あらすじ
第1巻
私立蒼風(そうふう)高校1年生の明科一帆は、入学と同時に学生寮「アルゴー寮」に入ったが、例年よりも男子の入寮希望者が多かったという理由で、男子寮の1号館ではなく、女子寮の2号館に入ることになってしまう。女性が苦手な一帆は、肩身の狭い生活を送ることになって、落胆するが、そんな入寮初日の夜、隣室の十文字唱の布団に、何者かが押し入る事件が起きる。一帆の調査で、その犯人は一人で眠ることができない唱のルームメイトの南部希美であることが判明するが、調査中に女子の部屋に勝手に入った一帆は、女子たちのあいだで要注意人物に認定されてしまう。そんな中、男子寮長の大野久之は一帆に対し、1年前に起きた男子の女子部屋への無断入室事件のせいで、女子寮生たち、中でも寮長の紅尾鈴が男子を警戒するようになり、今ではすっかり男女仲が悪くなってしまったのだと語る。一帆は、久之からそんなアルゴー寮の現状を変えるためのパイプ役になってほしいと頼まれ、友人の亀行道と壱岐良知を加えた三人で、男女仲の改善を目指す活動を開始する。
第2巻
夏休みが近づき、私立蒼風高校の生徒たちは夏休みの計画を立てて盛り上がっていた。明科一帆は、ヨット仲間の久留野洋の予定に合わせて、最初の10日は寮に残ってヨットの整備をし、その後は海で洋とセーリングする計画を立てる。しかし、十文字唱と南部希美がいっしょに行きたいと言い出したことで、一帆は亀行道、壱岐良知、三郷西夜の三人も加えた、いつもの友人グループで夏を過ごすことになるのだった。こうして夏が中盤に差し掛かったある日、西夜が体調を崩してしまう。一帆に気を遣いつつ、暴走しがちな唱と希美のお目付け役を担うという、非常にストレスのたまる日々を送っていたのがその原因であった。そんな西夜を案じた一帆は、予定よりも早く帰ることを提案。これによって関係を一気に深めた一帆と西夜は交際を始めるが、一帆に片思いしていた唱と、二人が親しくなったことで急に仲間はずれにされた気分になった希美は、複雑な心境でいた。そんな唱と希美の心の変化を理解した良知と行道は、それぞれに二人を励まし、夏休みを通じて、六人の関係は大きく変わっていくのだった。
第3巻
秋になり、アルゴー寮では新寮長を決める選挙が行われ、梶一と下川律子が選出された。律子の方針は、前寮長の紅尾鈴とは正反対に男子寮生と協調するというもので、これによって明科一帆と壱岐良知は、今までよりものびのびとした生活を送れるようになる。しかし、男子寮生の立ち入り可能範囲が広がったことが原因で、一帆と女子寮生のあいだにトラブルが発生。一帆に悪気はなかったが、一は律子に責任を押しつけるような一帆の態度を叱る。これによって一帆は反省し、一には人間的にとてもかなわないと判断するのだった。それからしばらく経ったある日、一帆たちは山へ紅葉を見に行くこととなった。これがきっかけで温田稔と南部希美が急接近し、一帆たちは希美にひそかに思いを寄せていた亀行道のことを案じる。しかし行道は、しばらく修行に出て稔と希美から距離を置き、二人を祝福できるように精神的に成長してから戻ることを決意。これを知った稔と希美は、行道に申し訳なく思いつつも、自分たちの気持ちに素直に従い、交際を始めるのだった。
第4巻
