しており、椎名杏子ら店員とは顔なじみでもある。白い髪に褐色の肌といった外見のため、外国人に間違われることもあるが、れっきとした日本人。

犬養 (いぬかい)

木幡茜の古い友人である魔女の女性。青森の公園などで占いをしながら生計を立てている。酒に酔った勢いで、茜の作った人間を動物の姿にする魔術薬を食べ、昼間は犬と人間が混じり合ったような外見になってしまった。そのため、ふだんは帽子のついたコートを目深に羽織って顔を隠している。夜になると人間の外見に戻り、その際は茜が妬むほどにかわいらしい外見をしており、秋田出身であるため、秋田美人と称えられている。体質のため、昼間の大学に通う事ができずに夜間大学に通っている。のちに、茜が呪解薬を手に入れて来た事で魔法を解除する手段を得る。しかし、姉であるミワの息子、りゅうが、犬の姿に懐いてしまったため、完全に魔法を解除するのを引き延ばしにしている。りゅうからは「わーちゃん」と呼ばれており、人間の姿の時は「にせわーちゃん」と認識されていた。また、姉のミワからは「トワ」と呼ばれている。

椎名 杏子 (しいな あんず)

魔女の女子中学生。椎名さんの娘。木幡真琴たちよりも年下で、長い金髪に碧眼を持つ。普段は親が経営する「喫茶コンクルシオ」の店員として手伝いをしている。歴史的なものが好きで、空飛ぶくじらの上にある遺跡や、倉本圭の実家である古民家など、古い建物を見るとテンションが上がる。将来は考古学者になりたいと思っている。

パパさん

倉本圭や倉本千夏の父親。リンゴ農園を経営する農家。普段はきつい津軽弁で話すため、慣れていない人間には、何をしゃべっているのか聞き取ることができない。そのため、木幡真琴や木幡茜と意思の疎通が図れないことがあり、圭や千夏が通訳をする。

倉本 奈々 (くらもと なな)

倉本圭や倉本千夏の母親。主婦業の傍ら、プロの絵本作家として活躍している。ポジティヴ思考の持ち主で、あまり細かいことを気にしない大らかな性格。千夏が魔女になりたいと言った際にも、反対せずに逆に応援した。

春の運び屋 (はるのはこびや)

冬を送り春を運ぶことを仕事としている存在。丁寧な口調と物腰が特徴で、長身痩躯の体型に、顔に白いお面のようなものをつけている。また、手足から頭までを覆う全身タイツのような黒のインナーに、白の上着とズボンという出で立ちで、極めて怪しげな外見をしている。倉本千夏にも、見た目だけで不審者扱いされる。魔女から「気付け」をもらうという習わしがあり、挨拶がてら新人魔女である木幡真琴のもとを訪ねた際には、真琴から「気付け」として、万能薬になるマンドレイクの根を貰っていた。

椎名さん (しいなさん)

椎名杏子の母親。「喫茶コンクルシオ」の店長を務めている。木幡茜によれば、腕利きの魔女。細かいことを気にしない気っぷの良い性格の女性で、ツケで店を利用することも可能。しかし、ツケの内容を忘れることはなく、時間が経過してもしっかりと請求するなど、抜け目はない。

ひな

幽霊の女性。「喫茶コンクルシオ」でウェイトレスをしている。本人によれば明治39年(1906)の生まれだそうで、普段から着物を着ている。恥ずかしがり屋のため、人から見えないよう姿を消しており、会話は筆談で行う。木幡真琴たちに姿を見られた際には、おたふくのお面を被ってまで顔を隠した。ちなみに「喫茶コンクルシオ」で提供するケーキは、ひなが作っている。

アキラ

魔女協会の人間で、木幡真琴や犬養のサポートを務める。バイクを相棒にライダージャケットを着込んだ、真琴によれば「カッコイイ女性」。魔女協会は、魔女に対して最新の本や学費面でのサポートを行っており、担当の魔女へ配給品を渡すと共に行動調査を行う。そのため、アキラも真琴のもとを定期的に訪れている。

チト

木幡真琴の使い魔である黒猫。性別はメス。年齢は17歳。一般的な猫としては老猫だが、魔女の使い魔であるため、通常の猫とは年齢の感覚が異なる。猫らしい悪戯好きな性格をしている。真琴によれば、出不精で運動不足から、たまに太ってしまうこともあるという。

