作品の概要
基本情報
蒼川ななの初の商業連載作品。元は自身のSNSにて配信していた。
要旨と舞台設定
現代の大学を舞台に、男装バーでアルバイトをする女子大学生たちと男子大学生たちの交流を描いた物語。男子大学生の常盤は、同じゼミの女子、蘇芳に誘われ、友人の萩や浅葱と共に合コンに参加し、男装した三人組の女性たちと出会う。
ストーリー展開
物語は、常盤と蘇芳、萩と琥珀、浅葱と藤という3組のペアを中心に展開され、彼らの関係性が徐々に変化していく過程で、それぞれの心情や成長が描かれる。男装という立場から生まれる誤解や葛藤、相手への想いが複雑に絡み合い、物語を構成している。
ジャンル的特徴と位置づけ
本作は、男装ヒロインと男子大学生という構図を採用したラブコメディで、一般的な恋愛作品とは一線を画した男女の関係性が特徴となっている。キャラクター同士の関係が進展する過程で、性別の境界や個人のアイデンティティに関する問題も扱われる。
作品固有の表現技法と特徴
作品の特徴として、男装時と私服時のビジュアルのギャップ、日常的な会話シーンと心情描写の対比、さらに3組の男女関係が並行して進行する群像劇的な構成が挙げられる。これらの要素が相互に作用し、物語に深みを与えている。
世界観の構築と設定
現代日本の大学生活を基盤としながら、男装バーという非日常的な空間が組み込まれた世界観となっている。大学のキャンパスや居酒屋、アルバイト先など、複数の場面設定を織り交ぜることで、リアリティのある物語空間が構築されている。
連載状況
作者が自身のSNSにて配信し、2021年2月12日にスクウェア・エニックスより単行本1巻が刊行。同日に「ガンガンONLINE」での連載も開始された。
受賞歴
2022年「次にくるマンガ大賞2022」Webマンガ部門第7位。
メディアミックス情報
テレビアニメ
第1期:2024年10月から12月までTOKYO MXほかにて放送。アニメーション制作は葦プロダクション。常盤を武内駿輔、蘇芳を小松未可子が演じる。
テレビドラマ
第1期:2022年10月から12月まで放送。
あらすじ
「女性参加者のいない合コン」がスタート
ある日、大学生の常盤は同じゼミに所属している蘇芳から、合コンの参加者を集めてほしいと依頼を受ける。学校内でも清楚な美女として知られる蘇芳と合コンができるとあって、常盤は友達の浅葱、萩と共に気合いを入れて指定された会場へと向かう。するとそこには光輝くような麗しき美男子たちが待機しており、常盤はその中の一人からこちらの席だと招かれる。実は蘇芳は男装バーでアルバイトをしており、今回は職場の仲間の藤、琥珀と共に、全員男装しての合コンを企画していたのだった。こうして本当は女性ながら、はた目からは女性が参加していないように見える合コンがスタートする。最初は男性にしか見えない蘇芳たちに戸惑っていた常盤たちだったが、蘇芳から藤と琥珀の女性姿の写真を見せられ、あまりのかわいらしさに恋人になりたいと奮起する。あくまで女性としての彼女たちと交際したい常盤たちだったが、男性として完璧すぎる蘇芳たちの振る舞いに、なぜか胸をときめかせてしまう。
少しずつ関係が深まっていく六人
性別的には女性ながら、見た目は女性が参加していないように見える合コンはみごと成功し、常盤は蘇芳とこれまで以上に距離を縮めていく。さらに浅葱は、ボーイズラブ作品の同人作家として活動している藤から扱いやすい男性だとみなされ、デッサンモデルとして個人的に会う機会が増えていく。あくまでかわいらしい彼女と付き合いたい萩は、そんな状況を納得できずにいたが、ある日、街で偶然男装をした琥珀と再会する。激しい通り雨が来たことで萩は琥珀といっしょに雨宿りすることになり、萩は男性にしか見えない彼女の一挙手一投足に胸を高鳴らせてしまう。
男装バーに遊びに行く常盤たち
蘇芳から、自分たちがアルバイトしている男装バーに遊びに来てほしいと誘いを受けた常盤は、戸惑いながらも浅葱、萩と共に足を運ぶ。そのバーで、常盤は完璧な王子様キャラクターとして振る舞う蘇芳に対して、不本意ながら胸をときめかせる。そして蘇芳は、常盤がかつて「メイド喫茶」に行った経験があることを知る。なんとなく不愉快な気持ちになった蘇芳は、常盤に対してさらなる王子様キャラクターぶりを発揮し、彼の心をかき乱そうとする。
常盤と蘇芳の二人きりの飲み会
常盤は蘇芳が何を考えているのか今一つ理解できない一方で、二人の距離はこれまで以上に縮まっていた。基本的に常盤といっしょにいるときは男装をしている蘇芳だったが、ある日珍しく女性のファッションに身を包んだ彼女に遭遇する。本来であれば嬉しいはずの常盤だったが、蘇芳の男装姿を見慣れてしまったせいで、違和感を覚えるようになっている自分に気づく。そんな常盤に対し、蘇芳は二人きりで飲みに行かないかと誘う。こうして緊張から飲み過ぎてしまった常盤は早々に酔いつぶれ、蘇芳に寄りかかってしまう。
動物園でトリプルデート
萩は浅葱から、琥珀が自分を避けているという話を聞き、大いに落ち込む。しかし、琥珀から呼び出しを受けた萩はそれが間違った情報だったと知り、安堵するとともに再び彼女の一挙手一投足にときめきを覚えてしまう。その一方で、浅葱は藤の同人誌の制作アシスタントを務めることになり、二人だけで一晩を過ごすこととなる。それぞれのペアの関係が深まっていく中、蘇芳の提案で、六人で動物園に行くことになる。園内に入った六人は自然に萩は琥珀、浅葱は藤、常盤は蘇芳という組み合わせで別行動をする流れとなる。それぞれが関係を深めていく中、常盤と蘇芳の前に園内で迷子になった幼い少女が現れる。