冬のある日、壱岐良知は同級生の塩入かえでから、自分に代わって失恋した安藤みよ子を慰めてほしいと頼まれる。良知はこれを不思議に思いつつ了承するが、やはり二人はグルで失恋というのもウソだった。みよ子は良知に思いを寄せており、話す口実を探していたのである。良知はすべてを知ったうえであらためてみよ子と距離を縮めていくが、良知への思いを自覚しつつあった十文字唱は、これに深いショックを受ける。また、かえでも唱とみよ子の板挟みとなり、苦しんでいた。そして良知は悩んだ末に、今の自分には恋愛をする余裕はないことをみよ子と唱に打ち明け、最終的に誰とも交際しない道を選ぶのだった。年末になり、明科一帆は亀行道と共に帰省し、久しぶりに自宅に戻って父親の明科潮と過ごす。それから三学期になったある日、一帆は不注意で紅尾鈴にケガをさせてしまう。責任を感じた一帆は献身的に鈴の世話をするが、実はケガは鈴が一帆と過ごしたいがためのウソだった。やがて良心の呵責に耐えられなくなった鈴は真実を打ち明けるが、安堵した一帆はこれをあっさりと聞き入れる。こうして一帆と鈴の距離は大きく縮まるが、そんな二人を見た三郷西夜は、強い不安を感じていた。
第5巻
紅尾鈴は明科一帆への思いを自覚し、バレンタインデーにチョコレートを送ったが、一帆はまだその思いに気づいていなかった。そんなある日、一帆たちはアルゴー寮の寮長になった生徒が、国立大学を受験すると必ず不合格になるという、不吉な噂を聞いてしまう。鈴はまさにこれに該当するため、一帆たちは心配するが、不安は的中して鈴は浪人することになる。それでも鈴は明るく振る舞っており、これを見ていられなくなった一帆は鈴に本音をぶつける。そして二人は取っ組み合いの喧嘩になり、二人は気まずいまま別れるかに思われたが、井原君子と大野久之の計らいで、鈴は私立蒼風高校卒業後もアルゴー寮に残れることになる。こうして鈴は引き続き2号館217号室で受験勉強に励み、一帆たちは2年生に進級する。そして寮生の男女比が変わったことで、一帆と壱岐良知は1号館に引っ越せることになるが、直前で手違いが発生し、結局二人はまた2号館で暮らすことになるのだった。さらに一帆は、予定よりも早く寮長を辞めることになった梶一と下川律子から、三郷西夜と共に新寮長になってほしいと頼まれる。
第6巻
春になり、三郷西夜と共に新寮長を引き受けた明科一帆は、さらに忙しい日々を送っていた。そんな中、1年生の常磐井幹子は、女子寮に男子がいることが未だに許せず、そのせいで孤立しがちになっていた。そんな幹子を案じた亀行道は彼女に優しく声を掛け、ようやく幹子はアルゴー寮に溶け込み始めるのだった。そんなある日の掃除中、西夜は偶然、紅尾鈴の書いた日記を読んでしまう。そこには、鈴は以前から「カズホ」という人物に思いを寄せていたと書かれており、これが一帆のことだと誤解した西夜は、鈴を問い詰める。だが、これは鈴の過去の交際相手である草下和穂のことだった。そして西夜は、鈴から和穂が退寮するまでの出来事を聞き、アルゴー寮の歴史への理解を深めるのだった。そんな中、行道と幹子は周囲に恋人だとウソをついて暮らすことになる。幹子は男子に人気があるが、幹子はこれを迷惑に思っており、行道は幹子を助けるためにウソをついていたのである。しかし、塩入かえではこのことが気にくわず、男子たちに真相をばらしてしまう。これによって二人は友人に戻るが、行道とかえではまだ素直になれず、微妙な関係が続いていた。
第7巻
夏になり、壱岐良知と十文字唱はついに交際を開始。一方で明科一帆と三郷西夜は、ちょっとしたすれ違いから始まった喧嘩が長引いていた。紅尾鈴はそんな二人を案じていたが、西夜と交際しているにもかかわらず、自分にも優しく接する一帆に、どうしても期待するようになってしまう。その気持ちをとうとう抑えきれなくなった鈴は、ある日一帆にキスをする。しかし、これによって一帆はますます混乱。西夜もまた泊順と急接近したことで、四人の関係は完全にこじれてしまう。見ていられなくなった塩入かえでは、一帆と西夜に今後も交際を続けたいなら、鈴と順の前で二人の絆を証明するようにせまる。ひとまず一帆と西夜は話し合うべくいっしょに過ごすが、お互いに、自分たちの関係は限界がせまっていると気づいていた。悩んだ一帆は、その夜一人でヨットに乗って海に出て、不注意から遭難しかけるが、そこに助けにやって来たのは鈴だった。これを見ていた西夜は、身を引くことを決意する。その後、一帆、西夜、鈴、順の四人は自分の気持ちに向き合い、一帆と鈴、西夜と順は、あらためて交際を始める。