ケニィ

木幡茜の使い魔である白猫。手足や尻尾の先端が黒っぽく色づいており、顔もうっすらと色がついてクリーム色になっている。趣味で人類学の研究をしており、空飛ぶくじらの上に住んでいた人間がどうなったのかを調べるために、世界中を廻って、空飛ぶくじらのもとを何十回と訪れるほどの熱の入れよう。同じく歴史が好きな椎名杏子から、「師匠」と呼ばれている。

アル

犬養の使い魔である白いハムスター。小さな体を使ってコミカルに感情を表現する。ハムスターなので、猫の使い魔であるチトと出会った際には、襲われるのではないかと緊張していた。主人の犬養とは非常に打ち解けた間柄で、夜中に気兼ねなくドライブに行ったりする。

オロル

椎名杏子の使い魔であるフクロウ。猛禽類であるため、羽を広げると非常に大きい。他の魔女たちの使い魔とは異なり、日常的に杏子と行動を共にしているわけではない。お使いなど、用事があるときには杏子のもとへと飛んでくる。初対面の木幡真琴にしっかりお辞儀したりと、礼儀正しい。

ハマベー

「浜辺兎」と呼ばれる不思議な生き物。デフォルメされた兎のような外見をしており、目が非常に大きい。また、普段は見えないが、犬養の使い魔であるアルをひと呑みにしてしまえるほど、大きな口を持つ。浜辺を守るという習性があり、ルールを守らない人間に対しては厳格に注意する。その一方で、友人と認めた相手には、自分の歯を送って友情を示したりと、フレンドリーな面もある。 犬養によれば、カチーナと呼ばれる存在の一種にあたる。

新聞屋さん (しんぶんやさん)

朝、玄関で新聞を待っている魔女に、新聞を届けてくれる存在。体が影のように真っ黒になっており、ひょろりと背が高い。黒の制帽にトレンチコート、という昭和以前の配達員のような服装をしている。彼が届ける新聞には、普通の新聞には載らないような、裏のニュースが取り上げられている。

くじら

通常の生物であるくじらとは異なる、空を飛ぶくじらのこと。普段は雲に擬態しており、一般の人間に気付かれないようにしている。かつては、その体の上で人が生活をしており、今なお遺跡が残されている。当時は群れを成すほど多くのくじらが空を飛んでいたが、人が住まなくなってからは群れを解散し、各々が自由に世界中を行き来している。 現在は木幡真琴たちが出会ったくじらのほか、3体のくじらがその存在を確認されている。

徳間 (とくま)

木幡茜の知人。南極観測隊として活動する男性で、南極に日本観測隊の一員として赴任している。日本にいた頃、居酒屋で知り合った茜に現在の妻を紹介された恩がある。犬養にかかった魔術薬の効果を解除する薬の材料として、10万年前の空気が入った南極の氷が必要になった茜にこっそりと手を貸した。

大熊 灯花 (おおくま とうか)

RBA青森放送で記者兼アナウンサーとして働く女性。「大熊」という名前にちなんで、自己紹介の際に「ガオー! 熊だけに!」とあいさつするのがお約束となっている。弘前市で多発するUFOの目撃情報を取材するため、現地を訪れた。実際はUFOではなく魔女の目撃情報だったのだが、情報を追いかけているうちに偶然にも木幡真琴とアキラにインタビューする事となる。しかし、世界に張り巡らされた「魔女の情報」を世間に知られないようにするという「脱兎ルール」の力によって、真相にたどり着く事はできなかった。

鹿角 小夜 (かづの さよ)

魔女の少女。木幡真琴たちと同じ高校に通う先輩で、クラスは2年2組に在籍している。また、去年からこの街で活動をしていたため、魔女としても真琴の先輩にあたる。規律に対して厳格な性格をしている。一方で、真琴に電話番号を教えに親身に魔女の仕事での相談に乗るなど、優しい先輩でもある。ふだんは丁寧な口調ながらきつめの発言もするが、メール上では絵文字を多用し、柔らかな口調となる、かわいらしい一面もある。また、大の虫嫌いで、ミミズや蝶を見かけるたびに悲鳴を上げている。

リー

中国の魔女。ふだんは飲食店を営んでいる女性だが、中国の魔女でも極一部の人間しか知らないという、魔女へ向けた薬品店を営んでいる。非常に珍しい技術の持ち主で、世界経済の混乱を招きかねないため、魔女の協会から技術を広める事を制限されている。木幡茜が犬養にかかった魔術薬の効果を解除する呪解薬を求めて店を訪れた。