藤の同人誌の即売会の手伝いをする浅葱
以前、浅葱がアシスタントを務めた同人誌の即売会が開催されることになり、藤はヒマそうにしている彼を販売スタッフとして呼び出す。こうして会場で親しそうに過ごしている浅葱と藤は奇しくも男性同士の絡み合いだとカンちがいされ、腐女子たちの注目を浴びてしまう。
登場人物・キャラクター
常盤 (ときわ)
とある大学に通うふつうの男子。同じゼミに所属する蘇芳にあこがれている。その蘇芳から合コンに誘われて浮足立つが、当日会場に現れたのは男装した美青年姿の蘇芳たちで、会場には女性はいるものの、見た目には「女性参加者のいない合コン」に招待されてしまう。以降、何を考えているのか底の知れない蘇芳に翻弄されつつも、少しずつ距離を縮めていく。優しく誠実な性格ながら、やや鈍感な一面がある。恋愛対象は女性であるものの、男装姿の蘇芳や藤、琥珀に胸をときめかせている。
浅葱 (あさぎ)
常盤と同じ大学に通う男子。常盤からの誘いを受けて蘇芳が主催する、女性はいるものの、見た目には「女性参加者のいない合コン」に招待されてしまう。明るくノリのいい性格で、物事を深く考えることを苦手としている。その一方で人に対して偏見を持たず、みんなに対して平等に接している。素直で騙されやすいことから、ボーイズラブ作品の同人作家として活動している藤にデッサンモデルをさせられるなど、都合よく扱われている。また藤と気が合い、二人だけでイベントや食事などを楽しんでいる。
萩 (はぎ)
常盤と同じ大学に通う男子。常盤から誘いを受けて蘇芳が主催する、女性はいるものの、見た目には「女性参加者のいない合コン」に招待されてしまう。本来は小柄でかわいらしいタイプの女性が好みだが、ワイルドな雰囲気を持つ男装女子の琥珀の些細な言動に胸がときめいてしまうことも多く、萩自身の性癖がわからなくなっている。常盤、浅葱、蘇芳、藤らと比較すると、常識的な考え方の持ち主。
蘇芳 (すおう)
常盤と同じ大学に通う女子。常盤とはゼミがいっしょの関係で親しくしており、彼に合コンを開催してほしいと依頼した。しかし、男装バーでアルバイトしていることから、学校以外では基本的に男性の身なりをしており、合コンにも男装バーの仲間である藤と琥珀を誘った。何も知らない常盤たちを、はた目から見ると「女性参加者のいない合コン」に招待した。大学では女性のファッションを身につけ、見た目も美しく整っているため、構内では清楚な美女として知られている。まれに男装バーのアルバイトまでの時間に余裕がないときには男装をして通学しており、その際にはふだんの蘇芳とは認識されておらず、「突然現れるレア級のプリンス」として女子学生から騒がれている。常盤、浅葱、萩の男性陣の中では一番常盤と親しく、時折気のある思わせぶりな素振りを見せている。男装はしているものの恋愛対象は男性。
藤 (ふじ)
蘇芳と同じ男装バーでアルバイトをしている女子。蘇芳から合コンに誘われて参加したことで、常盤たちと知り合う。合コンに参加したものの、恋人が欲しいという気持ちはまったくない。ボーイズラブの同人作家として活動しているため、男性同士の絡み合いの参考にするために参加した経緯を持つ。同人誌のネタのためなら、男子トイレに忍び込むこともいとわないなど、常識を逸脱した行動を取ることも多い。考えていることが顔に出ないタイプで、マイペースで奔放な言動を繰り返す非常につかみどころのない性格の持ち主。ゲームセンターが大好きで、クレーンゲームが得意。常盤、浅葱、萩の男性陣の中では一番浅葱と親しく、彼を騙して同人誌用のデッサンモデルにしている。男装はしているものの恋愛対象は男性で、女性の服を身につけることもある。
琥珀 (こはく)
蘇芳と同じ男装バーでアルバイトをしている女子。蘇芳から合コンに誘われて参加したことで、常盤たちと知り合う。褐色の肌をした見た目はワイルドな青年ながら、内面は蘇芳、藤と比べて一番女性らしくピュアな性格で、男性とのわずかな接触でも赤面してしまう。その見た目から、男装バーのスタッフには「俺様キャラクター」を演じるように言われており、本来の性格とのギャップに悩んでいる。常識的な人物であり、マイペースな藤の暴走を止めるストッパー役を担っている。常盤、浅葱、萩の男性陣の中では萩と一番親しく、自然な流れの中で彼をときめかせることが多い。男装はしているものの恋愛対象は男性であり、女性の服を身につけることもある。
書誌情報
合コンに行ったら女がいなかった話 10巻 スクウェア・エニックス〈ガンガンコミックスONLINE〉
第1巻
(2021-02-12発行、978-4757570962)
第2巻
(2021-09-10発行、978-4757574762)
第3巻
(2022-04-12発行、978-4757577701)
第4巻
(2022-10-12発行、978-4757582033)
第5巻
(2023-04-12発行、978-4757585232)
第6巻
(2023-10-12発行、978-4757588523)
第7巻
(2024-04-12発行、978-4757591516)
第8巻
(2024-09-12発行、978-4757594180)
第9巻
(2025-04-12発行、978-4757597945)
第10巻
(2025-10-10発行、978-4301001171)