第8巻
2学期が始まり、一度は延期されそうだった学園祭も、明科一帆が理事長を説得したことで予定どおり開催されることになった。一帆は「アルゴー寮」の名にちなんで、寮の外観を一日だけ改装する企画を立てるが、準備を行う学園祭前日の夜、温田稔が設計図を紛失してしまう。しかし、一帆は落ち込む寮生たちを鼓舞し、当日無事に改装を完成させ、訪れた大野久之は感激するのだった。こうして一仕事終えた一帆は、常磐井幹子の計らいで、紅尾鈴といっしょに学園祭を楽しむ。しかし後夜祭が始まる直前、明科潮から手紙が届く。潮は今後船を降りて本社勤めをすることになったため、引っ越しを決意していた。そこで一帆も転校し、今後は新しい家でいっしょに暮らさないかとの相談がその手紙に綴られていた。ひとまず一帆はこれを保留にするが、潮が学校に電話をかけたことで、引っ越しの件を仲間たちに知られてしまう。一帆と卒業までいっしょに過ごしたい三郷西夜が泣きながら引き留めたことで、一帆は引き続き私立蒼風高校に通うと宣言する。しかし亀行道と壱岐良知は、これが本当に一帆の本心なのかと心配していた。
登場人物・キャラクター
明科 一帆 (あかしな かずほ)
私立蒼風(そうふう)高校1年E組に在籍する男子。のちに、2年E組に進級する。入寮希望者の男女比の問題で、本来は女子寮であるアルゴー寮2号館の205号室で暮らしている。ルームメイトは壱岐良知。前髪を目の上で切った紫色の短髪にしている。父親が外国航路の航海士であるため「一帆」と名付けられ、良知からは「セイル」と呼ばれている。ややぶっきらぼうだが、周囲が困っていることがあれば手を差し伸べる、心優しく面倒見のよい性格をしている。また、観察眼があり推理力も高く、校内で起きた事件を積極的に解決している、探偵のような役割も担っている。母親を亡くしており、父親の明科潮は航海士で年に3か月も家にいないことから、寮がある蒼風高校に進学した。蒼風高校に入学するまでは周囲に女性のいない生活を送ってきたため、女性全般が苦手。そのため、アルゴー寮2号館入寮後は三郷西夜をはじめとする女子たちと、どうかかわっていくべきか悩んでいる。しかし男子寮長の大野久之から、かつては仲がよかったアルゴー寮で暮らす男女が、今ではすっかり不仲になっていることを知らされ、その修復のために尽力することとなる。その過程で西夜との関係を深め、次第に紅尾鈴に惹かれていく。誕生日は3月28日で、血液型はO型。
亀 行道 (かめ ゆきみち)
私立蒼風(そうふう)高校1年A組に在籍する男子。のちに、2年E組に進級する。アルゴー寮1号館105号室で暮らしており、ルームメイトは温田稔。前髪を目の上で切った癖のある短髪にしている。非常に小柄な体形で、同年代の女性と比べても、かなり背が低い。明るくお調子者な性格で、女性全般が大好き。そのため、周囲の女性の着替えを覗いたり、下着を盗んだりしては怒られている。しかし周囲のことをよく観察しており、人の変化に機敏に反応する。そのため、他人の気持ちに寄り添うことが得意で、人間関係のトラブルがあった際には非常に頼りがいがある。明科一帆とは昔からの付き合いで、非常に仲がいい。私立蒼風高校に進学してアルゴー寮に入ったのも、一帆といっしょにいれば楽しいだろうという考えから。実家はお寺で、将来の夢は住職になることでアルゴー寮にも木魚を持ち込んでいる。さらに、お経を唱えると精神的に落ち着くと、部屋でも頻繁に木魚を叩いたり、お経を唱えている。女性は大好きだが恋愛に関しては奥手で、小柄すぎる自分では釣り合う女性がなかなかいないと考えていた。高校1年生の夏、南部希美に思いを寄せるようになるが、希美は友人の温田稔と交際を始めたためにあきらめる。その後、塩入かえでと親しくなり、交際する。