りゅう

ミワの息子。犬養の甥にあたる。幼年の男の子であり、人見知り。子供に好かれるタチの木幡茜をして心を開く事ができなかったほどかたくなだが、唯一犬の姿の犬養に対してだけは「わーちゃん」と呼びかけ、心を開いている。しかし、人の姿の犬養は偽物の「わーちゃん」だと認識しており、母親のミワからまちがいを正されても信じていない。

夏の運び屋 (なつのはこびや)

春の運び屋と同じように、夏を各地に運ぶ事を主な仕事としている存在。ふだんは白人男性のような外見をしているが、本来の姿は龍が人の形になったような外見をしている。冬を各地にもたらす原因となっている「冬の根」と呼ばれる植物が、7月1日になると冬をぶり返してしまうという特性を持つため、それを除去するという仕事も請け負っている。少しだらしないところがあり、寝坊が原因で「冬の根」の除去が遅れてしまい、結果として倉本圭の家をはじめとした各地に雪を降らせてしまった。その事から罰として迷惑を掛けた地域で奉仕活動をする事となり、「サマー」という偽名を用いて、外国人留学生としてアルバイトにいそしんでいる。

ミワ

犬養の姉で、りゅうという一児の母親。魔女であり、木幡茜とも面識がある。年齢はアラサーと自称しているが、妹に負けず劣らずの美人で、久々に会った茜から変わらない外見を褒められていたほど。

ミズハ よもぎ

雨師の子供。黒髪だが、眉毛だけが違う色をしている。5歳の男の子で、休日に訪れていた出先で両親に仕事が入ってしまったため、急きょ、木幡真琴のもとに預けられた。雨師とは雨を降らせる神様のような存在の事だが、子供であるために力の制御が未熟で、感情に左右されて力が勝手に出てしまう。好物は自分の名前が入っているよもぎ餅。

場所

喫茶コンクルシオ (きっさこんくるしお)

椎名さんが店長を務めている喫茶店。開業から200年近く経っている。古い館の一部を店舗として利用している。幽霊など人ならざる存在がお客さんとして訪れることが多く、交流の場ともなっている。そのため、普段は一般人が利用できないよう、外見を廃墟のように見せている。メニューは紅茶やケーキをはじめさまざまで、ほおずきの実など、客独自のオーダーにも対応。 建物は実際の青森県弘前市の藤田記念庭園内に存在する洋館がモデル。そこでは実際に「大正浪漫喫茶室」という喫茶店が運営されている。

その他キーワード

魔女 (まじょ)

魔法やおまじないなど、不思議な力を使うことのできる女性のこと。15歳になると立派な大人として認められるため、一人立ちのために家を出される、という古いしきたりがある。古くからの歴史ある職業だが、今の時代、魔女は職業としていろいろと不安定。そのため、木幡真琴などは、両親から高校だけは出ておくように言われている。基本として、自分が魔女であることを、家族や親戚以外にはしゃべってはいけない決まりになっている。

マンドレイク

人間の形に似た大根に、目と口の穴を開けたような姿の植物。独特のアンモニア臭がする。引き抜くときに、とてつもない悲鳴をあげるという特徴がある。それをまともに聞いた人間は、下手をすると死んでしまう危険性があり、耳を塞ぐなど注意しながら引き抜かねばならない。また、生命力がとても強く、引き抜いた後も、手足のように見える根っこをうごめかせている。 とても珍しい植物で、毒性は強いが、しっかりと毒抜きすると万能薬の素材となる。

可視化軟膏 (かしかなんこう)

木幡真琴が初めての報酬で交換した魔具。初心者向けの魔具の一つで、まぶたにぬる事で、空を飛ぶくじらをはじめとした、ふつうの状態では見えない擬態生物が見えるようになる。

雨師 (うし)

雨を降らせる神様のような存在。梅雨時になると雨を降らせる準備をするために訪れる。子供の雨師は力を制御する技術が未熟なため、感情に左右されて力が暴走してしまう事がある。喫茶コンクルシオを訪れた雨師の子供、ミヅハよもぎは母親がいない寂しさから雨を降らせてしまったが、その際には室内にだけ局地的に雨を降らせるといった芸当を示していた。

魔術 (まじゅつ)

魔女が起こす不思議な現象のうち、干物をはじめとした素材などを使用して引き起こす現象。広義には魔法の一部と考えられ、魔法と称される事もあるが、厳密に分類すると異なる技術であるとされる。魔女単体で起こす現象である魔法が、魔女の持つ力量に左右されるのに対して、素材と方法さえわかっていれば比較的簡易に現象を起こす事が可能であるとされる。