壱岐 良知 (いき よしかず)
私立蒼風(そうふう)高校1年E組に在籍する男子。のちに、2年E組に進級する。入寮希望者の男女比の問題で、本来は女子寮であるアルゴー寮2号館の205号室で暮らしている。ルームメイトは明科一帆。前髪を目の上で切って、もみあげを長く伸ばした黒の短髪で、青の色付き眼鏡をかけている。クールで落ち着いた性格の皮肉屋だが、なんだかんだで付き合いがいい。また、頭脳明晰ながら、スポーツ全般は苦手としている。一帆の紹介で亀行道と出会い、三人で行動を共にするようになる。四人姉弟の末っ子で、三人の姉がいるために女性への理解度は高いが、交際した経験もなく、もてないことをひそかにコンプレックスに感じている。自分は恋愛に縁がないと考えていたが、高校1年生の夏、一帆にふられた十文字唱を励ましたのがきっかけで、彼女に淡い思いを寄せるようになる。しかし、はっきり気持ちを伝えられずにいた1年生の冬、安藤みよ子に告白され、唱やみよ子に対しても一歩踏み出せない自分の臆病さを痛感する。そこでどちらとも交際せず、まずは自分が成長してから答えを出すことにし、最終的には唱と交際した。自宅から蒼風高校に通うには遠すぎるとの理由で、アルゴー寮に入った。誕生日は2月1日で、血液型はA型。
三郷 西夜 (みさと せいや)
私立蒼風(そうふう)高校1年E組に在籍する女子。のちに、2年E組に進級する。アルゴー寮2号館207号室で暮らしている。バレーボール部に所属しているが、2年次に寮長になった際に退部した。前髪を左寄りの位置で斜めに分け、顎の高さまで伸ばしたボブヘアをカチューシャでまとめている。十文字唱、南部希美とは同じ中学校の出身で仲がいい。面倒見のいい性格ながら、不器用でなかなか素直になれないところがある。明科一帆とは、アルゴー寮入寮時に唱や希美といっしょに出会った。しかしその直後に希美が起こした騒ぎにより、その真相を調べていた一帆のことを、無断で女性の部屋に入る失礼な男であると誤解してしまう。そのため、当初は一帆に冷たい態度を取っていたが、次第に打ち解け、やがて一帆に思いを寄せるようになる。高校1年生の夏休みに一帆との距離が一気に縮まり、唱と希美とのあいだに生じていたすれ違いも解消したことで、一帆と交際を開始する。しかし次第にすれ違いが増え、一帆が紅尾鈴に思いを寄せ始めていることもあり、高校2年生の夏に一帆と別れ、泊順と交際を始めた。誕生日は8月30日で、血液型はA型。
十文字 唱 (じゅうもんじ となえ)
私立蒼風(そうふう)高校1年A組に在籍する女子。アルゴー寮2号館206号室で暮らしており、ルームメイトは南部希美。華道部に所属している。前髪を左寄りの位置で斜めに分け、顎の高さまで伸ばしたボブヘアにしている。希美、三郷西夜とは同じ中学校の出身で仲がいい。有名な資産家の一人娘で、丁寧なお嬢様口調で話す。穏やかで落ち着いた物おじしない性格で、冗談が大好き。非常に惚れっぽく、すぐに好きな男性ができるが、飽きると恋していたこと自体を忘れてしまう。明科一帆とは、アルゴー寮入寮時に西夜や希美といっしょに出会い、行動力があって親切な一帆のことをすぐに気に入る。以来一帆のことを「一帆さま」と呼び慕うようになり、熱烈なアプローチを繰り返す。しかし、高校1年生の夏休みに一帆と唱が交際を始めたことにより、身を引いた。この時、励ましてくれた壱岐良知にやがて思いを寄せるようになるが、はっきり伝えられずにいた高校1年生の冬、安藤みよ子もまた良知を好きなことを知り、三角関係になる。その後、高校2年生の夏に良知と交際を始めた。アルゴー寮に入寮した理由は、お嬢様育ちであまりにも世間を知らないことを克服するためである。誕生日は7月7日で、血液型はAB型。
南部 希美 (なんぶ のぞみ)
私立蒼風(そうふう)高校1年A組に在籍する女子。アルゴー寮2号館206号室で暮らしており、ルームメイトは十文字唱。陸上部に所属している。前髪を目の上で切り、顎の高さまで伸ばしたふんわりとしたボブヘアにしている。唱や三郷西夜とは同じ中学校の出身で仲がいい。非常に小柄な体形で、実年齢より若く見られることが多い。明るく天真爛漫で、心優しい性格をしているが、やや子供っぽい一面がある。明科一帆とはアルゴー寮入寮時に西夜や唱といっしょに出会った。その直後にホームシックになり、無断で唱のベッドに入ったことで不審者とカンちがいされるトラブルを起こすが、すぐに一帆が真相に気づいたことで大騒ぎにはならずに済んだ。その後、一帆のことを気に入って慕うようになる。だが、唱と違って本気で片思いしていたわけではなく、その気持ちは友人グループで楽しく騒ぎたいという気持ちから来るところが大きかった。高校1年生の夏、一帆と西夜が急接近したことにより、周囲の人間関係が大きく変わって寂しさを感じていたが、亀行道に励まされたことで明るさを取り戻し、行道との距離を少しずつ縮めていく。しかし1年生の秋に温田稔と親しくなり、交際を始めた。陸上だけでなくスポーツ全般が得意で、体育大会では大活躍した。蛇が苦手。誕生日は12月23日で、血液型はB型。
紅尾 鈴 (べにお りん)
私立蒼風(そうふう)高校3年A組に在籍する女子。アルゴー寮の女子寮長を務めており、アルゴー寮2号館217号室で暮らしている。前髪を眉の高さで切りそろえ、肩につくほどまで伸ばしたセミロングヘアにしている。あだ名は「お鈴」で、明科一帆からは「アネゴ」と呼ばれている。気が強い性格で、やや乱暴な口調で話す。そのためにスケバンであると誤解されることもあるが、実際はまじめで寮内規則にも厳しい。高校2年生までは男子寮生たちとも非常に親しく、特に大野久之と、当時の交際相手である草下和穂とは、とても仲がよかった。しかしある日、和穂が紅尾鈴の眠っているあいだに鈴の部屋へ忍び込む事件が発生。大事には至らなかったが、これによって和穂は退寮処分となり、鈴もまた信頼していた和穂に裏切られたことで、大の男嫌いになってしまう。以来、アルゴー寮の男女仲が非常に悪くなったという経緯がある。そのため、高校3年生の春に一帆と壱岐良知が入寮希望者数の関係で、2号館に入寮せざるを得なくなったことに激怒。特に一帆を目の敵にして厳しい態度を取っていたが、次第に打ち解けて思いを寄せるようになる。誕生日は8月15日で、血液型はO型。カエルが苦手。
大野 久之 (おおの ひさゆき)