魔具 (まぐ)

魔法の力が宿された道具の総称。「魔法道具」を略して魔具と呼ぶ。可視化軟膏をはじめとしたさまざまな魔具が世界には存在している。手に入れる手段も多岐にわたるが、その一つとして、協会から報酬として与えられる金貨との交換で、カタログに記載されたものを選んで手に入れる方法がある。

脱兎ルール (だっとるーる)

世の中に影響力のあるメディアや、おしゃべりな人が魔女の事を調べようとすると働く摂理。魔女の情報が自然と遠ざかっていくように偶然が作用してしまう。大昔に魔女の協会によって作り出されたルールで、地味ながらも非常に強力な力を持つ。

呪解薬 (じゅかいやく)

人にかかった魔法を解く事のできる薬。中国の魔女であるリーが作る事のできる薬で、木幡茜が犬養にかけた魔法薬の効果を解除するために求めた。素材には南極で採れた10万年前の空気を含んだ氷を10キログラムと、フランスのとある地方でしか採れないうえに採取後、1時間ほどで枯れてしまう花「雨宿李(あまやどり)」が必要となる。製法自体は簡単ですぐに作れるのだが、材料が希少なために上位魔法を使える魔女に仕事を依頼する必要がある事から、価格は400万円ほどと、非常に高価なものとなっている。

魔法 (まほう)

魔女が使う不思議な力や起こした現象を指す総称。広義には魔術も含んだ言葉だが、干物などの素材を組み合わせて不思議な現象を起こす魔術に対して、魔法は魔女が単体で起こす現象の事をいうため、厳密には異なる。魔術と異なり、魔女の持つ純粋な力や素質が大きくかかわる。

ジム

夏の運び屋の故郷で採れるお菓子。生クリームのような味わいのお菓子で、暖かい雪見だいふくの様な味をしている。ふつうの状態では非常に硬いため、ものを柔らかくする「マーモス」という呪文でほどよく柔らかくしてから食べる。透き通ったジムのほかには、青ジムや赤ジムなどの種類のジムも存在している。ジムというのは夏の運び屋の故郷での呼び名であり、その正体は、こちらの世界で「ダイヤモンド」と呼ばれる鉱物である。

小さな太陽 (ちいさなたいよう)

日光に似た光を出す球を作り出す魔術。ニボシなどの干物を利用して作り出す事が可能で、木幡真琴がマンドレイクのために作り出した。初めのうちは粘性のある液体だが、割り箸でかき混ぜているうちに棒にまとわりつくように上がり、球の形になる。

そっくり

ふつうのしゃっくりとは違い、とても止まりにくいしゃっくり。40年間にわたって止まらなかった人もいたとされる。そっくりになる行動の条件を満たしてしまうと、その翌日にそっくりにかかってしまう。条件はとても広範にわたり、木幡真琴が持っている専門書に載っている範囲でも2053個も記されていた。治し方は原因とは反対に一つしか存在せず、「人形で遊んであげる事」が唯一の治療方法とされている。人形遊びをする事で、遊んでくれたお礼に人形がそっくりを肩代わりしてくれる。人形が肩代わりしたそっくりは、人間とは違って5分ほどで自然と治まる。

マーモス

硬いものを柔らかくする魔法。夏の運び屋の故郷で使われる魔法で、魔女たちにはまだ、あまり広まっていない。柔らかくしたいものを手のひらで隙間が空かないように包み込み、柔らかいものをイメージしながら呪文を唱える事で魔法が成立する。夏の運び屋がお土産として持ち込んだ「ジム」という硬いお菓子を柔らかくした際には、「ジムマーモスコクショ」という呪文を唱えていた。

書誌情報

ふらいんぐうぃっち 12巻 講談社〈講談社コミックス〉

第1巻

(2013-12-09発行、 978-4063949926)

第2巻

(2014-06-09発行、 978-4063950953)

第3巻

(2015-04-09発行、 978-4063953633)

第4巻

(2016-03-09発行、 978-4063956351)

第5巻

(2016-11-09発行、 978-4063957907)

第6巻

(2017-09-08発行、 978-4065101834)

第7巻

(2018-09-07発行、 978-4065123232)

第8巻

(2019-08-09発行、 978-4065162859)

第9巻

(2020-06-09発行、 978-4065193822)

第10巻

(2021-06-09発行、 978-4065234150)

第11巻

(2022-06-09発行、 978-4065281673)

第12巻

(2023-06-08発行、 978-4065318713)

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