私立蒼風(そうふう)高校3年B組に在籍する男子。アルゴー寮の男子寮長を務めており、アルゴー寮1号館117号室で暮らしている。前髪を目の上で切り、もみあげを長く伸ばした短髪で、太めでがっしりとした体形をしている。たれ目で目が細く、いつも笑っているように見える。おおらかな性格で、高校2年生までは女子寮生たちと非常に親しく、特に紅尾鈴や草下和穂とは、とても仲がよかった。しかしある日、和穂が鈴の眠っているあいだに鈴の部屋に忍び込む事件が発生。大事には至らなかったが、これによって和穂は退寮処分となり、以来、アルゴー寮の男女仲が非常に悪くなってしまったことに胸を痛めている。そのため、高校3年生の春に一帆と壱岐良知が入寮希望者数の関係で2号館に入寮せざるを得なくなったことをチャンスととらえ、一帆と良知、そして二人の友人である亀行道に、アルゴー寮の男女仲の改善に向けて手伝ってほしいと頼む。実は鈴に思いを寄せているが、あえて伝えずに鈴を友人として見守ることに徹している。誕生日は5月13日で、血液型はO型。
温田 稔 (ぬくた みのる)
私立蒼風(そうふう)高校1年C組に在籍する男子。アルゴー寮1号館105号室で暮らしており、ルームメイトは亀行道。前髪を目の上で切った、癖のある短髪にしている。非常に小柄な体形で、あだ名は「ヌク」あるいは「ヌックン」。人付き合いは苦手だが、穏やかで心優しい性格をしている。自分にあまり自信がなく、中学時代に経験した失恋が原因で、恋愛に憶病になってしまっている。プラモデル作りが趣味で、非常に手先が器用。行道の趣味の変装も、温田稔が手伝うようになってから、格段にクオリティが上がっている。高校1年生の学園祭では、その特技を生かして、生徒たちの仮装用衣装の制作を手伝った。明科一帆とは、高校1年生の学園祭をきっかけに行道に紹介されて知り合い、一帆たち友人グループ六人に仲間入りした。そして高校1年生の秋、七人で紅葉を見に行ったのがきっかけで、南部希美に思いを寄せるようになる。この時に行道も希美を好きなことを知り、恋愛が原因で人間関係が壊れるのを恐れて一度は身を引こうとした。しかし、一帆と行道に背中を押されたことで自分の気持ちに素直になり、希美と交際を始めた。誕生日は3月10日で、血液型はA型。
梶 一 (かじ はじめ)
私立蒼風(そうふう)高校の2年生の男子。高校2年生の秋から大野久之に代わって、アルゴー寮1号館の寮長を務める。前髪を目の上で切った、癖のある短髪にしている。明るく行動的な性格で、リーダーシップにあふれている。さらに頭もよく、腕っぷしも強い。寮長には立候補ではなく、投票で選ばれた。明科一帆とはこの時に知り合い、一帆が下川律子に甘えるあまり、寮内で起きたトラブルの責任を律子に押しつけようとした時には厳しく叱責した。この件で一帆は、梶一には敵わないと悟った。高校3年生の春、寮長には任期は存在しないため、律子と相談の結果、早めに寮長を辞めて2年生にゆずることを決意する。そこで一帆と三郷西夜を推薦し、二人にあとを託した。
下川 律子 (しもかわ りつこ)
私立蒼風(そうふう)高校の2年生の女子。高校2年生の秋から、紅尾鈴に代わって、アルゴー寮2号館の寮長となる。前髪を目の上で切り、肩につくほどまで伸ばしたふんわりとしたボブヘアにしている。背が高く瘦せており、まじめで心優しい性格の持ち主。寮長には立候補ではなく、投票で選ばれた。2号館の寮生として、明科一帆と壱岐良知が、本来女子寮である2号館で暮らすことを不憫に思っている。そのため、下川律子自身が寮長になってからは、できるだけ二人が生活しやすい寮をつくろうと考え、鈴が寮長だった頃よりも二人の立ち入り可能範囲を広げていた。しかしこれがきっかけとなり、ある日、一帆が下着姿で廊下に出てきた女子寮生に出くわすというトラブルが発生。自分のやり方では、単純に男子の待遇をよくするだけにとどまり、女子に配慮していなかったことに気づいて反省した。その後は一帆にたびたび頼るようになり、高校3年生の春、寮長には任期は存在しないため、梶一と相談の結果、早めに寮長を辞めて2年生にゆずることを決意する。そこで一帆と三郷西夜を推薦し、二人にあとを託した。
久留野 洋 (くるの よう)
会社員の若い男性で、明科一帆の友人。井原君子の婚約者でもある。前髪を眉の高さで切った癖のある短髪にしている。明るく面倒見のいい性格で、一帆と亀行道の兄貴分的な存在。ヨットの操作方法を一帆と行道に教えたため、一帆からは「にーちゃん」と呼び慕われている。私立蒼風(そうふう)高校から離れたところにある海辺の町で会社員をしていたが、一帆が高校1年生の冬、退職して店を始めることを決意。蒼風高校の近くで「クリッパー」という、帆船模型の工房と喫茶店を兼ねた店を始めた。君子とは大学時代に出会って交際を始め、一帆が高校1年生の冬に婚約した。
井原 君子 (いはら きみこ)
私立蒼風(そうふう)高校の教師を務める若い女性で、久留野洋の婚約者。前髪を目の上で切り、肩につくほどまで伸ばしたボブヘアをカチューシャでまとめている。背が高く瘦せている。知的な落ち着いた性格で、さらに美形でもあることから、男子生徒たちに非常に人気がある。また、容姿も声もかわいらしいために誤解されがちだが、教師としては厳しく生徒に接している。洋とは大学時代に出会って交際を始め、一帆が高校1年生の冬に婚約した。
塩入 かえで (しおいり かえで)
私立蒼風(そうふう)高校に通う1年生の女子。アルゴー寮2号館202号室で暮らしている。前髪を左寄りの位置で斜めに分け、顎の高さまで伸ばした癖のあるボブヘアにしている。明科一帆にはなかなか名前を覚えてもらえず「ヒトデ」「ヤツデ」「ムカデ」などと呼ばれている。明るく世話好きな性格で下品な冗談を言うこともあるが、非常に繊細な一面を持つ。そのため、人の気持ちの機微に敏感で、人間関係のトラブルをいち早く察しては尽力しており、つねに他人のために行動している。いつも恋愛をしたいと言っているが、中学時代に喧嘩別れした恋人のことを今でも忘れられずにいる。高校1年生の冬、友人の安藤みよ子が壱岐良知に思いを寄せていることを知り、良知をだます形で二人に会話のきっかけをつくった。しかしその直後、十文字唱もまた良知に思いを寄せていることを知り、みよ子と唱の板挟みになって思い悩む。しかし、これがきっかけで一帆たちのグループと親しくなり、自分に似た一面を持つ亀行道と少しずつ距離を縮めていく。行道の人間関係を焦ってはいけないという考えから、長らく友人関係を続けていたが、最終的には交際を始めた。
安藤 みよ子 (あんどう みよこ)
私立蒼風(そうふう)高校に通う1年生の女子。前髪を目の上で切り、肩につくほどまで伸ばした癖のあるセミロングヘアで、背が高い。落ち着いた雰囲気を漂わせた文学少女で、壱岐良知に思いを寄せている。そこで友人の塩入かえでに協力してもらい、高校1年生の冬、失恋をして落ち込んでいるとウソをついて、良知との会話のきっかけを得る。しかし、このウソはすぐにばれてしまったために良知を傷つけるが、すぐに謝罪して自分の気持ちを打ち明けたことで友人関係になる。そこであらためて自分を知ってもらうべく距離を縮めていくが、良知から今の自分には恋愛をする精神的余裕がないと言われ、交際には至らなかった。
明科 潮 (あけしな うしお)
航海士を務める中年男性で、明科一帆の父親。前髪を眉の高さで切って、もみあげを長く伸ばした短髪で背が高い。目が細く、いつも目を閉じているように見える。明るく落ち着いた性格の持ち主。航海士として世界中を飛び回っており、自宅には年に3か月もいない。そのため一帆は、寮のある私立蒼風(そうふう)高校に進学した。妻の志津子を11年前に病気で亡くしたが、その時は航海中だったため、死に際に会うこともできなかった。それ以来、独身を通している。交友関係が広く、航海で十文字唱の父親とも知り合った。これがきっかけで明科潮は唱と三郷西夜と出会い、一帆が高校1年生の冬休みは亀行道も交えた四人で過ごした。行道の父親とは昔から仲がいい。
希世子 (きよこ)
高校1年生の女子で、明科一帆と亀行道の中学時代の友人。前髪を目の上で切り、肩につくほどまで伸ばして、左右共に右側に向かってカールさせたセミロングヘアにしている。あだ名は「キョン」。中学時代は色黒だったが、高校入学を機にイメージチェンジし、現在は色白。穏やかな性格で、中学時代から一帆に思いを寄せている。しかし、当時の一帆は女性嫌いだったため、アプローチしてもうまくいかず、そのまま卒業して別々の高校に進学してしまった。高校1年生の冬、中学の同窓会で一帆に再会し、一帆が以前よりも落ち着いた雰囲気で、女性嫌いも克服したことに驚く。そこで再度アプローチするが、ふられてしまう。
田岐 (たき)
十文字唱の幼なじみの男子。田岐電機の次期社長でもあるお坊ちゃまで、前髪を眉の高さで切った、ふんわりとした短髪にしている。明るく面倒見のいい性格をしている。唱との関係は、周囲にはまるで許嫁かのように認識されているが、実際は兄妹に近く、実の兄のように唱のことを慕っている。明科一帆とは、一帆が高校1年生の冬、田岐が私立蒼風(そうふう)高校まで唱の様子を見に来たことで知り合った。当初は、世間知らずでマイペースな唱には寮生活は難しいだろうと考え、連れ戻すつもりでいた。しかし、唱の寮での様子や一帆をはじめとする唱の友人たちの姿を見て考えを改め、これなら唱も問題なくやっていけると判断して、安心して帰って行った。
常磐井 幹子 (ときわい みきこ)
私立蒼風(そうふう)高校に通う1年生の女子。アルゴー寮2号館で暮らしている。明科一帆たちが2年生に進級してから入学したため、学年は一帆たちよりも1学年下にあたる。前髪を目の上で切り、胸の高さまで伸ばしたストレートロングヘアで背が高い。気が強く頑固な性格で、納得のいかないことには従わないため、周囲から孤立してしまいがち。一帆たちとはアルゴー寮入寮を機に知り合い、女子寮である2号館に、男子の一帆と壱岐良知が暮らしていることが納得できず、腹を立てる。また、これは二人が望んだことではなく、入寮者数の問題で仕方なく2号館にいることがわかっても受け入れられず、無断で門限を破ったり、外食をしたりして寮の規律を乱すようになる。これを三郷西夜に叱責され、また少しずつ一帆たちを受け入れるようになった同級生たちとのあいだに溝ができてしまったことで、次第に孤立するようになる。そこで一度は退寮を考えるが、高校1年生の春のお花見の日、これを察した亀行道に声を掛けてもらったことにより、考えを改める。以来、少しずつ一帆たちとも打ち解け、同時に行道の穏やかで心優しい人柄を尊敬するようになる。中学時代は生徒会長を務めていた。
泊 順 (とまり じゅん)
私立蒼風(そうふう)高校2年A組に在籍する男子。アルゴー寮1号館117号室で暮らしており、水泳部に所属している。明科一帆とは、一帆が2年生に進級してから知り合ったため、学年は同じ。前髪を目の上で切った短髪にしている。穏やかで落ち着いた性格で、泳ぐことが大好き。高校2年生の夏、一人でプールで泳いでいたところ、一帆と喧嘩をした三郷西夜に出会う。そこで西夜が落ち込んでいると気づき、頭を冷やすためにプールで泳ぐことを提案した。これがきっかけで、長引いている一帆と西夜との喧嘩、そして紅尾鈴も交えた三角関係であると知るが、当初は西夜のことを友人としか思っていなかった。しかし、西夜を案じて何度も声を掛けるうちに惹かれていき、高校2年生の夏、一帆と西夜が別れたのを機に交際を始めた。